気象集誌. 第2輯
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61 巻, 1 号
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  • I:帯状流と強制波の相互作用
    余田 成男
    1983 年 61 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    帯状流と地形による強制波および傾圧不安定波の間の非線型相互作用を調べるために,二層の準地衡風近似をした低次モデルを作成した。少数のスペクトル成分のみを残すことにより得られた連立非線型常微分方程式系である。第I部では,帯状流と強制波の相互作用に着目して,地形以外の規模の波は除外する。
    外部加熱による強制と摩擦による散逸のない保存系の場合について,平衡解を求め,波の振幅が無限大となる共鳴条件を調べた。次に,強制と散逸を含む非保存系の場合に,平衡解を求め解の多重性を調べた。この傾圧モデルでは,チャーニイとデボーア(1979)の順圧モデルで得られたような,複数の安定平衡解が同時に存在することはない。しかし,時間に依存する解の多重性が,ある外部パラメータの範囲で見つかった。全く同じ外部条件に対して,2つまたはそれ以上の安定な周期解(または非周期解)が存在し,その選択は初期条件のみに依存している。
    外部加熱のパラメータを少しずつ変化させて時間積分を繰り返したとき,安定周期解の周期が2倍•4倍•8倍……となって,やがて不規則な非周期解が出現する場合があった。低次モデルで,周期倍化現象を経て周期解から不規則変動へと遷移する実例を得た。
  • II:帯状流-強制波-自由波間の相互作用
    余田 成男
    1983 年 61 巻 1 号 p. 19-35
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    第I部で作成した二層•準地衡風近似の低次モデルを用いて,帯状流と地形による強制波および傾圧不安定波間の非線型相互作用を調べた。理想化された地形として,このモデルで許されるいちばん大きな波成分のみの地形を入れた。
    帯状流が,地形と直接結びついた強制波よりも自由波に対してより不安定になるとき,次のような最終定常状態が出現する。すなわち,一定の振幅と位相速度をもつ自由波(傾圧波)が臨界安定な帯状流とつりあい,強制波は減衰してしまう。他方,帯状流が地形の影響をうける波に対してより不安定になるとき,両方の波が存在する。
    この論文中で扱う最も自由度が大きい場合は,南北に2つのモード,東西に帯状成分とn,2n,3nの3つの波を許した28元のモデルである。このとき,すべての波成分は地形と相互作用して,流れは時間とともに変化してゆく。変化の様子は次の4つの型に分けられ,その選択は,外部加熱による強制,摩擦,静的安定度といった外部パラメータに依存している:(1)一定の強制波と移動波を含む定常流,(2)周期振動流,(3)準周期的振動流,(4)不規則変動流。
    地球大気に対応する外部パラメータを与えると,大きな振幅の波成分を含む不規則変動が出現する。この不規則変動をする状態中での帯状流と波動の関係を,長期間にわたる統計として調べた。各時刻での流れを,帯状流の強さを基準にして3つのカテゴリーに分類した。カテゴリー毎に合成した流れの場は次のような特徴をもつ。帯状流の卓越する高示数状態および中間状態と,流れの蛇行する低示数状態である。この低示数状態では,帯状流の強さおよび鉛直シアーが小さく,他の状態よりも停滞波の振幅が大きくなり,移動波の振幅が減少する。
    不規則変動しているなかで,ある期間の平均として定義された停滞波は,第I部で得られた平衡解の強制波と異った振幅•構造をしている。
  • 岸保 勘三郎, 工藤 恵
    1983 年 61 巻 1 号 p. 36-50
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    冬期北半球における非軸対称高度場の三次元テレコネクションを,一点相関図を用いて議論する。用いたデータは1969~70年から1978~79年までの10年間の冬の期間で,12月,1月,2月の月平均値,即ち30個の時系列データである。相関図には,700mb面の基点と,p-mb(P:気圧)の地点とにおける非軸対称高度場の時系列データの相関係数が計算されている。本文では主として基点を700mb面で日本の北部に対応する北緯45度,経度135度の地点にした場合が取扱われている。700mb面で(45N°,135°E)を基点にした合には,この地点とバーレンツ海(ノルウェー北東部)附近とでは正相関の大きい値が見出される。また200mb面で西部大平洋の亜熱帯地域には負相関の大きい値が見出される。このようなテレコネクションは東西方向の波数k=1の停帯波に関連して議論される。またこの波数k=1の停帯波は地形効果,大気中の冷•熱源によってひきおこされたものと考える。本文ではまた非軸対称高度場の相関を議論する場合,基点おける高度場と,5日,10日,15日の時間差をつけた他の地点の高度場との相関係数も議論する。最後に軸対称高度場の南北方向のシーソー変化も議論する。
  • S. E. Masters, E. C. Kung
    1983 年 61 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    3年間にわたる日々2回の高層観測資料により,アリューシャン低気圧域における,アジア冬季モンスーン循環の運動エネルギーに関する特徴について記述する。この領域では閉塞低気圧の典型的なエネルギー特性が見られる。冬季モンスーン循環系の終端であるアリューシャン低気圧域は,モンスーンのsource域や黒潮域とは明らかに異なったエネルギー分布状況をしている。運動エネルギーレベルもかなり低く,エネルギー変換も極めて小さい。運動エネルギーの消散項とcross-isobarエネルギー生成項とは大体釣合っている。傾圧エネルギー変換項は,運動エネルギー源として二次的大きさである。
  • 第1部:日変化
    村上 勝人
    1983 年 61 巻 1 号 p. 60-76
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    静止気象衛星GMS-1によって観測された赤外放射資料を用いて,深い積雲対流の活動度を従来の空間平均値よりもよりよく物理的解釈に耐え得るように定量化することを試みた。この試みは緯度•経度1度四方の各領域において深い積雲の強度示数を定義し,その際に各領域での放射温度のばらつきと大気温度の垂直分布を取り入れることによりある程度達成された。
    上記の強度示数を用いて深い対流活動の日変化を北半球の冬(1978年12月~1979年1月),および夏 (1979年月~8月)の期間について調査した。北半球の冬においては日変化の振幅はインドネシア領域およびオーストラリア北部で大きな値を示す。この領域内ではさらに陸上部とそれに隣接した海洋では日変化の位相が対照的な振舞を示すことが見い出された。コンポジットによる解析によれば,陸上では午前中に対流活動が抑制され,地方時で9時頃最小値を示す。地方時の正午を過ぎると対流活動は急速に活発化し,18時頃最大値に達する。隣近した海上ではこれと対照的に対流活動が午前中に活発であり,午後から夜間にかけて抑制されている。
    北半球の夏においては,活発な日変化がチベット高原南部にあらわれる。またフィリッピン東方の西太平洋上においても日変化の振幅は大きい。コンポジットされた日変化の振舞をみると,北半球の冬において観測されたものと同様の対照性がこの期間にも大陸上と海洋上との間に存在することが分かる。大陸や大きな島の上では,対流活動は午前中の地方時で9時頃最小であり,夕刻の地方時で18時頃最大値を示す。これに対して西太平洋のような海洋上では,対流活動が午前中の地方時で6時から9時にかけて最も活発であり,午後に抑制されているのが分かる。さらにこのような対照性に加えて,日変化に対する地域的な効果も存在していることも明らかになった。
  • 村松 照男
    1983 年 61 巻 1 号 p. 77-90
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    成熟した台風における眼の直径及び絹雲の天蓋(cirrus canopy)の日変化が, GMSの画像上で観測された。台風とともに動く矩形の中に占めるTBB(等価黒体温度)の量の変化をTBB≦-70°C,-7°<TBB≦-50°C,-50°<TBB≦-30°C,-30°<TBB-0°Cの各しきい値で定量的に求めた。TBBが-70°C以下の領域では地方時の6~7時半に極大があらわれ,18~21時に極少となった。極大の起る時刻は-50°TBB≦-30°Cの領域で16~18時,-30°TBB≦0°Cの領域では21時以後となり,TBBのしきい値の上昇とともに遅れている。衛星で観測された眼径は朝の鋭い極少,午後のなだらかな極大を示し,TBB≦-70°C領域の変化と逆位相であった。対流の日変化における早朝の極大に帰因する絹雲の吹き出しによる,拡大と見かけ上の昇温のためTBBの分布にも日変化が現れ,眼径の変化となったことが解析された。
    また,台風が島を通過する際,cirrus canopyは減少し,また,海洋性の極大に加え,午後の極大があらわれ,二重極大の現象が解析された。
  • 文字 信貴, 光田 寧
    1983 年 61 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    竜巻や塵旋風など大気中の小規模渦の室内実験において,境界条件としての周囲の回転を与える層の高さや厚さを変化させた場合,渦の性質がどの様に変化するかを調べる実験を行った.周囲の回転を収束層の上層部においてのみ与えた場合,1)風速の半径方向の分布には2つの極大,すなわち,メソサイクロン及び竜巻渦のピークに対応する極大が現れる,2)渦崩壊が,収束層全層で回転を与えた時より起り易いレイノルズ数の領域がある,3)竜巻状渦の渦核のすぐ外側での風速分布の傾きは下層ほど大きい,などの性質を有する渦が形成される事が明らかとなった.
  • 藤田 敏夫, 根本 茂, 竹内 清秀, 当舎 万寿夫
    1983 年 61 巻 1 号 p. 100-109
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1969年と1970年に行われたGARPの予備観測で,われわれは外洋上の風速,気温,湿度の平均鉛直分布を測定した.風が強く,うねりの高い場合に異常な風速分布が度々観測された.これらの風速分布は対数分布をしておらず,波高の約倍くらいの高さに風速のピークがある場合が多かった.
    風速分布の観測はすべて九州から約200~300kmはなれた外洋で研究観測船白鳳丸を用いて行われた.風速は船首から9.6m前方へ突き出されたブームの先端に鉛直にとりつけられたポールにルに設置された5組の小型三杯風速計によって測定された.また,波高はジャイロスコープ,加速度計および超音波波高計で観測された.
    風速分布を求める際,乱れによる三杯風速計の回り過ぎ,船体の動揺,熱的成層状態が考慮された.
    結論は次のとおりである.
    うねりの高い外洋上で平均風速が増大するにつれて,対数型風速分布からの偏筒が大きくなる,そして二つのピークを持つ波高分布に対応して風速分布に明瞭な二つのピーグが認められた.
  • 蒲生 稔, 山本 晋, 横山 長之, 吉門 洋
    1983 年 61 巻 1 号 p. 110-124
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    自由対流内部境界層 IBLt モデルを混合層理論の時間軸を風下距離軸に変換することにより求めた。Summers (1964)の heat island に関するモデルを地表面顕熱輸送量の水平分布および安定海上大気の温位勾配の鉛直分布を考慮して海岸地域上大気に合うように変形した。また ILBt 内の乱流統計量の空間分布を表すモデルを求めた。これらのモデルによる IBLt 内の温位の推定値および乱流分布の傾向は観測値と一致した。
  • 大場 良二, 中村 茂
    1983 年 61 巻 1 号 p. 125-141
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    数値モデルを提案し,中立及び安定な安定度(バルク•リチャードソン数Rib=0.1,0.7及び1.8)における2次元山越えの気流及びガス拡散を計算した。このモデルは差分法に基づいており,滑りの無い斜面境界上の粘性対流を厳密に計算することが出来る。
    計算結果からは,Rib数が約1.0以上になると,山の風上側で逆流が発生する一方,風下側では定常渦が消滅することが分った。又,安定時のガス濃度は,山の風上側で中立時よりも増加することが分った。
    次に,数値計算結果を検証するために,中立及び安定時(Rib=0.0,0.7及び1.8)において風洞実験を実施した。
    この実験結果は,流況及び濃度が安定度によって著しく変化することを示していた。特に,安定時には逆流によって山の風上側に高濃度が出現した。
    最後に実験結果を計算結果と比較し,両者は良く一致することを確認した。
  • 太田 盛三
    1983 年 61 巻 1 号 p. 142-150
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    筆者は以前,1974年暖候期の資料を用い,広島県沿岸部 Ox 濃度と低層大気における気象状態との関係について若干の統計的調査を行い,その結果を発表した(1976)。すなわち,米子と福岡の実測による 950mb の推定ベクトル平均風地上から 850mb までの広島上空の早朝低層大気安定度示数の推定値,広島の日中最高気温などを説明変量として,広島県内の当日最高 Ox 濃度値の推算を試みた(以下,これを単に Ox 濃度とよぶ)。その方法は散布図方式により各種の Ox 濃度空間平均等値線図を求め,これらの組み合わせを利用し,遂次段階的に当日 Ox 濃度の推算精度を上げるという方法である。
    今回,1976,1977,1978年暖候期における筆者の予報当番日の資料により,広島における当日の日中前半(6時~12時)の降水量,当日9時における広島県内最高濃度値を新しい説明変量として追加し,1975 年暖候期の全資料によって検証を行った。その結果,新しい説明変量の追加が実用的に有効であることが認められた。なお,1976年以前の濃度測定値は政令の改正前であったので,0.8倍して修正したものが用いられている。
  • T. Husain, M. A. Ukayli, H. U. Khan
    1983 年 61 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地域天気予報や気象•環境調査にとって,気象観測資料の一部に欠測,記録欠落などがあると,その資料の有効性が減ずる。サウジ•アラビア王国における気象観測資料を調べてみると,大量の観測資料が部分的に欠落していることがわかった。したがって,適当な方法で,そのような欠落資料を補うことが必要である。
    これまでに知られている評価モデルのなかから,Kalman フィルター法を資料再生のために選択した。Shannon のエントロピーの概念によってモデルのパラメータを決定する。それにより,気温,気圧,湿度などの欠落資料を再生し,その妥当性が誤差の統計理論に基づいて評価される。
  • 大野 久雄, 三浦 信男
    1983 年 61 巻 1 号 p. 156-162
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    8層北半球モデルの24時間予報値を使って総観スケールの曇天域を表現するスキームを開発した。中高緯度及び亜熱帯域では下層雲,上層雲及び対流雲を表現するために相対湿度を,熱帯域では大規模雲クラスターを表現するために下層うず度と上層発散をパラメータとして用い,各パラメータがそれぞれの基準値を超えるとき曇天域とした。それぞれの基準値は 8L-NHM の予報値を GMS 平均雲量と比較して決定した。
    こうして予報された曇天域を GHS 写真と比較して検証し,中高緯度及び亜熱帯域での良い結果と,熱帯域での妥当な結果を得た。
    この方式は従来の方式に比し,曇天域表現の精度が大幅に改善されており,オペレーションに使用し得ることがわかった。
  • 二宮 洸三
    1983 年 61 巻 1 号 p. 163-169
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    豪雨域に発生する対流圏の内部重力波を期待して数例の豪雨について高層観測データを調べた。そのうちの1例の1971年7月1日12時について内部重力波にともなうと思われる明瞭な気温•湿度•風速変動を検出できた。それらの変動幅はそれぞれ~2°K,~20% および~4m/sec であり,水平および鉛直波長は~400km および~3km であった。変動は豪雨終止後の2日00時には検出されない。データの不足から力学的解析は行われず,また変動の物理的解釈も充分にできなかったが,対流性ストーム域の対流圏の内部重力波の最初の観測例として報告する。
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