1962年の4月~7月太平洋のデータをスペクトル解析し,熱帯対流圏において,風の南北成分と,その他の物理量(風の東西成分,温度,ジオポテンシャル)とのcovariance(共分散)に果す擾乱の役割を調べた.赤道近くの領域では,約4日周期の擾乱がcovarianceに大きな役割を果している.一方亜熱帯地域(200°N附近)では,約6日周期の擾乱と,10日以上の擾乱が重要な役割を果している.
移動性擾乱による運動量輸送,顕熱輸送,ポテシャルエネルギー輸送の緯度,高さに関する平均分布,及び,4日周期の擾乱が輸送に果す寄与を調べた.周期6日以上の擾乱によつて,高緯度から低緯度へ強いエネルギーの流れがある.この結果は,Mak(1969)の結果と一致する.対流圏下層,中層には,赤道方向の顕熱の流れがあり,対流圏上層では,強い極方向の顕熱輸送がある.輸送に対する4日周期の擾乱の寄与は高緯度側では小さいが,低緯度側では大きい.
赤道と15°N間の領域における擾乱のエネルギー変換の一部を見つもつた.高緯度側から低緯度側へ強いエネルギーの収束(気圧による仕事)があり,擾乱の運動エネルギーは平均流の運動エネルギーに,擾乱の有効位置エネルギーは,平均場の有効位置エネルギーに変換される.高緯度側からのエネルギーの収束量は,擾乱から平均流への運動エネルギーの変換量,擾乱から平均場への有効位置エネルギーの変換量よりも一ケタ大きい.
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