気象集誌. 第2輯
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69 巻, 2 号
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  • 柳 中明, 劉 紹臣
    1991 年 69 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    冬期の台北の盆地において地表オゾン濃度は通常、早朝と午後の早い時刻に2つの極大をもつ。特定の冬では2つの極大をもつ確立は45%にのぼる。ここでは以前の研究で著者により提案された2つの極大を説明する仮説を試すために野外実験を行った。野外実験の結果、2つの極大は台湾の北を寒冷前線が通過した後起こり易いことが分かった。この時、台北盆地は強い北東風の季節風、低温、少しの雨を伴う雲天という気象条件になる。山頂のオゾンデータは約30ppbvのバックグランドオゾン濃度が季節風により台北盆地にもたらされることを示している。自動車から放出される一酸化窒素(NO)の影響でオゾンが失われるが、この効率的な輸送が新たなオゾンを供給する。オゾンの2つの極大はNO濃度が極小になる時起こる。これは交通量の日変化と輸送過程の重なり合った効果により起こる。
  • 片岡 毅, 竹久 正人, 伊藤 芳樹, 光田 寧
    1991 年 69 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    開口合成ドップラーソーダを開発し、米国ボルダーで1988年に行われた国際比較観測(ISIE)に参加した。比較観測の期間中、1988年9月18日早朝に顕著な低層ジェット(LLJ)が出現したので、ドップラーソーダおよび気象観測鉄塔で得られたデータを基にLLJの乱流構造の解析を行った。結果は次に示すとおりである。(1)0.002Hzより低い低周波の変動がLLJの出現に伴い増加する。(2)この周波数帯域における乱流運動量フラックスは、LLJの成長過程では、ジェットの軸から発散しているのに対し、LLJの減衰過程においては、ジェットの軸に向い収束している。(3)これより、乱流運動はLLJの発達に対しては抵抗力として働いている。
  • 廣田 勇, 塩谷 雅人, 桜井 隆博, John C. Glue
    1991 年 69 巻 2 号 p. 179-186
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    気象衛星ニンバス7号搭載の太陽紫外線後方散乱(SBUV)計測器によって観測されたオゾン混合比のデータを、1979-1986の8年間にわたって解析し、赤道域中層大気におけるオゾン量の時間空間変動を帯状平均風および温度の長周期変動と関連づけて調べた。
    簡単なオゾン光化学反応の考察から、赤道域上部成層圏のオゾン量の変動は、数日以上の時間スケールでは気温変動と良い対応を示すことが期待される。この考えに基づき、同じニンバス7号の縁辺赤外放射計(LIMS)による温度観測と比較した結果、10 mb以高で、赤道域に局限された、東西波数1、東進周期約7日の"オゾンケルビン波"の卓越することが示された。
    このようにして検出された短周期(高位相速度)の赤道ケルビン波の8年間にわたる振舞いをスペクトル解析等の統計によって詳しく調べた結果、ケルビン波の強さ(活動度)は赤道成層圏界面(約1 mb)に中心を持つ東西風の半年周期振動(SAO)と良く対応していることがわかった。
    更に、このケルビン波は、下層大気から上方に伝播するとき、赤道下部成層圏帯状流によるドップラーシフトの効果を受けることが理論的に推測される。この見地から1mbにおけるケルビン波強度と平均帯状流のより長周期変動を調べてみると、両者は共にQBO成分を含んでおり、これは短周期ケルビン波を通してQBOのModulationが成層圏界面高度にまで及んでいることを示唆している。
  • 島貫 陸, 野村 佳男
    1991 年 69 巻 2 号 p. 187-196
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    不安定な接地境界層内の煙突の煙の瞬間的な像を求める数値シミュレーションを行った。瞬間的な像の特徴的な形は速度の空間相関の導入によって作り出された。空間相関をもつ軌跡は、マルコフ連鎖の式の中で、空間相関をもった乱数を用いることによって求めた。空間相関をもつ乱数の場は、乱れのスケールに対応する長さで分割された各領域に、独立に乱数を与えることによって得た。風速の平均値および変動の経験的な値を使用し、それらの知識から乱れのスケールを推定した。高さ60mの煙突からの拡散をシミュレートし、煙の形を求めた。大気の一つの条件に対しいくつかの像を示した。結果は不規則な形をもち、現実の煙の形をかなりよく表現できていると思われる。シミュレーションの結果から速度の空間相関が検出されたが、与えた乱数の相関より値は小さい。
  • 升本 順夫, 山形 俊男
    1991 年 69 巻 2 号 p. 197-207
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    Anderson-McCrearyタイプのモデルに現われる、大気海洋結合擾乱の発生機構を詳しく調べた。その結果、モデルの非線形性により、線形不安定論から予想されるものとは異なる状態が実現することが明らかになった。結合擾乱の発生には、前回のENSOイベントに伴う海洋の赤道ロスビー波は全く関与していない。また、西太平洋上での東西風の変動が、結合擾乱の発生に必要な西部熱帯太平洋の海洋蓄熱量の変化をもたらしている。この風の変動は、陸上での大気加熱による偏東風と、先に発生した結合擾乱による西風アノマリーとの相対的な強さにより決定される。このような結合擾乱の発生機構はBattisti (1988), Schopfand Suarez (1987) や Zebiak and Cane (1987)により示されたものとかなり違うが、西太平洋域での大気海洋陸面系の最近の観測結果と符合している。
  • 岩崎 友彦
    1991 年 69 巻 2 号 p. 209-217
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    NOAA/NESDIS編集の月平均積雪面積データを21年間(1967-'87)用いて、北半球における積雪の年々変動を調べた。
    冬期について主成分分析を行うと、第一主成分(寄与率46.6%)ではユーラシア大陸と北米大陸での同時降雪パターンが見られ、その時系列は北半球全域の積雪時系列とほぼ一致している。第二主成分(寄与率23.6%)ではユーラシア大陸の東部と西部およびユーラシア大陸の東部と北米大陸とでの積雪変動の逆相関パターンが出現する。これは大陸より小さな規模の積雪変動の重要性を示唆する。
    主成分分析で得られたパターンの変動を詳しく見るためにパターンに従って大陸をボックスに分けて時系列を調べた。一般に積雪の季節進行は10月に降雪開始、1~2月に積雪ピークとなり、3~4月にはその大部分が融解する。従って、その年の積雪の多寡を特徴づけるのは12~2月の積雪量である。ピーク期において例年より積雪面積の広い多雪年では、ユーラシア大陸における積雪の中低緯度への張り出しは東部半乾燥地域で大きい。また多雪年のユーラシア東部において2月から3月にかけての積雪面積の後退が特に顕著である。
    以上のような時系列解析を経て、北半球の2大陸の積雪変動を代表する領域としてユーラシア大陸の東部と北米全域を選定した。この2領域の時系列を比較すると2大陸における多雪年の1年ラグが明瞭に見える。即ち、ユーラシア大陸が多雪であると翌冬には北米大陸で多雪となる。
  • 丸山 健人
    1991 年 69 巻 2 号 p. 219-232
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    下部成層圏の赤道波活動の年周期変動およびQBO同期変動(東西風のQBOと同期する変動)を1961年1月から1990年2月までのシンガポール(1.4N,104.0E)における高層気象データのスペクトル解析により調べた。赤道波活動を測るため、ケルビン波については7.4-32日周期帯を積分した風の東西成分と気温のクオドラチュアスペクトル、混合ロスビー重力波については3.3-5.1日周期帯を積分した風の南北成分のパワースペクトルを用いた。
    年周期変動は30,50,70hPa全レベルの混合ロスビー重力波活動に見られ、3月ごろに最大値がある。振幅は70hPaでもっとも大きい。ケルビン波活動にも70hPaで弱い年周期変動が見られた。QBO同期変動は、ケルビン波活動において、30,50,70hPa全レベルで見られた。混合ロスビー重力波のQBO同期変動は30hPaに見い出されるが、50hPaと70hPaでははっきりしない。50-70hPa層の混合ロスビー重力波活動の年周期変動は、30-50hPa層において、東風領域が3-6月に速く、7-2月にゆっくり下降することと関係しているように現われる。
  • S.H. Franchito, V. Brahmananda Rao
    1991 年 69 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    両半球において、準地衡風渦位の子午面輸送を求めた。その結果、渦位輸送の向きは、地表付近を除く大気中の大部分において負(南向き)になる。渦位輸送の大きさと渦位の子午面勾配とから、両半球における渦位の交換係数を計算した。その係数の値を、準地衡風の簡単な経度平均2層モデルに適用した結果、年平均気温と東西風の子午面分布が良く再現された。
  • 鬼頭 昭雄, 山崎 孝治
    1991 年 69 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    インドネシア周辺の「海洋大陸」には多くの大気大循環モデルでは表現できない小さい島が多数存在する。この論文では従来無視されてきたこれらの小さい島の効果を導入する最初の試みとして、海の格子点であっても島がある場合には抵抗係数を増加させてその影響を評価してみる。海洋大陸において島による抵抗係数増加の影響は水蒸気フラックスによる収束を強めて降水量を増加させる上で効果的であることが分かった。赤道太平洋では元来ある東西循環が強まりインド洋でも下部対流圏での西風偏差ができる。アジアの夏のモンスーン及びオーストラリアの夏のモンスーン双方にとってもその平均場のみでなくモンスーン循環の季節内変動やモンスーンオンセットにも影響する。これらの結果は水蒸気フラックス収束と加熱とのフィードバックの大きい海洋大陸において、グリッド内での海と陸の混在を考慮した地表面過程のパラメタ化が特に重要であることを示唆している。
  • 1991 年 69 巻 2 号 p. 251
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
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