日本経営診断学会論集
Online ISSN : 1882-4544
ISSN-L : 1882-4544
8 巻
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統一論題
  • 経営システム包括コンセプトとしてのサービスサイエンス
    新井 信裕
    2008 年 8 巻 p. 3-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    1990年代IBMとカリフォルニア大学バークレー校によって開始されたサービスサイエンスの研究は、付加価値においても、労働力投入量においても、大きなウェイトを占めることとなったサービス産業に関する科学的なアプローチの先駆をなしたものと言うことができよう。総合科学の粋として、あらゆる学際的な研究を展開することに創立の原点を持つ日本経営診断学会は、2007年の第40回全国大会において、統一テーマとして「企業経営とその診断におけるサービスサイエンスの視点」を採択した。この課題に対し若干の見解を披瀝し、今後の研究の一助となることを願うものである。
  • ものづくりの支援を通したサービス機能の可視化を基盤にして
    辻 朋子
    2008 年 8 巻 p. 9-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,不可視のサービス機能の変容を通して,共同体を閾値の突破に向けていかにファシリテートするかの試みである。まず,触媒機能を持つヒトや組織を"セレンディピティ"とし,これを共同体に組み込む支援を通して不可視サービスの可視化過程を導く。次にそうした,一連のプロセスはゆらぎとしての混沌から秩序が形成されるオートポイエーティック・システムであり,これが自己組織化の本質であることを論証する。結論として仕事を分割するための分業が支配する"不幸せなコミュニティモデル"に対し,補い合うための協働から創発されるのが"幸せなコミュニティモデル"であり,それを誘発させるのがファシリテータの役割であることを示す。
  • 経営情報に関する工学的アプローチ
    矢野 耕也, 鈴木 英之, 竹中 理
    2008 年 8 巻 p. 15-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    企業の与信を評価する際に,定性スコアリングシートを使用する場合がある。そのとき,定性的な評価に対して客観性を持たせることと,また与信を正しく評価可能とする尺度を与えることが課題であった。またスコアリングシートは評価項目が多いために,定量的な尺度で総合評価することが望ましいといえる。ここではスコアの配列を一種のパターンとして捉え,スコアから総合パターンの値を求める方法に品質工学のマハラノビスの距離を用いた。またパターンの規則性を可視化するために直交表の適用を図った。その結果,36項目の定性スコアを一元化した数値で求められ,また直交表から得られる要因効果図で,潜在構造を可視化することを達成した。
  • 関係のコンテクトを捉えた考察
    原田 保
    2008 年 8 巻 p. 21-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    サービス社会において重視される価値とは無形資産価値であり、また、この代表的なものとしてはブランドがあげられる。それゆえ、今後の経営戦略において、このブランド戦略をいかに他社に対して差別的に展開できるか、が大事な要素になってくる。このような問題意識に立脚しながら、まず、強い競争力を保持すると推察できる「コンテクストブランディング」についての言及が行われ。続いて、そのひとつのモデルとして「関係のコンテクスト」を捉えた「コンテクストブランディング」の類型化が指向される。さらに、このなかで、特に「経験共同型コンテクストブランディング」について、事例も含めた具体的な考察がなされる。
  • 藤井 一郎
    2008 年 8 巻 p. 26-31
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    リレーションシップ・バンキングの恒久化における中小企業の資金調達について、サービス・マーケティングの考え方を資金調達に応用し、中小企業がいかに金融機関に対して情報を提供すべきかについてコミュニケーション理論をもとに理論構築を試みたものである。コミュニケーションは、将来のキャッシュフロー・返済原資が明らかな借入について行われる説得的コミュニケーションと、将来キャッシュフローが明確ではない借入について行われる共有のリアリティに別れるとする。主として本論文では、前者(将来のキャッシュフロー・返済原資が明らかな借入)について、消費者行動モデル(包括的意思決定モデル)をベースに理論的枠組みを検討する。
  • 田村 隆善
    2008 年 8 巻 p. 32-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    ジャストインタイム(JIT)生産方式における管理技術の1つに「目で見る管理」がある。これは,近年「見える化」として,経営管理全般の問題解決ツールとして脚光を浴びている。一方,サービス・サイエンスが新しい学問分野として提唱されている。これは,情報科学と社会科学の学問分野に関係し,サービスを科学と工学の対象とし,その生産性の革新を図り,加えてサービスにおける新しい価値創造を目指すもとされる。サービスを科学し工学の対象とする具体的取り組みとして,サービスの可視化がある。本研究では,工場管理における業務がサービス業務であり,その見える化が,工場管理におけるサービス・サイエンスの柱の一つとなることを論述する。
共同プロジェクト研究
  • 調査にみる効率的な連携推進のための諸条件
    牧浦 健二
    2008 年 8 巻 p. 41-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究では、未だ有効な効果測定方法が確立されていない中小企業における産学官連携と診断をテーマとし、主に中小製造企業における活性化方策の解明と産学官連携システム診断の確立に接近せんとしたものである。結論的に、前者の活性化諸方策としては、たとえば「学」などの専門知識、熱意および人間性(相性)を十分に生かすとともに、技術開発から試作までの迅速性を可能にし、社内技術者の動機付け並びに教育を前提とするプロジェクトマネジメントの効率的運営等の重要性が検証された。加えて産学官のみならず、業界にもよるが、組立メーカー等との産産連携の有用性が認められた。ただ後者については、産学官連携システム診断のための課題整理を行ったが、その確立は今後の研究に委ねたい。
自由論題
  • 山本 勝, 横山 淳一, 徳永 豊
    2008 年 8 巻 p. 49-54
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    「健康志民」づくりをめざして,住民並びに地域関係者の積極的な参画と主体性に基づいたユニークな健康づくりの考え方(システム思考),とらえ方(システム診断)並びに進め方(システムズ・アプローチ)等について考察する。とくに,優れた健康づくり資源を有する全国の温泉地の活性化をめざして,温泉地(温泉健康資源)を有効活用した「温泉総合健康づくり」のシステム化構想とそのシステム化推進課題・方策等についてシステム・マネジメントの立場から基本的考察並びに提言を行う。
  • 二瓶 喜博
    2008 年 8 巻 p. 55-60
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    商品化にあたって消費者の使い勝手が考慮されなければならない。消費者は、提供者の意図を超えて商品を使用する。そこに宿命的に生じる設計者の意図とニーズとのズレを、事前にどのように関知しデザインの中に取り込むかが重要である。ズレの存在(情報の粘着性)は、近年のユーザー・イノベーションやユーザーに直接聞いてしまうといった開発手法などに象徴的に示されている。「使用コンテキスト」という考え方に立って、ニーズの翻訳としての顧客機能の把握を心がけなければならない。また、複数ユーザーによって集合的に利用されるような商品やサービスの場合には、コンテキストの中から発見的に商品化の方向性を導き出す方法が有効である。
  • 南方 建明
    2008 年 8 巻 p. 61-66
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,使用権提供サービスの概念と特性,および使用権提供サービスを提供するサービス業に共通する経営課題を明らかにしたものである。具体的には,「人材派遣業」(ヒトの使用権),「レンタカー業」(モノの使用権),「消費者金融業」(カネの使用権),「レンタルCD業,音楽配信」(コンテンツ情報の使用権),「旅行業,オンライン宿泊予約」(仲介情報の使用権)を取り上げ,「サービスの総合化」「サービスの専門化」「サービス提供手段の革新」「提供資源の質の向上」という視点から考察した。
  • 八社会の事例における協調と分業
    佐藤 敏久
    2008 年 8 巻 p. 67-72
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    八社会のプライベート・ブランド開発の事例を通して,現在のブランド論の主流である,「ブランド認知」と「ブランド知識」の間に乖離を指摘する。そして,その乖離を埋める概念として「承認」を提示し,新しい視点を提供するとともに,流通におけるパワー・バランスの変化を考察することによって,なぜプライベート・ブランドが小売業の品揃えにおいて,割合を増加させることになったのかを明らかにする
  • スイッチングに及ぼす影響
    渡辺 伊津子
    2008 年 8 巻 p. 73-78
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    組織革新のプロセスは、何かを変えるというその必要性に「気づく」ことから始まる。この気づきのプロセスは「スイッチング(switching)」として捉えることができる。われわれ人間の持つ「ニ分岐思考」、いわば「あれかこれか」という思考がスイッチングを阻む要因となりうる。そこで本稿では、スイッチングの主体としての従業員に焦点を当て、従業員の仕事に対する二分岐思考がどのようなものであるかを明らかにし、そのうえでスイッチングの可能性を高めるための必要条件について考察する。
  • 青森県における保健・医療・福祉連携の評価を中心に
    永井 昌寛, 山本 勝, 横山 淳一
    2008 年 8 巻 p. 79-84
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    住民が健康で幸せな生活を送っていくためには,保健・医療・福祉サービスを適切に提供していくしくみである保健・医療・福祉包括ケアシステムを構築・運用していくことが重要である。そのためには,保健・医療・福祉包括ケアシステムの現状と推進状況を評価し,システム構築推進ならびに適切な運用に向けての改良を継続的に実施していく必要がある。そこで,本研究では,保健・医療・福祉包括ケアシステムの推進に向けて保健・医療・福祉サービス提供者を対象に実施した包括ケアシステムに関する意識実態調査結果をもとに,青森県の保健・医療・福祉包括ケアシステムの評価を行い,その推進方策について提言を行っている。
  • 横山 淳一, 山本 勝, 永井 昌寛
    2008 年 8 巻 p. 85-90
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    日本医師会は地域医療の中心的な役割を期待されている開業医が主な構成メンバーである医師会総合情報ネットワークの構築を進めている。本論文では,全国の郡市区医師会事務局の情報化実態状況を調査・分析することにより,医師会組織の情報化現状を把握し,その問題点を明らかにすることを目的としている。そのため,郡市区医師会事務局の情報化進展状況を,1)ハードウェア(インフラ),2)ヒューマンウェア(主に職員・役員),3)フィロソフィ(情報化の理念),4)ソフトウェア(制度や利用方法等)の4つの視点で捉えるために,平成19年1月に日本医師会・情報企画課の協力の下,実施したWebによる「情報化実態調査」で得られたデータを分析した。
  • 商店街組織と外部組織の協働活動に関する事例から
    菅原 浩信
    2008 年 8 巻 p. 91-96
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,商店街組織と外部組織の協働活動について分析を行った。その結果,(1)商店街組織は,外部組織との協働活動により,地域コミュニティからの信頼を獲得し,地域コミュニティにとって必要とされる存在になる,(2)地域コミュニティの人々が商店街組織に関わりをもつことによって,商店街組織が活性化され,大型店等との差別化を図ることが可能となる結果,商店街組織の存続可能性が出てくるという2点が明らかとなった。さらに,こうした協働活動を推進していくにあたり,商店街組織は,地域コミュニティを構成する様々な外部組織の間に,橋渡し型ソーシャル・キャピタルを形成していくことが必要であることも明らかとなった。
  • バランスト・スコアカードの視点から
    八島 雄士
    2008 年 8 巻 p. 97-102
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,公園文化を創造するために,いかにパークマネジメントを実施すべきかを検討している。諸外国における2つの事例について,WEB情報から人・組織,金,仕組み,自然資源について整理し,知識社会において必要とされる知識資本の有効活用という視点を踏まえて,戦略マップを作成している。ビジョンと関係者の束,戦略と行動,評価と改善をポイントとして,現状分析し,2つの事例とも,組織と個人という出発点の違いはあるけれども,ビジョンから戦略を策定し,具体的な行動に落とし込むことができているという結論を導きだした。また,わが国の現状を勘案したパークマネジメントの今後のあるべき姿として,真剣にビジョンと戦略を議論し,これを行動に移す必要があることを指摘した。
  • 逆流通システム構築を目指して
    奥澤 英亮
    2008 年 8 巻 p. 103-108
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,マーケティングによる循環型社会形成への貢献を考察しており,とくに逆流通システム構築を目指している。システム重視のマーケティングは,「4P から6P への拡張」,「STP」および「環境ラベリング」という名のもとに多角的にアプローチされうる。さらに,システム重視のマーケティングの"concept"を検討すると,主体(誰が行うか)は主に「製造企業」あるいは「回収や解体を担う中間業者」,標的(誰に対して)は「最終消費者」と「産業使用者」,客体(何を)は「消費財」と「産業財」,主体としての営利企業における目的(何のために)は「社会的目的との調和を図りながらの利潤獲得」,そしてその根拠(なぜ)は「個別主体および人間社会は自然環境なしには存続しえないから」,といったことが明確化される。
  • 金 弘錫
    2008 年 8 巻 p. 109-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本論文は経営診断の視点からロジスティクス・ネットワーク診断のあり方を明確にすることによって、企業のロジスティクス・ネットワークの構築方法を提案するのが目的である。研究の結果、競争力のあるロジスティクス・ネットワークを構築するためには、戦略的な視点からロジスティクス・ネットワークの役割を明確にしたうえ、ロジスティクス・ネットワークに影響を与える要因を分析し、顧客サービスを向上させることが大切であるとわかった。
  • 森村グループを例に
    後藤 時政, 井上 博進, 樋口 武尚
    2008 年 8 巻 p. 115-120
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
  • 横井 祐一
    2008 年 8 巻 p. 121-127
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    事件や事故などのトラブルに対する組織の対応行動の失敗や再発が繰り返される。危機管理,リスクマネジメント,コンプライアンスなどの関連分野は,これらの課題に解決策を与えてくれると期待されてきたが,これまでのところ,十分な成果を上げるには至っていない。本論では,従来,重要性についてあまり注目されてこなかった「初期対応」に焦点を当て,(1)戦略的対応と(2)合理的対応との二つに分類整理し,再構築した「戦略型初期対応」のコンセプトを提示し,これに必要となる要件について検討するとともに,この戦略型初期対応を活用した組織行動の改革を提案した。
  • 企業の社会的責任はどのように認識されているのか
    加藤 里美
    2008 年 8 巻 p. 128-133
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本論文では,大学生の企業選択に影響を与えている要因を検討した。特に,企業の社会的責任(CSR)が影響を与えているかどうかをみた。その結果,CSRを果たすことは大学生の企業選択において重要度や優先順位はそれほど高くなく,年収,安定度,福利厚生の重要度が高いことから「寄らば大樹の陰」といった価値観が根強く残存している。さらに,大学生のCSRに対する意識に関係している要因としては,次のことが示された。知的好奇心を満足させる仕事に重きをおき,環境や地域社会への貢献と倫理的ルールに従うことを重要と考えている大学生は,CSRへの意識が高い。また,従業員第一や知名度に関心の高い大学生は,CSRへの意識が低い。
  • 金 宇烈
    2008 年 8 巻 p. 134-140
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿は、日本経営診断学会における戦略診断の研究の動向をレビューし、戦略診断の原則、戦略目的・目標、そして推進力としての戦略力およびその構成因子といった戦略診断のシステム的な方法論を提起するとともに、診断の基準づくりに向けて序説的な考察を試みるものである。
  • 日産ウェイとは
    舘岡 康雄
    2008 年 8 巻 p. 141-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    日産自動車はなぜどのように復活できたのであろうか。その復活のエッセンスを纏めたものが日産ウェイである。日産自動車を持続的な成長に向かわせる行動指針として、日産ウェイは、現在日産自動車の人々が最も大切にしてものの一つである。しかしながら、日産の歴史を精査していくと、日産ウェイのコアメッセージは、実は日産の創業期の精神と一致していることが明らかになってきた。つまり、日産自動車が経営的危機を招いたのは、創業のころの精神と価値を忘れたことが大きいと言うこともできるのである。
  • 英国プロ・サッカークラブのスタジアム・マネジメント
    西崎 信男
    2008 年 8 巻 p. 145-151
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    経済発展に伴い、第3次産業がGDPで6割超を占める先進国の経済構造では、サービス業活性化が不可欠である。一大サービス産業である英国プロサッカーを見る。無形性等サービスの特質から、スタジアムはサービス提供システムで重要な役割を担う。有料TV発達等も加わり、サッカーは「スポーツからビジネスへ脱皮」した。そこでは自前のスタジアムが、差別的優位性を発揮している。クラブの売上高の中で、景気に左右されない入場料は経営の基盤である。入場者数を増大させるためには、ファンのクラブへの思い入れを毀損しないことである。そのためには、スタジアムを単なる「経営資源」ではなく、「地域共有資産」と位置づけることが重要である。
  • 八杉 哲
    2008 年 8 巻 p. 152-158
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    大学での研究活動から生まれた技術が起業家の手によって商品にまで高められるためには長い期間を必要とする。インキュベーション機能をもつ大学においては、こうした時間的なロスを可及的に減らし早期に創業を実現するためのサービス(「早期創業支援プログラム」)が提供されることは望ましい。そこで、まず、ビジネス・インキュベーションに関する先行研究を踏まえて、研究活動から生まれた技術をもとにした起業、およびサービス中心で技術を用いない起業との起業活動過程の違いを明らかにした結果、インキュベータは技術をもとにした起業に対して、シーズ開発のインフラや知財サポートなど多様なサービス提供が必要であることが判明した。次に、インキュベータが提供するサービスのなかで、「早期に創業を支援するプログラム」は、開発テーマの設定から量産化計画に至るまでを8段階に分け、早期に創業を実現するためのプログラムとして機能するように開発したプログラムであることを明らかにした。そして、このプログラムが実際の起業活動に有効か否かを評価した。
  • 小島 貢利
    2008 年 8 巻 p. 159-163
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,まず,日本経済の今後の推移について説明し,円が今後強くなる可能性は乏しいことを指摘する。さらに,外国為替証拠金取引(FX)の特徴に関して紹介し,投資家がFXにより気軽にグローバル投資を行うことができることを示す。また,株式市場とFXとの比較を行い,FXは,一年中,平日24時間取引可能であり,イベントリスクに対して,より迅速に対応可能な取引システムであることを説明する。最後に,円資産に固執することのリスクを,日本人は強く認識すべきであり,将来の円下落や国内低金利継続に対して,FXは有効な資産保護対策になりうることを主張する。
  • 山崎 康夫
    2008 年 8 巻 p. 164-170
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    工場における管理・間接部門の生産性向上における手段として、日常業務管理の"見える化"を挙げることができる。"見える化"とは、職場の主要業務(改善を含む)の計画と進捗状況および問題点と処置・対策がひと目でわかる、品質やコスト、納期に関する状況を見えるようにして目標の達成率を向上させる手法である。開発・設計、生産技術、生産管理、購買などの管理・間接部門においても"見える化"ができる仕組みづくりを推進しながら管理・改善活動を展開して、原価低減と収益増大を図っていく手法を論述する。
  • 酒井 理
    2008 年 8 巻 p. 171-177
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    サービスは,無形性、変動性といった特性を持つがゆえに事前にその成果についての評価を下すことが困難である。事前の評価あるいは合意形成によって利用リスクを低減させることが効果的なマーケティング手法になりうると考えられる。本稿は,サービス品質のギャップモデルを分析枠組みとして使用し,変動性という特性がもたらす問題を知覚品質と提供品質のギャップとして捉えなおし,ギャップモデルに品質変動という概念を組み入れて,サービス・レベル・アグリーメント,パフォーマンス契約,保証,補償などの諸制度を検討したものである。結果,これらの諸制度は知覚品質の変動に作用して,品質のギャップを埋める機能を果たすものであることが明らかとなった。
大学院生
  • モンゴルのケースを中心として
    ナサンデルゲル ツェレンダシ
    2008 年 8 巻 p. 178-183
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿では、移行経済における消費者のマーケティングに対する態度を図ることを目的として掲げ、モンゴルの消費者を対象に、調査を行い、それに基づいて、モンゴルにおける消費者のマーケティングに対する態度を検証した。具体的には、GaskiとEtzelの開発した消費者態度尺度を評価し、モンゴルにおける消費者のマーケティングに対する態度をマーケティングミックスの4つの要素に対する態度を図ることにより、計測し、その結果を同じ調査が実施された国々の結果と比べることを試みた。
  • 山口 隆久
    2008 年 8 巻 p. 184-190
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿では、顧客の一生涯の金融ニーズを継続的に取り込むことで収益が最大化されるリテール・バンキング・サービスにおいて、長期的に顧客維持を図るための有効な手段であるCRMに関する取組みを、94行の金融機関によるアンケート調査を行い考察した。導入した結果、膨大に蓄積された顧客データが十分に有効活用されていない、目に見えるほど収益貢献度が実感できない、といった問題が指摘され、CRMの本来の目的である顧客中心主義の実践と、それに基づく収益力向上に向けた取組みという点で課題を残している。今後は、自らの戦略上の重点分野に絞り込んで経営資源を投入して費用対効果を高め、有効性を確認しながら徐々に展開していくことが必要である。
  • 組織IQを用いた診断モデル
    小寺 崇之
    2008 年 8 巻 p. 191-196
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    同じ中小企業であっても,高い業績をあげる企業とそうでない企業が存在する。両者の違いは何に起因するのであろうか。このような問題意識にもとづき,業績に違いを及ぼす要因の1つとして企業で行われる意思決定を取り上げ,意思決定と業績との関係について調査・分析を行った。本研究では,組織IQの考え方にもとづき,組織で行われる意思決定を組織の持つ能力として捉えるものとし,高い業績に結びつく意思決定の特徴を明らかにすることで,中小企業における意思決定診断モデルを構築することを試みた。
  • 共同経営を行う中小製造業を対象に
    木下 良治
    2008 年 8 巻 p. 197-202
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,共同経営パターンという新しい分類方法によって共同経営企業の分類を行った。また,この分類結果,並びに経営陣の意思決定における特徴と共同経営企業の成長との関連性を探求する為,無作為に抽出した中小一般機械器具製造業2,000社を対象に調査を実施した。この調査から得られたデータを基に統計解析を行い,共同経営企業の成長に対して強い影響を与える要因に関して,興味深い幾つかの統計的に有意な傾向を導出することが出来た。
  • 角田 尚紀, 山本 勝
    2008 年 8 巻 p. 203-208
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    保健・医療・福祉分野では,各サービス提供者が連携し,地域住民に対して「必要な時,必要な人に,タイムリーかつ効率的に」サービスを提供する地域包括ケアシステムの構築が求められている。著者らは,それを効率よく推進する支援システムとして,包括ケア総合推進システムの理論構築を行ってきた。本稿ではその理論を実践するためのツールとして,「評価・改善活動支援システム」の開発を行う。とくに,システムづくりにおける重要な4本柱である理念・目的,人材・意識,運用・管理,機器・設備を設計方針として提言し,「自己評価分析支援システム」「情報共有支援システム」「交流支援システム」といった主要機能の開発を行う。
  • 知覚品質の可視化をめざして
    ジャムサランジャワ バーサンフー
    2008 年 8 巻 p. 209-214
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,Web上のクチコミデータによりブランド・エクイティの要素の一つである「知覚品質」の可視化を試み,ブランド・マネジメントにつなげることを目的とする。知覚品質は,「製品の基本機能」と「ブランド・アイデンティティ」の2つから構成されるとし,クチコミデータからこれらに相当する手掛り語句を抽出し,可視化を試みた。
  • 加納 寛之
    2008 年 8 巻 p. 215-220
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    企業における環境問題への配慮や取り組みが強く求められる今日において、物流事業者、とりわけトラック輸送事業者における取り組みは、一部の先進的な事業者を除き、全体としては立ち遅れている状況にある。事業者に取り組みを徹底させていくためには、単なる努力目標の呼びかけでは限界があり、事業内容や規模に応じた具体的な目標値の設定が求められる。また具体的な目標値を設定するためにはまず、各事業者の環境問題への取り組みの度合いを環境効率として測定・評価し、正しく認識していくことが必要である。そこで本研究ではトラック輸送事業者における環境効率について二つのデータベースによりそれぞれ測定を試み、その可能性を探った。
  • 曹 ジン, 近藤 高司, 鈴木 達夫
    2008 年 8 巻 p. 221-226
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    東アジア諸国では,企業で即戦力となる高度IT人材の育成戦略が企業や国の責任として確立している。日本におけるITの高度利活用は,欧米諸国に比べ遅れ気味である。いま日本でも産学官が連携し優秀なIT人材を育成する仕組みを作っている。しかし,IT産業改革をリードできる優秀な人材を多数確保する為にもより優れた教育体制を構築すべきである。本研究では,知識社会の先導役であるIT産業の競争力強化を図るため,さらにIT企業の技術者不足を解消するため,東アジア諸国のIT人材育成をわが国と比較検討した。
  • 富田 茂, 後藤 時政, 近藤 高司, 鈴木 達夫
    2008 年 8 巻 p. 227-232
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    日本では,団塊世代の技術者が技術伝承を若者に向けて行う必要性を2007年問題として重視してきた。それは大企業だけの問題ではなく,大企業を支える中小企業の問題である。本研究では,人伝えに頼る従来の技術伝承手法とデジタル技術を援用した技術伝承手法を比較し,中小企業が行うべき技術伝承の手法と内容について提案する。
  • 富田 茂, 後藤 時政, 近藤 高司, 鈴木 達夫
    2008 年 8 巻 p. 233-238
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    中小企業では,大企業との3次元CADデータのやり取りが活発になる中,それを操作する技術者が多人数必要となった。しかしながら,人材不足による技術者採用難が深刻化している。また,企業経営において良い人材を採用することは必須課題であるが,採用段階で人物の内在能力(3次元CAD作業にむいているか)の程度を見極めることは難しく,採用後の効果的な技術者育成のあり方を各社が模索している状況にある。本研究では,3次元CADを取り扱う技術者の採用と育成について効果的に,かつ短期間で稼動させる事例について報告し,3次元CAD技術者の採用,教育から稼動までの効果的な手法について論じた。
  • 市民対話を媒介する「道具」の変化を例として
    東郷 寛
    2008 年 8 巻 p. 239-245
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿は、市民間の対話を媒介する人工物を「道具」として捉え、「道具」の変化が、市民対話と市民活動にどのような影響を与えるのかについて分析するものである。そこで、本稿は、熊本県八代市が市民に提供している二つの「道具」を事例としてとりあげる。第一に、分析枠組みである活動理論の先行研究をレビューしたうえで、それぞれの「道具」に媒介された「市民対話」の活動システムを分析する。第二に、両活動システムの分析を通して、市民対話を媒介する「道具」の変化が、市民対話やその成果である市民活動や知識創造に対して、どのような変化をもたらすのかについて検討する。最後に、本研究から得られたインプリケーションと今後の研究課題を提示する。
  • 経営診断の視点による新たな評価尺度の研究
    村上 真里
    2008 年 8 巻 p. 246-251
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/06/08
    ジャーナル フリー
    本稿では、顧客生涯価値という概念の操作化を通じ、協同組織金融機関に対するマーケティング・アプローチの有効性を検証した。さらに、経営診断の視点から、店舗評価の新しい尺度について考察し、検証に用いた顧客生涯価値モデルの応用を試みた。その結果、ここでのマーケティング・アプローチに、一定水準の適合性が認められたほか、モデルを応用した店舗の傾向分析では、顧客生涯価値をめぐる潜在的な可能性を抽出することができた。
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