運動量,顕熱,水蒸気輸送と赤外放射伝達の式を数値計算によって解き,風速や気温および水蒸気量の日変化のもようを知ることができた.放射を考慮しない従来の乱流輸送理論は,観測結果と特に安定な気層に対して一致しないと云われているが,これは今回の研究結果から,ある程度まで説明することができた.すなわち,運動量,顕熱および水蒸気輸送の各々に対する拡散係数をお互いに等しいと假定しても,放射を含んだ非定常性を考慮すると,観測されうるであろう風速,気温および水蒸気量の鉛直分布は,お互いに相似でなくなる.また,無次元化された風速,気温および水蒸気量の分布関数は,従来の解析方法では,それぞれ一本の線として求まらず,相当ばらついたものが得られるはずである.これは,従来の観測のばらつきを,ある程度まで説明することができる.
そのほかの主要な結果は,(1)乱流輸送が完全に無くても,放射の作用で気温は相当変化し,観測される鉛直分布と似た形になる.(2)高度が10m以上の風速は日出直後に急減し,再び増加する変化を示す.(3)夜間の地表面の熱収支は,正味放射量と地中伝導熱の2つで,近似的にバラソスしている.(4)地上数センチメートルの高さに,夜間は大きな放射冷却層が,また,日中は1時間に100℃以上にも達する強力な放射加熱層が形成されている.後者は下層大気中の対流混合の主要な原因要素になっていると思われる.(5)乱流Fluxがほぼ一定と見なされる高さは,日中は数十m,夜間は数mまでである.(6)液間の放射霧は地上から少し離れた気層に発生し,時間と共に上方へ広がる.
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