気象集誌. 第2輯
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45 巻, 5 号
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  • 李 柾雨, 孫野 長治
    1967 年 45 巻 5 号 p. 343-352
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    天然雪の成長とその垂直分布の観測を,1963年冬季北海道の手稲山系で行った。ラジオゾンデの二点観測は雪結晶の観測点の風上と風下で同時に行われた。
    天然雪の結晶形とラジオゾンデで得られた気象条件との比較によると,立体樹枝状結晶の成長温度の場合に特にそうであるが,湿度ばかりでなく温度についても両者の不一致があった。この不一致は雪結晶の落下経路とラジオゾンデの上昇経路間に存在する気象条件の相異を考慮する事より説明された。
    この論文では観測結果に基いて,雪結晶形を用いての局所的な解析における二三の注意が述べられた。
  • 根山 芳晴
    1967 年 45 巻 5 号 p. 353-361
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    夏から秋えの小笠原高気圧の季節的衰退をはっきり見付けるために,太平洋上での1,000-500mbシックネス図上の5,700と5,800gpmの特定等シックネス線の変動に目をつけた。夏期小笠原高気圧が強く西太平洋に存在している間は,5,700gpmの線は日本よりはるか北にあってほぼ東西に走っており,また5,800gpm線は西太平洋地域を広く囲んで変動している。しかし秋になって小笠原高気圧が急激に衰退すると,5,700gpm線は日本上まで南下し,5,800gpm線で囲まれた領域は中華大陸に後退して西太平洋上に2度と現われなくなることが判った。その顕著な変化に対して成層圏での状態を研究するため,10mb面での31,760gPmの等高度線で囲まれたpolar highの消滅をとりあげ,その時期と小笠原高気圧の衰退期とを対比してみると,前者の時期が約5半旬先行して現われていることが判った。さらに10mb面でのそのpolar highの消滅がおこると,100mb面での南部アジア高気圧の東部にある閉じた高気圧が日本付近に停滞をはじめ,それからおよそ5半旬後にその高気圧ははるか日本の東海上に向って移動をはじめ,小笠原高気圧の衰退が同時的におきていることが見付かった。
  • 織笠 桂太郎
    1967 年 45 巻 5 号 p. 362-376
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    1960年及び1961年の冬期間に,地表電場,降雪の電荷,降雪強度及び雪の結晶形などについての二つの種類の同時観測がなされた。
    一つは,これらの4つの要素は積乱雲がしばしば通過する線上に沿って互に1.2km離れた地点に設置された二つの観測所に於て同時に測定された。しかし乍ら之だけでは不充分なので,互に異った高度の位置に設置された他の二つの観測点,すなわち海抜1,023.7mのティネ山頂の雲物理観測所と,これより500m高度が低いパラダイスヒュッテにおいて,地表電場と降雪電荷の同時測定を行った。
    これらの観測を通して,次の様な4つの点に注意がはらわれた。(1)地表電場と降雪の電荷の符号の間の逆関係の主な原因は何であるか,(2)降雪のもつ空間電荷の地表電場への影響,(3)普通積乱雲と雷雲の帯電状態の比較,(4)低地で得た結論と雲底附近で得た結論に相違があるかどうか。
    第(1)の点については著者等が前の報告で述べた降水の電荷輸送の理論(降水物体が雲の中で帯電して或符号の電荷を地表に運ぶためにその符号と反対符号の電荷が上空に残ってこれと同符号の電場が地表に於て観測される)が主因となることがほぼ確実となった。第(2)の点については,上述の降水の電荷輸送の理論が実際に成立している場合,降水の初期又は降水強度が急激に増加した場合,降水のもつ空間電荷の影響により必ず降水の電荷符号と地表電場の符号が一致する筈であるが,実際にこの様な現象が数多く確認され,又早い速度で移動して来る積乱雲からの集中的な降雪時には2-3分の非常に短い周期の降雪の電荷と同符号の地表電場の鋭いピークが発生することが確認された。第(3)の点については,普通の積乱雲の通過の際に与える地表電場の型と雷雲が通過した場合のそれとは全く同様で,電場の強さも特に雷雲の方が大きいという傾向はみられず,電荷分離発生の基礎研究を行うには普通の積乱雲の性質を調べることで充分であることが判明した。第(4)の点については,地表附近で得られた結論と雲底附近で得られた結論との問には何等の相違も見られず,特に正,負の降雪の周期的な発生に対応して雲底附近の電場が正の符号のままで晴天時の電場の値を中心にして周期的に減少及び増大するWave patternを生ずることが確認され,このような現象はWilsonの誘導説では説明出来ない。従って降水の電荷輸送の理論が定常状態に於ける地表電場と降水電荷の符号の間の逆関係及び降水の初期に於ける複雑な現象その他の説明に有利であることが確認された。
  • 正野 重方, 木村 竜治
    1967 年 45 巻 5 号 p. 377-390
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    正方形の壁に囲まれた領域内に10コの円をおき,運動量を与えて軌跡を数値計算した。速度分布はマクスウエル分布に近づいた。自由行路の分布も気体運動論から導かれる理論曲線と一致した。
    次に円に気相と固相を定義し,2つの相の間の遷移規則を仮定した。統計的に同じ条件のもとで,数値計算をくりかえし,統計的に同じ性質をもった固相のClusterを成長させることに成功した。しかし,モデルが単純であったため,凝結過程の温度に依存する性質をシミュレーションすることはできなかった。
  • 丸山 健人
    1967 年 45 巻 5 号 p. 391-408
    発行日: 1967年
    公開日: 2014/03/24
    ジャーナル フリー
    1958年の春から夏にかけてマーシャル群島付近でおこなわれた特別観測のデータをもちいて,最近柳井,丸山(1966)によりみいだされた赤道成層圏下部の西風の中を西進する大規模な波動擾乱をくわしくしらべた。上層の風の垂直時間断面図をみると高さ18-24km付近の風向が南西と北西のあいだを4-5日周期で振動していることがわかる。シノプティック解析により西風にさからって2,000km/dayくらいの速さで西進する大規模な波動擾乱の存在することがわかる。波長は10,000kmにおよぶものとおもわれる。位相線は高さがますとともに西にかたむいている。風の南北成分のパワースペクトル解析によりこの振動が成層圏下部の赤道にごく近いところで卓越することがわかる。基本流をかんたんな手法でのぞくことにより擾乱が赤道に中心をもつエディーをなしていることがわかる。1958年4月にみられた顕著なエディーについて擾乱の三次元構造をとくにしらべてみた。擾乱の西進はβ効果によるものとおもわれる。擾乱の位相速度および風と気圧の関係をRosenthal(1965)および松野(1966)により論ぜられた順圧発散赤道波の理論からえられるものと比較してみた。
  • 廣田 勇
    1967 年 45 巻 5 号 p. 409-421
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    成層圏における周極渦(Polar Vortex)は,大規模な外力の影響によって,しばしば変形を受けるが,その変形した渦の力学的安定性を順圧渦度方程式及びエネルギー方程式を用いて調べた。
    摂動方程式を初期値問題として数値時間積分により解いた結果,変形した渦に対応する順圧不安定が存在して,変形の程度が大きいほど,より不安定な擾乱が発達することがわかった。
    Volar Vortex の変形の様相は,南北両半球において異っているが,その両者に対応する変形渦(波数1と2)を数値モデルで構成し,その安定性を比較した結果,北半球に対応する波数2の変形渦のほうがより不安定であり,急激な崩壊現象(Breakdown)の起り得ることが示された。
    一方このモデルに関する運動エネルギー方程式を作ってみると,外力との相互作用が,系全体の運動エネルギーの増減に関与し,擾乱と変形渦の位相が4分の1波長異っているときに,最大エネルギー増加が期待される。
    これらの種々の力学的特性は,実測の結果と比較して,定性的によく一致している。
  • 廣田 勇
    1967 年 45 巻 5 号 p. 422-435
    発行日: 1967年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    突然昇温の時期における成層圏の温度及びその時間変化の垂直分布をドイツ自由大学発刊の高層天気図を用いて調べた。1963年1月の例を中心に,1965年3月,1958年1月の例も加えて,西半球北緯50度線に沿って300mbから10mbまでのcross sectionを解析し,次の結果を得た。
    (1)擾乱の発達に伴い,トラフの軸が西に傾き,かつ全体として西進する。その結果1点での観測値だけで見ると,高温域はあたかも上から下に降りて来るように見える。
    (2)然るに温度の時間変化(昇温)はまず100~50mb附近から始まり,約10 mb/dayの位相速度で上方に伝播する。この事実は,垂直子午面解析によっても確かめられる。
    これらの特性が,上記3例に共通なところから,突然昇温の現象は,擾乱が上方に伝播する"発達の段階"と,上方伝播後に,変形した周極渦の力学的不安定化に伴って水平に動く“移動の段階”とに分けて議論すべきであると思われる。
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