本稿の目的は,1941(昭和16)年から1945(昭和20)年にかけての香川師範学校男子部における聴覚訓練の実践を明らかにすることである。判明した点は以下の通りである。
1) 音楽科教員の金光武義氏は,1941(昭和16)年6月に実施された「国民学校芸能科音楽講習」に参加した。その講習で「聴覚訓練」を担当した講師は,下総皖一,城多又兵衛であった。城多は,資料として『ウタノホン上 教師用』(1941)や「東京音楽学校監修聴覚訓練用レコード」を用い,国民学校第1学年の聴覚訓練の方法について解説した。
2) 香川師範学校男子部においては「ハホト・ハヘイ・ロニト」の主要三和音が中心に取り上げられ,『ウタノホン上 教師用』の記載事項に沿った内容が指導された。また,教育実習における「芸能科音楽」の授業においても聴覚訓練が実施されていた。 その他,香川師範学校男子部保護者会における「音楽」の授業参観においても聴覚訓練が公開され,プロバガンダ的に扱われていた。
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