1951年度から1975年度までの統計にもとついて, タヌキ, テン, アナグマ, イタチ, キツネの五種の捕獲数の変化を検討した。
(1) タヌキの捕獲数は, やや減少の傾向をもつが勾配はゆるやかで, 安定した捕獲数を維持している。年平均300頭以上捕獲をみた24府県について比較すると, 平均値と標準偏差値は, 両対数図においてほぼ直線関係を示し, 勾配は0.73である。島根県のみは捕獲数が増加し, 岩手, 長野, 三重, 岡山, 宮崎の各県は安定した捕獲を続けている。逆に高知, 福島, 石川, 福井の各県では減少傾向が著しい。最近の傾向として, 西日本では捕獲が多く, 東日本では少ない。
(2) テンの捕獲数は, 全国的には平均約8, 000頭で, 最近は安定しているように見えるが, 変動はかなり大きい。府県別にみると, 変動はさらに大きく, 安定した捕獲数を維持していると考えられる府県はひとつもない。また, 平均値と標準偏差値との両対数図での直線性はない。
(3) アナグマの全国の捕獲数は漸減していて, 約7, 000頭から1, 600頭になっている。年平均30頭以上の捕獲があった府県についてみても, 捕獲数は減少しているか, またはかなり不安定である。ただ, 両対数図における平均と標準偏差の直線関係は, テンよりも明瞭である。
(4) イタチの雌は狩猟捕獲が禁止されているため, 報告にあらわれた捕獲数はほとんど雄のみである。1951年度には100, 000頭をこえた捕獲があったが, 最近では18, 000頭程度に減少している。この減少は1960年度以後とくに著しい。年平均750頭以上の捕獲があった33府県についてみても, この減少は顕著である。
(5) キツネの捕獲数は, 全国的に見ても府県別に見ても, 1960年度を境に変化し, それ以前は減少, 以後は増加という形をとる。1960年度以前に若干でも増加の傾向をもったのは岡山のみで, ほかに愛知が比較的安定した捕獲を維持していた。ところが1960年度以後は減少傾向を示したのは山形と熊本のみで, 他は増加の傾向を示している。キツネの全国捕獲数は北海道に大きく依存しているが, 他の府県でも同様の傾向を示すことは, 捕獲数の変動が, 地域的な個体群の生息数変動とただちに結びついているものでなく, その間に捕獲努力ともいうべき要素があることを示唆する。
(6) そこで各種類の捕獲について, 目的などから変動の要因を考察したが, さらにそれぞれの全国捕獲数とワナ免許の交付数の相関を年次別に計算した。その結果, タヌキ―アナグマ―イタチの相互と免許交付数は正の相関を有するが, キツネはむしろ逆相関であり, アナグマもまた独立の変動を示していることがわかった。
(7) ところが, 最近数年間の平均値について, 府県別の相関係数を調べると, すべてについて相関関係が認められる。したがって, 狩猟努力は, 長期的には経済的な情勢による利益の変化もあって, 免許交付数による狩猟圧と直結しないこともあるが, 短期的には各種類共通のものとしてそれぞれの府県の狩猟圧に対応していると考えられる。
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