線型プリミティヴ方程式系に基づき,中層大気における定常惑星波の全球構造を北半球冬至及び春分時の帯状風モデルにおいて考察した。
冬季の結果においては,全球プリミティヴモデルの波数1の振幅は観測値と比べ約1/2になっているのに対して,波数2は観測値と似た値となった。位相分布は両波数とも観測値と比べて大きな差異は認められなかった。又振幅の極大値は両波数共に,帯状風のジェットの約10度ほど北に位置しており,Simmons(1978)の結果と一致する。この要因を種々のモデル計算の比較から調べた結果,simmonsの云う非地衡風効果によるものではなく,赤道越え伝播によるものであることが判った。
春分時の結果においては,半球間の波による相互作用がみられた。両半球共に下部境界に波源を与えた波数1の場合には,1半球より赤道越え伝播した波が他半球の波源の役割りを果し,そこにおける波の位相の鉛直傾度を東向きに変える。一方北半球のみに波源を与えた波数2の場合は,振幅は低緯度に近づくと共に小さくなり,赤道では極小となる。更に赤道越え伝播の後,しだいに振幅を回復し,下部境界に波源の無い南半球の中緯度における振幅は北半球のそれと同程度となった。また中緯度より赤道へ伝播した定常惑星波の振舞いは赤道ロスビー波と類似し小さな振幅と短い鉛直波長を有することが判った。
平均風加速を半年振動と関連して調べた結果,位相が西風となる春分時に波数2は45km高度付近で-10cm/sec/day以上の東風加速を引き起こすことが得られた。これは観測値と同程度であることから,中緯度より赤道へ伝播した定常惑星波が東風の出現に重要な役割りを果し得ることが示唆された。
抄録全体を表示