東京で氷晶核の日日観測を行い,-13°C,-15°C,-20°Cの各温度で働く氷晶核数を測定した結果,核数の日日変動が大変大きいこと及び大陸の空気が日本に来た場合には核数が多く,太平洋の空気が来た場合には核数が少いことが見出された。
特に中国の北部及びモンゴルの乾燥地帯で風塵を経験した空気が寒冷前線に伴つて日太に来た場合には著しく大きい核数が観測された。一方海洋性気団の中の核数は少いが,しばしば大きい核数が観測され,これは日本の火山爆発に伴つていることが見出された。
室内実験で日本の10個の活火山の火山灰,中国の北部の黄土,北海道の雪に混つて降つた黄土,観測点附近の土壌,及び石質阻石の氷晶核としての能力を測定した。
これらの結果から大気中の主な氷晶核は乾燥地帯から吹き上げられる土壌鉱物(特に粘土鉱物)及び火山灰であることが結論される。
尚火山灰等の氷晶核としての能力を論ずる際には各種造岩鉱物及び海水成分塩類の氷晶核としての能力を測定した結果を一部加えて比較すると共に,氷晶核の発源地に関する今迄のいくつかの説については気団の移動その他の点で問題があることを指摘した。
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