音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
21 巻
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原著論文
  • 鷲野 彰子
    原稿種別: 原著論文
    2023 年21 巻 p. 1-20
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2026/04/13
    ジャーナル フリー
    ヴィルヘルム・バックハウス(Wilhelm Backhaus, 1884―1969)は生涯にわたって精力的に演奏活動を行ったが、彼の複数の録音に演奏時に即興で付けられた前奏演奏が遺されている。本稿では、彼の遺した16例の前奏演奏実践例を分析することで、それらが演奏会においてどのような役割を担っているかを分析した。 実践例の多くが公開演奏におけるものであり、多くはアンコールの各曲目の前に挿入された。彼の前奏演奏は1小節から5小節程度と短く、フレーズを伴う小品的なタイプとアルペジオを重ねるタイプに大別でき、指慣らしのための練習曲のタイプのものは一つも含まれない。カデンツを伴うものは少なく、前奏演奏の最終部分の多くは属和音で締め括られ、前曲と関連するものは少なく、後続曲と関連したモチーフを用いた前奏が約1/3を占める。 彼の前奏演奏は演奏会を有機的に構成するツールであったと考えられる。またアンコール時の前奏演奏は「次に何が演奏されるか」という「謎かけ」の時間となったことだろう。彼の演奏する前奏演奏は、琴線に触れるような繊細さや息をのむような美しさを湛えた「作品」としての魅力ももつ。
評論論文
  • 歴史的社会的背景と音楽構造上の特徴を視点として
    小笠原 真也, 宮田 知絵
    原稿種別: 評論論文
    2023 年21 巻 p. 21-42
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2026/04/13
    ジャーナル フリー
    本居長世による童謡《十五夜お月さん》と、江戸期にルーツを持つわらべ唄《うさぎ》には、深い関連性が見いだせる。標題である「十五夜」とそれに関する事柄については、国文学や民族学などの分野で多くの知見が発表されてきたが、音楽表現学の分野では、その知見を共有するには至っていない。そこでそれらの知見について、原典に遡り確認作業を行う。そして「十五夜お月とは/観月文化の開始/時代による変化/月とうさぎの関係性/祈りの対象としての月」を整理する。次に野口雨情にとっての「月」について論考する。それらを通じて、作品が発表された当時の人々の受け止め方を考察し、本曲歌唱表現への新たな視点を提示する。次に本居の童謡作曲に際しての理念は、自身が記した文言の中にのみ残されている。その文言と楽譜を照合し、音楽構造の考察を加え、その理念を譜例により可視化し確認する。また他作品の楽譜とも照合し、本居の童謡作曲上の特徴を明確にして、作品演奏上の新たな視点を示す。
研究報告
  • 創作の背景と不採用曲〈雨傘〉(未発表)に関する報告
    新海 節, 三沢 大樹
    原稿種別: 研究報告
    2023 年21 巻 p. 43-54
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2026/04/13
    ジャーナル フリー
    本稿では、中田喜直作曲、寺山修司作詞の歌曲集《二人のモノローグによる歌曲集 木の匙》に関して、その成立の経緯と未発表曲〈雨傘〉が不採用となった経緯の解明に資する資料の提示を主な目的とした。入手可能な活字資料等を手がかりに全構成曲を概観したところ、調選択の観点では円環構造の成立は判断できないものの、詩の内容の観点では円環性が確認できることや、最終曲においてモティーフの再現が見られる点から、連作歌曲としての連関性を確認するに至った。また、信頼の置ける情報源として、近親者である中田幸子氏にインタビュー調査を実施し、当時の中田の様相として、《木の匙》の創作には相当の年月を要したこと、中田が寺山の詩を好意的に捉えていたこと、構成曲の選定や曲順の検討が発表直前まで行われたことを確認した。そして未発表曲〈雨傘〉の存在と、この楽曲を含んだ直前構想と発表された決定稿の構成曲や曲順の違いを提示し、その比較では連作歌曲としての詩の文学的な結末が全く異なるものになることを報告した。
  • クラシック奏者のロングトーンに共通する特徴について
    柳下 柚子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年21 巻 p. 55-64
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2026/04/13
    ジャーナル フリー
    サクソフォーンのアンブシュア指導では、下唇はリードのクッションとして機能すべきであるという共通認識がある。しかし、下顎からリードにどの程度の圧力をかけるのが望ましいかについて目安となる具体的な数値は示されていなかった。サクソフォーン熟達者の口唇圧に共通する特徴を明らかにするため、ピエゾ抵抗圧力センサを用いて吹奏時の口唇圧の推移を測定すると、ロングトーンのコア部で一定の圧力を維持する特徴があった。アタック部では発音時に圧力が瞬間的に強くなる奏者が多かった。音域や音量が変化すると圧力の強さが変化する奏者が多かったが、低音で多くの奏者の圧力が低下することを除いて過半数に見受けられる傾向はなかった。いずれの場合でもコア部で一定の圧力を維持していることは共通しており、下顎からの圧力を安定してコントロールする演奏技術が重要である。今後測定データが蓄積されれば、熟達者の演奏手法を元にした機械学習システムの構築など、本研究をより教育的に活用していくことが期待できる。
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