マーケティング史研究
Online ISSN : 2436-8342
2 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集論文
  • ―19世紀末著作に見る商業学形成の準備状況―
    薄井 和夫
    2023 年 2 巻 1 号 p. 3-23
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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     本稿は,1900年代に成立する日本の商業学を準備した要素として,19世紀末における高等商業教育運動とその教育論,海外の商業史と商業経済学の翻訳書,わが国執筆者による商業史と商業経済学の内容を分析する。高等商業教育論は,実用教育への要請と学術研究を志向する議論とがあったが,後者が前者を排斥する傾向があった。だが,経営学も商業学も成立していなかったこの時期において,実用教育を排斥する学術研究の中味は漠然としたもので,またその「商業教育」は「商業」の枠を超えて経営者教育全般を意味していた。翻訳書では,まずイギリスの執筆者たちの商業史が翻訳された。それは世界貿易史であり,貿易を担う人材へ基礎知識を提供すると同時に,自由貿易こそが国を富ませるという社会経済的主張の裏付けであった。一方,商業経済学は,1890年代にドイツ歴史学派の影響が現れる中でドイツ人の商業経済学が翻訳され,20世紀初頭のわが国の議論に一定の影響を及ぼした。日本人執筆者たちによる著作では,1890年代に日本商業史が外国貿易史および国内商業史として成立した。一方,商業経済学は玉石混交であったが,「純粋の商業」と「補助商業」の区別や,商業経営論の萌芽などが確認でき,1900年代における商業学の成立を準備していた。

  • ―市場調査を基盤とした実務界への貢献と大学教育―
    石川 和男
    2023 年 2 巻 1 号 p. 24-33
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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     本稿は,わが国初の「マーケティング」とタイトルされた著書を刊行した上岡一嘉の研究について取り上げた。彼は学生時代から外国語習得に取り組み,社会に出てからは市場調査手法を学ぶとともに,ミクロマーケティング研究に取り組んだ。彼は多くの研究業績を有するが,現在のマーケティング史研究ではそれらについてはほとんどふれられることがない。しかし,彼がわが国におけるミクロマーケティング研究の開拓者として,今日のマーケティング研究における確固たる礎を築いたことは間違いない。また彼は研究者としてだけではなく,実務界において市場調査の普及に努めた。さらに大学教員や経営者として,学生たちには海外に目を向け,努力することの大切さを常に訴え続けた。そこで,彼の業績をあらためて辿るとともに,そこにおいて学ぶことの豊富さを取り上げ,わが国におけるマーケティングの古典ともいえるそれらにあらためて光を当てた。

  • 田村 正紀
    2023 年 2 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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  • 石井 淳蔵
    2023 年 2 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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一般投稿
  • ―マネジリアルな視点からの整合的解釈に向けて―
    松尾 洋治, 余 漢燮, 菊池 一夫
    2023 年 2 巻 1 号 p. 51-67
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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     オルダーソンは生涯,膨大な数の研究を残してきたけれども,彼の代表的な著作は間違いなく『マーケティング行動と経営者行為』(1957)であり,1950年代以降の彼の研究の全容がそこに含まれている。本稿の目的は,日本のオルダーソン研究を基礎として,その書の代替的な読み方を提示することである。より具体的には,荒川(1965a)の視点転換説を批判した,阿部(1971)と光澤(1981)を基礎として,マネジリアルな視点からオルダーソンの理論を再検討し,その解釈にかんする新たな仮説を提示することである。本稿の考察によって,オルダーソン(1957)はマネジリアル・マーケティングの書として優れた体系性と整合性を有することが明らかになる。この点を理解すれば,その著作はまさに戦後のマーケティング研究の源流であり,今後のマーケティング研究にとって実り豊かな示唆が数多く含まれていることがわかるであろう。

  • 木村 圭吾
    2023 年 2 巻 1 号 p. 68-86
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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     本研究は,理論的知識の評価基準を吟味するものである。この理論的知識の評価基準は,学説の整序や理論の修正に大きな影響を与えるものである。先行研究では,理論的知識の成長を測るより良い尺度として,問題の深さという評価基準が提示されている。しかし,問題の深さがどういうものであるかということについて,先行研究では明らかにされていない。それゆえ,問題の深さという尺度が社会科学の理論に適用できるかどうかということも吟味されていない。そこで,本研究では,問題の深さとは何かという問い,問題の深さという評価基準が社会科学の理論に適用できるのか否かという問いに取り組むこととした。このことを通じて本研究で明らかになったのは,より深い問題が先行の理論に比べてより深い理論が抱えることになった矛盾であるということ,問題の深さという評価基準が社会科学の理論に適用できないということである。社会科学の理論を適切に評価するための基準としてはどのような基準を用いればよいのか。本研究では,実在論的意味での必要十分条件という観念によって統制された理論のテスト可能性という尺度を提示した。

書評・書籍紹介
  • 2023 年 2 巻 1 号 p. 87-108
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    石原武政『戦時統制下の小売業と国民生活』碩学舎,2022年.(書評者:渡辺 達朗)

    岡野純司・魏鐘振編著,河田賢一・神保充弘・為廣吉弘・濵満久著『流通政策の基礎』五絃舎,2022年.(書評者:大崎 恒次)

    鳥羽達郎・川端庸子・佐々木保幸編著『日系小売企業の国際展開―日本型業態の挑戦―』中央経済社,2022年.(書評者:河田 賢一)

    満薗 勇『日本流通史―小売業の近代史―』有斐閣,2021年.(書評者:東 伸一)

    オリガ・ホメンコ『国境を超えたウクライナ人』群像社,2022年.(紹介者:戸田 裕美子)

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