〔目的〕仙腸関節に対するマリガン徒手療法により,右殿部痛の改善が図れた症例について報告することを目的とした。〔対象〕患者は70代男性のニュージーランド人であり半月後にニュージーランドに帰国予定であった。庭仕事中に重い物を持ち上げた際に右殿部痛出現,腰部脊柱管狭窄症の診断を受けた。主訴は右後上腸骨棘周囲の殿部痛と右下腿外側の痺れであり,20日間,計7回の介入を行った。〔臨床推論〕右殿部痛の原因として,仙腸関節周囲組織の問題が疑われ,疼痛を助長しない方法で評価を行った。マリガンテクニックの一つであるMobilization with Movement(運動併用モビライゼーション:MWM)を用い,右腸骨の後方回旋を強調することで疼痛の軽減が期待された。〔結果〕座位・立位時の疼痛が消失し日常生活に支障がなくなった。〔結論〕本症例では,仙腸関節へのマリガンコンセプトが有効であり,右殿部痛の改善が見られた。また,患者に合ったセルフエクササイズを指導することが介入効果の持続に役立った。