音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
5 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • ベートーヴェンの言葉「偉大な鍵盤楽器奏者は偉大な作曲家であった」の意味するもの
    小野 亮祐
    原稿種別: 原著論文
    2007 年 5 巻 p. 1-10
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2020/05/25
    ジャーナル フリー

     本研究はベートーヴェン L.v.Beethoven が 1814 年に述べたと伝えられている「偉大な鍵盤楽器奏者は偉大な作曲家であった」という言葉を出発点に、18 世紀から 19 世紀初頭の鍵盤楽器教授のあり方を明らかにする試みである。その 手がかりとして、当時出版された鍵盤楽器教本並びに 18 世紀前半に多くの弟子に音楽教授を施したバッハ J.S.Bach の教授法を検討した。その結果、18 世紀中頃までの鍵盤楽器教授は、鍵盤楽器奏法と並んで通奏低音を必ず教え、その延長上で即興演奏・作曲法を教えるという流れになっていたことを明らかにした。つまり、少なくとも 18 世紀中頃までは鍵盤楽器奏者が作曲家となるような鍵盤楽器教授のシステムだったのである。しかし、このような鍵盤楽器教授システムは 18 世紀の中頃以降衰退し、それに代わってより演奏技術の教授に重点を置くようになった。ベートーヴェンの言葉の背景にはこのような音楽教授上の事情があったものと思われる。

  • 演奏解釈の一側面
    小畑 郁男
    原稿種別: 原著論文
    2007 年 5 巻 p. 11-22
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2020/05/25
    ジャーナル フリー

     本論は、古典・ロマン派の様式を中心とする、五線記譜法で記譜された音楽を対象とし、拍節構造の階層性と音楽表現との関係の一端を明らかにすることによって、リズムという側面から、創作・演奏表現の深化に寄与することを目的としている。

     まず、「アルシス、テージス」の関係やマリー(Marie, Jean Étienne)のモデルなどの、音楽表現の表象として捉えられる「リズムの型」を拍節構造に組み込み、音楽的持続を「拍子の型」として分類する新たなリズムモデルを提案し、このモデルによって音楽現象の変化を拍節構造として捉えることができることを例証する。しかしながら、ここで捉えられる拍節構造は、一義的に決定できるような性質のものではなく、階層性を持つ。拍節構造の階層性という視点に立ち、音楽表現の決定のプロセスである演奏解釈を、演奏者による階層の選択として位置づけ、演奏解釈の多様な可能性に言及していく。

  • 木下 千代
    原稿種別: 評論論文
    2007 年 5 巻 p. 33-44
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2020/05/25
    ジャーナル フリー

    ショパンの「24 の前奏曲」op.28 は、ショパンの作品にはめずらしい小品の集まった曲である。ショパンが生前に 24 曲つづけて演奏したという記録はないが、今日ではそうされるのが常となっている。長短調が交互に、しかもはげしい対比をもって入れ替わるこの曲は、演奏者になみなみならぬ構成力と集中力を強いるものである。筆者も演奏に際してどのようにまとめたらよいかを考えるうちに、平行調の 2 曲ずつに書法上の関連があり 2 曲が対をなしているのではないかということに気づいた。また平行長短調だけでなく 5 度上の調に移行する時も、音型などになんらかの関連性をもたせていることが多い。本小論では、ショパンの書法および記譜上の小さなサインから、関係長短調および全体がどのように関連付けられているかを読み取り解明する。またそのことから導かれる演奏上の留意点を述べつつ、24 曲をどのように構成するかを考察する。

  • 象徴主義の視点からその関係を読み解く
    安田 香
    原稿種別: 評論論文
    2007 年 5 巻 p. 45-54
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2020/05/25
    ジャーナル フリー

     ドビュッシーは 1889 年パリ万博でガムランの生演奏に触れ、強い関心を抱いた。彼は先ず、演奏されたある印象的フレーズを用いて 3 作品を書く(これらの作品の一部は、後日作曲者自身の反省の対象になった)。次いで、ガムラン的音組織、 音色、低音打楽器の特性、ヘテロフォニーなどを諸作品に取り入れ、ついにピアノ独奏曲「パゴダ」Pagodes(『版画』Estamp 第 1 曲)にそれらを結集させる。以降、ガムランから学んだ技法は、次第にドビュッシー独自の語法になっていく。本稿は、上述の過程を、作曲家が創作を展開した当時の芸術思潮に照らし論考する試みである。

  • 近代西洋音楽との比較を通して
    齊藤 武
    原稿種別: 評論論文
    2007 年 5 巻 p. 55-68
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2020/05/25
    ジャーナル フリー

     ロック音楽はまだ 50 年ほどの歴史しか持っていない。しかしその成立過程を辿ってみると、現代史をそのまま映す鏡のような存在であることがわかる。1950 年代アメリカで生まれたロック音楽は、凄まじい勢いで世界に広がった。現在も世界中に溢れているポピュラー音楽の原型がここにあるといっても過言ではない。それは 18 世紀後半、近代西洋音楽の原型がウィーンで形成されたことと多くの類似点を持つ。50 年代のアメリカ音楽の影響から 60 年代イギリスでビートルズがロック・ バンドの原型を確立し、ロック音楽が急速に発展した 70 年代にあるピークを迎えたのではないか。なぜならこの時期に、レッド・ツェッペリンをはじめとする最も内容の充実したものが生み出され、またそれらに対して破壊を意味するパンク・ロックが急速に生まれ去っていったからである。それは 20 世紀前半までに近代西洋音楽が辿った歴史と類似する現象であることに気づく。このサイクルを比較検証することで、音楽創造の盛衰の循環と歴史性を確認し、現代における音楽創造の在り方を考える一助にしたい。

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