マーケティング史研究
Online ISSN : 2436-8342
3 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集論文
  • ―独自のマーケティング理論創出を目指して―
    堀越 比呂志
    2024 年 3 巻 2 号 p. 100-126
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

     本論文では,マーケティングの理論的研究に多大な影響を与えてきた,対象と方法に関するメタレベルでの議論の展開を示し,理論創出における問題点とその解決に言及していく。2節でマーケティング研究における理論的研究の役割が確認された後,3節ではアメリカにおけるマーケティングの理論的研究とメタ研究の進展の概略が示される。4節では,その展開における方法及び対象における問題点が指摘され,その解決が示される。5節では,その解決の方向で,独自のマーケティング理論創出の道が考察される。

  • ―ゴードン・ブレイン・ハンコックを回想して―
    タダジェフスキー マーク, 薄井 和夫
    2024 年 3 巻 2 号 p. 127-149
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

     マーケティングと広告の専門家たちは,幸福をもたらすはずである消費文化を推進してきた(Markin and Narayana 1976)。だが,その最終的な結果は必ずしも満足なものとは限らない(Monieson 1975)。不満(Kilbourne 1999)や不幸(Torres 2020)に陥ることもある。初期のマーケティング批評家たちのなかで際立った存在として,病的な雰囲気と歪んだ主体関係の創出に広告産業が果たす役割を強調したゴードン・ブレイン・ハンコックがいた。ハンコックはアフリカ系アメリカ人の広告批評家である。本稿は,ハンコックの経歴,彼が対処しようとした文化的環境,当時流布していた広告への批判,そしてこれらの問題に対するハンコックの貢献について概観する。本稿は,日常生活のなかで消費者を方向づけるマクロ,メゾ・マクロ,ミクロ・レベルでの現象である雰囲気を,実務家たちがどのように導き,研究者たちがどのように理論化しようとしたのかを含め,諸文献を貫く想定を明らかにすることに注意を払う。

資料
  • ―誰がAIDAモデルを発明・定式化したのか?―
    岩本 明憲
    2024 年 3 巻 2 号 p. 150-166
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    研究目的:ほとんどすべての広告研究者は,1925年のEdward K. Strong Jr. の研究に基づいて,1898年にE. St. Elmo LewisがAIDAを発明したと信じてきた。しかし,これは不正確で不十分な歴史研究による大きな誤解である。本稿では,先行研究のレビューと本研究で新たに発見された何十もの文献を参照することにより,AIDAモデルの起源を探究することを目的とする。

    デザインと方法:本研究は,これまで知られていなかったものも含め,広範な一次資料を網羅する学説史研究の手法に基づいている。AIDAの起源に関するいくつかのデジタル・アーカイブやウェブサイトにアクセスし,文献を検索した。

    所見:E. St. Elmo LewisがAIDAを発明し定式化したという支配的仮説は,裏付けがないか極めて脆弱な証拠に基づいている。1898年前後にLewisがAIDAの原型を発明したことを示す証拠は存在しない。

    研究の意味と限界:Arthur Frederick Sheldonは,Lewisや他の研究者よりもずっと早く,第4の言葉の重要性とAIDAの理論化の必要性を認識していた。したがって(Lewisではなく)SheldonこそがAIDAの創始者であるとみなすことができる。Frank H. DukesmithとArthur Frederick SheldonはAIDAの定式化に決定的な貢献をした。

    独創性と価値:本研究の重大な発見は,先行研究においてほとんど知られてこなかった内容を多く含むものであり,代表的な広告理論のより正確な歴史を提供するものである。正確な歴史は学問の適切な発展のために不可欠であり,広告理論も例外ではない。

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