日本経営診断学会論集
Online ISSN : 1882-4544
ISSN-L : 1882-4544
20 巻
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 片山 富弘, 石内 孔治, 関谷 忠, 遠藤 真紀, 水島 多美也, 中川 隆
    2020 年 20 巻 p. 1-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/21
    ジャーナル フリー

    買物弱者の事例として,福岡県糸島市の「いと丸くん」や佐賀県厳木町の「イドスク」を取り上げながら,考察として,マーケテイング・インサイトを行い,ソリューション・マーケティングを提案している。

  • 井上 善博, 吉本 準一
    2020 年 20 巻 p. 5-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/21
    ジャーナル フリー

    経営の評価軸として,利益や市場シェア,ブランド力などが採用されることが多く,それが良いと優れた経営とされてきた。このような評価軸は,たしかに現代資本主義における経営成果を測るのに有効である。しかし,それだけで経営の本質まで評価することはできない。近年,業績が良いけれども,社会的に問題のある企業が出現している。自分の報酬を過小報告して,ステークホルダーに開示していた会長は,有価証券報告虚偽記載で逮捕された。保険の不適切販売をしていた生命保険会社は,業務停止命令を受けた。このような,不誠実な経営は社会的批判の的となり,その企業の持続可能性が注目されるようになった。そのため,不誠実な経営の問題点を指摘し,誠実な経営の条件を提示することが重要である。経営診断指標としての拡大志向という側面を自己愛の強さというキーワードから顧みて,自己愛ではなく,共感意識から導き出される経営診断指標について考察することが本研究の問題意識である。

  • 並木 雄二
    2020 年 20 巻 p. 12-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/08
    ジャーナル フリー

    テクノロジーとデジタル技術の進歩が流通業の未来を変えようとしている。EC大手のAmazon,アリババはリアルの小売業を巻き込み,顧客データを一元管理し支配しようとしている。流通業にとり顧客データは重要な経営資源であり,伝統的流通業はまずこの顧客データを活用し,顧客へのアプローチを変えていく必要がある。分析を基にしてハイタッチな心の通い合う関係作りを目指すことが目的である。本論は,牛乳・新聞販売業の経営診断から有効と考えるデータ分析の手法と活用の事例を示す。分析手法は①jSTAT MAPの活用による商圏分析,②受発注データを利用したRFM分析・マーケットバスケット分析,③顧客アンケートによるCSポートフォリオ分析の3つになる。

  • 日沖 健
    2020 年 20 巻 p. 19-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/08
    ジャーナル フリー

    中小企業診断士が独立開業して商業的に成功するのは極めて困難だと言われる。独立開業した中小企業診断士(プロコン)は,どのような動機で,どのように事業のリスクとリターンを認識して,意思決定したのだろうか。筆者は,プロコン32名にインタビューを行い,独立開業の動機,事業のリスク,事業計画の策定などについて調査した。その結果,大半のプロコンが事前に事業計画を策定せず,「好きなことをやりたい」「中小企業や地域社会に貢献したい」「信念を貫く」といった経済合理的とは言えない動機に基づき,ハイリスク・ローリターンの挑戦をしていることが明らかになった。

  • 有馬 賢治
    2020 年 20 巻 p. 25-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/08
    ジャーナル フリー

    本論では,マーケティング領域で影響が想定される環境要因を先行研究から整理し,Web調査によりマーケティング管理者が意識する環境要因の実態把握を試みた。調査では,日本のB to C企業からの回答を集約し,その傾向を分析した。分析にあたり,企業の業種と規模による環境要因の重要度の差異の存在を仮説として設定した。仮説の検証作業により,企業のマーケティング管理者が意識する環境要因には,業種,規模ともに多くの要因で有意な差が認められた。さらに,日本企業でマーケティング管理者の意識がどのような環境要因を重視しているのかを企業の属性別に分析した。分析結果を踏まえ,環境要因からの経営診断に対する示唆を提示した。

  • 今井 範行
    2020 年 20 巻 p. 32-37
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/14
    ジャーナル フリー

    本稿では,管理会計論(利益管理論)とトヨタ生産システムの先行研究をふまえ,量産工程を対象に,伝統的な形式のコスト低減とトヨタにおけるコスト低減の対比をおこなうことにより,トヨタ生産システムに整合するトヨタ的コスト低減の特性を明確化するとともに,その管理会計的意義について考察する。

  • 曽我 寛人
    2020 年 20 巻 p. 38-43
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    本研究では,文化的知性を構成する要素間の関係について明らかにするとともに異文化に適応するための行動につながる心理的習慣を探ることにする。まず,要素間の関係について分析を行った結果,メタ認知CQが認知CQと動機CQと行動CQに,また,認知CQが動機CQと行動CQに与える影響が確認された。そして,心理的習慣について,メタ認知CQと認知CQの各質問項目を独立変数,行動CQの各質問項目を従属変数とした回帰分析を従属変数ごとに行った。その結果,異文化に適応するための行動をとるためには,メタ認知,すなわち文化に関する自らの知識に意識を向けて修正をするという心理的習慣の重要性が示唆された。

  • 後藤 時政, 羽田 裕, 永井 昌寛, 小川 宏二
    2020 年 20 巻 p. 44-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/14
    ジャーナル フリー

    経営環境が大きく変わろうとしているなか,中小企業に対してもビジネスモデルの変革を迫る波が押し寄せている。一歩踏み出した付加価値創造の方法として,オープン&クローズ戦略などの知財を活用したビジネスモデルがその候補として考えられるが,これを実践するためには経営者の知財活用に対する意識や知識が必要となり,中小企業にとって実践することは難しいものと思われる。そこで,本研究では知財による付加価値創造が実現できている中小企業に注目し,当該企業の知財マネジメントを観察することによって,知財を活用してどのように付加価値創造をしているかを解明した。得られた結果を踏まえ,本論文では中小企業がオープン&クローズ戦略を実践するための要件を探った。

  • 羽田 裕, 後藤 時政, 羽田野 泰彦
    2020 年 20 巻 p. 51-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    これまでオープンイノベーションの一つの形態として進められてきた「技術移転」を中心とした産学官連携は,大きな転換期を迎えている。経営資源の制約が大きい中小企業が,単独で新規事業化に向けて動き出すことは極めて困難である。そこで「場」での育成という観点を組み込んだ産学官連携のあり方を新たに検討していくことが求められる。育成型を進めるうえで産学官連携支援機関が,場をデザインするために地域の中小企業が事業化を目指していく方向性(ゴール)を示すことが重要となる。そこで本研究は,この方向性を示すために知的財産の一つである特許に着目し,企業等の特許出願の分析から技術・市場動向の予測を行い,事業化の可能性を秘めた潜在的市場を探索,抽出する手法を検討する。

  • 田村 隆善, 魏 興福
    2020 年 20 巻 p. 58-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/14
    ジャーナル フリー

    不動産業の財務指標は,全産業平均や製造業平均などの財務指標とかなり違った特徴を有することが先行研究等で指摘されている。しかし,規模間比較や長期にわたる比較はほとんど行われていない。本研究では,財務省発行の「財政金融統計月報:法人企業統計年報」を使って,規模間ならびに産業間でみた不動産業の財務指標の特徴を,11年間の長期的傾向を踏まえて明らかにする。結果は,不動産業全体のみならず,個別不動産企業の財務状況を分析し,診断・評価するときの比較・参照資料としても活用可能である。

  • チョチョ ウィン, 加藤 里美
    2021 年 20 巻 p. 65-71
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定された大橋運輸がどのようにダイバーシティ経営を行っているかを明らかにすることである。具体的には,まず社長のダイバーシティに関する考え方や推進の仕組みについて示していく。つぎに従業員が社長の考え(経営方針)に対してどのように考えているのかを示す。方法は社長への半構造化インタビューと従業員への質問紙調査である。その結果,大橋運輸のダイバーシティ経営は,地域課題を戦略的に取り込む価値創造企業としての活動の一つであることが明らかにされ,従業員の意識からは価値創造を行っていこうとする経営方針が浸透し始めていることが示された。

  • 藤井 一郎
    2021 年 20 巻 p. 72-77
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    徳島県鳴門市にて地域の水産加工業者が鳴門産の冷凍ワカメの開発に成功した。今回の研究は,鳴門産の冷凍ワカメの価値を顧客の視点から捉えたうえで,冷凍技術開発過程についてインタビュー調査をもとに調査,分析を行うものである。その結果,顧客価値の発見,冷凍技術開発などのすべての過程で同社の業界内での独自性が影響していること,消費者ニーズと新しい技術に注目しておくことの重要性,冷凍技術開発には経験の蓄積とデータの蓄積の両方が必要であることが示された。また,これまでの自社の弱みを克服するための経験の蓄積が,直観力を創りだしイノベーションを行うための技術開発のスピードを上げたと推測される。

  • 小島 貢利
    2021 年 20 巻 p. 78-83
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    近年,リニア中央新幹線の名古屋以西の建設ルートに関して活発な議論が行われている。伊勢湾地域(愛知県,三重県)では,三重県の亀山市周辺に新駅設置が噂されているが,最も適切であるのか疑問が残る。本研究では,リニア中央新幹線の新駅を,中部国際空港(セントレア)と鈴鹿市周辺に建設することを提案する。セントレアと鈴鹿市を経由することで,伊勢湾地域に限らず,リニア中央新幹線沿線住民の利便性の向上や,経済効果が期待されることを説明する。また,本研究の提案が実現すれば,成田および羽田空港の過密解消や,首都圏や関西圏の災害時の旅客輸送のバックアップにも貢献するため,国策として検討する価値があることを主張する。

  • 木村 勝則
    2021 年 20 巻 p. 84-90
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,CVP分析の研究である。CVP分析と損益分岐点分析の定義の違いを研究することにより,CVP分析における問題点の発見になる。CVP分析が短期利益計画だけを目的としていないことが明確になる。

  • 劉 亜氷, 上原 義子, 高橋 昭夫
    2020 年 20 巻 p. 91-96
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

    観光による地域振興の主体として,DMOが脚光を浴びている。国は,日本版DMO候補法人登録制度を作り,2020年1月の時点で150の法人が登録,117の法人が候補となっている。しかしながら,DMOに関する研究は,主に欧米の成功事例を紹介するレベルに留まっており,その理論研究は不足していると言える。また,観光学からの研究は散見されるが,マーケティング・マネジメントの分野では,事例の紹介に留まっており,DMOそのものの学術的研究は乏しい。そこで本研究では,DMOに関して学術的フレームワークに基づいて理論的にアプローチしていく。

  • 川村 悟
    2020 年 20 巻 p. 97-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

    中小企業診断士をはじめとしたホワイトカラー系の国家資格を関心の対象とし,その独立開業について検討する。国家資格を持つ有能な独立開業者がわが国の経済成長や社会課題の解決に寄与することを目指し,その実態を明らかにしていく。具体的には中小企業診断士を事例として,第一に「独立開業者をどのような類型に分けることができるか」,第二に「独立開業の障害は何か」について検討する。第一の点では,キャリアチェンジ型,セカンドキャリア型,既存資源活用型の3つの類型を示す。第二の点では,人脈,経験・スキル,資金などの障害が存在することを言及する。さらに類型と障害の関係についても考察を加える。

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