気象集誌. 第2輯
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54 巻, 6 号
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  • 松尾 細道, 瓜生 道也, 沢田 竜吉
    1976 年 54 巻 6 号 p. 339-350
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    半径方向に温度差をもつ回転水槽内にみられる傾圧波動の温度構造を調べた。
    温度波動の最大振幅は,Eady型の波動にともなって,上層部に現れるが,最下層には二次的な振幅の極大値がみられる。後者は,その位相軸が高さと共に前方(回転方向)に傾いているところから,Eady型の波動とは別種のものと考えられる。
    回転速度を増しても波数が変らない時は,温度波動の振幅が増大する。しかし,これは最大振幅が現れる高度より下層の状況で,これより上層では回転速度による変化はほとんどみられない。
    一定の回転速度の下でも異なる波数の波動が生じ,それぞれ異なった温度の分布をともなうが,それらの間には一定の関係があるようにみえる。大きい回転速度の下に生ずる大きな波数の場合の温度分布が,小さな回転速度で生ずる小さな波数の波動の温度分布に似る傾向を示す。
    帯状平均の温度の分布は,鉛直方向及び半径方向共にほぼ全域で一定である。この温度傾度は,上層の外側壁及び下層の内側壁近くを除き,回転速度の変化及び波数の違いに依ってもほとんど変らない。
  • 尾堂 克明
    1976 年 54 巻 6 号 p. 351-360
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1968年12月-1969年4月の熱帯西太平洋における約10日周期の成層圏波動擾乱について解析を行なった。この周期帯には反対方向へ伝播する2種類の擾乱が見られる。ひとつはKelvin波で40mbより下層で卓越する。もうひとつは40mbより上層で検出され,風速の東西および南北成分の変動を伴なう西進波であり, n=1Rossby波と見なされる。この2種類の擾乱の鉛直構造をLindzen(1971,1972)の理論に基づく計算結果と比較した。従来の研究から,Kelvin波が見られる時期に西風シヤ層の上層と下層とにおいて擾乱の構造が異なることが知られていたが,今回の解析は,この構造の相異はRossby波とKelvin波とが混在しているためであることを示唆する。
  • 二宮 洸三
    1976 年 54 巻 6 号 p. 361-369
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    黒潮海域で変質をうける寒気の混合層の熱的構造と熱エネルギー収支については,前報(二宮•秋山1976)で詳しく報告した。本報告では,著しい気団変質の行われている混合層内部での,特徴的な風速分布と運動量•運動エネルギーの収支状況を調べる。解析はAMTEX'74および75から,えらんだ,"準定常的な混合層"のあらわれた典型的な3回の寒気吹出期間について行われる。
    混合層中の水平気温傾度は大きく(~3°/100km)したがって,強い地衡風の垂直シアーがあるが,観測された風速分布は,混合層内ではほぼ一様である(北風)。混合層下部では,強い非衡風成分は,低圧側にむかうが,逆に混合層上部では,非地衡風成分は,高圧側にむかう。この特徴的な分布は,運動量の強い垂直混合を示すものと考えられる.
    混合層の卓越風向について運動量収支は,下層で,強い(~5×10-4m/sec-2) frictional force のあることを示している。また stress *yは,混合層中層で,~2 dynn/cm2(南風成分の運動量の下むき輸送)の大きさを示す。この大きな運動量輸送が,シアー∂v/∂p*の殆どない中層でみられることは,興味深い。混合層の下部(p*=0~125mb)では,大きな運動エネルギーのgeneration と frictional loss が平衡している。混合層の上部(125mb~200 mb)では,高気圧側にむかう非地衡風成分のために generation は負の値をとり,これと,運動エネルギーの実質的変化(dK/dtが負)とが釣合う。混合層での generation と frictional loss は,それぞれ,平均して±4~3watts/m2である。
    上記したのは,AMTEX全域についての平均的状況であるが, AMTEX海域の西部と東部ではかなり様相が異なる。西部は,寒気吹出の anticyclonic branch に相当し,海面からの熱補給も大きい。東部はcyclonic branchに相当し,熱補給は小さい。下層での非地衡風成分は西部で著しく(地上風と等圧線の角度は50。に達っする),したがって generation, frictional loss も大きい。これに対して東部では,非地衡風成分は比較的小さく, genera-tion, frictional loss も大きくない。
    上記した風速分布や運動エネルギー収支の特徴は気団変質の過程とどのように関係づけて理解すべきであろうか?熱補給を受け,湿潤不安定化する気団で積雲対流が発達する。積雲対流により,運動量の垂直混合がおこり,これは,下層での強い非地衡風的な北風の出現と関係がある。運動エネルギーの generation と frictional loss はほぼ釣合っており,この北風はほぼ定常に保たれる。一方,下層の北風は混合層中の,強いcold-dry advectionをひきおこし,これが海面からの熱•水蒸気補給とバランスして,大きな空温度差を維持する。このため著しい気団変質と移流にもかかわらず,熱的にも準定常的状態が続くのである。
  • L.Krishna Murty
    1976 年 54 巻 6 号 p. 370-381
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    AMTEX 75(1975年2月14日~28日)期間の熱•収支解析を行った。解析は,全期間•undisturbed period•disturbed periodの3つの異ったケースについて行われた。
    全期間の平均状態としては,80mb近傍に逆転層があり,かつその附近で下降流が極大値をとる。 apparent moisture sourceはこの高度附近で極大値を示すが, apparent heat sourceは極小値を示した。
    disturbed period(AMTEX地域の北に低気圧があり,温い南風の状況)では,逆転層はない。750mb近傍に著しいapparent moisture sinkがあり,そこでは,上昇流の極大とapparent heat sourceの極大がみられる。
    undisturbed periodは,冷い北風に特徴づけられ,全期間の平均状態に類似しており,逆転面下面附近(~800mb)にapparent moisture sourceがある。
    海面からの熱エネルギーの補給量は,平均,870ly day-1であり,これはbulk aerodynamic法による推定値と一致している。補給量は寒気吹出時には,1200ly day-1におよぶが, disturbed periodでは140ly day-1にすぎない。
  • 近藤 純正
    1976 年 54 巻 6 号 p. 382-398
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1974年と1975年の気団変質の観測(AMTEX)データをもとにして,黄海と東支那海周辺海域の熱収支と海面応力を,主として空気力学的方法を用いて評価した。それによると,海面が大気へ失ない顕熱と潜熱(H+lE)は海洋熱(海洋)の横方向の乱流と黒潮によって運ばれる熱によって,大体補償されている。放射と海中貯熱量は二次的な役割をはたしている。なお,その他の主な結果は以下の通り。
    (1) 6角形に選んだAMTEX海域内でみると,H+lEの全期間の平均値は,1974年では平年値の約86%であったが,1975年では約132%であった。これは主として,“cold”periodの長さのちがいによるものである。いつれの年も“cold”periodの最盛日には,700~800W•m-2=1440~16501y•day-1,“warm”periodには100~200W•m-2程度である。
    (2) 次に,南西諸島には,ほぼ2週間に1回の割合で大陸から寒波がやってくるが,この時黒潮に沿って,最大1,000W•m-2にも達するほどの熱放出が見られる。しかし浅い大陸棚上では海洋熱の影響も弱く,水温が低いこともあって,熱放出量は少ない。一方,風が海面に及ぼすstressは熱収支分布図とは異った分布であるが,最大約0.4N•m-2(=•4dyne•cm-2)をこえる。この値は100mの厚さの海水を1日当り35cm•s-1の割合で加速する力,またはEkmanの輸送で表現すると8cm•s-1×100mの水の容積運搬速度に相当する。
    (3) 海面のボーエン比(H/lE)を調べて見ると,黄海では0.8,黒潮域では0.4,更にその南方では0.1と云い具合に南に行くほど小さくなる傾向を示す。この事は大陸からの寒波は北方海域で,まつ(相対的に),気温が上昇し,その後で十分水蒸気の補給を受けると云い形で気団変質がおこっている事を意味する。
    (4) 熱収支式の残余項は海洋の熱収束であるから,これを或る海域について積分した熱はこの海域へ運ぼれた海洋熱に相当する。この値と水温水平分布から海洋熱拡散係数が1×108cm2•S-1と評価された。
    (5) 熱収支分布の形から,黄海に反時計まわりの循環流の存在が予測される。黄海に入る海洋熱はF=1.7×1013Wであるが,これが,もしも単一循環流だけによるものと見なすならば,その循環の平均速度はV1=10cm•s-1となり,黄海水の「滞留時間」はt1=160日,程度と評価される。
  • 武田 喬男, 今井 博雄
    1976 年 54 巻 6 号 p. 399-406
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1972年9月14日,2個の長続きしたセル状エコーが尾鷲附近の数10個のセル状エコーの中に見出された。約3分毎に撮影されたPPIレーダー写真をもとに,この2個のエコーの挙動を調べた。いずれもが殆んど同じコースをとって上陸したが,移動速度は陸に近づくにつれだんだんおそくなった。これらは初めから孤立したエコーとして生成したものでなく,尾鷲から東南東100kmの海上に現われたセル状エコーの群の中で形成された。このエコー群の中で,新しいエコーは古いものの後側に出来る傾向にあったが,いったん長続きするエコーが形成された後は,新しいエコーは古いエコーの前方に見られるようになった。解析にもとづき,組織化された対流性降水雲の形成機構を議論する。
  • 次元対流モデルによる考察
    椎野 純一
    1976 年 54 巻 6 号 p. 407-426
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    尾鷲の強雨時における対流雲の問題を, dynamic entrainment及び簡単な雲物理過程を考慮した積雲対流に関する準定常一次元jetモデルを用いて調べた。
    本稿では尾鷲の強雨に関する特徴的なメカニズムの一つは仮説的にsubcloud layerにおける水平収束にあり,雲底の上昇流はそれを反映しているものと仮定した。モデルから得られる雲頂高度や諸要素の鉛直分布はbubbleモデル等と異り雲底の上昇速度の大きさに依存する。1971年8月30日のケースを例に雲頂高度について観測値とモデル
    による計算値とを比較した結果かなり良い一致が示される。これを基に最近10年間の強雨51ケースをとりあげ,この時モデルから得られる対流雲の雲頂高度を調べた結果次のことが言える。(1)雲底の上昇流を2m/s以内,また温度超過なしと仮定すると大部分の雲頂高度は5km以下となり,6kmを越えるものは非常に少い。(2)雲頂高度の頻度分布は1km以上の雲についてみると全くat randomと言うより1~2km及び3~4kmの範囲に比較的集中しているように見える。
    以上の結果から尾鷲で強雨がある場合その付近には雲頂高度が5km以下の小規模対流雲がかなりの頻度で発生していることが推定される。
  • 今 久, 孫野 長治
    1976 年 54 巻 6 号 p. 427-435
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    混合すると反応によって熱を放出するアンモニアガスと塩化水素ガスを使用してThermalのモデル実験を行った。塩化アンモニウムの白煙(Thermal)は反応熱の放出によって成長しながら上昇する。
    Thermalは反応の時期に強く成長する傾向を持ち広がりの角はThermal ToPの高さに逆比例した。そのような傾向は天然の積雲においても観測された。エントレーメントの係数は0.24であった。この値はMcCarthyの観測による値0.3とよく一致している。Thermalのフルード数は4.0と見積られた。この値は全浮力一定のThermalより大きかった。
  • 竹内 利雄, 仲野 黄, 山本 豊
    1976 年 54 巻 6 号 p. 436-440
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1972/73の冬から75/76の冬にかけて,北陸地方で冬の雷観測を行なったが,ここでは落雷に関する報告をする。冬の落雷は多くの場合,夏の落雷と反対に雲中の正電荷を中和する放電であることが判明した。又1例であるが,高さが15cm以下の物体から出発する上向きストリーマーで始る落雷が観測された。この非常に特殊な形の落雷の存在は,送電線への雷害の点で重要な意義があるので今後の研究をすすめたい。
  • 仲野 貢
    1976 年 54 巻 6 号 p. 441-447
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    雷鳴の測定から雷雲内の放電路を求め,その方向と雷雨の特性との関係を調べた。対地放電の放電路は雷雲内では水平方向に上層の風の風下側に広がっていることがわかった。水平面内での放電路の方向の分布は,雷雨の移動速度と関係していて,放電路の方向は移動速度が大きいほど,風下側に集中する傾向のあることが見出された。また放電路の仰角の分布は雷雨中の上昇流の強さに依存する放電頻度と関係していることがわかった。
  • 高橋 忠司
    1976 年 54 巻 6 号 p. 448-453
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    自由落下中に凍結し,変形した水滴の結晶構造を観察し,変形と結晶構造の間に次のような関係があることがわかった。凍結水滴の破片のほとんどはC軸に直角な破面を持つ半球状の単結晶である。このことから,shatteringは水滴が単結晶に凍結するときにおこりやすいことがわかる。一方,spikeは水滴が多結晶に凍結したものに多く見出され,その場合,多結晶の結晶の境界面から突出している。
  • 山形 俊男, 河野 次朗
    1976 年 54 巻 6 号 p. 454-456
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
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