気象集誌. 第2輯
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66 巻, 5 号
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  • 劉 国勝, 武田 喬男
    1988 年 66 巻 5 号 p. 645-660
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1985年春,日本付近を通過する低気圧に伴う層状雲について,19.35GHzマイクロ波放射計と8.6mm波レーダーによる同時観測を行った。マイクロ波放射データから鉛直分積分量(L)を,また,レーダーデーターから鉛直積分氷水量(I)を評価し,雲全体としての氷晶化度[I/(L+I)]を求めた。
    その結果,層状雲には2つのタイプ(タイプAとタイプB)のものがあることがわかった。タイプAの雲は氷晶化度が低い。雲水量が多いが,レーダーエコーが中層だけにあり,氷粒子の量は少ない。3ケースの平均総凝結水量(L+I)が約55mg/cm2であり,氷晶化度は10%弱である。タイプBの雲はレーダーエコーが強く,中層だけではなく上層でも観測される。氷粒子の量が多いが,雲水量は少ない。3ケースの平均総凝結水量が約40mg/cm2で,氷晶化度は約65%である。つまり,両タイプの雲は総凝結水量がそれほど違わないにもかかわらず,氷晶化度がかなり異なる。
    両タイプの雲の構造と降水形成過程については次のように考えられる。タイプAの雲は,中層にある一層の雲であり,氷粒子が中層雲の雲頂上付近で形成される。雲頂での気温が十分低くないため,形成される氷粒子は数少ない。雲水量が多く,中層での上昇気流がかなり強いと考えられるが,氷晶化はあまり進んでいない。一方,タイプBの雲は上層雲と中層雲からなる2層の雲であり,上層雲から中層雲への多量の氷粒子の seeding により中層雲の氷晶化度は非常に高くなっている。本研究は,降水形成過程が異なる2つのタイプの雲の氷晶化度を調べたことによって,中層雲だけでは降水が形成されにくく,上層雲からの seeding が降水の形成に重要な役割をはたしていることを,定量的に示した。
  • W. Paul Zakrzewski, Ryan Blackmore, Edward P. Lozowski
    1988 年 66 巻 5 号 p. 661-675
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    海洋上での船体着氷ポテンシャルの図示の方法についてのレビューがまず行われる。特に着氷の予報という観点からこの問題を取り上げる。
    船体の上部構造物への塩分を含んだ海水の着氷成長についての新しいモデルが詳しく呈示される。このモデルによって,しぶきをあびる船体の前面の着氷速度が計算される。板を流れ落ちる水膜の塩分濃度や氷の粗度も考慮される。このモデルは入力データとして船の速度と方向,気温,海水の塩分濃度,海水の表面温度,風速および風の吹送距離を含む。このモデルを用いてカナダの東側の冷水域における船体着氷速度の分布が数値的に計算される。これらの最初の結果は,自動データ補捉システムが利用できる場合には,このモデルが船体着氷速度の恒常的な予報(あるいは過去の解析)に応用できることを示している。
  • Chung-Kyu Park, Ernest C. Kung
    1988 年 66 巻 5 号 p. 677-690
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    北アメリカの夏期気温変動の2つの主成分要素と先行する海洋•大気現象との関係を調べた所,両者の間に強い相関があり,夏の気温の予測に使えることがわかった。熱帯西部太平洋の熱源に伴う大規模循環と,中部北太平洋-アリューシャン域での海洋•大気総合作用が,北アメリカの地上気温を決めるのに重要な役割を果している。
    相関係数の解析から,北太平洋の前の季節の水温と北アメリカの次の夏の気温との問に強い相関があることがわかった。北アメリカの夏の高温に先行して,北太平洋の水温は低く逆に,北アメリカの低温に先行して,水温が高くなっている。これらの結果を用いることによって,夏の気温の矛測が可能であろう。海面水温の前兆は,前年の秋に現れ,冬と春に最大となり,夏には弱くなる。夏の気温変動はエルニーニョとも関係しており,ENSO の影響は冬期に限らず夏期にも及んでいることを示している。
  • 蒲生 稔
    1988 年 66 巻 5 号 p. 691-701
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    朝の高層観測で得られた温度の鉛直分布と,ルーチン観測による地上の気温と露点温度の時間変化から,簡単な混合層モデルを使って,混合層特性の時間変化とその年変化を求めた。正味放射量は日出後1-2時間後に負から正に変わる。この時間を混合層が発達を開始する時間と見なし,有効日出時刻とした。混合層は早朝はゆっくりと発達し,その後正午ころまで直線的に増大する月が多い。ボーエン比は5月に1となり,夏季には地表面潜熱輸送量が大きい。冬季の午前中は地表面潜熱輸送量が顕熱輸送量より多いが,正午近くで急激に減少する。対流の速度スケールW。は正午過ぎまで放物線状に増加する。
    相対湿度が有効日出時刻に極大になるのに対して,比湿は有効口出時刻から1-2時間後に最大となる。比湿は最大値をとった後は混合層の発達に伴い,14-15時ころまで減少し続ける。7-9月では日中の比湿の減少割合は小さい。比湿の混合層内と,混合層に取り込まれると部安定層内の水蒸気の収支を考慮した簡単な方法により,有効日出時刻における比湿の鉛直分布も求めてみた。
  • 広田 道夫, 村松 久史, 佐々木 徹, 牧野 行雄, 旭 満
    1988 年 66 巻 5 号 p. 703-708
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    日本上空(33~38°N)における対流圏および成層圏空気試料の採集を1978年から開始し,CF2Cl2,CFCl3およびN2Oの分析をGC-ECD法によって行った。
    1986年11月における対流圏の平均体積混合比はCF2Cl2、が390ppt,CFCl3が238ppt,N2Oが308ppbであった。1979年1月から1986年11月までの期間,CF2Cl2は13.5ppt/年,CFCl3は9.5ppt/年の割合で増加していたが,N2Oも1982年12月から1986年11月までの期間,2.0ppb/年の割合で増加しているようであった。
    下部成層圏(15~28km)におけるCF2Cl2,CFCl3およびN2Oの体積混合比は高度が増すとともに減少しており,その傾向は1次元光化学-拡散モデルから計算された高度分布によく一致していた。
  • Sanga-Ngoie Kazadi
    1988 年 66 巻 5 号 p. 709-728
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    格子点の気象要素の値を,力学的同化を川いずに,直接算定する,改良 OIM スキーム(ゼロ直接スキーム)を開発し,テストした結果データ網の粗な熱帯域でもうまく適用できることがわかった。
    その公式化において,ランダムな経験誤差(観測誤差+小スケールノイズ)は,スキーム内で用いられる他の統計的パラメータのみならず,重み関数,内挿誤差,したがって格子点値そのものにも著しい影響を与えることがわかった。
    各格子点値内挿のために有効な観測点は,場の統計的な特性の空間構造に合うようにつくられたアルゴリズムによって選択した。格子点での全誤差の,簡単で計算可能な式が与えられ,この誤差に対する低周波フィルターの有効性も示した。
    これらの格子点値を用いた5年平均の季節平均値は,観測値および,熱帯の観測網のあらさを補完するためにさまざまなソースの資料を用いた既存の統計値と,非常に良い一致を見た。
    さまざまなソースからの資料を用いるためのこの新しいスキームの一般化や,中高緯度の気候学的研究への応用,さらに数値予報の同化スキームにおける使用の可能性についても,解析のためのよりもっともらしい統計パラメータの算定をすることを念頭におきつつ,調べる。
  • 戸矢 時義, 安田 延壽
    1988 年 66 巻 5 号 p. 729-739
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Deardorff (1977) は地表面温度の予報に良く使われている Force Restore Method (FRM) を地表薄層の土壌水分(体積含水率)に適用し,予報式を提案した。この手法を,筑波における関東ロームで精密に測定された裸地面からの蒸発量と地表薄層の土壌水分データに適用し,FRM 式中の無次元パラメータ C1,C2および Wb の性質を調べた。
    C1は地表面土壌水分(Ws)の増加に従い,単調に減少し,Deardorff (1978)が Adelanto loamで解析したものと類似した関係を示した。C2は Ws とは特に関係しておらず,関東ロームでは2-4をとるのが適当であると考えられる。深層の土壌水分 Wb として,06時の地表薄層の土壌水分を採ると,FRMの取り扱いが簡略化される。
    簡略化したFRMによるパラメタリゼーションを,地表面湿潤度の概念を用いたバルク法による蒸発のパラメタリゼーションと結合させ,裸地面からの蒸発量と地表面土壌水分の日変化をシミュレートした結果は,実測と良い一致を示した。
  • In-Sik Kang
    1988 年 66 巻 5 号 p. 741-751
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    冬期の平均降水量と上部対流圏の定常渦の経年変動およびそれらの変動に対する熱帯の海面水温(SST)の影響を調べた。用いた資料は,15年間の熱帯太平洋の SST の観測値を入れた場合(SST run)と,いれない場合(control run)についての大気大循環モデル(GCM)の15年積分からの時系列資料である。
    SST runにおける変動と control run における変動を比較することにより,熱帯太平洋でのSST変動は,局地的な熱帯域,特に中部太平洋とインジネシア地域での降水量変動と,両半球の亜熱帯域中部太平洋上の上部対流圏の定常渦の変動の大きな部分を説明することが示された。しかしながら,中経度における変動の大きさは SST の影響を受けていない。
    赤道太平洋の中部(cp)と西部(wp)の降水量変動に見られる東西のシーソー現象と,それによって励起されたウォーカー循環の偏差は,主に cp の SST 変動に依っている。SST run における cp 及びwp 上の降水量偏差は共に,太平洋•北米(PNA)地域の循環場の偏差を引き起すが,より強い大気の応答は,cp での降水量偏差により起っている。熱帯の中では,熱帯内の降水量と PNA セクターでの中緯度循環の大規模な変動に最も強い影響を与えるのは中部太平洋である。しかしながら,control run では cp 及び wp の降水量偏差は,中緯度における組織だった大循環パターンを作り出していない。
  • 猪川 元興
    1988 年 66 巻 5 号 p. 753-776
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    山を取り扱える非静水圧モデルの3種のスキーム,即ちAE(非弾性音波除去方程式系を用いるもの),E-HI-VI(音波包含方程式系を用い水平方向も鉛直方向もインプリシットに時間積分するもの),E HE VI(音波包含方程式系を用い,タイムスプリッテング時間積分法で水平方向はイクスプリシットに鉛直方向はインプリシットに取り扱うもの)を,その定式化,実際の数値実験において,お互いに比較した。
    音波包含方程式系を用いるもので音波成分が十分減衰させられている場合は,AEと同じフラックス形式の移流項を用いても不安定は生じず,数値実験の結果は上記3者でほとんど同じであった。音波包含方程式系を用いるもので音波成分が十分減衰させられていない場合は,不安定が生じた。音波成分を効率的に減衰させる時間積分法,及び高周波成分(音波)と低周波成分(重力波,移流項)を同時に考慮した,その時間積分法の線型安定性解析が示された。
    AEやE-HI-VIで用いられた,圧力に関する楕円方程式を解くための逐次近似法(直接解法を何回か適用する方法)は,その精度には問題はなく,計算時間は1回の直接解法の適用により約15%増加した。1回の直接解法の適用に要する計算時間は,E-HE-VIでの1回の短い時間ステップの計算に要する時間とほぼ同じであった。
    EHI-VIに関して,音波関連項の一部をインプリシットに取り扱う方法でも,圧力に関する楕円方程式の上部下部境界条件を正確に取り扱うためには,逐次近似が必要であるが,山が低い場合は,そうしなくても,実用上問題は生じなかった。山が高い場合は,逐次近似をしないと不安定が生じた。また,この方法は,山の勾配が大変急な場合,不安定が生じることが示された。
  • Harald Lejenas
    1988 年 66 巻 5 号 p. 777-781
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    The importance of stationary and travelling planetary-scale waves for southen hemisphere blocking has been investigated. The data used are 500-mb geopotential height data from nine winter seasons. The first three zonal harmonics of these data were decomposed in a low-pass filtered quasi-stationary part, and a travelling part being the difference between the unfiltered and filtered values.
    The behaviour of the planetary-scale waves during periods with blocked flow is documented. It is found that unlike blocking in the northern hemisphere there is no systematic behaviour of the ultra-long waves during southern hemisphere blocking.
  • 宮原 三郎, 呉 登華, 諸岡 浩子
    1988 年 66 巻 5 号 p. 783-789
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 阿部 成雄
    1988 年 66 巻 5 号 p. 791-795
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    台風域内の非対称風と移動との関係について数値シミュレーションの資料を用いて調べた。風を方位方向平均との差で非対称風をあらわすと,移動方向に向って,低気圧の左側に低気圧性渦動を,右側に高気圧性渦動が観測される。
    下層収束層で1.8°経の内側(内域)と1.8°~9.5°経の間(外域)の平均風を作ると発達期には低気圧はその中間の方向に進み,衰弱期には内外域の平均風の方向はほぼ一致する。上層発散層の非対称流はあたかも渦をさけて流れるように見え下層の非対称流と異なった特徴を示す。これは上層において1.8°経上で移動方向に高気圧部が見られることと対応する。
  • 山崎 孝治
    1988 年 66 巻 5 号 p. 797-806
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
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