気象集誌. 第2輯
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50 巻, 6 号
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  • 笹森 享
    1972 年 50 巻 6 号 p. 505-518
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    重力の影響により成層した大気中で起る運動にたいして熱放射によるエネルギー損失がどの程度重要か,簡単なモデルを用いて解析した.熱放射の伝播は大気中の水蒸気,炭酸ガスの振動運動および雲の吸収によるものとする.内部エネルギーと位置エネルギーから運動エネルギーが変換される過程は局所的なものとし,大気の運動方程式系を線形化したうえで,その熱力学の式に放射損失を考慮する.得られた方程式系の基本的な解は時間および空間座標の調和関数で与えられ,その時間特性指数を断熱大気のそれと比べることによって次の結論を得た.もし全地球的な規模の運動が取扱われ,その運動エネルギー産出を正しく評価するには,放射損失を考慮する必要があろう.大気が系外からの加熱により運動する場合,もし加熱の時間的変化が非常に早いとき,または非常に緩やかなときは,ともに放射損失は無視できよう.最後の章で,大気中に雲が発生する場合を想定して潜熱放出による加熱と雲の放射効果とを比較解析した.雲の発生初期の段階では,放射加熱が凝結加熱と比較しうる効果をもつことが示されるが,雲が厚く成長するにしたがって,その内部は熱放射にたいして黒体化し,放射は雲の加熱状態の変化にほとんど寄与しなくなると推定される
  • 楠田 信, 沢田 竜吉
    1972 年 50 巻 6 号 p. 519-524
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    富士山頂における1932年7月1日から1952年12月31日までの20年間の毎時観測データを用いて気圧の潮汐振動を解析した.太陽潮については,1日,半日,8時間および6時間潮ともに年平均および各季節について十分な精度で決定された.
    半日太陰潮は年平均と夏の分が良い精度で決定されたが,冬と春秋の分は十分な精度の決定ができなかった.
    その原因は資料の不足であるが,1953年以降は観測回数が1日4回と激減したなどのために解析を延長することはやめた.たとえ延長したとしても,精度を十分にあげることにはならない見込である.
  • 浅井 冨雄
    1972 年 50 巻 6 号 p. 525-532
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    一般流が高さと共にその流速のみならず流れの向きも変るとき,静力学的に不安定な流体層中で発現する熱対流の性状をBoussinesq近似のもとで摂動論にもとついて調べた.一般流が変曲点のあるプロフィルをもつ場合,熱的不安定(重力不安定)の他に慣性不安定の生ずることは向きを変えない一般流の場合に得られた結果(Asai,1970b)と同じである.熱的不安定に起因する増幅率最大の卓越擾乱の構造,特に,ロール状対流の走向と一般流の関係に重点を置いて考察する.ロール状対流の軸に直角な一般流の速度成分を用いて一般流とロール状構造との関係をより一般化した.即ち,ロール状対流の卓越モードは上記一般流成分の鉛直シャーが最小になるような走向のものである.一般流の向きと鉛直シャーのそれは異なるがシャーベクトルが一定方向の場合はその簡単な一例で,卓越モードのロール軸はシャーベクトルに平行になる.流れの向きが高さと共に変らないシャー流はシャーベクトルがたまたま各高度の流れの向きと一致する特殊な例として理解される.
  • エンドリッヒ R.M., マンクーソ R.L.
    1972 年 50 巻 6 号 p. 533-541
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    気象要素,特に風と雲の運動を客観解析し,その気象学的価値を改良するための若干の技術について述べる.一例として,気象衛星で観測した熱帯地方の雲のパターンを,うず度と発散の場及びそれに関連して風の場を修正するために,どのように利用できるかを示す.数値モデルに用いるための,発散の鉛直方向の調整法と数値的移流法を開発した.予備的な予報結果を示した.熱帯地方の数値予報モデルにインプットするために,各種の気象衛星資料と通常の観測資料を結びつけるための計画を提案する.
  • シエル I.I.
    1972 年 50 巻 6 号 p. 542-557
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    北太平洋北西部における12月-3月期の大規模な海氷状況•海面水温アノマリーの同期間の12月-3月期,およびそれにひきつづく4月-6月,7月-9月,10月-12月期の北東太平洋,日本北部,ソ運極東域の天候,つまり,気圧分布,低気圧頻度,気温,降水量に対する影響を解析し,前者の後者に対する先行的現象としての重要性を指摘する.
  • その I
    二宮 洸三, 秋山 孝子
    1972 年 50 巻 6 号 p. 558-569
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    梅雨前線帯の大雨レーダー解析はすでに数多くなされているが,現在まだ梅雨前線の総観的エコーモデルは得られていない.それはケーススタデイの多くが,おもに大雨域の大雨期間においてのみ行われ,大雨にともなうエコー分布とその時間的変化を総合的に把握していなかったからである.
    この報告では7箇所の気象レーダー(凌風丸•種子ケ島•背振山•広島•室戸•名古屋•富士山レーダー)のPPI観測により,九州西方海域,西および中部日本列島を包む,広域合成エコー分布図を,総観規模低気圧波動の一週期に相当する,1969年7月3日~6日の期間について作製し,これによって大雨をともなう梅前線のエコー分布とその時間的変化を記述する.
    活発なエコーは梅雨前線帯に一様に分布しているものではなく,また総観規模低気圧の近傍に組織化されているものでもない.エコーは直径2~300km,間隔数100kmの中間規模エコークラスターに組織化されているのが大きな特徴である.クラスターは低気圧の後面にも存在するが,著しく発達するクラスター(複数)は低気圧東方に位置するものである.
    直接大雨をもたらすメソスケールの豪雨セルは,これらのクラスター内に発生する.詳細な地上天気図の解析により,クラスター中心にisallobaric lowと低気圧性循環が見出される.上記の特徴はこのケースのみに見出される特殊なものではなく,他の実例としてかかげた.1968年7月10日および1969年7月7日の梅雨前線帯にも認められるものであった.したがって,ここに記述した中間規模エコークラスターの特徴は,一つの典型的な梅雨前線の特徴と考えたい.(梅雨前線の典型的なエコー分布としてはこれ以外にもいくつかのタイプがあるであろうが).
    また広域合成エコー天気図によって,単一のレーダーのみでは充分に認識されえない梅雨前線上の現象がよりよく理解されることを強調したい.
    本報告は気象研究所梅雨末期集中豪雨特別研究の一部としてなされたものである.
  • 近藤 純正
    1972 年 50 巻 6 号 p. 570-576
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    長期間平均の運動量,顕熱および蒸発の潜熱の輸送量は微気象観測から得られた輸送係数を用いるいわゆるバルク法の式だけで表現することができなくて,更に,風速のvariance,風速と海面•大気間の温度差または水蒸気圧差とのcovariance,および風速と温度差または水蒸気圧差でつくる3次相関の項も含まれる.
    12ケ所に居る定点観測船の資料を解析した結果,次のことがわかった.1日程度以下の短かい平均時間の場合は,いわゆるバルク法の式だけでフラックスは近似的に与えられるが,数日以上の長い期間の平均値の場合は近似は相当悪くなる.
    ところで,風速の変動成分の大きさは平均化時間の増加と共に単調に増加し,しかも各地点によってその形に顕著な差がないことから,運動量輸送量の長期平均値は有効輸送係数を用いるバルク法の式だけで近似的に与えられる.
    有効輸送係数はもとの輸送係数の1.3倍(3ケ月平均の場合)または1.2倍(1週間平均の場合)程度である.それに対して,顕熱や潜熱の輸送量に関しては,一定の有効輸送係数を用いることができない.この事実は,熱収支の方法からもとめた有効輸送係数が,地域や期間によってばらついた結果を生むことを示す.今回の解析から,このばらつきは特別の場合を除き,多くの場合,±30%程度と見込まれる.
  • 梶川 正弘
    1972 年 50 巻 6 号 p. 577-584
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    静止空気中を落下する雪結晶のストロボ写真から,その落下速度が測定された.同時に対応する結晶の大きさと質量も測定された.
    板状の結晶については,大きさ0.15mm∼1.8mmの範囲で,厚板,角板,扇形,広幅,樹枝,星状の各結晶形に対して,落下速度と大きさとの関係が得られた.他に角柱の測定もなされた.これらの測定値と,質量,大きさ,形をもとにして,厚い円板と有限円柱の模型実験による抵抗係数を与えて計算した値とを比較した結果,良い一致が得られた.従って,このような計算法は,板状および角柱状の雪結晶の落下速度の計算に適用できることが確かめられた.
  • セギナー イド
    1972 年 50 巻 6 号 p. 585-587
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
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