モンスーンシステムの年々変動ならびに10年スケールの変動を評価するために現在使用されている陸地・海洋上の観測データに、気候因子によらない系統的誤差が存在していることを示した。1900-1984年の期間でのNCARのWorld Monthly Surface Climatologyデータにおける主な不均質性はインド亜大陸上の海面気圧(SLP)の時系列にみられる。これらの不連続性は主に、データ編集時にサンプル期間によって観測時刻が異なっていることを考慮しなかったことと関連している。このような不連続性の主な例として、World Weather RecordsからMonthly Climate Data for the Worldの編集に変わった1961年があげられる。
系統的誤差は1900-1986年のインド洋における海面水温(SST)、気温(ART)、SLPの船舶観測データにもみられる。主な疑わしいジャンプは、SLPでは1932年、SST、ARTの両方では1940年、東アラビア海とベンガル湾のSSTでは1954年に生じている。また、1954-1976年のSSTのトレンドにも問題がある。これらの不均質性に対する原因は正確には特定していないけれども、不連続の時期やトレンドは、海洋データセットに含まれてしまった“source-decks”の変化と対応していることに疑いの余地がない。また、インド亜大陸の沿岸地域のSLP、地上気温観測の変動にも問題がある。最後に、インド洋上のサンプリングは1950年以降に強い季節依存性をもっているので、年変化における実質的な系統誤差はすべてのパラメータに存在することが予想される。インド洋上の観測されたSSTの年々変動にみられる多くの矛盾は上述のデータの問題と関係していると思われる。
しかしながら、陸地・海洋観測データのトレンドの比較から、1900-1986年の期間のインド地域においていくつかの有意な10年スケールの変動の存在が示唆された。これらの気候変化の主なイベントとして、1900-1939年の間の地上気温の上昇トレンドとSLPの減少傾向、そして1976年以降のインド洋の突然の温暖化があげられる。この最近の温暖化は、インドの内陸部には影響しておらず、インド地域全体の正のSLPアノマリーの持続と同位相である。これらは1976年以降のインド洋の気候変化(Nitta and Yamada、 1989)の事実を裏づけている。
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