大雨が降るときは,しばしば下層にジェットを伴っており,大雨の要因をこのジェットに求めようとする考えもある.しかし,その構造は案外わかっていないよらである.ここでは,1965年7月2日,九州地方に大雨を降らせたメソ低気圧に伴ら下層ジェットを解析し,その構造を明らかにしようと試みた.この際,九州地方では,高層観測網が貧弱であること,低気圧が関東地方まで変動なしに東進したことの理由から,140°E付近を通過した3日9時の資料を用いて解析した.このさい,地上でよく用いられるメソ解析の手法,時間-空間変換の手法を,高層解析に用いた,その結果は次のように要約される.
1.低気圧の中心と下層ジェットの核と,強い上昇流域との間には,ある関係が存在する.すなわち,低気圧の進行前面にジェット核があり,その風下に垂直運動の活発な区域がある.
2.上昇流域は,高さ4km,,水平方向の直径500kmの薄いほぼ円形となっている.垂直と水平方向の長さの比は,おおざっぱに1:100であった.
3.台風の構造に似た,上昇流域の中にせまい円形の下降流域があった.
4.低気圧の中心付近は,高度3km以下で周囲より冷たい空気におおわれている.これは,降雨冷却によるものと思われる.
5.Subtropicalジェットと下層ジェットとの間には,650mb付近に中心をもつ弱風(5m/s以下)域が存在する.
本研究は,気象研究所地方共同研究の一部をなすものである.
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