気象集誌. 第2輯
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47 巻, 6 号
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  • 太平洋の雲,そのVI
    孫野 長治, 周 徳
    1969 年 47 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    1965年10月,旅客便の航空機を使ってシャム湾上の雲の分布を測定した.
    収束線の南縁に沿うて数ケの輪状の雲の分布が観測されたが,これは気象衛星写真でよく見られるベナードセル状の対流ではなくて,収束線周辺の下降流によるものと考えられる.
    また,ひとでのような形の足をもった積乱雲や塔状雲が観測されたが,その収敷する足(雲)の形から,孤立した一つの積乱雲や塔状雲の収斂域は大体直径60粁の面積と推定された.
  • 伊藤 昭三
    1969 年 47 巻 6 号 p. 419-430
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    低層における運動量,顕熱,水蒸気量の輸送について微気象の資料の解析結果を示した.不安定成層では|z/L|が0から1の範囲,安定成層ではz/Lが0から0.25の範囲,において普遍式によつて傾度と輸送量の関係があらわされる.また接地気層における風速,温度,水蒸気量の分布を検討し,乱流拡散係数と安定度の関係について議諭した.さらに乱れのスケールが導かれ,運動量,顕熱,水蒸気についての拡散係数がそれぞれ次の式によつてあらわされることを示した.
    KM=ε1/3Luθ4/3 Kθ=ε1/3Luθ1/3•Lθ Kω=ε1/3Lu1/3•Lω
    ここにKM,KθおよびK は運動量,顕熱および水蒸気に対する乱流拡散係数であり,Lυ,Lθ,Lυ,Lwはそれぞれ対応する乱れのスケール.εは乱れのエネルギー逸散率である.
  • 高橋 忠司, 山下 晃
    1969 年 47 巻 6 号 p. 431-436
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    直径100μから800μの水滴を自由落下の状態で凍結させるという実験を-20°Cの野外で行なった.約-15°Cで凍結した水滴4,600個について,その変形,破壊を調べた.凍った水滴に割れ目が入る現象は度々おこり,水滴が大きくなるにつれて頻度が大きくなった.水滴が二つに割れることも観察されたが,その頻度は割れ目が入ることに比べて小さかった.
  • 小倉 義光, 八木橋 章子
    1969 年 47 巻 6 号 p. 437-445
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    二枚の平行板の間を一定の圧力勾配によって流体が流れているとき,下面からの一様の加熱によって生ずるロール型対流の数値実験結果については既に報告した(小倉•八木橋1969年).その時間積分の際,初期条件を少し変えることによって,全くちがったモードをもつ定常解が生ずることが指摘された.
    有限振幅の流れではどんなモードで存在するか,またそのモードは線型安定理論から期待されるものとどんな関係があるかなどについて調べるために,最も簡単な対流として二次元のベナード型対流を考える。Saltzman(1962)と同じように,ブシネスク近似を用いた運動方程式と熱力学第一法則の変数を二重フーリエ級数に展開し,有限個の波のみを考える.実際上は線型理論から不安定と期待される水平方向の二つのモードのみをとる.
    レイリー数が臨界値の2倍及び5倍の場合につき,それぞれのモードの波にいろいろな初期値を与え,定常に達するまで時間積分を行った.その結果によると,ランダムな初期条件から出発すると,線型理論でいう生長率が最大のモードが安定解として現われる.しかし同じレイリー数でも,初期条件を少し変えることによって,それとちがったモードのものが現われることが確かめられた.例えばレイリー数が臨界値の2倍の場合,波数4の初期の振幅が0.0005,波数3のそれが0.000445の場合には波数4が定常解となる(定常解の振幅は1の程度).しかし,波数3の初期値が0.00045となると波数3が定常解となる.
    そして,どちらのモードにせよ,有限振幅の対流として存在してしまうと,それは極めて安定であり,他方のモードの波を重ねてもなかなか崩れないこと,またあるモードの定常解は必ずしも熱の鉛直輸送を最大にするものでもないことなどが確められた.
  • 樋口 敬二
    1969 年 47 巻 6 号 p. 446-450
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    いままで,氷晶成長の計算は,昇華の潜熱が空気の熱伝達のみによって放散されるとしておこなわれてきた.しかし,極夜にある極地方の大気や,夜間の絹雲などにおいては,放射による冷却も,また,潜熱の放散に関与すると思われるので,この項を加えて,氷晶成長の計算を試みた.まず,氷晶がまわりの空気と同じ温度である場合に,氷晶の成長速度および成長のための限界過飽和度を,球と仮定した氷晶の半径,氷晶の温度を変えて,計算し,Fig.1のような結果を得た.つぎに,氷晶と水蒸気に関して平衡状態にある空気の相対湿度,氷晶と空気との温度差を,氷晶の半径,氷晶の温度を変えて,計算し,Fig.2のような値を得た.その結果,氷晶が大きいほど,放射冷却によって乾いた空気中でも成長できるため,放射冷却は,氷晶が成長する気層の厚さを増加させる効果をもち,降水効率をよくすることがわかった.
  • 宇加治 一雄, 沢田 竜吉
    1969 年 47 巻 6 号 p. 451-456
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    充分薄い対流槽にシリコン油をみたし,上面を冷却し,下面を加熱して一定の温度差に保てば,一列の細胞状対流が発生する.この一列の細胞状対流による上方への熱輸送量を測定した.対流槽の側壁に透明なアクリル樹脂を用いたので,シリコシ油にトレーサーとしてアルミニウム粉末をまぜておけば,熱輸送量の測定と同時に細胞数を肉眼で観測できる.
    任意のレーリー数に対して発生する細胞の数は正規分布の様な頻度分布を示し,必ずしも一定ではない.しかし細胞状対流が輸送する熱量は細胞数の多少にかかわらず同じである.また発生頻度の最も高い細胞数に着目するとそれがレーリー数と共に増加する傾向がはっきりみられる.この傾向は他の実験結果と著しい対照を示している.
  • 土屋 清
    1969 年 47 巻 6 号 p. 457-465
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    約4時間の時間間隔で撮影した気象衛星エッサ7号と8号の写真に現われた済州島風下のKarman鋤うず列状の雲を解析した結果,次のことがわかった.
    雲のうず列から得られた無次元パラメーターは,これまで2次元流の流体実験から得られたKarman鋤うず列発生の限界値を満足しており,Karmanうず列の理論で説明できる.島の抵抗とうず列のwakeによる抵抗を考慮して,うず列の間隔と個々のうずの間隔の比だけから,うず列の移動速度を求める計算式を導いた.結果実況とかなりよく合い,比が0.332のとき.一般流の約76%であった.
    済州島の風下に,このような雲のうず列のできるのは,晩秋から初春にかけて,比較的強い(10ノット以上)北風が持続し,1000m付近(島の中央部の山の高さの半分)に顕著な逆転のある時である.
  • 籾山 政子, 片山 功仁慧
    1969 年 47 巻 6 号 p. 466-482
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    筆者らは世界的規模で死亡の季節変動形態を研究し,その結果,日本や西欧諸国は死亡の変動に“冬季集中”現象が,また,アメリカや北欧には“緩慢化”の現象の出現を見出した.ここでは本現象を詳細に研究するため,特に緩慢化の著名なアメリカを気候区や地理区にわけて季節変動を検討した.
    アメリカの気候区Climatic Region (Rennerの区分),季節にもとつく気温地区Temperature regions based on seosons (Parkins)及び1月の気候区Climatic zones in Januaryにもとづき,両者について死亡の季節変動のタイプを見た.気候区では,1960年代は南部の1,2地区に変動大きく,北部の4,5地区及び太平洋岸の9地区に特に小さい.30年代,10年代は60年代より一般に変動大きく,地区により夏山も目立つ.
    季節にもとつく気温地区によっても,1960年代は一般に変動は小さいが,太平洋岸の1地区は特に小さく,南部5地区は大きい.30年,10年代はどの地区も大きく,夏山も存在する.
    1月の気候区は9地区に分れ,1960年代は南部の5,7地区などがやや変動大だが,北部の8,9地区及び最も寒冷な12地区は変動が極めて小さい.30年代,10年代は60年代に比してどの地区も一般に変動大きく,地区によっては冬山の他に夏山もある,年代的にみると,何れの気候区分によっても死亡の季節変動の緩慢化の形成を認めることができる.
    つぎに,アメリカのさまざまな地理的条件を考慮にいれて,8つの地理区を設定した.これによっても,1960年代は,総死亡の季節変動は冬に低い山があるとはいえ,概して緩慢であるが,30年代,10年代は冬山のほか夏山が目立ち,変動もやや大きい.白人,非白人では,全地理区とも10年代,30年代は冬夏2つの山がある.1960年代は白人の夏山は消失するが,非白人の夏山は南部の地区で目立つ.
    1960年代における乳児死亡の季節変動は,南部を除けば,どの地理区においても総死亡のそれに比して一般に緩やかである.人種別にみると,どの地理区においても非白人は白人に比して季節変動は極めて大きい.ことに南部地区では前者は後者の3倍にも達する.
    以上のように,総死亡でも乳児死亡でも最近は死亡の季節変動の緩慢化が出現しているが,これは乳児の場合一層著明である.人種差は乳児の場合に著しく,ことに南部の非白人は冬山が大きく変動は著しい.以上のように気候区でみても,地理区でみても1960年代は季節変動の緩慢化が著明である.
    また,死亡率と気温との回帰関係からも,本現象をとらえることができる.即ち,冬季極めて寒冷な北部地域と,温暖な南部地域を比較すると,北部は南部より回帰係数が小さく,従って死亡の変動は殆んど気温の影響を受けていないことがわかる.乳児死亡は総死亡より係数は小さく,また,両死亡とも白人と非白人と比較すると,白人の方が僅かに少ないことが特徴的である.要するに北部地域の白人の乳児死亡に最も緩慢化が著しい.
    以上の如く,時代の進展とともに死亡の夏山は消失し,冬山も次第に低下し,今日見るような死亡の季節変動の緩慢化が形成された.合衆国で最も寒冷な北部地域に,そしてとりわけ外出の必要のない乳児死亡に緩慢化が著しい事実よりしても,死亡の変動に及ぼす人工気候の影響が大きい事がわかる.
    また南部の黒人の多い地域に季節変動が大きく,ことに非白人の乳児に冬山が著明なのは,後進地域としての性格を示すものと考えられる.
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