MACRO REVIEW
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23 巻, 2 号
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巻頭言
論壇
  • 角田 晋也
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_3-2_13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    外部不経済には環境•健康•貧困•治安等の問題がある。失業率を下げるには、世界的に外部不経済を内部化するような技術革新による分業深化のサイクルを構築することが必要である。人口密度の比較的低い地方で、外部不経済を内部化するようなニッチな業種の商品の需要が或る程度の規模ある場合、人口密度の不足を補うように地方内の交通•運輸コストを劇的に削減する技術革新が求められる。そのためには交通•運輸の増加に伴うヒートアイランド現象のような大規模な廃熱問題を積極的に解決する技術革新が前提となる。外部不経済の内部化に当たっては、それを免れることによって不当に利益を得る者が現れる余地のないよう、世界的に規制し、充分な責任能力を有しないものが外部不経済の原因とならないよう工夫する必要がある。
  • 岩淵 雅明
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_15-2_23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    120年に亘り、独•米•日が食糧生産の国家プロジェクトに挑戦し、敗退の連続であった。農芸化学•発酵工学的、更には、遺伝子工学的アプローチが殆どで、光バイオ的手法は回避したのだ。光(Solarエネルギー)の替わりに、グルコースや酢酸等の化学エネルギーを大量の酸素で利用する超動物的(Photo-Hetero) BioはCO2を大発生する内燃機関そのものであった。他方、光のみEnergyとして使うPhoto Autotrophic BIOには、(1)草木の様に成長が遅いTypeと、(2)単位受光面積当り数100-数万倍高効率的な超光合成変換が24時間連続反応出来るTypeとがある。長日植物には、連続光で開花結実可能のC3植物(小麦等)やクロレラ等のマイクロAlgaeがあり、その量子要求は12mol(又は、12Einsteinとも云う)で、その逆数を量子報酬と云う。コメ等の短日植物は、開花結実に、8-12時間『暗期』が必要であり、1molの光量子で、CO212分子を同化出来る。量子報酬=1/12mol=0.083molである。海中区画設定Systemを用いれば森林農地喪失等の問題は起きない。海水dsw(深層水)による単1培養、精密設計培地との混合培養も出来るので、Algae組成に沿った成分供給が可能である。当然、海を汚染しない農業と漁業の構築が可能である。カトリーナ被害は15兆円に達し、巨大ハリケーンや台風が益々多発している。20年待たずして地球温暖化による経済損失は1000兆円/年を越えるというのは、英国スターン卿/元世界銀行『副頭取の経済報告』の通り。
研究論文
  • 茂木 創
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_25-2_32
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    年々低下する穀物自給率を改善しなければならないという主張があるが、穀物自給率の適正水準に関しては願望の域を出ていない。本来、目標とすべき最適穀物自給率は、気候、風土、地理、経済状況といった様々な要因を考慮して決定されるべきものである。最適穀物自給率の推計に向け、本稿では、穀物自給率を決定づけると思われるいくつかの変数をもとに、特性アプローチを行って標準穀物自給率の推計を行った。その結果、わが国の穀物自給率は30%から40%の水準にあることが観測された。
  • 新井 春美
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_33-2_39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    今日、水は危機的な状況にあり、水をめぐる戦争が中東、とくにトルコとシリア間で起きると予測されてきた。実際にトルコは水問題を他の外交問題と関係づけ、水問題の解決を遅らせてきた。しかしトルコ•シリア間の外交関係の改善によって、水問題に関するETICという多国籍の枠組みが形成されることになった。これによって両国間の水問題解決への展望に期待が持てるようになってきた。
  • 秋吉 祐子
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_41-2_48
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    農地制度は人間存続のエネルギー源の食糧生産に大きな影響をもつ要件である。特に日本は耕地の減少、耕作放棄地の増大といった食の将来展望に影を落とす現象が生じている。現農地制度はどのような構成となっているのか、何が問題であるのか本稿において考察したい。政治•社会制度が異なり、地政的に最も大きな影響力のある中国の農地制度に言及し、また日本が現代社会制度作りに参考とした欧米主要国の状況にも触れて、日本のあるべき農地制度の方向性を提示することが本稿の目的である。
  • 立花 亨
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_49-2_62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    1980年代に一時は年200万トンの小麦輸出を実現していたサウジアラビアは、小麦生産に伴う財政的負担と水資源枯渇への恐れから2008年、8年をかけて段階的に小麦生産を中止するとの決定を行った。代わって採用されつつあるのが国外での農地取得策だが、生産地が自国か他国かという違いこそあれ、いずれの政策も市場を軽視する食料自給策の枠内にあることには変わりがない。
    ここはより総合的な食料安全保障の観点から、国際的な食料流通•融通制度の確立•効率化や食料備蓄といった政策的選択肢を取り入れていくべきであろう。
  • 釣 雅雄
    2011 年 23 巻 2 号 p. 2_63-2_81
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    2010年3月に策定された新たな「食料•農業•農村基本計画」でも見られるように,我が国の農業政策において食料自給率が一つの政策目標とみなされている。しかしながら,食料自給率は需要と供給のそれぞれの面における様々な食糧事情の結果表れる数値である。それ自体を目標にしてもその手段は無数にあるため,具体的にどの面の強化が望ましいのかの議論が必要である。本稿では食料自給率を供給面と需要面から考察し,その上で現在の農業政策を分析する。代替の弾力性を回帰分析した結果,米と小麦の間の弾力性は小さいかむしろ補完性があり,米と肉類との間の代替の弾力性の方が大きいことがわかった。本稿の分析から戸別所得補償制度は米作の保護政策ともなっており,大幅な転換が生じるとは考えにくい。仮に供給面での転換が可能であったとしても,それが必ずしも需要に対応していない。需要面ではこれまで,米の生産減少分は肉類の増加によって代替されてきており,米から飼料用作物への転換の方がより農地などの限られた資源を効率的に利用することになる。
エラータ
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