哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
Online ISSN : 1884-393X
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10 巻, 4 号
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  • 三浦 慎悟, 安井 圀彦
    1985 年 10 巻 4 号 p. 169-178
    発行日: 1985/06/10
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    1979年から1982年にかけて岐阜・長野両県下で捕殺された521頭のカモシカの下顎を材料として, 歯の萌出及び磨滅パターンの年齢と性による変化を観察し, その年齢指標としての有効性を検討した.各歯の平均萌出時期及び95%萌出期間をプロビット法によって測定し, 歯の萌出によっては約31ヵ月齢まで査定できることを明らかにした.また, 磨滅パターンによる齢査定にはかなりな推定誤差が見積もられた.年齢による歯の磨滅の進行にはほとんど性差が認められなかった。
  • 高田 靖司
    1985 年 10 巻 4 号 p. 179-191
    発行日: 1985/06/10
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    愛知県三河湾の佐久島 (171ha) と本土 (春日井市・名古屋市守山区, 名古屋市緑区大高町) の間で, 野生ハツカネズミの繁殖と寿命を比較した。1979年から1984年までに採集・調査した個体数は佐久島550, 春日井・守山区294及び大高192である。本土のネズミに比し, 島のハツカネズミには次の特徴がある。1) 春 (4-6月) の繁殖が見られない (本土ではそれがある) 。2) 雌の性成熟が遅れ, 特に1月以後に生まれた雌は次の秋まで繁殖しない。3) 若齢群で, 雌雄ともに繁殖状態にある個体の割合がより少ない。4) 繁殖に参加する雌はより老齢に偏り, この現象は秋に特に顕著である。5) 1腹の正常胎仔数は大差を示さない。6) 成体の寿命がより長い。この事はより老齢群に偏った齢分布, 及び成体のより大きい平均齢などの資料から明らかである。7) 若い個体 (齢群0) の死亡率は大差を示さない。8) 耳介に見られた裂傷の頻度がより低い。これらの特徴の大半は, 本土のハツカネズミに比し, 佐久島のハツカネズミがK淘汰されていることを示している。すなわち, この淘汰は佐久島産ハツカネズミの低い繁殖と長い寿命に対して有利に働いていると考えられた。
  • 荒井 秋晴, 毛利 孝之, 吉田 博一, 白石 哲
    1985 年 10 巻 4 号 p. 193-203
    発行日: 1985/06/10
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究に用いた九州産カワネズミChimarrogale himalayica platycephalaは川幅5m以下の山地清流から得られ, その個体数は減少傾向にあった.九州産11頭 (雄6頭, 雌5頭) の体重, 外部形質及び頭骨12部位について測定し, これらと吉田 (1968) による九州産4頭の合計15頭の大きさを藤原 (1958) , 今泉 (1960) 及びABE (1967) による本州産43頭のそれと比較した.一般に雌は雄より小さく, また九州産の雌雄は本州産のそれより小さかった.更に, これら九州産と本州産の大きさをABE (1971) によるネパール産, JONES&MUMFORD (1971) による福建省産及び台湾産 (筆者らの雄1頭を含む) の大きさと比較した結果, カワネズミは北から南へ次第に小さくなる傾向を示した.従って, 九州産が本州産のものより小さいのはクラインの現れで, 地理的変異の一つと考えられる.
  • Shingo MIURA
    1985 年 10 巻 4 号 p. 205-207
    発行日: 1985/06/10
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
  • 山影 康次, 中屋 敷徳, 長谷川 潤二, 小原 良孝
    1985 年 10 巻 4 号 p. 209-220
    発行日: 1985/06/10
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ホンドハタネズミMicrotus m. montebelliのG-, C-及びN-バンドパターンを分析し, その結果をエコノムスハタネズミMicrotus oeconomusの分染パターン (FREDGA et al., 1980) と対比させ, 両種間の核学的関連性, 及び染色体変異 (C-ヘテロクロマチンの重複, NORsの転座ないしは不活性化) と種分化との関連性を考察した。
    1) X染色体の一部を除くと両種のG-バンドパターンはほぼ完全に一致した。C-バンドパターンに関しても同様であった。
    2) ホンドハタネズミのX染色体はエコノムスハタネズミのそれより約1.7倍も大きく, その差異はC-バンドの大きさにおける相違に起因していた。
    3) 両種のN-バンドパターンは全く異なっており, この分布パターンの相違はNORsの転座と不活性化によるものと考えられた。
    上述した核型分析の結果及び考察から, ホンドハタネズミとエコノムスハタネズミは系統的には互いに密接な関係を持つ極めて近縁な種であることが結論された。
  • 金子 之史
    1985 年 10 巻 4 号 p. 221-229
    発行日: 1985/06/10
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本州の5地点と四国の1地点から, 繁殖期に採集した雌47頭・雄71頭を用いて, スミスネズミEothenomys smithiとカゲネズミE.hageus間の標徴形質とされる乳頭数と陰茎骨の形状について調査した。これら6地点の各標本群は, 雌では妊娠個体と恥骨結合が開いた経産個体, 雄では陰茎骨の3個の指状突起が化骨している個体から成る。
    一対の胸部乳頭のうち片側が欠失している個体と, 左右とも粒状になっている個体とが4標本群で計9個体見られた。また, 左右とも正常な大きさの胸部乳頭をもつ個体と, 左右とも胸部乳頭の欠失している個体が3標本群で見られた。このような胸部乳頭の変異は, 恥骨結合の開いた雌では妊娠雌よりも経産雌で大きい傾向にあった。鼠蹊部乳腺は全個体に見られたが, 胸部乳腺はどの個体にも認められなかった。
    雄の4標本群について, 陰茎骨体後端の形状と左指状突起の形状との間, および陰茎骨体後端の形状と陰茎骨体軸の曲り方との間で, 個体別頻度の2×2分割表をそれぞれ作成して検討したところ, 両者間には独立の関係が示された。陰茎骨体後端の形状, 陰茎骨体軸の曲り方, および左指状突起の形状についての頻度分布は, 6標本群間でそれぞれ独立であった。分散分析の結果, 陰茎骨体長に対する陰茎骨体底部幅の比率は, 6標本群間で有意差を示さなかった。
    以上の事実から, 乳頭数と陰茎骨の形状という従来の標徴形質によっては, 両種の判別はできないことが明らかになった。さらに, 差異係数を用いてカゲネズミの新種記載をするという分類学的方法についても, 集団の扱い方とクラインの観点から論議した。
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