哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
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最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 阿部 永
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 93-106
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    北海道内の植生構造が異なる四つの林において, 5種のネズミ類, エゾヤチネズミ, ミカドネズミ, エゾアカネズミ, カラフトアカネズミ, ヒメネズミによる林の階層構造利用を調査した。林内の4層 (落葉下, 同上, 地上50cmおよび150cmの植物上) に不消化物 (色の異なるプラスチック細片) を混入した餌を配置してネズミに摂食させ, 同時に地上に設置した生捕りわな内から捕獲個体の糞を回収, 分析し, ネズミ類による階層利用の程度を推定した。その結果, どのネズミ類も落葉下から150cm層までを利用したが, 垂直的ニッチ幅はエゾヤチネズミで最もせまく, ヒメネズミが最も広く, ミカドネズミとエゾアカネズミはほぼ等しくて中間であった。カラフトアカネズミについてはサンプル数が少なく不明であった。各植生間での出現状態をみると, エゾヤチネズミは全調査区に出現して最も広く分布し, ミカドネズミは3区に, エゾアカネズミは2区に, 他の2種は各々1区だけに出現した。更に, これまでに知られている各ネズミ種の食性の違いなどを加味し, 北海道の森林環境下におけるネズミ群集の構成について考察した。
  • 高橋 朋子
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 107-115
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    北海道産2種のヤチネズミ属 (エゾヤチネズミとミカドネズミ) について, 食物選択の面からその共存機構を明らかにするため, 食性の季節変化, 植物現存量, 生息密度, 微生息場所に関する調査が行なわれた。
    1) ミカドネズミは, その食性としてGC (イネ科とカヤツリグサ科植物) 以外の植物質 (OP) をより高く選択した。これはOPの現存量が少ない時期にも変化しなかった。
    2) エゾヤチネズミの食性は, 資源の変化に対する適応性に富んでいた。すなわち基本的にはOPを選好するが, その現存量の少ない時期には, GCの利用を増大させた。
    3) 両種のこの傾向は, 密度の優劣に関係なく一定であり, 特にすみわけの結果生じた二次的なものであるとも言えなかった。
    4) 両種にとって共通資源であるOPの量が, ネズミの総生息数とのバランスによって規定されるある値以下に減少した場合には, より狭い食物nicheを持つミカドネズミはその食性を維持したが, より広い食物nicheを持つエゾヤチネズミは利用の中心を他の食物に転換させた。この方法によって, 両者は種間の摩擦を回避する機構を形成していると考えられた。
  • 中田 圭亮
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 117-125
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    北海道中央部にある針広混交天然林において, 個体群変動に関連したヒメネズミの一腹仔数 (胎児数) を調べた。一腹仔数の齢変異はわずかであり, 有意ではなかった。頭胴長と一腹仔数との間には有意な正の相関があり, 当年雌でこの関係はより明らかであった。個体群密度は一腹仔数と有意な負の相関を示し, 越冬雌で関係はより明らかであった。妊娠雌は減少相で捕えた3個体を除き, すべて増加相のみで捕獲され, 一腹仔数は増加相で多かった。一腹仔数の有意な季節変化と年変化が見られた。一腹仔数の年平均は, 秋まで繁殖が延びた年で高く, 夏までに繁殖が終わった年で低かった。当年雌は個体群の増加に重要な意義を有していた。一腹仔数の変化は個体群変動過程と関連していた。
  • The Organizing Committee of the Kuril Seal
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 127-146
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
  • ―体重ならびに頭胴長の回帰と相対成長―
    安部 みき子
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 147-154
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    現生のニホンイノシシの雄384個体と雌282個体の外部計測 (体重, 頭胴長, 体高, 尾長, 耳長) を行った。
    1) 各計測部位の平均値は, 体重が雄で37.5kg, 雌で27.1kg, 頭胴長が雄で106.0cm, 雌で99.2cm, 体高が雄で58.0cm, 雌で54.0cm, 尾長が雄で13.6cm, 雌で12.6cm, 耳長は雄で8.5cm, 雌で8.0cmであった。
    2) 性差は, 計測個体の少ない体重を除いた全ての計測部位について, 雄の方が有意に大きかった (P<0.01) 。また, 乳犬歯を有する幼体群と永久犬歯を有する成体群におけるそれぞれの性差は, 成体群の方で著しかった。
    3) 捕獲月ごとに比較した頭胴長では12月の平均値が最も小さく, 月を経るにつれ大きくなる傾向が認められた。この変化は幼体群の方で成体群より著しかった。
    4) 体重と頭胴長は各計測部位との相関が極めて高く, どの計測部位からの回帰も可能であると考えられた。
    5) 体重は他の計測部位より優成長を遂げ, 頭胴長は耳長を除く他の部位より劣成長を示した。
  • 岩崎 信一, 宮田 建, 若杉 爾, 小林 寛
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 155-164
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    アブラコウモリの舌背表面を走査電子顕微鏡によって観察し, 次のような結論を得た。
    1) アブラコウモリの舌背には, 部位により形の異なる糸状乳頭が分布しており, 各糸状乳頭の分布域の境界は, 明瞭に識別できる。糸状乳頭の他に, 舌背には茸状乳頭, 有郭乳頭が分布している。
    2) 種々の糸状乳頭の円形斜面や基部では, microridgeは比較的明瞭であるが, 中程から上部にかけては, いずれの糸状乳頭でも, microridgeは不明瞭である。茸状乳頭や有郭乳頭の中央頭部では, やはりmicroridgeは不明瞭である。また, 乳頭間部, 有郭乳頭の外郭部や舌根部の上皮表面には, microridgeが広く分布している。
  • 尾崎 研一
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 165-172
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Food and feeding behaviour of the introduced Formosan squirrel (Callosciurus sp.) were studied in Nogeyama Zoo, Yokohama City, Kanagawa Prefecture, Japan, from August 1981 to July 1982. Throughout the field observations, various parts of 29 species of trees and one species of fungus were used as food. The main food trees wereCastanopsis cuspidate, Prunus (Cerasus) spp., Morus austraris, andAcer palmatum. Various parts of these food trees were eaten depending on season : mainly fruits and cones in autumn, bark and bubs in winter, bark and flowers in spring, and fruits and cones in summer. The cumulative frequency of feeding per tree over a year was high on the tree species which produced mainly fruits or cones. It should be noted that the squirrels changed their feeding behaviour depending on the kinds of food. Adaptability to the wide range of foods and ability to change the food habit are thought to be the factors which made this species possible to settle outside their native habitats.
  • 町田 和彦, 斉藤 貴, 大八木 昭, 井上 茂樹, 斎藤 健
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 173-181
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    青森県下北半島北西部の恐山地域において, 森林棲翼手類相を調査し, 生態の若干について検討した。
    1) 採集された種類は次の8種で, 恐山は今までに調査された地域に比して豊富な翼手類相を示した。ニホンコキクガシラコウモリRhinolophus cornutus coynutus, ニホンキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequznum nippon, シナノホオヒゲコウモリMyotis hosonoi, カグヤコウモリMyotis frater kaguyae, モモジロコウモリMyotis macrodactylus, ナミエヒナコウモリVespeytilio superans, モリアブラコウモリPipistyellus endoi, ニホンコテングコウモリ, Murina silvatica.なお, モリアブラコウモリは青森県からの新記録である。
    2) 調査地点により種組成が異なる結果を得た。
    3) 捕獲数は日没後の19時~21時に最大のピークを示し, 22時~23時に第2のピーク, 明け方の4時~5時に第3のピークを示した。このピークは, 調査地点を採餌場所への移動経路として, あるいは採餌場所として利用している種によって示されたものと考えられる。
    4) 採集された8種のうち, コキクガシラコウモリ, シナノホオヒゲコウモリ, カグヤコウモリ, モモジロコウモリ, モリアブラコウモリ及びコテングコウモリの6種に乳腺の発達した個体が見られた。また, シナノホオヒゲコウモリ, モモジロコウモリ, モリアブラコウモリ及びコテングコウモリの4種に幼獣が出現し, 8月中旬には飛翔していた。
  • 永西 修, 佐藤 英明, 渡辺 茂樹, 石橋 武彦
    1986 年 11 巻 3-4 号 p. 183-185
    発行日: 1986/12/05
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    主として西日本を中心として集めたニホンイタチ51頭から得た102個の精巣を用いて, 精巣の大きさと精子形成との関係について調べ, 重さ (W) 0.5g以上の精巣で精細管腔に完成した精子が観察された。また重さ, 短径 (S) および長径 (L) の測定値間の相関係数はすべて0.92以上と高く, 単回帰式はS=0.68L+0.24, L=9.88W+6.72, S=6.1W+5.0, また重回帰式はW=0.064S+0.048L-0.54と表わされた。重さ0.5gを単回帰式に代入すると, 短径8mmと, 長径12mmが得られることから, 短径8mm, 長径12mm以上の測定値をもつ場合, 精巣に精子の認められる確率が高いことが推察された。
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