高さ15mの大型低温塔を使って,自由落下中に成長する雪の結晶を容易にかつ多量に得ることができる.本論文では,一連の実験の中から,ドライアイスあるいは液体窒素で冷やした金属棒で装置内の過冷却雲に種播きする方法で得られた,外見が六角対称でない雪の結晶を示しその構造と結晶学的意味を論じた.
外見が長方形の板状のもの,三角柱状のもの,アルファベットのV,Y,Xのような形のもの等を偏光顕微鏡を使って,数多く細かく観察した結果,これらの中には十分に発達した六角柱状の骸晶の一部分に相当するものが多いことがわかった.実際には,多結晶で非常に複難な外見を示すものがかなりあるが,単結晶については上のような解釈ですべて説明できる.ただし,三角柱状結晶に関しては,やや異なった解釈が必要であり,かつ断熱膨脹を利用した種播き法で生ずる最も特微的な結晶であるため,ここではあまりふれない.以下にいくつかの重要な結果を列記する.
○ 上記の結晶は,-1.9°C--11.10°Cおよび-20°C以下で多量に観察されたが,-15°C近くでは生じない.
○ -1.90°C--11.1°Cの領域と,-20°C以下の領域での結晶習性(habit)は.外見上はずい分異なるものが多いが,大体においては同じと考えてよい.
○ これらの結晶は,arm growth(一種のcorner growth)とinside面の板状成長の結果生ずると解される.
○ これらの結晶が生ずる事実は,雪の結晶成長に初期条件(あるいは核の種類)が重要な影響を持つことを示している.
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