本研究は,高等教育の中で評価の果たすべき役割について,考察することを目的とするものである.結果と考察の多くは評価法の改革案と学習に関する学生の意識調査に基づいている.このため実際の学習と評価がどのような状況にあるかを知るのに役立つと思われる.調査結果は,現在の大学における教育と評価がさまざまな問題を抱えていることを示している.たとえば,「教師の教え方を学生が評価する」という案は学生に非常に支持されている.このことは,学生の大部分が大学での講義に不満を持っていることを示している.同時に,彼らは,評価結果に不信感を持ち,評価の基準がはっきりしないと感じている.評価への不信は,テストの信頼性や妥当性の問題と関係がある.信頼性や妥当性の低いテストを行う場合には,さまざまな問題が生じるし,評価は形成的評価としてでなく,主として総括的評価として行われてしまっている.このような事情から,われわれは評価の持つ情報を十分には教授法などの改善のために利用できない.大学入試は今日まで社会的な人材の選抜機関の役割を演じてきており,深刻さを加えている.一般的に言って,日本では,大学における評価の結果は社会的にほどんどかえりみられていない。もし大学での評価がより重要な役割を果たすことができれば,入学試験の競争は落ち着くであろう.このような状況下で考えるに,入試問題の解決のために,高等教育機関は,機関での評価を自らも重視し,社会的にも評価結果が重視されるように努力しなければならない.各教育機関は,教育内容の改善につながるように,高等教育での教育評価を改革する必要があり,その本来の社会的機能を果たさねばならず,この問題に関しては,今後さらに研究を続ける必要がある.
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