北海道石狩防風林において1966年および1967年の5-11.月に採集したエゾヤチネズミ764個体について齢査定を行ない, 個体群構成, 繁殖活動および胎仔数の変化を調べた。
1. 早春の個体群は主として越年個体からなり, 性比は雌の方が顕著に多かった。越年個体は8月まで急減し, 特に雄の減少が著しかった。当年個体は厳冬期から少数が現われ始め, 5月以降に増加し, 8月以後には個体群の80-90%以上となった。当年個体全体の性比はほぼ1: 1であった。
2. 越年個体は寿命直前のものを除き雌雄とも常に性成熟状態にあった。当年個体は雌雄とも繁殖期初期に生れたものの一部だけがその年の繁殖期に成熟したが, 成熟雄は雌の半数以下であった。各調査区とも成熟した当年と越年雄の合計数は雌のそれより著しく少なく, 通常半数以下であった。当年雌の成熟化に対する越年雌の存在の影響が示唆された。
3. 妊娠のピークは7月で, 出産期は7月に一回のピークをもつ2-10月と推定された。秋の繁殖活動は2年とも認められなかった。
4. 当年個体の成熟化の状況や秋繁殖の欠除などは, いずれも従来から知られている高密時の状況に合致するものである。
5. 約9-12ケ月齢の越年雌がもつ胎仔数は6月以前のもの (平均6.28) が7月以後のもの (平均4.77) より有意に大きかった。
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