本研究は,健常人を対象として,神経筋促通法のレプリケーションを伴う膝屈曲伸展運動を行う群と膝屈曲伸展運動のみ行う群の2 群で,膝関節位置覚に与える影響を準ランダム化臨床試験で予備的に比較した。対象者は18~ 25 歳の健常者で,計測はベッド上端座位で目隠しをして行った。被験者は,記憶した膝45°に角度を合わせる膝位置再現テストを行った。次に,膝45°までレプリケーションを伴うまたは伴わない膝屈曲伸展運動を1 分間繰り返し,介入直後から3 分ごとに27 分後まで膝位置再現テストを繰り返した。各群9 名のデータを解析した結果,介入直後から一貫して,レプリケーションを行った群の膝位置再現テストの結果が膝屈曲伸展運動群よりも劣る結果であった。本研究結果は,スポーツ競技前のレプリケーションによる介入は,膝の関節位置覚を向上させることはできず,障害予防やパフォーマンス向上は期待できないと考えられた。
〔目的〕非特異的腰痛症例に対し,2 つの分類法(STarT back screening tool とO’Sullivan Classification System)を用い,臨床推論とstratified care を行ったので報告する。〔対象〕30 代女性。座位保持や中腰姿勢で腰痛がみられた。動作検査では腰椎優位の動作となりやすく,L5 / S1 に過可動性と疼痛がみられた。〔方法〕stratified care を行い,動作指導,腰部安定化エクササイズ,ストレッチを実施した。〔結果〕疼痛(Visual Analog Scale)は35/100 → 10/100,機能障害(Roland-Morris-Disability Questionnaire)は9/24 → 2/24 と改善がみられた。〔結論〕2 つの分類法を組みあわせたstratified care は,症状に基づいて特異的な介入が行え,有用である可能性が示された。
英国では,理学療法士の卒後教育としてのプログラムが充実している。なかでも,大学院教育は体系だった形として存在し,海外の学生も柔軟に受け入れている。医療専門職として卒後も継続的に成長していくことが,免許の更新や,職場での昇進にも反映される仕組みがとられている。筆者は,英国での就労を前提とした留学計画を立てて進学した。そこで今回,英国の大学院および免許登録に関する概要について述べる。
本稿では,アメリカ合衆国の理学療法士として活動する筆者の臨床経験を報告する。筆者は,2006 年から理学療法士として回復期リハビリテーション,急性期,外来リハビリテーションにおいて理学療法業務を行ってきた。また,カリフォルニア州の卒後継続教育の必修要件や,筆者がこれまで受講した徒手療法や前庭リハビリテーションの講座の内容ついても概説した。
理学療法士業界において,諸外国への留学および協力が増加したことは記憶に新しい。しかし,今後COVID-19 の猛威が諸外国へ渡る足枷となることは,様々な面から想像することは容易である。欧米諸国には,過去に多くの日本人理学療法士が足を運び,学んだものを日本に持ち帰り発展させてきた歴史がある。筆者自身,日米の理学療法士免許を所有し,日米の大学,大学院を経験し,今もなお米国において臨床に従事しながら日本の外来整形外科クリニックにおいてエグゼクティブアドバイザー業務を行っている。その経験から日米の教育と臨床の違いを比較することにより,今後世界に羽ばたく理学療法士の一助となり,日本の理学療法に発展に寄与できれば幸いである。
オーストラリアでは,理学療法士に開業権が認められている。そのため,同業の理学療法クリニックのみならず,競合する他業種からも差別化するために,個人の市場価値を高める唯一性のあるキャリア形成を目的とした卒後教育が重要である。本稿では,筆者が所属する開業クリニックでのインサービスと,顎関節・頭痛治療に特化した筋骨格系理学療法士としてのキャリアパスを紹介する。
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