気象集誌. 第2輯
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71 巻, 4 号
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  • Giuseppe Dalu, Cuddapah Prabhakara, Jeff Nucciarone
    1993 年 71 巻 4 号 p. 419-425
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    海上での降雨量評価のアルゴリズムの最適化をおこなった。これまでに開発された経験的アルゴリズムは、SMMRとSSM/Iデータ及びGATE実験データの統計解析に基づいている。このアルゴリズムを用いたいくつかの結果は過大評価の傾向を示したので、今回新しい係数を用いてアルゴリズムの改良を行なった。改良されたアルゴリズムをSSM/Iデータに適用した結果、GPCPプログラムにおけるレーダーから得られた降雨量と比較して満足すべき値が得られた。
  • 佐藤 薫, 永戸 久喜, 廣田 勇
    1993 年 71 巻 4 号 p. 427-436
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    時間分解能の高いMUレーダー観測データ及び水平分解能の高い気象庁JSM(Japan Spectral Model)データを用いて対流圏中上部に卓越する中間規模東進波動擾乱を発見しその特性を詳しく調べた。この波動は3-4日周期の移動性高低気圧波動(長波)の卓越する春季において常に存在する。スぺクトル法、ラグ相関法を用いて定量的解析を行なった結果、この波動は緯度30-40゜Nに帯状に分布し、東西波長約2100km、周期約26時間であることがわかった。東向き位相速度は約22ms-1で、長波の約2倍にあたる。これは、この中間規模東進波動が長波の高調波ではなく、独立な固有の生成維持機構を持っていることを意昧する。南北方向、高度方向の位相の傾きは殆んど見られない。高度場及び南北風成分の振幅は250hPaで最も大きく、約4ms-1である。風と高度場との対応は地衡風的である。この種の対流圏東進波動に関するこれまでの観測的知識は乏しく、したがって、その力学は殆んどわかっていない。今後、背景流との関連を通して、この中間規模波動の力学特性を明らかにすると共に、他の季節での中間規模波動解析を発展させる必要がある。
  • Davidson Noel E., Wadsley James, Puri Kamal, 栗原 和夫, 上野 充
    1993 年 71 巻 4 号 p. 437-467
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    気象庁で開発された台風ボーガスの改訂版をオーストラリア気象局の熱帯予報システムヘ取込んだ。台風ボーガスは、殆どの熱帯低気圧予報事例につき改善をもたらす。非断熱初期値化は台風構造に大きな影響を与え、熱帯低気圧と熱帯低気圧中心からかなり離れた大規模場の予報の品質に影響を与えることが示された。初期値化を注意深く行わなければ、質量場と風の場の非平衡、ボーガス台風渦と格子の分解能の不一致、及び予報モデルによる台風渦の拒否により、台風がしばしば不自然に振舞う。オーストラリア熱帯モデルでの非断熱ナッジングが、これらの3つの悪影響を緩和するのに有効であることが示された。
  • 張 大林, 王 志明
    1993 年 71 巻 4 号 p. 469-490
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    中緯度に発現したメソスケール対流系(MCS)のメソβスケールの運動エネルギー(KE)と大規模場の流れへの影響を調べた。このために、1985年6月10-11日にPRE-STORMで観測されたスコール系について、実際のデータをもとに高解像の数値モデルを21時間時間積分した。スコール系のKEは、主にfront-to-rear(FTR)の上昇流域の圧力項によって生成され、また主に水平フラックス発散によって失われた。鉛直フラックス発散は、上層ジェットの下(上)のFTRの上昇流域ではKEを減らした(増やした)。それに対して、rear-to-front(RTF)の下降流域では鉛直フラックス発散はいつもKEを増加させた。RTFの下降流域でのKEの下流への輸送によって、スコールラインに平行にある大きなKEを持つジェットストリームは、スコール系や地表のガストフロントの強さに影響を及ほしたようである。解像されるあらゆるスケールの大気運動への湿潤対流の効果を波数空間で調べた。深い対流を入れることによって、短波長域ではKEスペクトルはあまり変わらなかったが、長波長域ではスペクトルの強さとスロープが大きく変化した。この変化は、KEの逆カスケードによるというよりもMCSの間欠的な発達のためと思われる。
  • 菅田 誠治, 余田 成男
    1993 年 71 巻 4 号 p. 491-501
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    いくつかの回転水槽実験で得られた軸対称流-定常波動-バシレーションという段階的な流れパターンの遷移を、3次元ブシネスク流体のセミスペクトルモデルを用いて調べ、分岐理論をもとに考察した。軸対称流-定常波動間の遷移は、ヒステリシスによって特徴づけられる。すなわち、得られた定常波動は、軸対称流が不安定化するところで、そこから分岐するのではなく、別の臨界点(極限点)が存在し、そこで定常波動解が消滅する。また定常波動-ティルティッド・トラフ・バシレーション間の遷移は、定常波動が不安定化するところでのHopf分岐(周期解の定常解からの分岐)によると考えられる。
  • 高薮 出
    1993 年 71 巻 4 号 p. 503-515
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Eady問題における種々の擾乱発達のメカニズムを理解するために、準地衡風渦位方程式を境界に温度勾配がある場合に拡張した。まず、渦位を用いてモーダル波と連続スペクトル波を分離、表現した。次に、この系における拡張された波運動量を求め、これらとEPフラックスの関係を明らかにした。これらの関係を用いることにより、Eady問題でのじょう乱の発達条件を整理した。EPフラックスの収束・発散を計算することにより、じょう乱の発達に果たしている各波の役割が明確になった。Farrell(1984)やThorncroft and Hoskins(1990)の解で背の低い擾乱が代数的に急発達するのは境界モーダル波と内部連続スペクトル波が相互作用をした結果であるが、これは内部クリティカル領域でのEPフラックスの収束として明確に捉えられる。
  • 池上 三和子, 岡田 菊夫, 財前 祐二, 牧野 行雄
    1993 年 71 巻 4 号 p. 517-528
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    1989年3月7-10日に、北西太平洋(0°-34°N)上の高度約4.5kmにおいてエーロゾルの航空機観測を行なった。対流圏中部では、エーロゾル粒子(0.15&le;r<5μm)の個数濃度は、0.1-10個/cm3の範囲で大きく変化していることが分かった。硫酸を含む粒子は、観測対象領域では広く存在しており、バックグランドエーロゾル粒子として重要であることが示された。しかし、熱帯大気中では、積雲活動により海塩粒子が鉛直方向へ輸送され、高い粒子濃度が出現することが分かった。また、中緯度では、黄砂粒子によると考えられる粗大粒子(r>1μm)の高濃度領域が観測された。本研究により、海塩粒子と鉱物粒子の輸送が、対流圏中部においてエーロゾル粒子の濃度を増加させることに大きく貢献していることが示唆された。さらに、熱帯域で採集された海塩粒子の変質についての考察を行なった。
  • 三好 勉信, 守田 治
    1993 年 71 巻 4 号 p. 529-544
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    水の物理過程が、地球の大気大循環にどの様な影響を与えているかを調べるために、水の物理過程を全て排除した大気大循環モデルを作成した。水の物理過程を排除したモデルで得られた大循環は、水の物理過程を全て含んだモデルで得られる大循環とは大きく異なった。例えば、地表のアルベドをすべての地点で0.1とした場合、水の物理過程を含んだ場合の地表付近の平均温度は289Kであるのに対して、水の物理過程を排除した場合は279Kである。地表付近での極と赤道の温度差は、水の物理過程を含んだ場合は約40Kであるのに対して、水の物理過程を排除した場合は約100Kである。気温の鉛直分布、南北分布についても、2つの実験で大きく異なった。帯状流は、水の物理過程を含んだ場合は緯度30-50゜で最大となるのに対して、水の物理過程を排除した場合は60-70゜で最大となる。直接子午面循環(ハドレー循環)の南北幅は、2つの実験でほほ同じになったが、循環の強さは、水の物理過程を排除した方がはるかに弱くなった。さらに、波の活動度、間接子午面循環(フェレル循環)の南北幅、強さも、2つの実験で大きく異なった。地表面及び大気の熱収支について詳しく調べ、それらを基に水の物理過程を含んだ場合と排除した場合の熱収支の違いについて議論を行った。また、水の放射過程が熱収支に及ほす影響、および水の蒸発、凝結、カ学による水蒸気輸送が熱収支に及ほす影響について議論を行った。
  • 隈 健一
    1993 年 71 巻 4 号 p. 545-551
    発行日: 1993/08/25
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    AMEX phasell期間中のオーストラリア夏季モンスーンのオンセットについて、気象庁全球モデルを用いて数値予報実験をおこなった。CMSのTBBデータから得られる水蒸気データを用いると、オンセットの予報が著しく改善される。
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