島嶼型個体群であるツシマジカ, マゲシカおよびヤクシカの頭蓋を形態計測学的に比較検討した。
1.ツシマジカ雄の頭蓋は4才でほぼ成獣の大きさに達するが, 長さの要素より幅の要素の成長が早かった。
2.頭蓋の大きさはツシマジカが最も大きく, 次いでマゲシカ, ヤクシカの順で, 頭蓋基底長に対する各計測項目の指数より, 頭蓋幅はマゲシカで最大でヤクシカで最小であり, ツシマジカは鼻部の長さが短かった。
3.雄は雌より著しく大きく, また, 雄の顔結節下縁はW字形を, 雌のそれはU字形を呈していた。
4.cline分析から, ツシマジカおよびマゲシカの頭蓋基底全長はタイリクジカ群とニホンジカのclineの中間に, マゲシカの鼻骨長はニホンジカのclineより大きい位置にあったが, ヤクシカの頭蓋基底全長, ツシマジカおよびヤクシカの鼻骨長はニホンジカのclineに含まれていた。
5.主成分分析により三群間の区分が明確にされたが, ツシマジカーマゲシカ間よりマゲシカーヤクシカ間の差異が大であった。
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