気象集誌. 第2輯
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49 巻, 4 号
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  • 山下 晃
    1971 年 49 巻 4 号 p. 215-231
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    高さ15mの大型低温塔を使って,自由落下中に成長する雪の結晶を容易にかつ多量に得ることができる.本論文では,一連の実験の中から,ドライアイスあるいは液体窒素で冷やした金属棒で装置内の過冷却雲に種播きする方法で得られた,外見が六角対称でない雪の結晶を示しその構造と結晶学的意味を論じた.
    外見が長方形の板状のもの,三角柱状のもの,アルファベットのV,Y,Xのような形のもの等を偏光顕微鏡を使って,数多く細かく観察した結果,これらの中には十分に発達した六角柱状の骸晶の一部分に相当するものが多いことがわかった.実際には,多結晶で非常に複難な外見を示すものがかなりあるが,単結晶については上のような解釈ですべて説明できる.ただし,三角柱状結晶に関しては,やや異なった解釈が必要であり,かつ断熱膨脹を利用した種播き法で生ずる最も特微的な結晶であるため,ここではあまりふれない.以下にいくつかの重要な結果を列記する.
    ○ 上記の結晶は,-1.9°C--11.10°Cおよび-20°C以下で多量に観察されたが,-15°C近くでは生じない.
    ○ -1.90°C--11.1°Cの領域と,-20°C以下の領域での結晶習性(habit)は.外見上はずい分異なるものが多いが,大体においては同じと考えてよい.
    ○ これらの結晶は,arm growth(一種のcorner growth)とinside面の板状成長の結果生ずると解される.
    ○ これらの結晶が生ずる事実は,雪の結晶成長に初期条件(あるいは核の種類)が重要な影響を持つことを示している.
  • オウグスト Hアウアー
    1971 年 49 巻 4 号 p. 232-235
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    雪雲の中で採集した,広幅六花,星状六花および樹枝状六花の雪結晶について基底面表面積を測定した.
    観測結果をもとにして雪結晶の基底面表面積と直径との関係を記述出来る実験式を求めることが出来た.上記各種の角板状雪結晶の基底面表面積と結晶に外接する円の表面積との比は直径に無関係で略一定の値をとることが明らかになった.
  • 山下 晃, 藤木 陽一, 高橋 忠司
    1971 年 49 巻 4 号 p. 236-248
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    旭川市およびその周辺では,真冬の晴れた静かな日の夜から早朝にかけて,水蒸気供給源を中心に濃い水霧が発生する.広範囲にわたる移動観測の結果を,市中心部,市内石狩川沿い,郊外石狩川沿い,パルプ工場風下,郊外の五つの地域別にまとめたところ,旭川の大気中に人為的に生じた氷晶核が多いと推定されるときには,過冷却霧は短時間で,氷晶霧に変化し,やや少ないと推定されるときには,肉眼で判別できるほどの大きな氷晶が降っていることが観測された.なお,氷晶核が少ないと推定される郊外では-26°Cでも過冷却霧のままで安定に存在し得ることも観測された.以上のように,霧は気温の違いにより異った様相を示すばかりでなく,地域によっても相違あることがわかった.
    旭川市およびその周辺では,地表近くで過冷却霧の中に氷晶が現われる過程を温度等の異なるいくつかの場合について観測できる.これは,雲の中での氷相の生成および成長を知る上で,重要な観測および実験がこの地で可能なことを示唆している.
  • 木村 竜治, 津 宏治, 八木橋 章子
    1971 年 49 巻 4 号 p. 249-260
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    鉛直シアーのある流れの中の対流の様子をシリコン油を用いて観察した.流体槽は内径10cm,外径15cmの円形水路で,上面を回転させて鉛直シアーのある流れを作った.同時に上下に温度差を与え,対流運動を起させた.シアーの強さ,上下の温度差をパラメーターとして対流の形を調べた所,3種類の対流の形が観察された.すなわち,シアーが弱く,温度差が大きいと細胞状対流が生じる.シアーが強く,温度差が小さいと,軸が流れの方向に一致するロール状対流が生じる.中間の領域では,細胞とロールの中間の形の対流が生じる.軸が流れの方向に直角なロール状対流は,この実験で扱ったレイリー数およびシアーの領域内では存在しなかった.細胞状対流からロール状対流に移る臨界シアーの大きさは上下の温度差と共に増加した.細胞状対流の移動速度を測定した所,流体のほぼ真中の高さにおける流速によって流されていることがわかった.
    軸が流れの方向に直角なロール状対流の性質を調べるために,流体槽の底に規則的な凹凸を作った.この流体槽を用いて対流の形を観察した所,凹凸の存在は臨界シアーを増加させるが,初期に大きな振巾の直角ロール状対流を強制的に作っても,臨界シアーは変化しないことがわかった.
  • 遠藤 昌宏, 新田 尚
    1971 年 49 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    時間的に変動する風のストレスに対するエクマン境界層のレスポンスを調べる為に,水平方向の運動方程式を,Fredholmの解を重ね合わせる事により解析的に解いた.計算された振幅と定常風に対するそれとが比較される.
    その結果以下の事が判った.(1)一般的に言って,変動する風のストレスに対するエクマン層のレスポンスの振幅はその周期が慣性周期と異なる領域では,定常風の場合のレスポンスの振幅よりも小さい.(2)風の振動数が零に近い領域では,もし振幅を風の周期より短い時間で平均すると,大きく見積もる事になる.(3)風の周期が慣性周期の場合は求共鳴が生じて,速度成分は振動しながら経過時間の平方根に比例して増加する.
  • 松本 誠一, 二宮 洸三, 吉住 禎夫
    1971 年 49 巻 4 号 p. 267-281
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    1969年7月3日から7月10日にいたる7日間の集中豪雨特別観測期間中,極東には,ほぼ定常的な梅雨前線が卓越した.九州を中心とする西日本では,強い降水が持続し,この期間の最大総降水量は500mmを越えた.この7日間についての平均場の解析を行い,豪雨をともなら梅雨前線の特微的様相を明らかにすることが,この報告の目的である.
    梅雨前線においては,温度傾度の集中は著しくなく,その構造的特徴は,超地衡風的な下層ジェットの存在である.この下層ジェットの生成•維持は積雲対流による運動量の垂直輸送によると思われる.また下層ジェットの上空の対流圏中層には帯状の高温•高湿域が存在する.この生成•維持は熱および水蒸気の対流輸送と関係づけられる.
    強い低気圧性シアーが集中し,かつ成層状態が中立に近造下層ジェットの北側には,波長1000km程度の中間規模擾乱が発生する.その運動エネルギーは,下層ジェットの北側,800mb付近の高度に集中している.極東域では全般的に,梅雨前線ぞいに,大きな平均雲量があらわれ,かつ大きな可降水量の値がみられるが,特に大きな雲量,レーダー•エコーの出現率,降水のあらわれるのは,下層ジェットの入口領域である.これは下層ジェットにともなろ,下層の大きな南分を持った風による収束によるものである.
    この報告は,気象研究所梅雨末期集中豪雨特別研究の一部をなすものである.
  • 股野 宏志, 関岡 満
    1971 年 49 巻 4 号 p. 282-295
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    台風Cora(6909号)の日本列島通過の際の状態を,8月23日15時(日本時間)以前の熱帯低気圧特性を示した期間,23日15時~21時の熱帯低気圧と温帯低気圧の両特性を示した期間,および23日21時以後の温帯低気圧特性を示した期間に分けて,総観的に研究した.特に,第2期の東北地方南部における経路と中心示度の急激な変化をともなら台風の温帯低気圧化に解析の重点を置いた.日本列島上を衰弱しながら北東進した台風は,台風から遙かに遠い朝鮮半島方面から日本海上を発達しながら東進して来た温帯低気圧と23日午後から接近し,重合系を形成し,台風の減衰とともに温帯低気圧が卓越し,見掛上の台風の温帯低気圧化が行われたと考えると,上述の急激な変化を系統的に説明できることを示した.重合系を構成する温帯低気圧の発達に関して,らず度,層厚,垂直速度分布による考察とエネルギー計算を行った.
    以上により,以前に多くの台風およびハリケンの例で示した復合系-既存の前線が台風域内に侵入して,前線上に温帯低気圧を発生させ,台風の衰弱とともにこの温帯低気圧が台風の後継者となり,見掛上の台風の温帯低気圧が完成するといら-とは異なる台風の温帯低気圧化の様式を明らかにした.
  • 田中 正之
    1971 年 49 巻 4 号 p. 296-312
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    散乱に伴う放射場の偏光及び大気の光学的成層の不均質の効果を考慮して,太陽光の地球大気による散乱反射•透過の問題を論じた.先ず散乱反射光及び透過光の強度と偏光状態を表わす反射行列及び透過行列に対する基礎方程式を導き,従来Chandrasckhar,Sekera等によって得られていた式が不充分なものであることを示した.即ちChandra-sekharやSekeraは均質成層の場合,反射•透過行列の満す方程式系は偏光を考慮しない場合の反射•透過凾数の満す方程式系と形式的に同一であるとしたが,ここでは偏光を考慮した場合の方程式系がこれと異なりむしろ不均質成層の方程式系と類似するものであることが示されている.関連して反射•透過行列の持つ多様な対称性についても論じている.これに関しては最近Hovenierによっても論じられているが,ここではより一般的なな表現を与えた.次に上記方程式反射•透過行列に対する連立積分方程式―の数値解法を論じた.これは最近Towmey等が偏光を考慮しない問題で且つ均質式層の場合の解法として考案した方法を,任意の光学的成層におけるストークス•パラメータ伝達の問題に拡張したものである.基礎方程式が複雑な積分方程式系であったのに対し,ここに導かれているのは簡単な代数方程式系であり,大気の局所的な散乱特性が既知であれば任意に成層した大気の多重散乱特性を正確に評価出来るものである.以上の議論では地表面での多重反射の影響は考慮されていないが,最後にこの問題を論じ地表面の反射特性が既知であれば,その影響を考慮した解はそれを考慮しない問題の解から簡単に導かれることを示した.
  • 桜井 兼市
    1971 年 49 巻 4 号 p. 313-315
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
  • 林 良一
    1971 年 49 巻 4 号 p. 316-319
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
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