気象集誌. 第2輯
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69 巻, 5 号
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  • 麥 文建
    1991 年 69 巻 5 号 p. 497-511
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    地球の球面効果を完全に組み込んだ準地衝近似の運動方程式と熱力学方程式で構成されるモデルは、ジオポテンシャルを唯一の従属変数とする従来のポテンシャル渦度方程式を拡張した方程式で記述できることがわかった。この方程式には、準地衝流の水平発散にともなう渦の伸長を表す項と非地衝流成分による惑星渦度の移流項が付け加わっている。ここでは、つぎの二つの簡単だが自明ではない力学の問題において、これらの付加項によって定量的に重要な影響がでることを示す。
    第一の問題として、このモデルの自由振動モードを解析的•数値的に調べた。得られた自由振動モードの振動数と構造は、ともに対応するHoughモードの良い近似になっている。ところが、さらに近似した従来の準地衝流モデルでは、振動数が約25%の過大評価となっている。相対誤差は長波長の波ほど大きい。
    次に、球面上での惑星波の鉛直伝i播問題で、Matsuno(1970)の方程式と本研究で導出した支配方程式を線形化したものとの違いを明らかにした。これら2つの方程式で得られる伝播波の構造は大変よく似ているが、Matsunoの式は同じパラメータ値に対してやや大きな振幅の応答をもたらす。具体的な状況を与えて計算すると、従来の陣地衝方程式で得られた強制波の位相構造はMatsunoの式から得られたものよりゆがんでいる。もっとも、最大振幅の値は我々のモデル結果に近い値となる。従来の準地衝方程式から導かれた波の伝播に関する式には、地衝流の基本場と結び付いたジオポテンシャル場の表式に偽の積分定数依存性が残るという本質的な欠点がある。
  • 内海 通弘, 柴田 隆, 前田 三男
    1991 年 69 巻 5 号 p. 513-521
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    差分吸収ライダー(DIAL)により、地上付近から3kmまでの対流圏オゾンを24時間連続して観測した。成層圏オゾンによるソーラーブラインド効果を利用するため、DIALのon波長、 off波長として277nmと313nmを選んだ。今回開発した可搬型オゾンライダーを、実際の観測に使用した。その結果、ソーラーブラインド効果を利用すれば、下部対流圏オゾンを日中でもSN比の低下なしに測定できることを示した。エアロゾル、NO2、SO2による誤差の程度を議論し、得られたオゾンデータにエアロゾルの補正を行なった。この可搬型オゾンライダーを航空機に搭載し、3kmと6kmの高度から上下方向に測定すれば、10kmまでのオゾン観測が可能になることが期待される。今回の3回の地上からの観測では、エクマン層と自由大気の境界付近のオゾン層が測定された。夜間混合層が発達したときにはオゾンの急激な減少が観測された。また接地逆転層のあるときその減少はゆるやかであった。
  • 宮原 三郎, Jeffrey M. Forbes
    1991 年 69 巻 5 号 p. 523-531
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    時間発展モデルを用いて中間圏下部熱圏(70-120km)での重力波と1日潮汐波の相互作用に付いて調べた。重力波は東西方向に、0、±10、±20、±30ms-1の位相速度で伝わるものを考え、潮汐による東西風と平均東西風中でのこれらの波の破砕によるストレスをLindzenのパラメタリゼーションを用いて計算した。この様にして得られた重力波によるストレスは、上部中間圏下部熱圏の1日潮汐波の振幅を抑制する効果を持つことが示された。また、1日潮によって変調された重力波によるストレスは、1日潮以外の成分の潮汐波をこれらの高度付近に引き起こし得る事も示された。
  • 全降水量資料を用いて
    須田 芳彦
    1991 年 69 巻 5 号 p. 533-540
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    日本全国を対象とした観測密度の高いAMeDAS資料を用いて確率降水量を推定した。確率降水量は、これまで年最大降水量資料から得られることが多かったが、AMeDASの全降水量資料を用いることで、データ数からみて推定誤差の小さい確率降水量を得ることができる。確率降水量を求めるために、AMeDAS資料に対して、ガンマ分布があてはめられた。結果は次のように要約される。
    1)確率日降水量の地理的分布には、地形の関係した局地性が顕著である一方、確率時間降水量の地理的分布には、顕著な南北差が認められる。九州では、確率時間降水量は西部地域で、確率日降水量は脊梁山脈よりで、大きな値を示している。また、四国東部では、確率時間降水量は海岸部で、確率日降水量は山地よりで、大きな値をとる。時間スケールによって異なるこれらの地理的特徴は、大雨の持続時間や降水強度が地形条件や緯度などの地理的因子とそれぞれが固有の地域特性をもつ擾乱によって異なることの表われといえる。
    2)確率降水量R(t)と時間tの関係は、R(t)=ctnがによって表わせ、nの値が大きい地点で•大雨の持続時間は長くなるといえる。各地点でのnの値は再現期間によってわずかに変化し、この値の地域差は再現期間の長さとともに大きくなっている。
  • 第1部スーパークラスターの構造
    沼口 敦, 林 祥介
    1991 年 69 巻 5 号 p. 541-561
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    HayashiandSumi(1986,HS86)による「水惑星モデル」実験の続きとして、下部境界条件として与える海面温度を変化させたモデル実験ならびに積雲パラメタリゼーションを換えたモデル実験を行なった。HS86で指摘された積雲活動の特徴的な分布のパラメータ依存性と、それにともなう循環の構造を調べた。第1部では主にスーパークラスターについての記述を行なう。
    HS86の実験で現れたスーパークラスターは、モデル上においては赤道付近における格子点スケールの降水域の持続的な東進として現れる。それにともなう循環の構造は、基本的にKelvin波のwave.CISKの力学によって説明されうる。スーパークラスターは海面水温を上げることによって活発化するが、30日振動すなわち惑星スケールの東進構造は海面水温が低い場合において顕著となる。
    格子点スケールの積雲活動域のふるまいは、積雲パラメタリゼーションの違いに敏感である。Kuoのパラメタリゼーションのかわりに湿潤対流調節を用いると赤道上での格子点スケールでの持続的な東進構造は現れなくなる。それに対して惑星スケールの構造は湿潤対流調節を用いた場合でも顕著である。
  • 第2部惑星規模の東進構造と熱帯収束帯
    沼口 敦, 林 祥介
    1991 年 69 巻 5 号 p. 563-579
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    「水惑星モデル」実験の結果を惑星規模の東進構造およびITCZ域における降水域の構造を中心に解析した。
    30日振動、すなわち惑星スケールの東進構造は積雲パラメタリゼーションの種類にかかわらず現れる。その維持には海面蒸発の風速依存性すなわち蒸発一風速フィードバックが働いている可能性が高い。一方で、総観規模程度のスケールの構造には蒸発一風速フィードバックは効果的に働かず、wave-CISKのような他のメカニズムが重要となる。モデルにおける積雲活動の階層構造の存在にとって、2つの異なった擾乱維持メカニズムの共存が重要であることが示唆される。
    Kuoのパラメタリゼーションを用いた実験で経度10度付近に存在する2本のITCZには、東進する1000kmスケールの積雲活動域が持続的に存在する。これに対して湿潤対流調節を用いた実験では2本のITCZは不明瞭であるが、現実の大気での偏東風波動のような、渦度の西進にともなう積雲活動の西進が見られる。Kuoのパラメタリゼーションを用いた実験で顕著に見られたITCZの2本への分化には、平均場に対する蒸発一風速フィードバックと言うべきプロセスが介在していることが示される。
  • Yong Li
    1991 年 69 巻 5 号 p. 581-585
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    非線型共鳴ロスビー波の一つのモデルを解析解を得るために用いた。一つの解を観測値の代りのコントロールとして用い、次に初期値を変化させた解をコントロールと比較した。評価関数を初期条件について計算し図示したところ、多重極小値の存在が明らかにされた。4次元データ同化を、評価関数の傾度から極小化する変分法の手法では、この多重極小値は解の非一意性、すなわち極限の収束解が初期値の第1推定値に依存することを意味する。この非一意性の問題は、同化の期間が長くなるにつれて評価関数の凹凸がますます複雑になることから、より重大となる。非線型エネルギー交換との関係も議論される。
  • 王 介民, 光田 寧
    1991 年 69 巻 5 号 p. 587-593
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1988年および1991年HEIFEの試験観測においてゴビ砂漠上で晴天の昼間、水蒸気の乱流輸送が下向きになっているということが見られた。しかし、その時の乱流特性を解析してみたところ相似則に従ったものであり、過去の他の場所での観測結果と異なったところは見られなかった。
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