現用のD55A(いわゆるGMD-1A型)受信機によるレーウイン観測から求められる上層風の値の精度を検討した。まず,ゾンデの連結飛揚による比較観測の報告を利用して等圧面高度観測誤差を系統的なものとランダムなものに分離した。次にその結果を用いて風速・風向誤差を計算した。風速誤差は500mbで2m/s,300mbで5m/s程度,風向誤差は風速の関数で,風速30m/sの場合には500mbでは最大3度,300mbでは最大8度位である。風速風向ともに誤差の大部分はランダムなもので,等圧面高度と高度角のランダム誤差をへらすことが,上層風の精度をあげるのに最も重要である。
次にこのような誤差を有する資料を用いて大気運動の数値解析を行なつた場合の精度の問題をとり扱つた。運動方程式の各項の大きさを計算した場合,また多数例について平均値を計算した場合のそれぞれに対して誤差を見積つた。平均操作をすることによつて,多くの項は相対誤差が減少する。特に大気中の摩擦力を運動方程式中の残差として推定するような時には,十分に多数の例についての平均摩擦力を計算することが絶対に必要である。
数値解析においては,上層風資料から各高度の水平発散を計算し,それらを垂直方向に数値積分して垂直流を計算することがよく行なわれる。このやり方で求められる垂直流の誤差を,数値積分に伴うもの,上層風誤差に基づくもの,観測時刻のずれによるもの,気球が流されるための位置のずれによるもの,気柱下端の垂直流の誤差によるものに分類し,それぞれについて調べた。垂直流誤差は上層たおいて急速に増大するものと考えられ,特に上層風誤差に基づくものが大きい。こめ点を考慮して,垂直流の誤差を補正する式(25)を提案する。
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