気象集誌. 第2輯
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56 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 新野 宏
    1978 年 56 巻 6 号 p. 527-547
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    回転流体中において鉛直下向きに注入された乱流ジェットの性質及びそのジェットによってひきおこされる二次流れの性質を室内実験と線形論により調べた。室内実験によって得られた主な結果をまとめると次のようになる。
    1) 回転流体中においては,ジェットの先端の進む速度は静止流体中のそれに較べて小さい。
    2) 回転流体中では,ジェットのもととなる流体の注入を停止したときに顕著な上昇流が生ずる。
    3) ジェットによってひきおこされる二次流れはジェットの先端より十分下のレベルまでは及ばない。
    ジェットによってひきおこされる二次流れの構造は,二次元の層流ジェットを仮定した線形論によって定性的に説明することが可能である。
    鉛直速度の抑制は,Barcilon(1969b)及びWilkins et al.(1971a)によって考えられたように,回転している流体粒子に働く遠心力と水平方向につりあった気圧傾度力がジェットの進向方向と逆向き(上向き)の成分を持つ為におこる。この上向きの気圧傾度力の存在は1)•2)の結果をうまく説明する。3)の結果はノズル付近の収束場に伴う低圧がジェットの先端付近の発散場に伴う高圧とほとんど打消し合い,ジェットの十分下での圧力の摂動をほとんど0にしていることを示唆している。
  • 宮原 三郎
    1978 年 56 巻 6 号 p. 548-558
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    下部熱圏に於ける平均流の生成について,潮汐波,特に1日太陽潮第1モード(S11モード)並びに半日潮の第2対称モード(S42モード)による平均帯状運動量の誘導と伝達の観点から議論する。これらの潮汐波の振幅には理論,及び観測から得られている値を与えて,Miyahara(1978)と同様に初期値問題として数値積分を行う。
    これらの潮汐波,•特にS11モードによって一60m/sec程度の強い東風が赤道上105km付近に誘導され,また同じ高度の中緯度に30m/sec程度の西風が誘導される事が示される。これは,観測による下部熱圏の平均帯状流分布(CIRA,1972)と良く一致している。この結果は,下部熱圏の平均帯状流が,下層で励起された大気潮汐波(特にS11モード)によって作られている事を示している。
  • 数値実験
    浅井 冨雄, 光本 茂記
    1978 年 56 巻 6 号 p. 559-570
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    平野部の背後にある斜面が海陸風循環に及ぼす地形効果について,地形を単純化した数値モデルを用いて調べ,次の結果が得られた。(1)斜面の表面温度が平野と同様に日周期で変化する時,海風や陸風は増幅され,海風と陸風の交替は平坦な陸地上の海陸風よりも早く起こる。(2)斜面が単に障壁として作用する場合には,海風,陸風共に減衰し,循環領域は海と平野部に限定される。(1)の場合の物理過程をより明らかにするために,非定常な斜面風に対する線型微分方程式の解を調べた。その結果,(1)の場合の海陸風は,平坦陸地での海陸風に比べて強くかつ位相の進んでいる斜面風によって変形されていことがわかった。
    有効位置エネルギーの供給量とそれが運動エネルギーに変換される効率をそれぞれの場合について比べてみると,表面温度の変化する斜面のある場合に最大の供給量があり,しかも変換効率も最も高いことがわかった。
  • 大河内 芳雄
    1978 年 56 巻 6 号 p. 571-583
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    先に提案した多重ネステッド格子系を台風の中心と共に移動させるシステムとし,σ系,3層プリミティブ方程式モデルに適用した(MNGと略称)。最大格子間隔は60°Nで38工kmとし,内側の格子間隔は順次半減させた。内部葎域の交面境界はtwo-way法で結合した。時間積分にはEuler-backward法を適用した。積雲対流効果としてHarrison型の円対称熱関数を組み込んだ。
    今回のテストの目的は,提案されたMNGの計算安定性とその適応性を調べることで,実際の台風について計鍔された。初期値は客観解析から得られた一般場にモデル台風のプロフィルを重ねて作成した。モデル台風の3次元樟造は台風半径,中心気圧,地上最大風速などの実測値及び平均的気温偏筒などから推定した。細かい格子上の一般場は最大格子の値から順次内挿して決めた。
    テストに用いたのは台風7609号,7617号,7709号及び7711号である。これらの台風の進路は比較的複雑で,ルーチンの力学モデルではあまり良く予測できなかったケースである。計算時間の関係で1例を除き他は総て3段階NNGを用いたが,進路予想はかなり改善された。特に,これまで予測の難かしかった転向点の予想がかなり適確に寿され,予報のおくれの問題もかなり改善されている。4段階MNGは1例だけテストされたが,簡単な初期値•熱屡数を用いたにも拘わらず,台風の3次元構造をかなり良くシミュレートしているようである。
  • Mao-Fou Wu
    1978 年 56 巻 6 号 p. 584-594
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気中の水蒸気場の年h変化を研究するために,北半球の五ケ年の比湿と風のデータを一ケ年毎に解析した。見出された主な点は:(1)大気中の年平均半球全可降水量は4%より多く変化しないこと;(2)緯度圏平均した東西輸送成分は比較的変動が少いが,緯度圏平均した南北輸送成分は,南向き流れの最大値が2倍くらい,北向き輸送の最大値が18%くらい変動すること;(3)ほとんど例外なく,年平均の東西および南北輸送成分地図における正および負の極大中心の位置は3緯経度より大きく変位しないが,中心の値の大きさは5ケ年の期間に大幅にかわること;(4)水蒸気量とその輸送量の変動度は,チベット高原,ロッキー山地,モンスーン活動および北太平洋高気圧の年々変位に影響されていることである。
  • 鈴木 国弘
    1978 年 56 巻 6 号 p. 595-601
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ゲルジェン•コンデンサー内部の電場における端効果を考察する。電極の端部分の近傍において,電場のポテンシャル方程式を差分方程式とし,緩和法を用いてポテンシャルを求めた。さらに,この電場内での大気イオンの運動方程式を解き,任意の初期条件を持ったイオンがゲルジェン•コンデンサーの入口でいかに外部にはじき出されるかを調べた。この端効果に対する補正を現実の装置のいろいろな測定にあたって評価した。これは電気伝導率計やモビリティ•スペクトル計に対しては小さく,小イオンの総数密度計に対してはきわめて大きいことがわかる。
  • 児島 紘
    1978 年 56 巻 6 号 p. 602-607
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ポラックカウンターで検出できるエアロゾルの最小半径(γL)を,白金線エアロゾル発生器,ポラックカウンター,そしてイオンアナライザーを用いて実験的に決定した。
    その結果,膨脹比1.21の標準の使用法で操作されたポラックカウンターのγLは,動力学半径の表示で1.3~1.4•10-7cmであった。その値は乾燥断熱変化を仮定して理論的に求めた値と近似的に一致した。
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