マーケティング史研究
Online ISSN : 2436-8342
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特集論文
  • ―セントラルグループの発展史―
    遠藤 元
    2025 年 4 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

     セントラルグループはタイ小売業史で最も早期から近代小売業を開始し,現在では中核事業の百貨店をはじめ,小売・流通業のさまざまな新業態を手掛ける「フルセット型小売・流通企業グループ」を形成している。本稿は,セントラルグループの事業史を辿りながら,その実態と特徴を明らかにした。フルセット型を志向した背景には多様な所得階層が織りなすモザイク状の消費構造という条件下で,分節化された市場を網羅的に掌握しようという動機づけがあり,またそれを実現できたのは創業者一族の豊富な人材があったからである。しかし,さまざまな小売・流通業態をフルセットで揃えようとすれば,異なる市場セグメントを網羅できるという点で相補効果は期待できても相乗効果は難しく,むしろ,事業間で齟齬が生じる可能性がある。今後は,創業者一族と一族外から招聘された専門経営者の間のバランスの上に成り立つ現在の経営組織の持続可能性も重要な論点になる。

  • ―その誕生から外資系進出後までの段階を中心に―
    鍾 淑玲
    2025 年 4 巻 1 号 p. 16-35
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は,台湾におけるスーパーマーケット(食品スーパー)の発展プロセスを歴史的視点から段階的に考察し,その特徴と影響要因を明らかにするものである。まず,1963年から1980年代前半にかけての導入期を三つの段階に分けて分析し,次に1980年代後半の外資系企業の進出による発展期を日系および香港系企業の事例に分けて考察する。また,2000年以降に台湾市場に残った日系と香港系スーパーマーケットの実態と現状を明らかにする。台湾スーパーマーケットの形成と発展には,商業資本や政府による流通近代化,食品メーカーの垂直統合,農産物卸業や商業資本の多角化,外資系企業の進出,現地企業によるイノベーションといった多様な要因が絡み合っている。さらに,経済水準と教育水準の向上によるスーパーマーケット利用人口の増加や伝統市場の減少も重要な背景である。これらの要素が複雑に交錯する中で,台湾スーパーマーケットの発展が成し遂げられたことを明らかにした。

  • 白 貞壬
    2025 年 4 巻 1 号 p. 36-46
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿では,韓国の市場特性を等閑視した海外市場戦略の限界が浮き彫りになっている。韓国市場は,消費者の買い物パターンや商慣行等が欧米市場と異なり,欧米小売企業にとって適応しにくい環境であった。そのため,欧米から持ち込まれたハイパーマーケット業態が韓国の市場特性や消費者ニーズに適合できなかった。なぜ,韓国消費者やベンダーが地元の小売企業からの購買や取引を優先し,外国資本に対して不信感を抱いたのか。2010年代に入ると,「大型マート」の出店や営業時間の規制が強化され,ハイパーマーケットを主業態として入ってきた外国企業の成長をさらに阻害した。それに対して,地元企業は流通チャネルにおける優位性を活かしながら,消費者から支持を得られた。韓国の地元企業は,自国市場の高い理解力を基に,独自の業態を確立し,成功を収めた。一方で,欧米小売企業は,韓国市場における消費者行動,規制,流通構造への適応を欠いたため,最終的に撤退を余儀なくされた。

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