気象集誌. 第2輯
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60 巻, 4 号
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  • 第一部:衛星風の影響について
    住 明正
    1982 年 60 巻 4 号 p. 917-931
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    予報解析サイクルでの,静止気象衛星に基づく風のデータの影響を,normal mode theoryを応用して調べた。
    衛星の風の解析に及ぼす影響は,meridional indexの小さい,planetary scaleのexternal Rossby mode,特に,5 day waveと呼ばれるものに,大きく現われ,これは,予報期間の間にも維持され,西進していった。
    予報に及ぼす影響は,planetary scaleの影響と,synoptic scaleの影響とに大別出来る。前者は,いわゆる,"tropical effect"と関連し,また,解析の中で,予報誤差の垂直講造に,大きく依存する。後者は,一般場の変化を通した,傾圧不安定に基づくものであり,localな風の解析そのものに依存する。
    衛星の風を最も有効に使用するためには,衛星の風の精度を決めること,及び,衛星の風が覆う地域の,予報誤差の構造,特に,垂直構造を知ることが不可欠である。
  • 杉 正人, 金光 正郎
    1982 年 60 巻 4 号 p. 932-946
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    気象庁の8層北半球予報モデル(8L-NHM)を用いて,1979年7月下旬に北西太平洋の北緯20度付近を西進したupper level cycloneの予報実験を行なった。GMS (Geostationary Meterological Satellite) の雲画像から計算された上層と下層の雲移動ベクトルを,初期値解析の主要なデータとして用いた。
    1979年7月20日から23日までの00Zの解析を初期値とする4例の予報を行なった。一例を除いて,upper level cycloneの西進はかなりよく予報された。しかし,強さは実況より弱く予報された。この理由の一つとして,モデルの非断熱過程の扱い方に問題があるということが考えられる。このような欠点はあるが,モデルによる予報は,北西太平洋の upper level cyclone の現業的な予報に役立つと思われる。
    upper level cyclone の西進のメカニズムを調べるために,渦度方程式の各項が渦の移動にどの程度寄与しているかということをベクトルで表現する方法を考案した。この方法を適用した結果,この西進は一般流による渦の移流としてほとんど説明できることがわかった。ただし,発達期または衰弱期においては,発散の影響が大きくなるようである。
  • 阿部 成雄, 中沢 寧
    1982 年 60 巻 4 号 p. 947-955
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    今まで台風の移動について理論的,統計的研究は数多く,台風が一般流に流されるということは広く認められている。最近,台風の数値予報技術の進歩と共に気象衛星により常時台風位置の観測が可能になった。そこで我々は極東域において台風の移動を総観的立場から統計的に調べることを試みた。
    その結果いくつかの興味ある事実が得られた。
    (1)台風はほぼ一般流に流されるが,発達する台風は一般流から左に又衰弱する台風は右にそれる傾向がある。
    (2)特に発達中の台風では,上層で平均一般流について風の鉛直シヤーの反転が観測される。
  • 中村 力, 孫野 長治
    1982 年 60 巻 4 号 p. 956-966
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    昭和52年の冬に-40.8°Cという低温が北海道の母子里盆地で記録された。このシーズンの低温日の3例をえらんで北海道のメソスケール解析をした結果,地表最低気温の分布は,絶対値は異っていても分布の模様は3例とも同形であることがわかった。
    次に各地の雲量,高度や海岸からの距離を考慮し,積雪面付近の熱の垂直輸送を基礎にして日最低気温を計算したところ,前述の水平分布がよく再現された。しかし小さな盆地や狭い谷の部分の再現はよくなかった。これは,こういう複雑な地形における渦動拡散系数の見積り,とくに局地的な風速の見積りに原因があると考えられる。
    一般に風速が小さいほど雪面近傍の気温は降るが,百葉箱の高さの気温が降るには風速(地表9m高)が少くとも1m/s必要なことも計算で示された。
    北海道の盆地で冬期に極端な低温の発生には,夜の晴天•無風のほかに水蒸気量の絶対量が小さいことと積雪の熱伝導度の小さいことが重要と考えられる。
  • 武田 喬男, 礒野 謙治, 和田 誠, 石坂 隆, 岡田 菊夫, 藤吉 康志, 丸山 稔, 井沢 保男, 長屋 勝博
    1982 年 60 巻 4 号 p. 967-977
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    能登半島の輪島に設置じたRHIレーダーにより,対流性降雪雲が上陸する際に起る変質過程を定量的に観測した。主に2つの例(AおよびD)の降雪雲について,観測データの解析を行った。A例は低気圧通過後寒気吹き出しが強まっていく時期のものであり,D例は強い寒気吹き出しが定常的に起っている時期のものである。いずれの例においても,海上から移動してくる対流性降雪雲の殆んどが,2段階の変質過程を同じように示した。第1段階では,海岸前数kmのあたりでレーダーエコーの中心部が強まると共に下降する。この時,その前方にある別のエコー部分が上昇するが,これもまた海岸を越えると急速に下降する。第2段階の変質は上陸後に起り,レーダーエコーは広い領域にわたって再び徐々に強まる。第1段階では,地上であられが卓越して降り,第2段階では雪片が卓越して降ることが観測された。海側のレーダーエコーと内陸側のレーダーエコーの強度を比較した結果,A例では海岸部に比べて内陸部でより多くの降雪量があり,D例では逆に海岸部でより多くの降雪量がもたらされることが示唆された。
  • 第一部 凝結成長過程における雲粒について
    武田 喬男, 久芳 奈遠美
    1982 年 60 巻 4 号 p. 978-993
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    雲核の粒径分布•物質構成が雲底近くの雲粒粒径分布に与える影響を,断熱上昇する空気塊を用いた数値モデルにより調べた。とくに,雲粒粒径分布の幅を広くする因子について論じた。
    モデル実験の結果,達成される過飽和度がより低い空気塊において,より幅の広い雲粒粒径分布(平均半径に関する標準偏差がより大きい分布)が作られることがわかった。例えば雲核の数密度がより高い空気塊において,より幅の広い雲粒粒径分布ができる。また,人間活動によるエイトケンサイズの雲核の添加•空気塊の上昇速度がより遅いことなども雲粒粒径分布の幅をより広くする因子となる。小さい雲核上に凝結してできた雲粒は,その水溶液モル濃度が低いため凝結成長速度が過飽和度に強く依存する。一方,大きい雲核上にできた雲粒の成長速度は,その水溶液モル濃度が高いため溶質の効果により,過飽和度の変化に大きく左右されない。このため,過飽和度のより低い空気塊内では,大きい雲核上の雲粒の成長速度はあまり遅くならないのに対し小さい雲核上の雲粒の成長速度が遅くなり,より幅の広い雲粒粒径分布ができる。雲核が水に溶けない物質を中に含む混合核となっている場合については次のことがわかった。もし混合核の粒径分布が水溶性物質のみでできた雲核の粒径分布と同じであれば,混合核上に形成された雲粒の粒径分布は後者の上に形成されたものよりも幅の狭いものとなる。しかし,雲核の水溶性物質の質量分布が混合核と非混合核とで同じであれば,混合核上に形成された雲粒と非混合核上に形成された雲粒とでは,その粒径分布はほとんど異ならない。
  • T.S. Verma
    1982 年 60 巻 4 号 p. 994-999
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    The paper describes a laboratory study to investigate charge deposition by propagating positive streamers on ice particles. A variety of ice samples similar to those present in natural thundercloud was used in this study. It was found that the deposited charge increased with the ambient electric field showing an enhancement in the streamer tip charge. Some possible implications of the results to thundercloud are discussed.
  • 1982 年 60 巻 4 号 p. 1000b
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 60 巻 4 号 p. 1000a
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
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