気象集誌. 第2輯
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52 巻, 1 号
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  • 木田 秀次
    1974 年 52 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    自由表面バロトロピック大気モデルをもちいて,球面格子系の数値積分上の問題を検討した.差分スキームは全エネルギー,全絶対角運動量および全質量が保存するものである.ここで提案されている球面格子系は計算不安定をさけるために極付近の格子系が間引かれているが,十分に長い数値時間積分に耐えられ,計算ノイズらも実質上問題にならない.そして,それはまた,格子数がおよそ8倍の分解能をもつKurihara-typeの格子系に比べても精度の点で問題にすべきほど劣るということはない.従って大規模運動の数値実験をするときに,簡単な球面格子系として使うことも可能である.
  • 新田 尚, 山本 純一
    1974 年 52 巻 1 号 p. 11-31
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    先に新田•山本(1973)が行った,5年間にわたる日本付近に発生する中間規模じょう乱の統計的調査の資料から,7例を選んで,じょう乱の総観的構造についてのケース•スタディを行った.
    簡単な解析的手法を用いて,空間平均からの偏差を高度場と気温場について求めた.経度-高度および緯度-高度の各面について,低気圧中心を通る偏差の断面図を作成した.これらの断面図より日本付近にみられる中間規模じょう乱には,便宜的に大別して次の4種類のものがあることがわかった.
    第1の型:低気圧の東側に暖気が,西側に寒気が存在する.谷の軸が,下部対流圏で高度と共に西傾している.低気圧中心の上方の中部対流圏に,集中した暖域が観測される.
    第2の型:下部対流圏の総観的構造は第1の型に類似しているが,中部対流圏の暖気はひろがっており,漠然としている.
    第3の型:下部対流圏の鉛直構造は第1および第2の型に類似しているが,低気圧中心の上方の中部対流圏には寒気が観測される.
    第4の型:第1,第2および第3の型とは異なり,低気圧の東側に寒気が,西側に暖気が存在する.谷の軸は,高度と共に東傾の傾向を示す.低気圧中心の上方の中部対流圏には寒気が存在する.
    第4の型と他の3つの型の間の違いは特に著るしい.中間規模じょう乱の生成と展開についても,気圧配置を中心に例示した.
  • 真木 太一
    1974 年 52 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    安定状態下における大気乱流特性の観測が,南極昭和基地において1970年2月から12月までの期間にわたって行なわれた.大気乱流特性は接地気層中の安定度すなわちリチャードソンナンバー(Ri)と関連づけて解析された.得られた結果は主として次のようなことである.
    約10度傾斜した斜面上で,20m高度における垂直方向の平均風速は,水平縦方向の平均風速の約1/3である.水平縦•横および垂直方向の風速変動の標準偏差は,Riの増加に対して減少する.また摩擦速度に対する水平縦•横および垂直方向の風速変動の標準偏差の比は,Riに対して独立した一定値を取る.エネルギー逸散率は,Riの約0.5乗に比例して増加する.大気乱流の平均的な渦の大きさは,縦:横:高さ=6.3:1.9:1の細長い立体で表わされる.最大乱子の大きさは,Riに対して独立しており,最小乱子の大きさは,Riの増加に対して増加する.水平成分縦方向の最大スペクトル密度の無次元周波数は,Riの増加に対して増加する.一方,水平成分横方向のそれは, Riに対して独立しており,垂直方向のそれは,Riの増加に対して減少することが分かった.
  • 塩月 善晴
    1974 年 52 巻 1 号 p. 42-60
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Marshall-Palmer分布に較べて,小雨滴および大雨滴の空間密度が著しく大きく,中雨滴の範囲でむしろ平坦な雨滴粒度分布が,梅雨末期の発達した対流性降雨において観測された.これらは一雨のはじまりの頃に顕著に見られ,更に一雨全体の平均粒度分布においてもその特徴は残っている.従って,得られる各種のrain-parameterは多数の大雨滴の存在のために,これ迄報告されているものとはやや異った値を示した.
    併行して行なわれたレーダー観測によると,これらの雨滴をもたらしたエコーは興味ある構造をなしていた.すなわちそのエコーは,最初独立に成長した別々のエコーの重なりによって形成されるものであって,その直後の反射強度の増大で特徴づけられる.
    力学的には不明であるが,本報告ではまず,エコーの重なりは雲内の多数のサーマル同志の衝突による含水量増大をもたらすと仮定して,雨滴の併合と分裂の作用の下での一次元モデルにより数値実験が行なわれた.そこでは成長するサーマル内の粒度分布に対して,一定の含水量をもつ粒度分布を仮想的に断続的に重合させた.その結果,中雨滴付近の平坦な分布と,直径1mm以下の雨滴の大きな空間密度をも表現でき,観測された一雨の平均粒度分布に近いものが得られた.
    次に一次元sedimentationモデルによって,雨滴の落下によるふるい分けの効果を調べたところ,人吉の平均粒度分布の如く既に成長した粒度分布を上空に仮定した場合,対流性降雨の初めに度々測される極めて平坦な分布を表現できた.
    更に,これらの計算による分布から導かれるZ-R関係は,人吉での観測によるZ-R関係とよく似ている.
  • 山本 義一, 田中 正之, 太田 幸雄
    1974 年 52 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    混濁大気中の太陽光の放射伝達方程式を逐次近似法を用いて解くことにより,可視領域でのエアロゾルの日射吸収による大気の加熱率を評価した.地表面反射率とエアロゾルの粒度分布および高度分布としては,できるだけ現実的なものを仮定し,大気混濁度とエアロゾルの複素屈折率の虚数部の値を変数として,春秋分時の一日あたりの加熱率
    の緯度一高度分布を求めた.得られた結果によると,加熱率は低緯度の対流圏下層で急激に大きくなっており,またその値は水蒸気や二酸化炭素の日射吸収による加熱率とほぼ同じ程度の大きさになっている.しかしまた,この加熱率は,エアロゾルの複素屈折率の虚数部の値によって非常に大きく違っており,このことから,現実の大気の加熱率を求める上で,エアロゾルの複素屈折率の虚数部の値をより正確に決めることが非常に重要な問題となる.計算結果によると,ネットフラックスの高度分布の観測からエアロゾルの複素屈折率の虚数部を決定する可能性がある.
  • 吉住 禎夫, 北岡 龍海
    1974 年 52 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    エコーゾンデ観測により得られた静力学的算定高度と直接測定された高度との比較を行う.両者間に系統的な差が存在し,対流圏内では200mの大きさである.系統的な高度差は観測点により違い,このことは,乳井と松橋(1967)によって指摘されているように,直接測定値に系統的な誤差が含まれていることを示唆しているようである.
    異常な高度差が観測された場合の気象条件の特徴を調べると,リチャードソン数の小さな乾燥域で起っていることが示される.このことは,異常な高度が最近のレーダー観測により晴天中に見出される波動じょう乱に伴うものである可能性を示唆する.
  • 井上 栄一
    1974 年 52 巻 1 号 p. 79-81
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 安達 隆史
    1974 年 52 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    著者は1971年に南極昭和基地(69°00'S,39°35'E)で,超音波風速温度計を用いて接地気層の乱流観測を行った.観測タワー周辺は約4°傾いて,風下が高くなっている地形であり,平均風はほぼこの傾斜面に沿って平行に吹いていることがわかった.この程度の傾きの場合でも,座標軸を3次元平均風ベクトルの方向,それと直角水平方向,直角上方にとった度標系と,従来通り座標軸を,水平縦方向,水平横方向,鉛直方向にとった座標系とでは,その違いが特に鉛直方向の風速変動の標準偏差(σω)と摩擦速度(u*)にあらわれ,σω/u*はかなり変化することがわかった.
    また,気温変動の標準偏差,縦方向のheat flux,横方向のmomentum fluxも求めた.
  • 森田 恭弘
    1974 年 52 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 児島 紘, 関川 俊男, 田中 文夫
    1974 年 52 巻 1 号 p. 90-92
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • John H. E. Clark
    1974 年 52 巻 1 号 p. 143-163
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    プラネタリー波動の準共振的発達が帯状平均流と温度場に及ぼす二次効果を二層モデルを用いて調べた.:LineardragとNewtonian coolingによる減衰を許し,二つの垂直壁にかこまれた中緯度β平面上での計算を行った.線型(一次近似)の解は子午面内での運動量輸送をもたらさない.断熱二層モデルに含まれる三種の中立モードはそれぞれ基本風速場の構造に応じた共振をする.減衰の時間スケールが2日の場合には準共振による応答は無視出来るほど小さいので,時間スケールとして4日という値を用いた.
    二層にわわたるロスビー波の共振の場合,強い西風帯状流は二次効果の殆どをスケールハイトの数倍の下層のみに限定せしめ,そこで帯状流の東風加速をもたらす.
    適当な強さの西風が弱い西風の上にある場合に生ずる共振は上層の東風加速を約二週間程度で非常に速く起こす.第三の共振は西風の上に東風の存在する場合に生じ,極附近での急速な温度上昇をもたらす.
    これらの計算結果はある基本風速場の構造に応じて生ずる波動-帯状流相互作用の共振励起が成層圏突然昇温の機構の説明になるかも知れないことを示唆している.
    昇温が何時起きるかは,平均帯状流が下層から来る僅かのプラネタリー波動のエネルギー流入に応じて充分な二次効果を生ずるようなうまい構造になっているかどうかで決るものと想像される.更に,最初の昇温がそのまま大きな昇温現象にまで至るかどうかは,帯状流の構造が引き続き共振を生ずるように変ってゆくか否かによるであろうことも推論される.
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