気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
64 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 野田 彰
    1986 年 64 巻 3 号 p. 319-327
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Hayes(1977)の議論を一般化して,変調を受けた,小振幅の単色平面波が,非一様,非保存的,分散媒質を伝わる時,波の振幅について2次のフラックスと,群速度の間に成り立つ一般的関係を,導びいた。
    共通の位相を持つ波動成分から,2次のフラックスを合成して,そのフラックスの線形支配方程式に代入すると,得られる方程式は,2倍の位相を持つ波動部分と,位相について平均化された部分から成り,両者は,それぞれ別別に,零になる。前者の振幅が零になることから,分散関係が与えられ,4元波数ベクトルについて,分散関係の変分が取られると,複素4元速度ベクトルが得られる。一方,後者からは,位相平均された2次のフラックスについての支配方程式が得られ,4元波数ベクトルについて変分が取られると,別の2次のフラックスが与えられる。このフラックスは,群速度に比例する。
    得られた一般的関係を,ロスビー波に応用した。Longuet-Higgins(1964)によって得られた,エネルギーフラックスと群速度の関係は,特別な場合に相当することが示された。
  • 高藪 出
    1986 年 64 巻 3 号 p. 329-345
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    中緯度の偏西風ジェット上に発達する温帯低気圧における前線の形成と閉塞過程について,水を含まないプリミティブ方程式系のモデルを用いて数値的に研究した。
    線形化されたじょう乱方程式の一番不安定なノーマルモードを初期じょう乱として用いた。このモードは,傾圧不安定波の構造を有していた。
    じょう乱の成長に伴い,強く長い寒冷前線と弱く短い温暖前線が形成された。これらの前線について,水平温位勾配と相対渦度の強化の様子を調べた。温位勾配の生成項はこれら2つの領域で共に正である。しかし温暖前線では,この生成項は低気圧東方の強い北向きの流れに伴う負の移流により打消されてしまっている。従って温暖前線はシャープにならず,前線の暖気側での強い上昇流によって作られる正渦度も伴わない。一方寒冷前線の中央部では2次元の前線形成が起きており,またその南西端では移流効果によって寒冷前線はひきのばされている。この時期には低気圧中心の北東方にもう一本強い前線が出現した。この前線の形成においてもまた,移流は重要であることが示された。
    今回の研究では低気圧が閉塞するまで実験を行うことができた。この時期には渦度場の渦巻構造が低気圧中心のまわりに見られた。これもまた,水平温位勾配と相対渦度の生成項と移流項の効果を併せることで説明できる。
    実験で見られたこれらの構造は,温帯低気圧のあるものにおいて形成される雲パターンと良い対応を示している
  • 時岡 達志, 鬼頭 昭雄, 片山 昭
    1986 年 64 巻 3 号 p. 347-362
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気大循環モデルを用いて, Rasmusson and Carpenter (1982)が編集したエル•ニーニョ完熟期の海面水温異常(SSTA)に対する大気の応答を調べた。モデルは5層対流圏モデルで,水平解像度は東西5度,南北4度である。実験は SSTA のない場合(CNTRL), SSTA を入れた場合(SSTA1),2倍のSSTA を入れた場合(SSTA2)を,1月の状態に固定して行なった。時間積分はそれぞれについて210日間である。
    低緯度では暖かい SSTA 上で降水量が増加し,異常な流れが形成されるが,それは Gill(1980)等が示した応答パターンより複雑である。東西循環にみられる応答は SSTA 分布に従ったものになっている。 SSTA の増加に伴って応答はほぼ線型的に増加する。
    北半球の中•高緯度では流線関数の応答パターンは東西に伸びた形をしており,いわゆる PNA パターンは見られない。応答の大きさは赤道域の SSTA を増加させても増えない。 SSTA2 の実験では波動状の応答がみられるが,その位置は東寄り及び赤道寄りとなっている。これらの結果はこれまでに報告されているもの (Shukla and Wallace,1983; Blackmo et al.,1983; Geisler et al.,1985)と異なる。これらの違いを理解するために追加実験(SSTA1∗)を行なった。 SSTA1では140°E以西のSSTAも含んでいたが,SSTA1∗ではこれを除いた。この実験は海洋大陸や南シナ海近辺の暖かい SSTA が大気に大きな影響を及ぼすことを示す。影響は低緯度及び中•高緯度(特に北半球)共に大きくあらわれる。 SSTA1∗ではPNAパターンの応答がみられる。 SSTA1, SSTA2と SSTA1∗との間の大きな違いは低緯度大気の応答の違いによるところが大きい。 SSTA1, SSTA2 では140°E以西の暖かい SSTAの影響で赤道太平洋中央部付近に下降流が強められており,赤道太平洋上の高気圧性循環を持つ赤道強制ロスビー波は東西,南北スケール共に SSTA1∗のそれより小さくなっている。赤道域の応答の水平スケールの違いは中•高緯度域への影響の伝わり方の違いを支配している。
    時間平均場の応答とは別に,長期変動特性を経験直交関数(EOF)解析により調べた。 SSTA が異なる各実験で,卓越する長期変動バターンが異なることが示される。CNTRL では第一主成分は基本的に南北シーソーを記述するもので, Lau(1981)や Tokioka and Chiba(1986)が観測値から得たものに似ている。一方 SSTA1, SSTA2 では PNA パターンに似た定在振動が,それぞれ第一,第二主成分として得られる。約100日の時間スケールを持つ。これに似たモードは CNTRL, SSTA1∗にも存在するが,いずれの場合も第四主成分である。エル•ニーニョ完熟期に於いて,140°E以西に暖かい SSTA が存在する場合に PNA パターンに似た定在振動が強まるという結果を得たが,この点は今後更に検討されねばならない。
  • 川村 隆一
    1986 年 64 巻 3 号 p. 363-371
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    EOF 解析によって得られた北太平洋における海面水温(SST)のアノマリーバターンと中•高緯度の大気循環場との季節的な相互作用をラグ相関法によって解析した。
    SST の第1モードは冬季の PNA パターンの形成と維持に寄与している。一方,SST の第2モードは冬季の東アジアからの cold surge によって部分的に形成されている。このモードが卓越するとき,500mb高度場では WP パターンが出現し,それは低指数循環の卓越と関連している。また,第2モードは,初夏に蓄積され,真夏に東アジアへ放出されるような極寒気の動向によっても影響されている。中緯度において,第1モードの40゜N付近の負の SST アノマリーは,大気の mechanical forcing によって主に形成され,一方,第2モードの西太平洋上の負のアノマリーは,大気の thermal forcing (cold surge)によって形成されている。
  • 新田 勅
    1986 年 64 巻 3 号 p. 373-390
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1978年~1983年の「ひまわり」による上層雲量を用いて,西部太平洋域における熱源分布の長期変動を調べた。この領域の雲量分布は,東南アジアやオーストラリア域のモンスーンの影響で,季節的に大きく変化しており,最大雲量は,夏半球の低緯度域に存在している。
    雲量の年々変動の大きな領域は,北半球冬期には赤道域に集中しているのに対し,夏期には,赤道域,20°N近くの亜熱帯域,日本付近の中緯度帯にそれぞれ存在している。
    相関係数と経験直交関数の解析から,2種類の主要な変動分布が存在することがわかった。一つは,赤道域の中部太平洋と西部太平洋間の振動で,特に1982-83年のエルニーニョ時に顕著に現われた。もう一つは,日本南方の亜熱帯域と日本列島を横切り東西に伸びる中緯度帯の間の南北振動で,特に夏期に顕著に現われる。
    1982年5•6月,赤道上150°E付近の高雲量が東進を始め,この高雲量域は年の終りには,中部太平洋,東部太平洋にまで達した。高雲量域の東進に伴い,西部太平洋域には広大な低雲量域が現われ,このような東で正,西で負の雲量偏差分布は,翌年の初夏まで持続した。この時期,日本南岸の雲量が増大し,低気圧活動が活発化したことを示している。
    雲量変動の南北振動に関連して,1978年と1981年の夏期,熱帯西部太平洋の高雲量が北東に大きく偏差していることがわかった。この高雲量の北上に伴い,その南北に位置する赤道側と中緯度側では,,逆に雲量が減少している。両年とも,日本列島は干ばつ等暑夏に見舞われており,この雲量の南北振動は,日本の夏の気候に大きな影響を与えているものと思われる。
    熱帯西部太平洋域の海面水温と雲里変動との関係を調べた所,両者には強い相関があることがわかった。水温変動の主要な分布は,140°Eから日付変更線,赤道から20°Nに広がる領域での大きな変動で,1982-83年のエルニーニョ時には,この領域で顕著な低温が現われている。逆に顕著な高温が現われた1978年と1981年の夏には,前述の雲量の南北振動が現出している。雲量の南北振動をもたらす対流活動の北上には,特に15°N付近の6月の水温が重要であることが示唆される。
  • Sanga-Ngoie Kazadi
    1986 年 64 巻 3 号 p. 391-408
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    従来の熱帯大規模場の観測データ解析結果の間には,かなりの不一致や矛盾点が指摘され,結果の信頼性が不明である。これは観測データから格子点データを求める際の(内挿)方法や予報初期値を得る為のモデルに依存する事に帰せられる。この様な問題点を克服して,より信頼のおける格子点データセットを用意するための合理的な客観解析法を提案する。この信頼のおけるデータを用いて熱帯大規模場の解析を行う事が本研究の目的である。ここでは,その第一段階として,客観解析のための基本的な統計量について検討する。
    熱帯における,1979~1983年の5年間のdaily高度データを用いて,(25°N~25°S,20°E~140°W)領域の風速成分(u,ν),ジオポテンシャル高度(z),温度(T)のスペクトル,クロススペクトル解析を行なった。
    これにより,2~4年,1年,半年,40~60日の4つの大規模長周期振動が卓越していることがわかった。この中で,短周期振動は,小さな空間スケールでは熱•運動量の水平輸送過程に大きな寄与をしない事が明らかになった。低周波フィルターを上記4変数に適用して,空間相関の算定が改良され,また観測誤差もフィルターを用いない元のデータに対する場合に比べて1/2~1/3程に減少する。
    この事から,低周波フィルターを通したデータを用いる事によって,熱帯大規模場の信頼のおける記述が可能になるものと考えられる。
    相関係数の空間分布の場は,全ての変数について一様であり,また,風速成分のみならずジオポテンシャル高度場や温度場も非等方的である事が示された。
  • 二宮 洸三, 村木 彦麿
    1986 年 64 巻 3 号 p. 409-429
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1979年梅雨期東アジアの大規模場の特徴と推移を主として10日平均場にもとずいて記述した。従来充分に解析されていなかった中高緯度の状況にも注目した。
    梅雨初期,大規模場は大きく変化する。チベット高原北部から北に伸びる高温リッジ(梅雨リッジ)とべ一リング海低気圧から西南西に中国に伸びる低温トラフ(梅雨トラフ)が発達する。中国大陸では下部対流圏の気温が急上昇し,気温傾度は減少し,対流不安定成層となる。一方35゜N以北の冷い太平洋ではべ一リング海低気圧西方の寒気移流により気温上昇は阻止される。このため著しい大陸~太平洋間の気温差が生じる。
    対流圏下部の循環は梅雨トラフ西側の北東風(梅雨トラフ北東風系),太平洋高気圧縁辺の下層ジェット的西南西風系,インドモンスーン西風につらなる南シナ海風系によって特徴づけられる。後者の二風系は日本列島,中国域への水蒸気流入をもたらす。
    中国の梅雨前線は梅雨トラフ北東風と南シナ海南風との間に形成される梅雨シアーラインに密接に関係する。日本附近の梅雨前線は梅雨トラフの南~1500km に位置し,南西風の西南西強風軸への合流収束域に位置する。
    中国~西日本域の梅雨前線帯は水蒸気傾度は大きく気温傾度は弱い。東日本以東では気温傾度もやや大きい。このため前線帯の中間規模低気圧の発達は~135°E 以東でみられる。なおベーリング海域で発達する低気圧の多くは極前線帯のトラフにともなう低気圧である。
    太平洋高気圧と梅雨前線の北上は梅雨期の基本的季節変化である。これに重なって~40 日周期の準周期的変動がみられる。ITCZの雲量極大期に梅雨前線が北上し,その雲量•雨量も増加する。特に6月下旬のインドモンスーン降雨の極大期には南シナ海 ITCZの雲量が増加し,梅雨前線活動も増加した。チベット高原,梅雨トラフ北東風は中国~35°N 以北での低水蒸気量を維持し,~35°N 帯に強い水蒸気傾度(梅雨前線)を維持する。太平洋域ではベーリング海低気圧西方の北風による移流が 35~40°Nに気温傾度と強い水蒸気傾度(梅雨前線)を保つ。
    梅雨末期,太平洋高気圧と上層の高気圧帯は北上し,梅雨リッジ,梅雨トラフは急速に消失し,高度場•温度場はゾーナルパタンに変り,傾度は減少し,盛夏となる。
    上記のチベット高原,梅雨トラフ,べ一リング海低気圧の梅雨前線生成維持に関する役割についての推論は,中村•長谷川•二宮(1985)の予報実験の結果からも支持される。
  • 戸矢 時義, 木村 富士男, 村山 信彦
    1986 年 64 巻 3 号 p. 431-442
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海燧灘地域で航空機により大気汚染質と気象要素の立体観測を1980年から82年にかけて毎夏行い,局地風による汚染質の輸送過程を調べた。
    汚染大気は,早朝瀬戸内海のほぼ全域に1000m以下の高度で広がっており,午後には四国側で谷風/海風により上空に輸送され,夕方には3000mの高度に達する。
    発達した積雲の中を横切った観測から,積雲はオゾンを上空へ輸送するとともにエーロゾルの強い除去作用を持っている可能性が示唆された。さらに,複雑地形上で形成された内部境界層を観測し,その構造を解析した。観測された内部境界層の構造は,簡単な境界層モデルによるシミュレーションと一致する。
  • Taher Ahmed Sharif, Parmjit Singh Sehra, Abubaker Y. Nashnosh
    1986 年 64 巻 3 号 p. 443-447
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Using the upper tropospheric and stratospheric temperatures and total ozone amount data obtained from the TIROS-N satellite over the Indian region during the period May to July 1979 subdivided into six different phases of the monsoon, possible interactions between the 400-1mb atmospheric region and the summer monsoon have been examined in this paper. This investigation shows a noticeable decrease of the stratospheric temperatures and total ozone amount at the onset phase of the southwest monsoon with an increasing trend during its active phase. Variations in the stratospheric temperatures and total ozone amount are found to be consistent with each other parcularly in the 100-70mb layer.
  • 1986 年 64 巻 3 号 p. 449a
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 64 巻 3 号 p. 449b
    発行日: 1986年
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
feedback
Top