気象集誌. 第2輯
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67 巻, 2 号
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  • 楠田 信, 阿部 信男
    1989 年 67 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    海陸風の風向変化に及ぼす水平移流項の影響を、既に発表されている大分市、カリフォルニアとワシントン両州での観測資料を用いて調べた。そのデータを解析するに先立って、特定の観測点における風向の日変化を定量的に見積ることが出来るように Neumann (1977) が導いた式を改良した。その結果、海風楕円の回転方向と離心率の両方を観測データから調べることが可能になった。一方、その風向日変化の式から風向変化に与える気圧傾度力、摩擦力それぞれの影響を見積ることが出来る。その式を用いて上記3ケ所での風向日変化に与える水平移流項の影響を調べた結果、次のことが分かった。
    海陸風楕円は、地球の自転に基ずくコリオリカの影響によって時計回りに回転することが多い。しかし、上記3ケ所の観測データから、場所によっては海陸風楕円の回転方向が反時計回りになることが示される。しかも、その観測点を含む地域の水平移流項の影響が、コリオリカの影響を超えて海陸風楕円を反時計回りに変える可能性がある。
  • 西 憲敬
    1989 年 67 巻 2 号 p. 187-203
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    赤道付近の33地点のレーウィンゾンデのデータを用いて高度と温度の場の30-60日変動の特性および東西風のそれとの関係を調べた。まず7年間の時系列を調べ、次に変動が活発な7つの時期に対してずらし相関の手法を用いて解析を行った。主要な結果は以下のとおりである。
    (i)対流圏全層の高度および上部対流圏の温度において、インドから日付変更線を越えて東太平洋までの広い領域で東西の位相のずれが小さい定常波のような構造が認められた。
    (ii)対流圏下層の高度と東西風の変動は日付変更線付近では同位相であるが、インドネシア付近では東西風が高度より約120°進んでいる。上層では日付変更線付近で東西風が高度より約120°進んでいる。
    (iii)高度の鉛直分布は年によって変化が大きいが、西および中部太平洋では上層は下層より約70°~120°進んでいる。
    これらの高度場の特徴はよく知られている東西風の場の構造とは大きく異なっている。30-60日変動においては、単純に対流圏の上•下層で逆位相のケルビン•モードが卓越しているとは考えがたい。
  • K.-M. Lau, Peng Li, C.H. Sui, 中澤 哲夫
    1989 年 67 巻 2 号 p. 205-219
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    本論文では、西太平洋における超雲団(SCC)、西風バーストそして30-60日振動と関連した風と対流の観測された変動の機構を解明するための初歩的な数値実験の結果が示される。Lau and Peng (1987)のモデルを用いると、30-60日振動と関連した東進する降水パターンの生成が SCC として認められる。その発達期において SCC は SCC とは逆に西進する対流クラスターを伴っている。私たちの結果は、これらの西進するクラウドクラスターは、大規模場の流れと加熱の相互調節によって、30-60日じょう乱の発達期にできるロスビー波と関連していることを示唆している。もし下面境界からの強制が東西一様で、他の外力もないならば、 SCC は、赤道東西面で惑星規模の東西循環セルを伴った、組織化された東進する降水パターンに次第に落ち着く。熱帯大気での季節内変動は複合スケールの過程であることがわかった。3つの基本的な空間スケールが認められる。すなわち、クラウドクラスターと関連した総観規模運動のサイズ(波数1と2)。最初のスケールは西風バースト、対低気圧の生成、そして数日のオーダーを持つ高周波変動と関連している。2番目、3番目のスケールは、30-60日振動のゆっくりした東進と関連している。
    SCC と西風バーストとの関係を、海面水温が東西で変化している下でのモデル SCC の空間•時間変動を詳細に調べることによって研究した。海面からの加熱と同様に対流圏下部での wave-CISK 加熱が、実際の大気で観測される強い非対称性を持った下層の西風バーストを形成する上で重要であることがわかった。低周波振動の統一的理論の発展から見た本結果の示唆する点についても議論される。
  • 菊地 勝弘, 遊馬 芳雄, 中平 治
    1989 年 67 巻 2 号 p. 221-230
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    北海道石狩湾上の降雪雲の特徴を、1983年、84年の2,3月の4ヶ月間のレーダーデータを用いて解析した。この解析では、降雪雲を、気圧配置によって、季節風型、季節風末期型および低気圧型に分けた。解析された要素は次のようなものである。レーダーエコー面積のサイズ分布、全レーダーエコーに対する強いエコーの面積比、エコー面積の時間変化、発達した個々のエコーの中心の位置、エコーの寿命等。解析の結果、石狩湾上の降雪雲のレーダーエコーは特徴的な性質を有することがわかった。すなわち、全ての降雪雲のエコーのサイズ分布は、対数正規分布を示し、エコーレベル2以上の強いエコーを示す面積比は約 40% であった。また、エコー面積は顕著な時間変動を示し、平野に侵入してきたエコーは、海岸線から数 10km で最大面積に達した。平均寿命1時間の降雪雲の平均エコー面積は約 25km2 であった。
  • 露木 義, 栗原 弘一
    1989 年 67 巻 2 号 p. 231-247
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    季節内変動の時間スケールにおける、夏期北半球循環場と熱帯の対流活動との関係について統計的研究を行った。その際、東アジア付近における梅雨期と盛夏期との違いに重点を置き、5月26日~7月14日と7月15日~9月2日の各50日間に分けて解析した。解析結果を解釈するために、月平均300mb 流線関数の平年値の順圧不安定も調べた。
    相関解析によると、梅雨期には熱帯の対流活動と東アジア循環場との問にはあまり強い関係はみられず、対流活動が中緯度循環場を強制しているという明確な証拠は得られなかった。一方、盛夏期にはフィリピン付近とインドシナ半島の対流活動は東アジアの循環場に大きな影響を与え、特に黄海付近の高度がその影響を最も強く受けることがわかった。西部熱帯太平洋域の対流活動が活発になると、北太平洋上にそこから発する東西波数6程度の波列が現れ、その位置は対流活動の位置にあまり依らない。
    8月の300mb循環場の主要な順圧不安定モードのうちのひとつは、盛夏期に北太平洋上にみられる波列に似ている。それは定在波的に振舞い、黄海付近でも大きな振幅を持つ。そのモードの振幅がe倍になるのに要する時間は、粘性を無視した場合11日である。一方、6月の順圧不安定モードは東アジア付近で大きな振幅を持たない。これらの結果は上に述べた解析結果と矛盾せず、盛夏期の東アジア域における熱帯と中緯度の相互作用において、順圧不安定が重要な役割を果たしていることを示唆している。
  • 加藤 内蔵進
    1989 年 67 巻 2 号 p. 249-265
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    中国の梅雨前線付近の下層循環場の特徴の季節遷移と北半球夏モンスーンの役割について、1979年の観測資料を用いて解析した。
    梅雨前線は5月には未だ中緯度の傾圧帯内のシステムであり、その北側の下層寒気と発散を伴う地上の高圧帯の存在が特徴である。南側の地上の亜熱帯高気圧は明瞭でない。
    6月半ばには、梅雨前線へ向かう強い下層の南風を伴う亜熱帯高気圧が強まる。との急変は、Kato(1985)の指摘した大陸の前線帯付近の下層温度傾度消失とは別の現象であり、北半球夏モンスーンの開始と同時に起きる。との時、OLR でみた強い熱源域が南アジア広域(赤道~25°N/60°E~105°E)に広がり、そとの下層気圧が低下する。とのため亜熱帯高気圧域では120°E付近を中心に東向きの気圧傾度の増加に伴う梅雨前線帯への下層の南風が地衡風的に強化される。同時に、インド方面から西太平洋熱帯海域に伸びるベルト状の熱源域の強化による(~10°N/60°E~140°E)局所的子午面循環の下降域として亜熱帯高気圧も強められる。
    6月半ばの大陸付近の梅雨前線の南側の高気圧域の下層風場の急変は、北半球夏モンスーンの開始に伴って形成された熱源分布による上記2つのプロセスの重ね合わせとして理解される。なお、1979年から1983年の半旬平場値に基づく簡単な解析によっても、との推論を支持する結果を得た。
  • 田中 正之, 塩原 匡貴, 中島 映至, 山野 牧, 荒生 公雄
    1989 年 67 巻 2 号 p. 267-278
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1982年5月4日から8日にかけて長崎市において観測された黄砂現象について、太陽直達光と太陽周辺光の分光観測からエアロゾルの光学的厚さと粒径分布(体積スペクトル)を求めた。その結果、半径数ミクロンの大粒子の増大とサブミクロン粒子の減少が見出された。オーリオールメータ観測から得られた黄砂の体積スペクトルのモード半径は2μmより大きかった。平時の波長0.5μmでのエアロゾルの光学的厚さが0.2~0.8、オングストローム指数αが0.8~1.5であったのに対して、黄砂時には、各々0.5~1.0、0.1~0.5と大きく変化した。地上•高層天気図を用いた流跡線解析、およびエアゾルの元素分析、数密度、散乱断面積の観測結果は、黄砂の到来が前線の移動に伴う大陸気団の卓越によることを支持した。
  • 中島 映至, 田中 正之, 山野 牧, 塩原 匡貴, 荒生 公雄, 中西 裕治
    1989 年 67 巻 2 号 p. 279-291
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    長崎において1982年4月24日から5月11日までポーラーネフロメータによる黄砂粒子の散乱位相関数の測定を行った。Pollack and Cuzzi の半経験的理論によるモデルや、Mie 散乱粒子に仮想的な吸収を導入したモデルは、黄砂粒子の強い非球形性を示唆した。また、ポーラーネフロメータを含む数種の測器の観測データから得られた黄砂粒子の体積スペクトルを用いて、波長別消散断面積、単一散乱アルベド、非対称因子、後方散乱関数を求めた。
    観測地での黄砂粒子の体積濃度は、黄砂現象の最も強かった5月4~6日には666l/km2、続く5月8日には183l/km2と推定された。複素屈折率の虚数部として0.01および波長依存するモデル値を用いると、これらの値から計算される太陽放射加熱率は0.08~0.40°C/dayに達し、1回の黄砂到来により広い範囲にわたって大きな放射効果を及ぼすことが予想された。
  • 岩崎 俊樹
    1989 年 67 巻 2 号 p. 293-312
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    有限振幅•非地衡風の意味で、波動•平均流相互作用及びラグランジュ平均子午面循環を解析する方法が提案される。このスキームでは等温位面で帯状平均した気圧を鉛直座標に用いる。各変数の帯状平均場は等温位面上で荷重平均され、この荷重は等温位面問の大気質量に比例する。運動方程式•連続方程式及び熱力学方程式は Andrews & McIntyreによる変形されたオイラー平均(P-TEM)の方法と同型に定式化されるが、熱力学方程式は渦輸送の項を含まない。これにより、新スキームは有限振幅•プリミティブ方程式の条件のもとでのストークス•ドリフトの除去を可能にしている。
    新スキームの実用性を確かめるために、 NCAR の大気大循環モデルの診断を行うP-TEMとの比較では質量流線関数及び EliassenPalm フラックス収束に大きな相違が見られた。特に、新スキームで得られた質量流線関数は、下部成層圏に単一セル(いわゆる Brewer-Dobson 循環)を形成する。
    最後に新しい座標系の応用として、微量成分の2次元輸送方程式が定式化される。その場合、波動による拡散は自由度一の対称行列として表現される。
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