気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
59 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 高橋 正明, 瓜生 道也
    1981 年 59 巻 6 号 p. 781-800
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    定常で散逸しつつある赤道波に伴う,定常なオイラーおよびラグランジュ平均運動を議論する。波は底面の凹凸の運動で励起し,時定数αのレーリー摩擦とニュートン冷却で散逸すると仮定し,平均流についても同じとする。考察する波はケルビン波,混合ロスビー重力波,n=1(n は南北のモード数)のロスビー波およびn=1の西向き伝播慣性重力波である。
    すべての赤道ノーマルモードの波について,オイラー平均子午面循環とラグランジュ平均子午面循環は共に赤道を越えない。この結果は,事柄が静止状態から始まるとすれば,波によってつくられる平均流の波への feed-back を考慮しても同じである。すなわち空気粒子が平均として赤道を越えるためには基本流の非対称性が必要である。
    ケルビン波の場合,ラグランジュ平均子午面循環はオイラー平均子午面循環と同じになることが示され,赤道上で下降流となることがわかる。又この場合,ブシネスク流体を仮定すると平均子午面循環はつくられない。他のモードの場合,ラグランジュ平均子午面循環はオイラー平均子午面循環に比べて簡単な構造になっている。例えば混合ロスビー重力波では オイラー平均子午面循環は半球で2細胞構造であるが,ラグランジュ平均子午循環は1細胞構造になっている。
    さらに,混合ロスビー重力波の場合,オイラー平均流において子午面方向の力のバランスが地衡風バランスから非常にずれていることが特筆される。
  • 北出 武夫
    1981 年 59 巻 6 号 p. 801-807
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気中における渦の移動をバロトロピックモデルの数値時間積分により調べた。Rossby(1948)により提出されたβ効果による軸対称正循環渦の北方への加速が,渦のサイズと渦の強さに比例することが確認された。しかし渦は初期の加速段階の後,ほぼ一定の速さで北に移動することが見い出された。その速さはβL02/U0<0.01の範囲で,近似的に0.52β0.6L01.2U00.4で表わされる。ここでβ, L0, U0はそれぞれコリオリ係数の南北変化の割合,渦のサイズ,渦の強さを表わす。
    さらに渦は平均移動経路のまわりに,ある種の振動をすることが見い出された。その周期はほぼ10時間から30時間の間にあったが,Yeh(1950)やKuo(1950)の理論から期待される振動周期のL0やU0との依存関係は必ずしも満たされなかった。
  • 久保 田効
    1981 年 59 巻 6 号 p. 808-824
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    北半球8日予想における雲の,放射過程を通しての影響を,実況を初期値とした4層北半球プリミティブ•モデルによる実験で追求した。モデルにおける雲として,次の三種を用いて,夏と冬の例について8日予想を行ない結果を比較した。雲がない場合(C0),4層共に100%の雲で覆われた場合(C1),各4層について予想された雲量(つまり予想された湿度の関数として与えた)を用いた場合。
    C0とC1による北半球8日予想の主な差異は,夏•冬の全域平均温位の鉛直分布,冬の下層気温や500mb高度の緯度変化に現われている。
    これらの差異は次の三つの雲の効果から生じたものと解釈することができる。すなわち(a)赤外放射に対する温室効果,(b)太陽放射に対するアルベド効果および(c)陸表面の顕熱•潜熱束に対する陸面効果である。温室効果は雲のない場合に比べて雲の上層を冷やし,雲の下層を温めるので対流圏を不安定化させる。アルベド効果は逆に雲の上層を温め,雲の下層の加熱を弱めるので対流圏を安定化させる。陸面効果は主として陸面による太陽放射吸収に基づくものであるから,雲によって下層大気の加熱を弱め,対流圏を安定化させる。雲のアルベド効果と陸面効果は陸上で且つ日中に限られているので,北半球8日予想の結果に与える雲の効果としては,温室効果が最も重要であることが分った。
  • 田中 実
    1981 年 59 巻 6 号 p. 825-831
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    MONEX地域において冬季モンスーンを1961年から1980年までの20年間について年々の変動を総観的に解析した。冬季モンスーンは熱帯大気の主変動であるWalker Circurationによって変動していることが分かった。シンガポール上空150mb面で観測される東風が強い冬は,冬季モンスーンが活発で南太平洋の海面気圧が高くジャワ島の南方の気圧が低い。またこのような冬はITCZが二本でき易い。冬季モンスーンが弱い年はITCZはニューギニア付近で一本にまとまる。MONEX年の冬もモンスーンが弱い冬であった。
  • 浅井 冨雄, 三浦 勇一
    1981 年 59 巻 6 号 p. 832-843
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    近年,本邦の気象レーダー観測網が整備されるとともに,本邦沿岸各地,とりわけ冬季日本海沿岸域で,しばしば中規模の渦状レーダーエコーパターンの観測が報告されるようになった。本論文では1968年2月9日早朝,福井レーダーで観測された3個の一連の渦状擾乱をとりあげ,観測データを可能な限り利用して得られた解析結果をまとめて報告する。数10kmから100kmの水平規模をもった擾乱は反時計廻りの風系をもち10-4~10-3s-1の正の渦度と~10-4s-1の水平速度収束を示す。地上付近では中心部の気圧は周辺に比して~1mb低く,低気圧を形成している。この場合初期から最盛期にかけて中心は周辺部より~1°C低い寒気で占められ,やがてその寒冷渦は暖気でおきかえられて消滅する。その寿命は数時間である。このような中規模渦状擾乱の見出された一般場は気温の水平勾配は顕著ではなく,フロントとしては検出し難いが,著しい風の低気圧性シアー,即ちシアーライン(ゾーン)の性状を示す。この種の擾乱の発生は低気圧性水平シアー帯のシアー不安定に起因するものと推測される。しかしながらそれを確認するには現在の観測資料では不十分であり,今後の追試を必要とする。
  • 椎野 純一, 青柳 二郎
    1981 年 59 巻 6 号 p. 844-863
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ディジタル変換処理装置を有するXバンドRHIレーダを用いてAMTEX'75期間中,東支那海の宮古島で観測された孤立海洋性積雲の発生直後から消滅に至るまでの雨水の分布を3次元的に解析した。また鉛直シアをもつ一般風の中でのエコーの移動と最盛期初期における雨水の収支についても若干の予備的な考察を行った。エコーの主な特徴は最大レーダ反射因子42dB,最大高度4.9km,ライフタイム40分程度である。得られた主な結果は次の通りである。(1)積雲はかなり長い"揺藍期"を伴っていたが発達そのものは非常に急速で,この間のエコー頂の上昇速度は約9m/sであった。(2)最盛期の間,大きなレーダ反射因子は最大エコー頂出現数分後3~4km高度でエコー全体のほぼ中心部に現れ,雨水の局所的な蓄積領域の存在を示唆していた。(3)一般風の鉛直シアにも拘らず,最盛期初期のレーダエコーは傾きが少く,かつ鉛直方向の水平断面積の変化も小さかった。(4)初期のエコーの水平の広がりに対し,最盛期初期のそれは約4倍,また衰弱期の最大の広がりは約7.5倍であった。(5)鉛直の風向変化が顕著な一般場の中にあって,最盛期のエコーは1km程度の極めて低高度の風の,風速に対しては0.4程度の比で,また中層の風に対しては左方向に移動していた。(6)最盛期初期における雨水の収支に関する予備的な考察によると,中層では周囲との混合や鉛直移流による減少を凌駕する程に雨水の生成が起る一方,上層では中層からの移流の効果は蒸発,相対落下,及び周囲との乱流混合によって相殺され,また下層雲底付近では蒸発が顕著であった。
    これまでの観測結果との比較も行った。
  • 武田 喬男, 村林 成
    1981 年 59 巻 6 号 p. 864-875
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    波長3.2cmの垂直レーダおよびRHIレーダを用いて非降水エコーの観測を名古屋において行なった。大部分の非降水エコーは点状エコーであった。個々の点状エコーの後方散乱断面積の値ならびに受信信号の時間的変化の記録より,その反射体は昆虫と思われる。点状エコーの出現数の日変化を詳細に調べたところ,混合層の発達•衰退と緊密な関係がありうることが示唆された。また点状エコーの水平方向の移動の速さは,弱風時には,風速と必ずしもあまり良い一致を示さなかった。
    また大気中の電波屈折率変動が原因と思われる非降水エコーが観測された。このエコーは内部重力波に伴った波状のエコーとして観測され,そのエコーの強度をCn2で評価すれば10-12cm-2/3程度になる。この値は安定成層中においても3.2cm波のレーダによって検知されうるほどの強い乱れが存在することの可能性を示唆している。
  • 高島 勉, 高山 陽三
    1981 年 59 巻 6 号 p. 876-891
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    赤外3.7μm窓領域(NOAA-6号衛星搭載AVHRR放射計の第3チャネル)において,海面温度と計算によって得られた衛星での輝度温度との差を中緯度帯の夏の場合について求めた。
    ここで大気をplane-parallelと仮定し,そこから出てくる放射を昼および夜の場合に計算によって求めた。この波長帯では太陽光の影響が大きいので昼間はこの点を考慮した。またデータの中で雲の影響はないと仮定した。大気中では水蒸気,窒素,酸化窒素,炭酸ガス,メタン,エーロゾルによる影響を考慮した。海面は,傾きがガウス分布している素面から成立しているとし,その傾きは表面風に等方的に依存しているものとした(Coxand Munk,1955)。海面とエーロゾルの屈折率は水のそれと仮定しHale and Querry(1973)によるものを用いた。大気中の吸収物質の透過率はWeinreb and Hill(1980)による方法を用い20cm-1の幅で計算した。大気-海面系の放射伝達の計算はTakashima et al.(1977)の方法によった。
    計算結果から3.7μm帯の昼間の観測によると鏡面反射方向から約15度離れた観測方向で大気の光学的厚さを求められることが判った。これは11μm帯の窓領域1チャネルでは大気の影響を直接評価できなかったが,3.7μmでは観測データより直接補正できる利点がある。事例として1979年8月2日のNOAA衛星データ(30°N,147°E)を用いて船による風のデータをもとに光学的厚さを求めたところ,船の視程観測と一致した結果を得た。またこの光学的厚さを他の観測域に適用して海面温度を求めるとSun glintの中心で1~2°K,他の領域で0.5°Kの測定精度を得た。なお,海面温度測定のより高い精度の評価には船での放射観測による表皮温度との比較が不可欠である。
  • 太田 幸雄, 大喜多 敏一, 加藤 千明, 加藤 千明
    1981 年 59 巻 6 号 p. 892-901
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    雲水の酸性化機構について数値計算を行った。雲粒は粒子状硫酸,硫酸塩,硝酸塩を凝結核として形成されるものとし,また,酸性及びアルカリ性ガスを吸収して非常に短い時間で気液平衡状態に達するものと仮定した。実際に観測によって求められた環境大気中のガス及びエアロゾル成分の濃度を初期濃度として計算を行ったところ,pH 3の雲水が得られた。このモデル計算によって,筑波山頂に.おいて観測された雲水のpH,雲水中のSO42-, NO3-及び他成分の濃度を非常によく再現することができる。
  • 宮原 三郎
    1981 年 59 巻 6 号 p. 902-905
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top