気象集誌. 第2輯
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65 巻, 6 号
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  • 惑星の回転の効果
    松田 佳久, 加藤 輝之
    1987 年 65 巻 6 号 p. 819-842
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    惑星の回転の力学的効果という観点から熱帯域の加熱に対する大気の線型定常応答の基本的性質を研究した。その為に球面上の線型化された浅水方程式を用い,惑星の回転効果を表わすパラメータε(=(惑星の回転速度)2/(重力波の速度)2)の広い範囲(0≦ε≦10000)にわたって,加熱により励起される循環の水平構造を計算した。
    第一に,熱帯域の限られた範囲に存在し,赤道に対して対称な加熱に対する応答を調べた。(図1参照。)εが小さい時は,励起された循環は単なる直接循環である。εが大ぎく成ると,循環は赤道域に集中し,かつ加熱域の西から吹き込む西風が特に強化される。この循環における東西の非対称性の原因を渦度のバランスの観点から議論した。ε≧100では,循環は主としてケルヴィン波とロスビー波から構成されている。簡単なモデルでの Gill の解(1980)は本研究のε=100又は1000の循環のパターソに類似している。
    第二に,熱帯域の加熱が赤道に対して反対称な場合について調べた。(図4参照。)εが小さい時は赤道を過ぎる直接流が卓越する。εが大きく成ると,加熱域の西側でこの流れが蛇行するように成る。εが10000に成ると,赤道を過ぎる流れは非常に小さく成り,両半球で別々の循環が形成される。
    ε=10に対して,レーリー摩擦とニュートン冷却の係数を同時に変えて循環を計算してみた。結果はこの値により大きく変わることが判った。(図3,6参照。)運動方程式と熱力学方程式におけるバランスの観点から消散の効果を議論した。
    最後に,全球に広がった加熱に対する応答を調べた。(図7参照。)
  • 林 良一, 宮原 三郎
    1987 年 65 巻 6 号 p. 843-852
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    熱帯季節内振動の伝播と構造について三次元線形レスポンスモデルを使って調べ、その結果をFGGE data の解析結果と比較検討した。
    このモデルでは、40日の周期で振動しながら東に進む熱源の存在が仮定されている。仮定された熱源はある一定の経度帯でその振幅が大きく、その他の経度では相対的に小さな振幅しか持たない。しかしながら、zonal wind の応答は、かなりの大きさの東進しながら地球を一周する成分を持っている。また、この振幅は大きな加熱経度帯の中に、節を持っている。これらの構造は、FGGE data の解析の結果と良く一致している。加熱域が完全に、ある経度帯に限られたときには、少なくともこのモデルで使われた熱源分布では、zonal wind の振動はそこから東西に向かって伝播する。
    大気の応答のなかの東進する波数1成分は、上部対流圏では Kelvin-Rossby mode の結合体の形を取り、下部対流圏では Rossby mode がその主な成分となっている。また、下部対流圏での構造は、境界層内での子午面循環によって変形された walker cell の構造をも持っている。これらの構造は、FGGE data の解析の結果とも良く一致している。下部対流圏における Rossby mode の卓越は地表面摩擦の影響によるものであることが確かめられた。
  • 住 明正
    1987 年 65 巻 6 号 p. 853-870
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    乾燥した大陸と,東西方向に一様な海面水温分布域を持つ海洋が与えられた時に,対流活動がどのような分布を示すかを調べるために,数値実験を行った。波数1の大陸と海洋を仮定し,大陸からは水蒸気の補給はないとし,海洋上は,4月の平均の海面水温を東西平均したものを用いた。対流活動の特徴として得られた結論は,以下の通りである。
    (1) 赤道上では,海面水温が一様にもかかわらず,対流活動は東偏し,その極大値は,海洋上の東端から,3000km程度のところに位置する。この位置は,乾燥した大陸上からの乾いた東風と,海面からの蒸発量との balance で決まる。一方,海洋上西側では,大陸上から乾燥した空気が,はるかに海洋上奥深く侵入する。これには,亜熱帯に存在する赤道収束帯への水蒸気輸送も効いている。
    (2) 亜熱帯域では,海洋西部に対流活動域が集中する。この主たる理由は,海洋と大陸上との差から,海洋西半分で,水蒸気収束が顕著だからである。
  • 永田 雅
    1987 年 65 巻 6 号 p. 871-883
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    日本海上の収束雲帯に関連した北陸地方の大雪の例について,微格子プリミティブモデルを用いて予報実験を行った。この論文では,特別高層観測を含む観測データとともに,予報実験の結果を用いて収束雲帯の構造を詳しく記述する。
    収束雲帯のまわりの大気は次の特徴的な性質を持っている。すなわち,
    - 対流活動の活発な線に沿う,強い正の渦度を伴った下層収束,中層発散の領域,
    - 寒気中に位置する,対流活動の活発な線に沿う暖かくて風の弱い領域
    - 対流活動の活発な線の北東側にある,二つの層の境界としての弱い安定層(二つの層とは,対流活動の活発な線に向かう北よりの寒気流の層と,すでにその中で加熱されてきた南よりの暖気流の層),
    - 南西側にある,鉛直シアーが小さく,寒気の上面までほぼ中立の成層をした西北西流,
    - 対流活動の活発な線の300-500km北東の発散レベル(700-600mb)にある強風域。
    断面図とトラジェクトリーの解析によって,雲帯のまわりの大気の明確な像が描ける。また,熱•水蒸気収支解析によって,日本海南部上では,収束雲帯のまわりのメソスケールの熱的な構造は,主に,大規模寒気移流場の中の局在化された潜熱の解放によって維持されていることがわかる。
  • 二宮 洸三, 栗原 和夫
    1987 年 65 巻 6 号 p. 885-899
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1979年7月14日中国東岸で発達した中間規模対流系(meso-α-scale convective system:MαCS)は東シナ海で衰弱後,九州西岸で再発達し強雨を降らせ15日四国南岸で小低気圧に発達した。Ninomiya•Tatsumi(1981)の予報実験におけるこのMαCSの発達のおくれを改善する目的で予報実験を行った。13層64km格子プリミテブモデルを使用し14日09時から下記の24時間予報実験を行った;Exp. CNT(control実験), Exp. HET(heating実験:衛星IRデータより初期時の凝結量を推定し積分初期1時間にforced heatingとして与える)及びExp. SMM(small moisture実験:少い水蒸気の初期値から予報)。
    Exp. SMMのMαCSの発達はExp. CNTに比しておくれ, MαCSの発達に対する凝結の重要性を示した。Exp. CNTに比し, Exp. HETはMαCSのspin upのみならず,東シナ海域での衰弱後の九州西岸での再発達,強雨,小低気圧の発達の予報を改善した。これはforced heatingが適切な時期と場所でMαCSを発達させその結果周辺場も適切に変化しそれが再びMαCSの発達に寄与したためと考えられる。
    Kudo等(1986), Ueno等(1987)の25km格子モデルによる他ケースについての類似の実験では,forced heatingの効果は数時間でなくなっているのは,本実験の結果と異っている。彼等の使用したモデルの領域が小さく境界の影響のため最初のforced heatingによるmeso systemの発達が周辺場を適切に変えられなかったため,その効果がつづかなかったものと考えられる。
    この実験は1ケースについてのものであるが,強雨の短~極短期間のmeso scale数値予報の改善の一方向を示すものとして意味がある。
  • 新野 宏
    1987 年 65 巻 6 号 p. 901-921
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    海陸風循環の性質を線形論で調べた。静水圧近似のもとでは,コリオリカがなければ,海陸風循環の線形論は相似解を持つ。相似解に現れる各変数のスケーリングから,海陸風の水平•鉛直スケールはそれぞれNκ1/2ω*-3/21/2ω*-1/2で,水平•鉛直速度のスケールgαT/N,gαΔTω*/N2で,圧力のスケールはgαΔTκ1/2ω*-1/2で与えられることがわかった。ここで,ω*とΔTは地表面で与え温度の周期的時間変化の振動数と振幅,Nは基本場の浮力振動数,κは渦温度伝導率, gは重力加速度,αは体膨張率である。渦プラソトル数は1を仮定した。
    海岸線の近くの非常に小さな領域では静水圧近似が成り立たないため,相似解も成り立たなくなる。この非静水圧領域の水平•鉛直スケールは共に(κ/N)1/2のオーダーであり,そこでは鉛直速度が水平速度と同じオーダーになる。しかし,この領域の外側では相似解は至るところで有効である。
    コリオリカが存在するとき,非静水圧領域の外側の解は無次元コリオリ係数f=f**のみに依存する。海陸風循環の水平スケールλ*を,海風の無次元流速が0.03に減少する海岸線からの距離で定義すると,λ*=Nκ1/2ω*-3/2•F(f)で与えられる。ここでF(f)はfの普遍関数である。Fはf<1すなわち緯度が30度以下のときにはほぼ一定(~2.1)にとどまるが,f>になるとfと共に急激に減少し,南極•北極にあたるf=2に対しては0.9となる。
    渦プラントル数及び非線形過程の流れに及ぼす効果についても議論する。
  • 1.東京の都心における気温その他の気象要素の時間的変動
    藤部 文昭
    1987 年 65 巻 6 号 p. 923-929
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1961~1985年の地上気象観測資料を使って,東京の都心における気温その他の気象要素の平日と週末の差を調べ,以下の結果を得た。(1) 日曜口(祝日等を含む)の気温は平日よりも低い。気温差は昼間に大きく,昼間の気温差は25年間の平均で約0.2°Cである。(2)気温差は時代とともに増大しており,近年は土曜日の夜にも低温が現れる。(3)気温差は年間を通じて認められるが,値は季節•天気•風速によって多少異なる。(4)日曜日の昼間は気圧が平日よりも0.05mb程度高い。このことから昼間の気温低下は数百 m 上空まで及んでいることが分かる。夜間は気圧差は検出されず,気温低下は地上付近だけに限られると思われる。(5)他の二,三の気象要素にも平日と日曜日の差が認められる。なお,曜日や日付けによる平日同士の気温差は認められない。
  • 新しい評価法および北西太平洋域の雲への適用
    武田 喬男, 劉 国勝
    1987 年 65 巻 6 号 p. 931-947
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    雲のマイクロ波放射の数値計算の結果に基づき,人工衛星 Nimbus 7に搭載されているマイクロ波放射計 SMMR データから大気中の凝結水量を評価し,また,降水の有無を判別する新しい方法を開発した。他の評価法に比べて新しい評価法は,適用できる雲のタイプが多く,降水を伴う雲にも伴わない雲にも適用できる。また,この方法を用いて北西太平洋域の雲の凝結水量の特徴,凝結水量と雲量との関係およびその緯度による違いなどについて調べた。
  • 山内 恭, 鈴木 一哉, 川口 貞男
    1987 年 65 巻 6 号 p. 949-962
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    AVHRRの赤外チャンネルのみを使って,南極上空の雲を検知する方法を検討した。昭和基地で受信されたNOAA-7衛星のデータから,各チャンネルの輝度温度差が雲の検知に役立つことが明らかになった。雲がある厚さの範囲にあるとき,チャンネル3(3.7μm)と4(11μm)に正の輝度温度差が生じ,さらに厚くなると負の温度差を生じる。薄い雲はチャンネル4と5(12μm)の輝度温度差を生じる。これらの傾向は,理論計算された雲モデルの放射特性から説明がつくものである。これらの輝度温度差をチャンネル4の輝度温度に対して記したグラフの上で,同一の雲に属するピクセルは,ある一定のアーチ型に分布する。このアーチは,一端は地表面,即ち晴天域のピクセルにつながることから,地表面と雲を識別することができるし,さらに,雲を構成する粒子の大きさや光学的厚さなども類推することができる。内陸雪面上で特に低温の場合は,さらに多くの問題が生じる。低温では,チャンネル3は温度分解能が下るし,また現実に大きいノイズがのっている。一方,チャンネル4と5の輝度温度差は,温度と見込角に対して強く依存して変化する。これは放射計の非線型誤差(較正誤差)と,雪面の射出率の温度依存によるものと思われる。機械的に雲検知がやり易いよう,低温でのデータには経験的な補正をほどこした。
  • 菊地 勝弘, 吉田 裕一
    1987 年 65 巻 6 号 p. 963-971
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地表面近くのエアロゾルの振舞いを調らべるために,エアロゾル濃度,気温,風速の鉛直分布の観測が,1980年8月から12月まで,北海道犬学構内の第2農場で行われた。解析の結果,次のことがわかった。
    地表面が草地で被われている時期には,エアロゾル濃度は高度と共に増加した。このことは,草地がエアロゾルに対してシンクとして働いていることを示している。また,エアロゾルの鉛直濃度勾配は安定度の増加と共に増加する傾向があり,この傾向は,地表面が雪面の場合より草地の方が大きかった。地表面近くのコンスタント•フラヅクス層を仮定し,濃度勾配法を用いてエアロゾルの沈着速度を計算した。その結果,0.01から1cms-1の値が値られた。沈着速度は,安定度が増加するにしたがって減少する傾向があった。このことは,エアロゾルの乱流輸送が強い安定成層によって抑制されているためと考えられる。さらに,沈着速度は,雪面より草地の方が大きいことがわかった。これは,草地が雪面よりもエアロゾルにとっては強いシンクとなることを示していると考えられる。
  • 遊馬 芳雄, 菊地 勝弘
    1987 年 65 巻 6 号 p. 973-989
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地上でしばしば観測される電位傾度と降水電荷の鏡像関係を調べるために,選択的イオン捕捉による降雪粒子の帯電の公式を導き,1次元モデルで数値実験を行った。
    鏡像関係は降水粒子が雪の方が雨よりも成立しやすく,融解直径で較べると雪片の電荷量は雨滴よりも大きいことが,観測よりわかっている。遊馬•菊地(1983)の室内実験によると,雪片は多孔質であるにもかかわらず選択的イオン捕捉説から予想される最終電荷量は同じ直径の導体球の最終電荷量(ー12πε0Fa2)に等しい。したがって,雪片の多孔質がイオンの捕捉率を高め,最終電荷量を得るまでに要する時間が短くなることが予想される。これを"penetration effect"と呼び,この効果を考慮した帯電の公式を導いた。
    次に,数値実験で雲底下での降水電荷の変質を調べた。降水粒子として雪片と雨滴の場合について実験を行った。雪片の場合のイオン捕捉の公式として, WhipPle and Chalmers (1944)と本論文で導出した公式を比較した。主に得られた結果は,次のようになる。
    (i)地表で観測される雪片の電荷量は,雲内の状態をほとんど反映していないが,雨滴の場合は反映する傾向がみられた。この違いは,主に両者の落下速度の違いによるものと考えられる。
    (ii)penetration effect は尖端放電によって大気中に多くのイオンが放出される地表付近で特に効果的である。
    (iii) 地表面において降水電流と尖端放電電流がバランスしていて,これが鏡像関係をもたらす。
  • 遊馬 芳雄, 菊地 勝弘, 谷口 恭, 藤井 智史
    1987 年 65 巻 6 号 p. 991-998
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地上で観測される大気電位傾度と降水電荷の鏡像関係を調べるために,降雪時の下層大気中の電位傾度と降水電荷の鉛直構造を同時に測定する観測システムを開発した。このシステムは係留気球,係留索上の観測点,地上のマイクロコンピュータから構成されている。観測点にはそれぞれ,フィールド•ミルと電荷計を備え,50mあるいは100m毎に最大4点での大気電位傾度の鉛直成分と5秒間毎の最大降水電荷量を同時に測定することができる。データは観測点でデジタル変換され,プラスチック光ファイバー•ケーブルでデジタル光通信され,地上のマイクロコンピュータに保存される。
    1985年3月に観測を行い,数例の観測結果を得ることができた。鏡像関係は地上では明瞭であるが,上空では不明瞭であること,降水電荷が落下中地表付近で再帯電する様子が観測され,この方法が大気電気現象の観測に有効であることが示唆された。
  • 柴田 隆, 前田 三男, 宇都宮 彬, 溝口 次夫
    1987 年 65 巻 6 号 p. 999-1003
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 伍 培明, 小野 晃, 岡田 菊夫
    1987 年 65 巻 6 号 p. 1005-1010
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Individual nitrate-containing particles were identified with a vapor deposited nitron thin film method in winter season. Information about the mixture of individual nitrate-containing particles was obtained with an electron probe X-ray microanalysis and other thin film method. It is indicated that nitrate did not exist always in the fine particle range, and the particulate nitrate existed in mixed state with sulfate as a solid mixed salt.
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