気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
62 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 田中 浩
    1984 年 62 巻 2 号 p. 199-214
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    波動間の非線型相互作用に伴なうエネルギーの逆カスケードによって,(慣性)重力波が新らしく作られるかどうかを調べるために,浅水方程式の重力波卓越領域における長時間積分を実行した。純粋な二次元乱流に見られる無制限なエネルギー逆カスケードと違って,波動を合む場合はエネルギー逆カスケード自体が活発でなく,低い波数領域ではむしろ抑制されることがわかる。初期値として与えられたランダムな振幅と位相をもつ重力波は最終的には非一様な波動状の擾乱を作る。これは重力波の大規模なものであることが同定できる。しかしながら,これが現実の大気や海洋中で大規模な重力波を作るもっとも効果的な機構であるかどうかはさだかではない。浅水波動に関する種々の特性についても詳細に述べられる。
  • 遠峰 菊郎
    1984 年 62 巻 2 号 p. 215-223
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地表付近において東風成分が卓越する場合,北海道,日高山脈の西側の浦河において,異常に深い局所低圧部がしばしば観測されることはよく知られている。地表において東風が卓越する場合,日本上空の偏西風との間に,通常クリティカルレベルが存在する。本研究は上記の局所低圧部が,このクリティカルレベルによるものであることを示している。その結果は以下の通りである。
    1)一様流の場合,山脈の両すその地表気圧の差は,風速が小さい場合は風速とともに増大し,風速が大きい場合は小さい一定値となる。
    2)局所低圧部は山すそではなく,山脈の中腹に見られ,上層の大気は山脈により多大の影響を受ける。
    3)クリティカルレベルを含むシアー流の場合,地表気圧差は風速とともに増大する。
    4)局所低圧部は山すそに現われ,クリティカルレベルより上層の大気は,山脈の影響をあまり受けない。
  • 近藤 裕昭
    1984 年 62 巻 2 号 p. 224-233
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    無限にのびる斜面のうちの有限長2lを熱するか,あるいは冷却した場合の成層流体の応答を線型論により調べた。斜面の角度が小さい場合には,斜面に近いところの流れの性質が斜面の高さの半分h*s=lsinφ(φは斜面の角度)が同じ2lの長さを持つヒートアイランド上に発達する熱的境界層の高さh*T=α(υ/N)1/3l1/3(α~3.5)よりも高いかどうかによって変化した。
    実際の斜面においてはh*S>h*Tは夜間にはしばしば満たされるので,流れはプラントルの理論の結果に近いが,昼間はh*S<h*Tであり,流れは対流に近くなる。
  • 第一部一般的特秩Eと擾乱との関係
    佐 明正, 金光 正郎
    1984 年 62 巻 2 号 p. 234-251
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    気象庁電子計算室で,数値予報ルーチンに用いられるスペクトルモデルの,冬期の72時間予報における,系統的誤差を調べた。
    帯状平均された温度場をみると,高緯度地方(60N以上)での,下層の満暖地と,低緯度地方での,冷却化が,顕著である。帯状平均された風では,高緯度,及び,低緯度で,西風が弱まり,亜熱帯ジェットは,強化され,北に少し拡がる傾向にある。
    系統的誤差の空間的特徴は,(1)高緯度地方(東シベリアや,カナダ北部)での850hPaでのwarming,(2)45°N付近の大陸上での地上気圧の低下,(3)500mbにおける,西進する移動性の誤差(4)亜熱帯の大規模山岳付近の850hPaでのcoolingなどである。
    高緯度地方と,亜熱帯地方の850hPaの温度の誤差を,擾乱に伴う顕熱輸送との関連で調べたところ,シベリア東部の温度の誤差は,主として,南北風を強く予想しすぎることに,カナダ北部の温度の誤差は,擾乱の位置や移動の予想が悪いことによるものと思われる。亜熱帯の誤差は,ヒマラヤ東端でのcold surgeを強く予想し過ぎていること,及び,ロッキー山脈の風下側での定常的なトラフが東へずれていることによるものと思われる。
  • Harald Lejenas
    1984 年 62 巻 2 号 p. 252-260
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1972年5月から1980年11月までの毎日の解析を用いて500mb高度の大規模スケールの年変化を調べた。フーリエ解析を用いて年周期を平滑化し,求められたフーリエ係数から南半球のプラネタリー規模の季節的に強制された波を解析し,北半球の同様の研究と比較した。
    南半球では北半球より帯状波数2と3の振幅が小さく,それらによる運動量輸送も小さかった。また,南北両半球とも,冬期には波数2による運動量輸送はある緯度より極側では赤道向きであった。この赤道向きの輸送は北半球の方が南半球より大きく,また広い緯度帯を占める。
  • Leong-Chuan Quah
    1984 年 62 巻 2 号 p. 261-272
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1978/79年の冬期の対流圏における30-50日周期の振動を統計的及びシノプティックな面から調べた。その結果これは主として東西流の振動による広い周波数帯を持った現象であることが明らかとなり,これまでの研究結果とも一致した。この振動は熱帯のインド洋及び太平洋,特に冬期モンスーンの積雪活動域で顕著である。この振動をインドの夏期モンスーンのものと比較すると,冬期モンスーン循環の上昇域において南北の伝播がないことが特徴である。しかしながら東太平洋では極向きの伝播は顕著であり,このモードは赤道域付近で作られるが,赤道から離れるときわめて順圧的である。
    熱帯太平洋の大規模現象は,この低周期のモードによって影響を受けているように思われる。
  • 二宮 洸三, 古賀 晴成, 山岸 米二郎, 巽 保夫
    1984 年 62 巻 2 号 p. 273-295
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1982年7月23日九州西北部(長崎市近傍)で豪雨(~400mm/1日)が発生した。この豪雨の予報実験を13層42km格子プリミティブ•モデルによって行なった。
    九州北西部に集中した降水,その近傍における小低気圧と循環系の形成は24時間予報でかなり正確にシミュレートされた。しかし実況に比較すると予報雨量(~70mm/6時間)も低気圧の深まりも不充分である。特に22日12時(GMT)を初期値とする予報実験ではspin upに時間がかかり,はじめの12時間の降雨,低気圧発達が不充分であった。これらの問題は残るが,微格子モデルによる豪雨予報の可能性が示されたものと考える。非断熱過程の効果を確かめるためdry modelによる実験を行なうと,小低気圧の発達はなく上昇流も非常に弱い。降雨にともなう非断熱効果がさらに降雨を強めるという作用が推論される。
    モデルの分解能増加の効果を見るため,11層63km格子,10層127km格子および8層381km格子モデルの予報と比較した。分解能増加によって降雨の集中性が強まるだけでなく,総(面積積算)雨量も増加する。分解能を増すと豪雨域周辺から豪雨域へ流入する水蒸気流束が増大するからである。
    実験データにもとづき,豪雨域の水蒸気収支,対流不安定の生成,発散方程式および渦度方程式のバランスを解析した。
    さらに1983年7月22~23日の山陰豪雨の予報実験を行った。東西にのびる豪雨域は予報されたが,予報された豪雨のピーク時と観測されたピークとの間には数時間の差があり,前線上の弱い小低気圧近傍の降雨は実際よりはやく予報され,一方小低気圧通過後の降雨は予報されなかった。小低気圧にともなわない降水が予報されなかった理由は現在不明である。
  • Chiyu Tik
    1984 年 62 巻 2 号 p. 296-307
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1982年12月13日~25日にマレーシア半島東岸とシンガポール地域で起きた豪雨時の南北風と垂直速度の解析を行い,豪雨と子午面循環との関係を調べた。得られた結果は以下の通りである。(1)豪雨の発生は主として子午面循環南側の強い湿潤な上昇流によってもたらされた。(2)下層の強い収束と子午面循環の南側に赤道方向から別な循環系が入ってくることにより,対流圏中層に上昇流の最大が生じた。
  • Kevin Hamilton
    1984 年 62 巻 2 号 p. 308-311
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    太平洋3観測点における長期間にわたる3時間間隔の地上気圧のスペクトル解析を行った。それぞれの地点で周期約33時間のスペクトルピークが得られた。この振動は,東西方向に経度約30度の範囲で関連し合っているものと思われる。松野(1980)によれば,この"33時間波"は東西波数1のヶルビン波に対応するものである。今回の解析によって,はじめて,この振動による地上気圧の振幅が得られた。その大きさは,MaddenはJulian(1973)によって得られている,あの"5日周期"のロスビー波の振幅の約1/5である。
  • 千葉 修
    1984 年 62 巻 2 号 p. 312-322
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    風速鉛直成分の乱れのスケールと高次相関量の高度依存性を,中立な接地気層中で気象観測塔の三高度(2,11.25,21m)で測定することにより調べた。この解析から,乱れのスケールは観測高度と共に直線的に増加する関係から,わずかにずれていることがわかった。この事実は,混合距離理論から予期されることとは異なる。さらに,風速鉛直成分の歪度と尖度の高度変化が実験的に確められた。
  • 孫野 長治, 坂本 洋和, 遠藤 辰雄, 谷口 恭
    1984 年 62 巻 2 号 p. 323-334
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1976年の冬,札幌で雪雲中の降水電荷の垂直分布を電荷ゾンデを用いて測定した。結果は次のようである。
    1. 霰粒子を含まない層状の雪雲では降水粒子は負に荷電した雪の結晶から成立っている。この雪の結晶は大気中の負イオンを選択的に補捉することにより負に荷電したものと考えられる。
    2. 雲の下部または雲底下で観測される大きな正の空間電荷は正に荷電した霰粒子によることが確められた。霰粒子は一10°Cより暖い雲層で雪の結晶と衝突することにより正に荷電したものと考えられる。
    3. 荷電した降水粒子による局所的な正負の空間電荷が観測された。そうしてこれらは地上で観測される細かい電場の変化によく対応する。
  • 小林 愛樹智, 岩坂 泰信
    1984 年 62 巻 2 号 p. 335-342
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    成層圏で (NH4)2SO4 粒子が生成される可能性を H2SO4 小液滴へめ NH3 の吸収速度と H2SO4 蒸気の凝結速度を比較することで検討した。NH3 ガスの濃度が0.1ppbオーダーであれば半径0.1μm の H2SO4 小液滴の(NH4)2SO4 粒子への変質に要する時間は成層圏での渦拡散•重力沈降の時定数よりも1桁から2桁短い。粒子の成長に対する凝集の寄与は凝結の寄与に比べ小さく,無視出来る。NH3 ガスの濃度が低く NH3 の吸収が無視出来る時には,半径0.1μm の(NH4)2SSO4 粒子が完全に液滴にまで変質するのに要する時間は成層圏での渦拡散•重力沈降の時定数と同程度がそれよりも長い。
  • 岩崎 俊樹, 金戸 進
    1984 年 62 巻 2 号 p. 343-356
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    札幌•館野•鹿児島において,オゾンゾンデによって観測されたオゾン濃度の月平均値に基づき,オゾンの光化学過程の季節変動を調べた。次に算出されたオゾン濃度の光化学過程による変化率(生成と消滅の差)と実際に観測された濃度変化とを用いてオゾンの発散量を評価した。
    鹿児島におけるオゾン全量の季節変化は主として光化学変化率が発散量とほぼ釣り合っている準定常領域における濃度変化に起因している。これに対し,札幌における変化は非定常領域における力学的効果に支配されている。この場合,主要な効果は圏界面高度の季節変動であり,第2の効果は子午面循環によってもたらされた下部成層圏における蓄積効果である。前者は全量の極大を冬にする傾向があるが,後者はそれを春に遅らせる働きがある。特に冬期間のオゾン全量の増大は,オゾンの分布が冬期の循環に対して過渡的な状態に留っていることを示唆している。オゾン全量の季節変化に関するこの2つの観測点間の著しい相違は圏界面の季節変化に関係している。成層圏質量と対流圏質量を実質的に分ける主要な圏界面は鹿児島の場合は一年中熱帯圏界面であるのに対し,札幌の場合は夏には熱帯圏界面であるが冬には極圏界面となるからである。
    最後に経度依存性という観点から日本上空のオゾン分布を考察する。
  • 内野 修, 前田 三男, 徳永 正憲, 関 匡平, 速水 利泰
    1984 年 62 巻 2 号 p. 357-362
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    メキシコのエルチチョンの激しい火山爆発後,成層圏エアロゾルの増加を,1982年10月から福岡(33.65°N, 130.35°E)において波長340.5nmの紫外線ライダーにより測定してきた。1982年10月には後方散乱比の最大 値Rmaxの高度は24kmであったが,1983年1月には20kmまで降下した。この間のRmax-1の値は2.4 倍減少したが,15~30kmで積分された後方散乱係数の値はそれほど変化がみられなかった。エアロゾル層の 降下について簡単にふれる。
  • Pao-Shin Chu
    1984 年 62 巻 2 号 p. 363-370
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ブラジル北東部(Nordeste)の南北両地域の降水量と熱帯大西洋上の海面気圧,地表風の東西•南北成分,海面温度の時間•空間変動特性について研究した。最初に降水量と他の量との相関係数空間分布を求め,次に各量の時系列についてSchickedanzとBowen(1977)によるスペクトル解析(non-integerスペクトル解析法)を行なった。南北Nordesteの降水量のスペクトル解析で見出せる,3つのスペクトルピークに対応する周期帯(12.7-14.9年,4.5-4.9年,2.2-2.4年)について,他の量との空間的な位相関係を調べた。
  • 特に水溶性および不溶性成分との関係について
    三田 昭吉
    1984 年 62 巻 2 号 p. 371-375
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top