気象集誌. 第2輯
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68 巻, 5 号
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  • 中村 健治, 猪股 英行, 古津 年章, 阿波 加純, 岡本 謙一
    1990 年 68 巻 5 号 p. 509-521
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    X-およびKa-バンドの二周波レーダによる降雨の同時観測を行った。目的は、多周波レーダによる降雨強度測定可能性の検討である。同時にC-およびKu-バンドのレーダによる観測も行った。その結果、近距離ではKa-バンドにのみ降雨減衰の影響が現れることが分かった。降雨減衰を用いた降雨強度の推定が可能であること、さらに、降雨のプロファイルも得られることが実証された。Ka-バンドのみを使った降雨強度手法も検討したが、2周波数を用いる方が誤差が少ないことが判明した。降雨減衰の測定には絶対校正が必要の無いことを利用して、レーダの絶対校正を試みたところ、地上雨量計による校正よりも正確な校正ができた。
  • Pao-Shin Chu, James Frederick
    1990 年 68 巻 5 号 p. 523-537
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    この論文においては1982年5月の期間における西太平洋赤道域での西風バーストについての事例解析を示す。12時間ごとの島、珊瑚礁および船による観測を用い、11日間続いたバーストの緯度方向の広がりは赤道から約5度以内であることが確かめられた。一方その経度方向の広がりはかなり変動し、バーストが最初に認識された時点では1000kmであったものが、バーストが十分に発達した時点では3500km以上になった。したがってバーストの期間においてそのロスビー数は大きく変化し、期待されたように、加速項はバーストの初期の段階においてはコリオリカの項を上回っていた。
    赤道太平洋最西部における気圧の増加は中緯度からの外力に引き続いて起こるように見受けられた。通常ならば緩やかな東西方向の気圧傾度は大きく増大され、西風バーストに好都合な条件をもたらした。北緯5度から南緯5度、東経135度から155度の範囲で平均された西風の強さは、赤道での東西方向の気圧傾度が確立された2日と12時間後に最大値に達した。西太平洋最西部の気圧の上昇に加えて、西太平洋中心部(東経150度~160度)における気圧の降下は強い東向きの気圧勾配をもたらし、西風を長期化するのに作用した。
    緯度方向に平均された東西風および水平発散の赤道域における経度一時間断面は、地表面の発散の主要な軸がバーストの期間中西風の最大域の西方に位置していたことを示した。地表面の収束の最大域はバーストの先端部に位置していた。この領域においては積雲対流活動および上昇流も活発であった。深い積雲対流雲がしばしば強い西風の東方に見出された。バーストの期間中、赤道西太平洋における東西方向の循環は二つのセルで特徴づけられた。これらはバーストの最東部における強い積雲対流活動によって結びつけられている。東側のセルは局地的なウォーカー循環に似ているが、西側のセルはウォーカー循環の反対向きの要素を呈する。
    上に述べた平均領域での海面水温はバーストの期間中約摂氏1度低下した。この領域における赤道大気は、バーストの期間中比較的小量の熱および比較的多量の水蒸気を温暖な海面から得ている。これらの条件は赤道海洋における湿潤対流の活発化にとって好都合な条件を形成する。
  • Charles McLandress, Jacques Derome
    1990 年 68 巻 5 号 p. 539-548
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    低次球面成層圏モデルにおける定常波動問のinteractionを解析的及び数値的に研究した。Solid bodyrotationの平均帯状流を持つ定常状態の半球準地衡風モデルにより波動のtriad interactionを調べた。モデル基本場は特殊な構造を持つので波動がinteractする為にはdissipationが必要である。
    第一及び第二強制モードの非線型的構造は第三モードが下部境界で強制されない場合に限り相対的な位置によらない事が見い出された。この場合には非線型効果による線型波の振巾の増大や位相の変化の程度は波動の鉛直伝播特性によることが示される。
    波動の水平スケールが大きい事と西風が弱い事がwave-wave interactionにより振巾が顕著に変化する為の条件であることも見い出された。波動のスケールが減少したり、平均帯状流の速度が増大すると、波動の位相に顕著な変化が起きる。
    現実的な境界振巾強制と現実的なdissipationを与えた数値解はplanetary waveが極渦をかなりゆがめるにもかかわらず弱い非線型にとどまる。
  • 上田 博, 菊池 勝弘
    1990 年 68 巻 5 号 p. 549-556
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1987年12月23日から1ヶ月ノールウェイのカウトケイノで行われた低温型雪結晶の観測期間中に、68個の十二花の雪結晶を採取し顕微鏡写真を撮影した。十二花の雪結晶の側面(結晶c一軸に直角な方向からみた)の形態を解析した。十二花雪結晶の枝のなす角度φを顕微鏡写真から測定した。ほとんどの十二花は2個のダブルプレート(ないしは六花)からなっていた。角度φの分布においては、いわゆる回転双晶機構による十二花雪結晶形成の証拠はみられなかった。他の機構による十二花の形成の可能性も否定できないが、ほとんどの十二花雪結晶の形成機構は雪片説で説明される。
  • PartII:前線帯の構造と擾乱
    秋山 孝子
    1990 年 68 巻 5 号 p. 557-574
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    PartIでは静止衛星赤外データにもとづき、1982年7月の梅雨前線上の雲変動を解析した。PartIIでは、同期間の前線帯の垂直構造を上層jetと下層jetとの関係で議論し、また前線帯の雲変動に関連した擾乱の振舞いを相対渦度場で解析した。結果を以下に要約する。
    解析期間(一ヶ月間)の平均場でみると、前線の雲帯はチベット高原南縁から東へ伸びる下層jet(梅雨jet)北側の正渦度帯と一致する。一方チベットの北縁を回る上層jet(westerly-jet)は、大陸の東岸(~120°E)以東で南下し、日本列島近傍では前線雲帯の北側に沿う。~120°E以東の梅雨前線帯の正渦度帯は対流層全層に存在し上層に向かって北へ傾斜しており、梅雨前線帯が傾圧帯であることを示している。大陸上では、梅雨前線の下層jetと上層jetは南北に約1500km離れ、梅雨前線帯の正渦度帯は下層にのみみられる。この大陸と日本列島上での前線帯の構造の違いは、PartIで指摘した両者間の中規模雲システムの様相の相違を説明する。
    大規模場の変動に伴って梅雨jetと上層jetとの関係は変動し、120°E~140°Eの梅雨前線の雲量•前線の垂直構造•前線上の擾乱(低気圧)の様相も変動した。雲量と前線帯の構造から、梅雨前線を三つの状況((1)active-deep phase,(2)active-shallow phase,(3)inactive phase)に分類し、それぞれのphaseの前線帯の構造と擾乱の特徴を記述した。
    結論として、日本近傍の梅雨前線上の中規模擾乱は、(1)では上層ほど軸の西へ傾く背の高い構造であること、(2)では背の低い構造で北側の(上層jetに伴う)前線上の背の高い擾乱の南側に位置して発達していたことを示した。またいずれのactive phasesでも、梅雨前線上の中規模擾乱は大陸東岸(~120°E)で発達し始める。その発達には上層jet内を中央アジアから移動して来る擾乱が大きく関わっていることを見出した。
  • 新田 勅
    1990 年 68 巻 5 号 p. 575-588
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1988年夏の日本の異常天候と熱帯の海面水温、対流活動、循環場との関連について調べた。低温、多雨であった日本の夏の天候の直接的な原因は、熱帯西部太平洋のフィリピン付近で対流活動が不活発であったことによる。このため太平洋西部の亜熱帯高気圧が十分に発達しないで、7月から8月にかけて日本付近は低圧帯に覆われ、悪天が持続した。
    高層風および長波放射量(OLR)データの解析から、通常は熱帯西部太平洋域にある東西循環(ウォーカー循環)の上昇域の中心が、この年には大きく西にずれ、ベンガル湾上に位置していることがわかった。この対流中心域の西への移動により、西部太平洋域ではその補償下降域のため、対流活動が不活発になったものと思われる。
    1988年夏は、熱帯太平洋では1975年以来の強いラニーニャ現象が顕著であった。また、インド洋の海面水温は平年に比べて約1°C上昇していた。このインド洋での海面水温の上昇と強いラニーニャ現象とが合わさって、対流活動の中心が大きく西にずれ、ベンガル湾まで達したことが推測される。
  • 井上 豊志郎
    1990 年 68 巻 5 号 p. 589-606
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    西太平洋の熱帯海域での対流活動と海面水温•水蒸気量の局所的な対応について極軌道衛星NOAA-7に搭載された分割窓領域データを用いて1983年9月-1984年8月の期間について調査した。対流活動、海面水温および水蒸気量(11μm,12μmの輝度温度差)はすべて分割窓領域データより算定し、緯•経度2.5°の領域での月平均値を用いて局所的な対応を調べた。
    対流活動は海面水温が高いほど、また水蒸気量が多いほど活発であるが、平均的な対流の深さは水蒸気量と非常に良い対応をしていることが分かった。水蒸気量が同じ時は海面水温の上昇に対し対流の深さはあまり深くならないが、同じ海面水温に対しては水蒸気量が多くなるほど対流が深くなることが分かった。対流活動の空間分布も海面水温より水蒸気量との対応が良く、暖かい海面水温域で対流活動が抑制されている地域は水蒸気量が少ないことが分かった。
    同じ海面水温と水蒸気量に対する対流の深さは北半球のITCZを含む領域1(20°N-Eq,130°E-170°W)に比して南半球のSPCZを含む領域II(Eq-20°S,150°E-170°W)でより深いことが分かった。輝度温度240K以下の深い対流(高さ10km以上)は、水蒸気量が輝度温度差で2.1°C以上(領:域IIでは2.0°C)、かつ海面水温が28.2°C以上(領域IIでは27.2°C)の条件で発生していることが分かった。
  • 花輪 公雄, 木津 昭一
    1990 年 68 巻 5 号 p. 607-611
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    日本南方海:域に係留された表面ブイに小型の日射計を取り付け、日射の現場観測を行った。1989年8月から1990年1月まで166日間の観測に成功した。この速報では、1989年12月までの135日間の日平均日射量を示した。月平均値に対しては、これまで同海域で海上気象資料から経験式を用いて評価されている値と今回の結果を比較した。
  • 篠田 雅人
    1990 年 68 巻 5 号 p. 613-624
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1960年代後半から1980年代中ごろのサヘルの長期的干ばつをもたらした大気循環を調べた。8月の熱帯アフリカにおける降水帯の定量的解析から、この時期の降水の減少傾向は、降水帯の赤道側への後退より、その総降水量の減少によることがわかった。この傾向は、熱帯アフリカで広く認められる700mbの高度•温度の上昇傾向と並行している。サヘルにおける700mbの高度と温度の上昇率は、それぞれ、10年で14.79Pmと0.62°Cで、熱帯アフリカのなかで最も著しい。高度と気温が同時に上昇しているのは沈降傾向が強まったためと考えられるが、これにともなって、サヘルの北に位置する北半球の700mb面亜熱帯高気圧の中心軸は大きく変位していない。
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