気象集誌. 第2輯
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57 巻, 6 号
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  • 余田 成男
    1979 年 57 巻 6 号 p. 493-504
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    水平温度差のある回転流体中の非線型傾圧波の力学的特性を調べるために,摩擦項と加熱項を含む2層準地衡スペクトルモデルを構成した。基本的にはLorenz(1963)のvacillationモデルと同じで,y方向(動径方向)には第mモードまで残し,β効果を含みうるものに拡張した。
    このモデルで,2つの数値実験を行なった。1つは4モード実験で,Lorenzモデルでは2つだけだったyモードを4つに増し,順圧過程を通しての高モードの役割を明らかにした。もう1つはβ平面実験で,有限振幅の傾圧波に対するβ効果を調べた。
    4モード実験では,irregularレジームを含む,回転水槽実験と定性的に一致する流れのレジームを得た。また,帯状平均流•運動量や熱の渦フラックス•エネルギーの時間変化の様子から,vacillationが,基本的には順圧過程と傾圧過程が交互に卓越することによって引き起こされているということがわかった。
    β効果に関しては,流れのレジー•ムに根本的な変化は生じないが,擾乱の移動速度が遅くなり,vacillationの周期がコリオリ因子一定の場合に比べて長くなるという影響があらわれた。
  • 和田 美鈴
    1979 年 57 巻 6 号 p. 505-531
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Arakawa and Schubert(1974)により提案されたパラメタリゼーションを用い,軸対称モデルにより台風の数値実験を行った。この論文の主目的は台風の発達過程及びその構造等がこのパラメタリゼーションによりうまくシミュレート出来るか否かを明らかにすることである。数値実験に用いられたモデルは自由大気層4層,混合層1層の5層モデルである。又積雲対流はその雲頂高度にしたがって3つの型に分類されている。すなわち,最も背の高いもの(H-型),中間のもの(M-型),最も背の低いもの(L-型)で,その雲頂高度はそれそれ13km,9km,5kmである。
    数値実験の結果はこのパラメタリゼーションにより台風の発達がよくシミュレート出来ることを示している。又その構造やパラメータ化した積雲のふるまい等も実際の台風でみられる特徴をよく表現している。眼及び眼の壁は中心付近で接線方向の風速が急速に強まる発達期に形成される。眼の壁は接線方向の風速が最も強い場所に位置している。眼の壁を形成している雲は初期には背の低い雲(M-型,L-型)も混在しているが,台風が発達するにしたがって,次第に背の高い雲(H-型)のみで占められるようになる。さらに眼の壁の外側でも雲は出現する。この外側の雲は伝播性をもっているのが特徴である。
    数値実験により地表摩擦の効果をしらべた。Yamasaki(1977b)がパラメター化しないモデルを用いて得た次の点がこのパラメター化したモデルでも得られた。(1)地表摩擦は眼及び眼の壁の形成に不可欠な要素である。(2)地表摩擦は渦度がまだ弱い初期の段階では,擾乱の発達にそれほど本質的ではない。この意味でこの数値実験により得られた台風はYamasaki(1977a)の台風に似た性質をもっている。
    台風をとりまく基本場がどのような状態にあるとき台風が発達しやすくなるかをみるため,初期条件,混合層のmoest static energyをいろいろにかえいくつかの数値実験を行った。その結果はH-型の雲に対するcloud workfunctionが多量に含まれる場の中では台風が急速に発達することを示している。
  • 宇加治 一雄
    1979 年 57 巻 6 号 p. 532-547
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    半径方向に電流を流すことにより,内部的に加熱した回転流体の運動を実験的に調べ,流れの熱的•力学的構造を明らかにした。
    内部加熱に特有の結果として以下のことが指摘される。
    (1)基本場の回転数Ωに対して,内壁への熱輸送量と渦擾乱のドリフトの速さは互いによく似た依存性を示し,どちらもほぼ同じ回転数Ωmで極小値に達する。
    (2)ΩがΩmより大きくなると,方位角方向に平均した温度は,内外壁付近よりも同じ高さの平均半径付近の方が高くなる。
    (3)軸対称な帯状流及びΩmより大きなΩで現れる波動の平均帯状流は,流体層の表面の広い範囲にわたって渦度の負の鉛直成分をもつ。
    (4)加熱量一定の条件下で,温度及び圧力擾乱の振幅はΩとともに増大するが,擾乱による外向きの熱輸送量はΩmの近くで最も活発になり,またこのとき,温度擾乱の軸は最も鉛直に近ずく。
    構造解析の結果,内部的には加熱された回転流体に生ずる渦擾乱はMatsuwo et al.(1976,1977)によって解析された外壁を加熱された回転流体中に生ずる傾圧不安定波と基本的に同じ構造をもつことが明らかになった。したがって,半径方向に温度勾配をもつ回転流体の主要な性質は冷•熱源の半径方向の配置の仕方にあまり影響されないというHide and Mason(1970)の指摘は,構造解析の立場から支持される。
  • 吉崎 正憲
    1979 年 57 巻 6 号 p. 548-559
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    振幅方程式を用いて,カーブした温度分布を持ち,しかもシアのある流れのある流体中に実現する対流セルの形状を調べた.温度分布の一次関数からのずれとシア流の強さ,および系のレーリー数の臨界値からのずれをパラメータとして,定常解を求めてその安定性を調べた.系のレーリー数のカーブした温度分布に対する臨界値からのずれを(ΔR)*とすると,次の事が明らかになった.(1)シアが弱い場合,2次元ロールは(ΔR)*が限られた領域でのみ不安定で存在しない.しかし,シアがある値以上強くなると,ロール解は(ΔR)*が正の領域で常に安定に存在する.(2)シアがない時に六角形セルに帰着する解は,シアが強まるにつれて,シアの方向に伸びたセルに変形してゆく.そしてシアがある値以上になると,この解は安定に存在しなくなる.
  • 近藤 裕昭, 岸保 勘三郎
    1979 年 57 巻 6 号 p. 560-575
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    昼間陸上に発達する混合層の海風循環に対する効果を山本の経験的乱流拡散形式を遷移層内に用いた二次元数値のモデルにより調べてみた。その結果,混合層がよく発達するときには,混合層が発達しない仮想的な場合に比べて,海風は強く,しかも海風前線の侵入速度が速くなることがわかった。さらに海陸風にともなう汚染物質の拡散過程をEuler的な手法と Lagrange的な手法の両方で調べてみた。海岸付近にのみ汚染源が存在するときには,海風が内陸に入るにつれて汚染源は混合層の外に残され,海風前線の上昇流が,混合層に汚染物質が入るのを妨げるために,混合層の中では汚染物質濃度があまり高くならないことがわかった。
  • 北出 武夫
    1979 年 57 巻 6 号 p. 576-586
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気中を移動する渦の進路を予報するのに適した数値時間積分の方法が提案される。この方法では移動する不等間隔格子が使われる。自由表面を持った順圧大気モデルが,この方法の精度と計算安定性を調べるために数値時間積分された。それらの結果は,一様でより細かい格子を使った従来の方法で行われた計算の結果と比較され,よい一致が得られた。
  • 秋山 孝子
    1979 年 57 巻 6 号 p. 587-598
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1968年7月8~12日,梅雨前線上に3箇の中間規模じょう乱が発達し,九州地方に,強い対流性降雨を降らせた。稠密な研究観測データーを使用し,それらのじょう乱内の成層状態の時間変動過程を対流活動との関連において,解析した。その結果を以下に要約する。
    1. 対流不安定は中間規模じょう乱の南東象限で形成される。
    2. この不安定の増大に,じょう乱の南側下層(900mb)でのθeの増大が大きく寄与している。中層(700mb)でのθe*の減少の役割は,副次的である。
    3. 下層の-υ∂θe/∂yと面積平均降雨量は,同位相の変動関係を示し,また(υ∂θe/∂y)900におう成層の不安定化は,観測された∂/∂t(∂θe/∂P)の大部分を説明している。
    4. 対流性強雨域の南縁部に,湿潤な不安定層(-≠θe/∂ρ~-3°K/100mb)がみられる。著しい不安定の蓄積(ある水準以上の)の後に豪雨が発生している。
    5. じょう乱中心部のゾンデデーターに,積雲パラメタリゼーションモデルを適用し,雲頂高度•massflux•安定度の変化を評価した。更に,実測面積平均雨量(~8mm/hour)を用いて,ωcおよび積雲対流による安定度の変化を,~40mb/hourおよび~0.8(°K/100mb)hour-1と評価した。評価された安定度の変化量は,観測された安定度の変化をよく説明しうるものである。
    6. このケース(豪雨)の成層変動状況と,tropical squall lineのそれとを比較した。対流活動後の中層でのθeの著しい増加は両域に共通している。一方,下層でのθeの著しい減少は,豪雨の場合には見られない。梅雨前線帯では,対流活動による下層のθeの減少は,前線帯へのθeの大規模水平移流によって埋合されるものと推測される。
  • 井澤 保男, 小野 晃
    1979 年 57 巻 6 号 p. 599-606
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    サブミクロン領域の個々の硝酸塩粒子を検出する方法を開発した。この方法は,硝酸イオンとニトロン薄膜の反応に基づいている。ニトロン薄膜はニトロンの真空蒸着によってつくられるが,このニトロン薄膜は真空蒸着の過程でも変質を受けていないことが,赤外線吸収スペクトルの測定によってわかった。個々の粒子中の硝酸塩とニトロン薄膜との反応を進めるためには,オクタノール飽和の雰囲気中への露出が適している。この反応条件で,個々の粒子中の硝酸塩の存在は針状結晶の集合体の析出によって示され,この反応は再現性がよい。そしてまた,大気中のエアロゾルに含まれる主要構成成分である硫酸イオン•塩素イオンによる妨害はなく,硝酸塩に対して特異的であり,この方法によると10-14gr以上の硝酸塩を含む粒子を検出できる。実際にこの方法を大気中のエアロゾルに適用してその有効性をたしかめることができた。
  • 工藤 達也
    1979 年 57 巻 6 号 p. 607
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 1979 年 57 巻 6 号 p. 608
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
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