国際徒手理学療法連盟(IFOMPT)が作成したInternational IFOMPT Cervical Frameworkにおいて,脳神経検査は頭頸部の血管障害によって生じる頭頸部痛を評価するために重要な検査であり,安全な理学療法を提供するうえで,必要に応じて実施されるべきであるとされている。脳神経検査の結果のみで頭頸部の血管障害の有無を判断することは困難であるが,理学療法士には検査結果に基づき他職種と連携をとり,患者の安全を確保することが求められる。本稿では脳神経の概要を説明するとともに,脳神経検査の実施方法を注意点とあわせて概説する。
国際整形徒手理学療法士連盟は,頸部への理学療法介入に際しての注意事項をまとめたフレームワーク“Cervical Framework Document”を2012年に発表した。Cervical Framework Documentでは,頸椎に対するマニピュレーションやモビライゼーションといった徒手理学療法介入に先立って幾つかの検査を実施することが推奨されている。その理由として,稀ではあるが,頸部の動脈の問題に起因する頸部痛や頭痛が,筋骨格系由来の頸部痛および頭痛に類似する可能性があるという事実に基づいている。本稿では,頸部の動脈の構造と有害事象について解説するとともに,それに関連する主観的評価,血圧測定,動脈の検査について説明した。
頸部,上肢疾患に対して客観的な評価を実施する際に,標準的な質問紙を用いることで臨床経過の確認や他のグループと比較をする際に有効となる。本稿では,頸部の代表的な質問紙評価法4つ,上肢における代表的な質問紙評価法として肩関節を4つ,肘関節を2つ,手関節3つを紹介した。
対象者の価値観を反映した医療を提供していくうえで,患者報告型アウトカムは重要である。患者報告型アウトカム尺度(Patient-reported outcome measure: PROM)の多くは,質問紙票であり,対象者との円滑なコミュニケーションおよび共有意思決定を行う上でも,理学療法の臨床に活用が期待できる。本稿では,まず適切なアウトカムを選定する際の指針となるCore outcome sets(COS)について紹介し,COSを測定するPROMの具体例を概説した。次に,疾患特異的な質問紙票として腰部で3つ,股関節・膝関節で各2つずつ,足部で1つ,最後に下肢全般を対象とするものを1つの合計9つの代表例を紹介した。いずれも日本語版の利用が可能であり,臨床および研究への活用が期待される。
現在理学療法の臨床現場において心理社会的因子をスクリーニングすることが推奨されている。運動器理学療法においては生物医学的アプローチから生物心理社会的アプローチへの転換が重要であり,回復を阻害する心理社会的危険因子であるyellow flagの程度を把握するために様々なスクリーニングツールが開発されてきた。スクリーニングツールの使用は生物心理社会的アプローチの臨床実践に向けた第一歩となる。今回はまず,様々な国のガイドラインの中で使用が推奨されており,腰痛に対して使用できるSTarT Back Screening Toolと,部位を問わず全ての運動器疾患を対象に使用できるÖrebro Musculoskeletal Pain Screening Questionnaireを紹介した。さらに,予後予測のために用いる場合,すなわち,スコアを計算しそのスコアに基づいて予後を判断する使い方と,臨床推論を充実させ生物心理社会的なアプローチを実践するために活用する方法を紹介した。また,近年新たに開発されたスクリーニングツール例も簡単に紹介した。
現在疼痛治療の臨床現場では,疼痛の病態分類を考慮した評価および介入戦略が重要視されている。疼痛には多角的因子が関連していることから,疼痛の評価ツールも幅広く開発されてきた。今回は部位を問わずすべての運動器疾患を対象に活用できる非特異的疼痛の質問紙評価ツールを紹介した。評価ツールは重症度判定および経時的な評価に活用するために,疼痛強度,疼痛部位,能力障害,生活の質に関連した評価ツールを紹介した。さらに,病態鑑別のための評価ツールとして,神経障害性疼痛および痛覚変調性疼痛に関連した評価ツールを紹介した。
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