Journal of Mammalian Ova Research
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25 巻, 4 号
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特集:選択的単一胚移植(第II部)
  • ―第II部:単一胚移植は胚・出生児にどのような影響を与えるか―
    久慈 直昭
    原稿種別: 特集:選択的単一胚移植
    2008 年 25 巻 4 号 p. 205
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
  • 三浦 清徳, 増崎 英明
    原稿種別: 特集:選択的単一胚移植
    2008 年 25 巻 4 号 p. 206-212
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    Assisted Reproductive Technology(ART)による妊娠のなかには,卵性診断を行うことでキメラを伴う症例が見出され,ARTは単に多胎率を上昇させるだけでなく,キメラに伴う問題も内包していると指摘されている.二卵性一絨毛膜双胎では血液キメラによる輸血あるいは移植医療への影響が指摘され,また血液キメラの状態はおそらく生涯継続すると考えられるため,心理的な負担を考慮した生殖遺伝カウンセリングが必要である.ARTでは複数の受精卵が偶然にきわめて接近した位置に存在した可能性が考えられ,胚発生中に受精胚どうしの融合を生じてキメラの危険性が上昇すると思われる.ARTに伴うキメラの危険性に関して,少なくとも胚移植後に複数の受精胚が融合して生じるキメラの可能性は単一胚移植により回避しうると考えられる.しかし,既に胚移植前に受精胚がキメラを生じている場合には,たとえ移植胚を1個に制限してもキメラの個体は生じうる.ARTに伴うキメラの危険性を把握し安全な対策を見出すためには児の長期観察と共に分子遺伝学的解析を用いた診断が重要であろう.
  • 和泉 俊一郎, 蔡 立義, 鈴木 隆弘, 中村 絵里, 呉屋 憲一
    原稿種別: 特集:選択的単一胚移植
    2008 年 25 巻 4 号 p. 213-220
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    生殖補助技術(ART)が世界中に普及し一般的な不妊治療法として定着したが,ARTによる妊娠の母体・胎児の周産期リスク,出生後の児の成育状況ついては,常に懸念されてきた.また,多胎妊娠を避けるため,受精卵を1個のみ移植する方法(選択的単一胚移植法:elective Single Embryo Transfer;以下eSET)が,北ヨーロッパから広まり世界的な傾向になっている.本稿では,ARTさらにeSETで生まれた児の予後については,どこまでのエビデンスが提示できるかについてレビューし,考察した.ARTによる単胎妊娠では自然妊娠と比べて周産期リスクは高いとする報告が多いが,ARTによる双胎は,自然妊娠における双胎に比べて児の周産期リスクは低い.双胎の周産期リスクは膜性に依存するが,さらに胎盤への臍帯刺入位置異常が重要である.eSETは時代の要請である,正しい対照群との検討を積み重ねていく努力をしたい.
  • 久須美 真紀, 中林 一彦, 秦 健一郎
    原稿種別: 特集:選択的単一胚移植
    2008 年 25 巻 4 号 p. 221-230
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    胚を長期間体外培養する技術は,生殖補助医療に様々な恩恵をもたらした一方で,生理的環境を完全に再構成した培養系の確立は困難であり,人工的な環境が初期胚に与える潜在的影響についての関心が高まっている.DNAメチル化等のエピジェネティックな修飾は,遺伝子配列の変化を伴わずに遺伝子機能を変化させ,発生過程のゲノム機能を動的に制御する.実際に,ある種の先天奇形症候群はDNAメチル化の異常(エピゲノム変異)が原因となることが知られている.DNAメチル化は可逆的な化学的修飾であるため,子宮内や体外培養で胚が特殊な環境に曝されると,エピゲノム変異が起こりうることが実験的には示されている.また,生殖補助医療で出生した児に,エピゲノム変異を伴う先天奇形症候群の発症率が高い可能性を指摘する報告もある.エピゲノム変異は胚盤胞期までの発生や形態に影響を与えないため,移植前に異常胚を形態的に同定することは困難であると予想される.今後,より詳細な疫学的および分子生物学的解析により,これらの因果関係の有無の解明が待たれる.
特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
  • 久慈 直昭
    原稿種別: 特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
    2008 年 25 巻 4 号 p. 231
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
  • 年森 清隆, 伊藤 千鶴
    原稿種別: 特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
    2008 年 25 巻 4 号 p. 232-239
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    精子頭部と尾部は機能ドメインをもつ.ドメイン内の機能分子は微細構造の構築と連動して配備されるため,精子形態は妊孕性に深く関係する.精子頭部は,先体反応に関わる前先体,膜融合に関わる後先体(赤道部)そして卵活性に関わる先体後部に分けられる.ヒト精子は核内に多彩な空胞をもつ.空胞は,最近開発されたIMSI(intracytoplasmic morphologically selected sperm injection)システムの高分解能光学顕微鏡で容易に観察される.しかし,空胞内部は観察できないため,電子顕微鏡やDNA損傷テスト等の解析が必要となる.頚部は中心体を卵子内に運搬し,受精卵内で星状体を形成し,微小管を発生する.中間部と主部の形成異常は運動障害を起こす.本稿は,遺伝子ノックアウト動物に見られるフェノタイプを示しながら,精子微細構造の正常性/異常性と妊孕性との関係を考察する.
  • 渡邉 誠二, 水沼 英樹, 藤井 俊策, 福井 淳史, 木村 秀崇, 福原 理恵, 中村 理果, 山田 健市
    原稿種別: 特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
    2008 年 25 巻 4 号 p. 240-245
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    強拡大下で精子頭部の空胞様構造の有無を確認して顕微授精を行う手法(Intracytoplasmic Morphologically selected Sperm Injection:IMSI)により流産率の抑制が試みられている.この空胞様構造と染色体異常の関連性について明らかにするため過去の精子染色体研究とIMSIの報告を比較すると共に,オリンパス精子選別・顕微授精システム(UPlanSApo100×/1.40)を用いて空胞精子の観察と染色体アッセイを行った.その結果,IMSIによる流産率の抑制効果の中には400倍程度でも判別可能な異常精子が排除されたことによる異常胚生成リスクの低下分が包含されている可能性が高いと予想された.また,1,000倍にて選別した大型の空胞様構造を有する異常精子の染色体異常率は正常精子の場合と有意差はなく,大型の空胞様構造と精子染色体異常の関連性は認められなかった.したがって,Bartoovら1)の提唱したIMSIによる流産率の抑制効果が精子DNAフラグメンテーションと関連するとの仮説を支持しなかった.
  • 吉田 淳, 田中 美穂, 向田 哲規
    原稿種別: 特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
    2008 年 25 巻 4 号 p. 246-253
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    Conventional IVFでは,精子はnatural selectionを経て卵子の中に入るが,ICSIではエンブリオロジストの目によって精子が選ばれる.受精卵(胚)の質にもっとも大きな影響を与えるのはその基本となる卵と精子の質であるため,ICSIではより良い精子を選別する必要がある.精子のサイズは胚や卵と比べて20分の1しかないにもかかわらず,精子は卵や胚を通常観察する際に用いる400倍の倒立顕微鏡下で観察・評価され,ICSIに使用されている.最近,ICSIに用いる倒立顕微鏡の倍率を上げ,解像度を高めることで,細かく精子の形態(特に精子頭部における空胞の有無)を観察しながら精子を選別し,それを顕微授精に用いるIMSI(Intracytoplasmic Morphologically selected Sperm Injection)の技術が注目されるようになってきた.IMSIは精子選別の際倍率が高く視野が狭くなるため,細かい顕微鏡操作が必要になるなど,技術的に難しいところがある.しかし,臨床的な有用性に関しては認められつつある.今回の総説では,IMSIの海外における状況と木場公園クリニックでのIMSIの実際について述べる.
  • 小田原 靖, 保坂 猛, 吉井 紀子, 工藤 智子, 阿部 亜佳音, 秋元 諭, 武田 信好
    原稿種別: 特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
    2008 年 25 巻 4 号 p. 254-258
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    現在のICSIでは精子の運動性,低倍率でのおおまかな形態を基準に精子選別が行われている.一方で精子形態,とくに頭部の空胞と精子核DNAフラグメンテーションの関連が示唆されている.また,精子核DNAフラグメンテーションの増加が胚発育に影響を与えるとの報告がある.Bartoovらにより報告されたintracytoplasmic morphologically-selected sperm injection(IMSI)法は1,000倍以上の強拡大下に精子を観察できるため良好精子選別に効果が期待される.今回115周期の単一胚盤胞移植周期においてICSIとIMSIの成績を検討した結果,IMSIおよびICSIの成績は受精率84.0%vs. 75.5%,胚盤胞到達率47.5%vs. 43.7%,妊娠率50.0%vs. 47.4%,流産率10.0%vs. 11.0%であった.今後高倍率下の操作手技の改善やIMSIの適応となる症例選択の基準などについてさらに検討が必要と思われる.
  • 田中 温, 田中 威づみ, 永吉 基, 粟田 松一郎, 姫野 憲雄, 竹本 洋一, 鍬田 恵里, 赤星 孝子, 渡邉 誠二, 楠 比呂志
    原稿種別: 特集:強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別~精子形態と受精卵の妊孕性
    2008 年 25 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    ヒト精子頭部に認められる陥凹(crater defect : CD)はヒトに特異的な構造物でその起源はすでにspermiogenesisが開始する後期精子細胞に認められ,精路を下降するに伴い,その数が増加する事が確認された.また,高倍率のノマルスキー微分干渉装置を装着した倒立顕微鏡下にて選別されたCDを持つ精子を用いたICSIの臨床成績においてCDのサイズと胚発生能力には差が認められなかった.この点よりCDはヒトに特異的なもので精子の核が,成熟する過程で現れる生理的な変化ではないかと考えられる.また,この精子頭部のCDの観察はノマルスキー微分干渉装置があれば,油浸や水浸レンズなど特殊なレンズを用いなくても,通常の40倍の対物レンズでも十分に判別が可能であった.
原著
  • 平尾 雄二, 志水 学, 伊賀 浩輔, 竹之内 直樹
    原稿種別: 原著
    2008 年 25 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    ウシ卵巣からは様々な直径の発育途上卵母細胞が得られる.本研究ではその直径に応じて異なる期間の培養を行った.直径0.3~0.7 mmの卵胞から採取した卵母細胞・顆粒膜細胞の複合体,または0.2~0.3 mmの卵胞を,卵母細胞の直径で,90 μm台(クラスI),80 μm台(クラスII),70 μm台(クラスIII)に分け,それぞれ20,28および36日間培養した.卵母細胞の生存率は培養の長期化とともに低下した.クラスI,IIおよびIIIの平均直径は,培養20,28および36日後にそれぞれ約115,107および102 μmへと増大した.以上の結果,時間的な長さだけを考えれば,現在の培養条件で36日間(クラスIII)にわたる培養も可能であるが,培養日数に見合った直径の増大は得られておらず,とくに直径70~90 μmからの発育を完了させるには,培養の延長か培養系の改善による発育促進が必要である.
  • 木村 直子, 木村 昂, 戸津川 清
    原稿種別: 原著
    2008 年 25 巻 4 号 p. 272-278
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    マメ科植物はエストロゲン作用を有するイソフラボンを含み,母親が摂取した場合,胎盤や母乳を介し子へ運ばれることが報告されている.本研究では,妊娠期から授乳期終了までの期間,母マウスにイソフラボン(5,50,100 mg/kg/day)を投与し,産仔(42日齢)の臓器重量や生殖能について,2世代にわたり調査した.雌雄F1マウスでは,5 mg/kg/day区で体重が有意に増加し,5および100 mg/kg/day区で精巣上体重量に有意な増加がみられ,精巣,卵巣および子宮重量に差はみられなかった.雄F2マウスでは,50 mg/kg/day区で体重が有意に増加し,5および100 mg/kg/day区で精巣あるいは精巣上体重量に有意な増加がみられた.雌F2マウスでは5および100 mg/kg/day区で体重に,5および50 mg/kg/day区で卵巣重量に有意な増加がみられた.F1およびF2世代の妊娠率,胎仔数,死亡胎仔数,死亡胎仔数割合に有意な差はみられなかった.以上の結果から,妊娠期から授乳期における母マウスのイソフラボンの継続的摂取は,産仔あるいはその孫の体重や臓器重量に影響を与えることが示された.
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