気象集誌. 第2輯
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73 巻, 2B 号
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  • 沼口 敦, 沖 理子, 中村 晃三, 坪木 和久, 三沢 信彦, 浅井 冨雄, 児玉 安正
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 267-290
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1992年11月の赤道上東経156度において顕著な4-5日周期の変動が観測された。スペクトル解析およびコンポジット解析によりその時間-高度断面での構造を解析した。4-5日周期変動は基本的には西進する混合ロスビー重力波型擾乱によって説明可能であるが、その構造は熱帯低気圧の存在によって大きく変形を受けている。また、下部対流圏に極端に乾燥した空気の出現が2回観測された。この気塊は高度3km程度に位置し、比湿および相当温位が最小となっている。流跡線解析により、この乾燥空気は4-5日変動に対応した熱帯擾乱によって亜熱帯域から運ばれて来たことが示される。この乾燥空気の侵入は、SSM/Iによる衛星可降水量データによっても捉えられ、侵入の東西スケールは1000km程度と見積もられる。乾燥空気の存在する場所では、積雲対流活動が抑制され、鉛直混合が弱くなる。このため乾燥空気は4日間程度持続する。
  • 米山 邦夫, 藤谷 徳之助
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 291-304
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    東経156度の赤道上におけるR/V「なつしま」停船観測によるラジオゾンデの観測結果を中心にして、TOGA-COARE集中観測期間中の、1993年2月5日~14日の「なつしま」上空大気の特徴を調べた。
    2月6日から9日にかけて高度2~4km付近に強い乾燥した西風域が存在し、時間と共にその領域が降下し、2月10日に高度2km付近でその存在が不明瞭になる様子が認められた。2月6日から9日の間は活発な対流活動は認められなかったが、2月10日には「なつしま」上空では深い対流が発達した。
    観測期間の前半には、高度800hPa付近に温度逆転層が形成され、その上空の乾燥した空気塊が対流活動を抑制していた。この空気塊は北東貿易風を起源として赤道域に侵入していることが示された。また、乾燥域の降下の原因として、乾燥域による対流活動の抑制の他に、乾燥域の周囲に存在した活発な対流雲群から生じる沈降流と関係していたことが示された。
    さらに、対流の発生した2月10日には下層の風向が北西風から西風に変化している様子が示された。この2月10日を境にして下層で見られた風向の変化は対流活動の変動と関係しており、上述の乾燥域の振る舞いとそれに関連する対流活動の変動が赤道太平洋上における数日スケールの大規模な大気変動と深く関係していることが示唆された。
  • 中澤 哲夫
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 305-319
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1992年11月から1993年2月までのTOGA-COARE IOP期間中の季節内振動(ISO)に伴う対流活動及び発散、速度ポテンシャル、全可降水量(tpw)などの気象変量の振る舞いを調べた。
    IOP期間中には2つの主要なISOがあり、一つは12月に、もう一つは1月に見られ、プラネタリー・スケールのISO、東進する総観規模のスーパークラスター、そして西進するメソ・スケールのクラウドクラスターという、熱帯対流活動の階層構造が確認された。いずれのISOも二つのスーパークラスターを伴っていた。SSM/Iデータから求められたtpwの極大値は、静止気象衛星GMSのIR TBBデータの対流活発域よりも5~10日ほど先行している。海面水温も、対流活発域におよそ12~13日先行しており、これまでの解析結果と同様であった。
    海表面における放射収支についても調べた。海面水温(SST)変化はISOの通過と密接に関係しており、ISO対流活発域の東側(すなわち対流活発域の通過前)での晴天、静穏状態がSST上昇を導いている。対流活発域の通過中に日射の減少と風のじょう乱状態による海表面からの潜熱フラックスの増大のためSSTは下降する。
  • 西 憲敬, 住 明正
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 321-337
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1993年1-2月に見られた圏界面付近に局在した3例の東進擾乱について、気象庁全球解析データおよび高層観測データを用いて解析を行った。これらの現象は、上向きのエネルギー伝播を伴う赤道捕捉内部ケルビン波の一部だと考えられる。この波は、西太平洋付近のうち、経度幅数十度の領域でのみ振幅が大きくなっている。また、1月には波の形が正弦波からはほど遠く、西風への変化および昇温が、東風への変化および降温に比べてはるかに急激である。
  • 丁 一匯, 住 明正
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 339-351
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    本論文では、1992年11月から1993年2月にかけて行なわれたTOGA-COARE集中観測期間中の大気の大規模場の特長を解析した。大気の状態は下層にしばしば西風が入ったり、西部太平洋や中部太平洋上層で東風が卓越し西太平洋に存在する熱源も東に移動し、30-60日振動も中部太平洋に東進するなど、エルニーニョの発生期と多くの点で類似していた。
  • 沼口 敦
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 353-377
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    気象庁客観解析データを用いた1992年11月から12月の赤道太平洋域の時系列解析の結果から、数種類の4日から20日周期の西進擾乱を抽出し、その水平構造をコンポジット解析により求めた。850hPaの赤道南北風の場には4-5日周期の変動が、200hPaの赤道南北風には約7日周期の擾乱が見い出され、どちらも基本的には混合ロスビー波として解釈できる。これらに加えて、200hPaおよび850hPaの赤道東西風に、顕著な約15日周期の擾乱が見い出された。この擾乱の構造および西進位相速度から、n=1の赤道ロスビー波に対応するものであると推察される。200hPaの変動と850hPaの変動とは熱帯域では逆位相であるが、亜熱帯域では同位相に近い。これらの擾乱は、それぞれ雲活動との相関を持ち、擾乱の等価深度は10m程度と見積もられるが、200hPaにおける15日周期擾乱では1オーダー以上大きい。
    西太平洋域においては、4-5日周期の混合ロスビー波と15日周期のロスビー波が共存しており、熱帯低気圧の発生に両者が関与している可能性が示唆される。また、中緯度からの作用によって200hPaのトラフが非常に強く発達する過程が15日周期擾乱を励起している可能性が示唆される。
  • 牛山 朋来, 佐藤 晋介, 竹内 謙介
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 379-392
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA-COARE IOP (Tropical Ocean and Global Atmosphere-Coupled Ocean Atmosphere Reserch Experiment Intensive Observation Phase)に観測されたデータを用いて、メソスケール降水現象と大規模場との関係について調べた。用いたデータは、パプアニューギニアマヌス島(2S,147E)で約2ヵ月間連続観測されたx-bandレーダーデータ、オメガゾンデデータ、およびGANAL(気象庁客観解析データ)である。レーダー観測データは、対流活動度の指標として用い、理解の簡便のため降水強度に変換した。そして、島の影響を評価するため陸上域と海上域に分けた。また、対流の強度を評価するため鉛直方向にも3つの層に分けた。これらのそれぞれの区域について降水強度を平均して時系列データを作成し、解析に用いた。
    降水強度の日変化を調べた結果、陸上域では日中にピークを持つ強い日変化に支配されていた。これに対して海上域では、スペクトルには1日周期のピークが現れていたが、陸上域に比べ日変化はかなり弱かった。また、海上域では、1.5-2日、3-5日の周期のピークが陸上域に比べ強かった。
    この海域の降水強度と大規模場との関係について調べるため、ラグ相関解析及びクロススペクトル解析を行った。CAPEと降水強度とのラグ相関から、CAPEは降水現象の2日前から上昇し、降水現象の直後に減少していた。また、東西風速または水蒸気混合比と降水強度とのラグ相関が、約40日周期で東方伝播しているのが見られた。これは、Madden-Julian oscillation(季節内変動)に該当すると考えられる。位相の関係は、東西風の風向が東から西に変わるときに降水現象が発生し、また降水現象の後、500hPaの高度で、混合比が上昇した。この混合比の上昇は、オメガゾンデによるデータにも見られた。
  • 津田 敏隆, 深尾 昌一郎, 山本 衛, 中村 卓司, 山中 大学, 足立 樹泰, 橋口 浩之, 藤岡 直人, 堤 雅基, 加藤 進, Sr ...
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 393-406
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    日本とインドネシアの協力により1992年11月にジャカルタ近郊に赤道大気の観測所(6.4°S、106.7°E)が開設され、流星レーダー(MWR)と境界層レーダー(BLR)が設置された。MWRにより高度75-100kmにおける水平風と温度変動が1時間と4kmの分解能で測定された。一方、BLRを用いて高度0.3-5kmの大気層の風速三成分を毎分100mの分解能で観測した。さらにBLRに音響発信器を併用したRASS(電波音響探査システム)技術により温度変動の微細構造をも測定した。これらのレーダーの運用は1992年11月のTOGA/COAREの強化観測期間に開始され、その後2年以上にわたって連続観測が続けられている。また、レーダー観測所から約100km東に位置するバンドン市のLAPAN(国立航空宇宙局、6.9°S、107.6°E)において、1992年11月から1993年4月にかけて、ラジオゾンデを一日に4回放球し、高度約35kmまでの風速・温度変動を150mの高度分解能で測定した。その後、1993年10月から一日一回の定時観測(0GMT)も継続されている。
    この論文では観測所における研究活動の概要を紹介するとともに、観測結果の初期的な解析で分かった、TOGA/COARE期間中の熱帯惑星境界層の構造、対流圏内の積雲対流、ならびに赤道域中層大気における各種の大気波動の振る舞いについて速報する。
  • J-COARE白鳳丸レーウィンゾンデ観測データの解析
    荻野 慎也, 山中 大学, 深尾 昌一郎
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 407-413
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    J-COARE白鳳丸航海のレーウィンゾンデ観測(1992年11月1日~12月4日)より得られた温度・風速データをもとに、低緯度帯(13.78°S~24.50°N)の下部成層圏(14~22km)における重力波活動度の南北変化を調べた。
    高度14~22kmのデータを用いて鉛直波数スペクトル解析を行ない、全期間の平均をとると、卓越鉛直波長は温度・東西風については4km、南北風については2.7kmであった。高度プロファイルおよびホドグラフ解析結果をみると、赤道をはさんで南北約10°の範囲では、鉛直波長が4km程度の比較的振幅の大きな(5~10m/s)波動構造が、東西風にはしばしば認められるが南北風にはほとんど認められないことから、4kmの成分には主にケルビン波が、2.7kmの成分には主に重力波が寄与しているものと考えられる。
    鉛直波長4.0km,2.7m,2.0mの各成分について、パワースペクトル密度を緯度の関数として整理し、中緯度帯と較べると低緯度域の方が重力波活動度は大きいという結果を得た。重力波の振幅は波の周期や背景のブラントバイサラ振動数に関係すると考えられるが、今回得られた南北分布はこれらのパラメタだけでは説明できず、赤道付近で活発な積雲対流が重力波の励起と密接に関わっていることを示唆している。
  • 観測の概要
    上田 博, 遊馬 芳雄, 高橋 暢宏, 清水 収司, 菊地 理, 木下 温, 松岡 静樹, 勝俣 昌己, 竹内 謙介, 遠藤 辰雄, 大井 ...
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 415-426
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    2台のドップラーレーダーを主に用いた熱帯の雲やクラウドクラスターの観測を、TOGA-COARE集中観測期間内の1992年11月12日から約2ヵ月半に渡って、パプアニューギニア、マヌス島で行った。観測期間中に、スコールライン、クラウドクラスターに伴う対流雲や層状雲、及び、日中のマヌス島上に発生する孤立対流雲等の種々の異なるタイプの雲について、ドップラーレーダーで観測した。マヌス島における観測の概要と観測結果の要約について述べる。観測データについての解析結果の予備的な要約は以下の通りである。1)レーダーエコーの発達の初期には暖かい雨のプロセスが支配的であり、最大のレーダー反射因子はこの時期に観測された。2)エコー頂高度の最大は最初のレーダーエコーが認められてから3時間以内に観測された。3)レーダー観測範囲内における、レーダーエコー面積の最大値はクラウドクラスターの大きさに対応して最大のエコー頂高度が観測された時刻より数時間遅れて観測された。4)長時間持続する層状エコー内の融解層の上部に、融解層下層の上昇流とは独立した上昇流が観測された。これらの観測データを用いてさらに研究をすすめることにより、熱帯のクラウドクラスターの構造や発達機構を解明できると考えられた。
  • 1992年11月23日と12月16日に観測された3つのケーススタディ
    高橋 暢宏, 上田 博
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 427-442
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA-COAREの集中観測期間中には様々なタイプの雲がマヌス島に設置したドップラーレーダーによって観測された。本論文では孤立対流雲と2種類のレインバンドを解析し、それらの特徴をエコー面積、エコー頂高度、最大反射強度の時間変化の観点から明らかにした。ケーススタディから得られた共通する特徴は、1)最大反射強度のピークはライフサイクル中の早いステージで現れ、それは下層の循環によってもたらされた。2)エコー頂のピークは最大反射強度のピークにやや遅れて現れ、これは上層の循環のステージの急激な発達に対応していた。3)アンビルの出現によるエコー面積のピークが最後に現れた。
    孤立エコーのケースでは、上記の特徴が運動学的に細かく解析された。このケースでは下層の循環のステージから上層の循環のステージへの移行が現れた。これらは、ドップラー速度場の解析から運動学的にも矛盾なく説明された。また、上層の循環のステージで最大エコー頂までに発達した後にアンビル雲が発達しエコー面積が最大になり、層状降水をもたらした。
    2つのレインバンドのケースは、ノンスコールタイプに分類された。一方は遅く伝播し、継続的な下層の後面から前面に向かう流れが成熟期に現れた。もう一方は、やや速い伝播速度を持っていたが、後面から前面へ向かう流れは継続的でなかった。それぞれは、GATE期間中に観測されたものの特徴と必ずしも一致していなかった。また、convective outflowは、いずれのケースにも観測され、2つめのレインバンドのケースではガストフロントとして観測されたものもあった。このガストフロントは0.5km~1kmの厚さを持ち伝播速度は8~10m/sであり、これは、レインバンドの伝播速度よりやや速く、ガストフロントはレインバンドのすぐ前方に位置していた。
  • 2台のドップラーレーダーによる雲群を構成するメソ対流系の解析
    佐藤 晋介, 木下 温, 上田 博
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 443-459
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1993年1月18-19日に観測されたクラウドクラスターと、それを構成する3つの特徴的なメソ対流系を2台のドップラーレーダーデータを用いて解析した。2台のレーダーは、TOGA-COARE集中観測期間中にマヌス島(南緯2°、東経147°)に設置したものである。解析したクラウドクラスターは、レーダー観測範囲内で発生し直径約200kmにまで発達した。この時の環境の風は弱かったが、高度3~4kmに強い鉛直シアーが存在した。
    このクラウドクラスターは幾つかのメソ対流系によって構成されており、クラスターの成長期には対流性エコーが、衰退期には層状性エコーが卓越していた。最初の特徴的なメソ対流系(FMCS)は環境の風より速い速度で伝播し、その走向は鉛直シアーの方向にほぼ直交していた。また、強い対流セルの後方には層状性エコーが広がっていた。FMCSに流入する流れは強い下降流を伴うセルの前で2本に分かれ、その下降流から南と北方向に発散する下層の流れとの間に対称性を持つ2つの強い収束域を形成した。これらの特徴から、FMCSは‘storm splitting’が作り出すような3次元気流構造を持つスコールラインとして認識された。2番目のメソ対流系(SMCS)は、ゆっくりとした移動速度を持つ独立した対流セルで構成され、系全体の走向は鉛直シアーに平行であった。3番目のシステムは、明瞭なブライトバンドを伴う層状性エコーであったが、その中層(高度4~6km)には直径約20kmの水平渦が見つかった。さらに、中層と上層(高度6km以上)には5ms-1に達するような鉛直速度を持つ鉛直循環が見つかり、これらによって多量の降水が生成されたことが分かった。
  • 城岡 竜一, 上田 博
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 461-470
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA-COAREの集中観測期間中、西部熱帯太平洋上のパプアニューギニア、マヌス島において1992年11月19日から1993年1月19日までの2ヶ月間、全天日射量の観測を行なった。日射量の日変化の特徴から観測期間を4つに分割した。GMSのTBBからみた対流の活発度やウインドプロファイラーから得られた東西風にも各期間の特徴がみられた。観測期間を通して地上風の変動は激しかったが、12月下旬から1月上旬にかけて強い西風が観測された。最も対流活動が活発であった期間は午後の日射量の低下で特徴付けられ、西風強化の前に現れていた。一方、西風が強化された期間では午前中の対流活動が支配的であった。日射量の日変化を渦相関法によって求められた顕熱や潜熱のフラックスと比較すると、陸上におけるエネルギーフラックスの変化は日射量の変動に30分程度ですばやく対応していた。潜熱と顕熱のフラックスは、夜間はほとんど零であり、昼間の最大値は潜熱で約270W/m2、顕熱で200W/m2であった。
  • 藤吉 康志, 耿 驃
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 471-490
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA-COARE IOP期間中の1993年1月5日から6日にかけてパプアニューギニアのマヌス島で観測した、孤立した小規模な対流性のレインバンドの構造と発達過程を、ゾンデデータとデュアルドップラーレーダーデータを用いて詳細に解析した。このレインバンドは、2台のドップラーレーダーによる解析範囲の中で、2つの小さな対流セルから発達して衰弱した。
    レインバンドは、342Jkg-1と小さいCAPEを持つ環境場の中で発達し、成熟期には長さが30kmで幅が15kmに達した。バンドは2.5×10-3S-1の大きさを持つ下層の平均シアーとほぼ平行な走向を持ち、320°から140°の方向に毎秒5.5mで移動していた。雨水は高度3km以下に集中し、それより上空では急激に減少した。最大上昇流は毎秒4~5mで、レーダー反射強度は最大で35~40dBZであった。
    レインバンドを構成する対流セルの数は、発生初期では2つ、成長期には5つ、そして成熟期には1つと、時間と共に変化した。前方下層からレインバンドに流入した空気は対流セルの中で上空に持ち上げられ、強いエコー域の真上で上昇流となった後、後方に抜けて行った。強い降雨域の真下には強い下降流が存在せず、また、対流域の風下に於ける層状域の面積は小さかった。発達初期には、対流セルの中心に向かう後方から前方への対流スケールの流れが見られた。これらの後方から前方に向かう流れは、相互に併合して面積と厚みを増し密度流を形成した。この密度流はレインバンドよりも速い速度で移動することにより下層に強い収束を生じさせ、成熟期には密度流の“ヘッド”部で強い対流セルを発達させていたことが、2台のドップラーレーダーを用いた詳細な解析から明らかになった。対流スケールで形成された後方から前方に向かう流れの併合過程が、このレインバンドの組織化にとって重要であることが示唆された。
  • 森 一正
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 491-508
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA COARE IOP(熱帯海洋及び全球大気変動国際共同研究計画、海洋大気結合応答実験、集中観測期間)中の1992年11月3日から16日の間、7.5分間隔のレーダー観測と6時間間隔のラジオゾンデ観測が、気象庁の観測船啓風丸により、集中フラックス観測領域(IFA)の中心付近、0.5S、154.5Eにおいて実施された。エコー強度は、2.5kmメッシュでデジタル化され500km四方の領域を覆っている。
    メソ降水系に注目して、観測された赤道付近の対流が記述された。エコー面積により、観測期間は4つの期間に分けられた。11月3-4日には対流活動は弱く、対流活動のメソ降水系への組織化は抑制されていた。11月5-8日には、対流活動は活発で、エコーは水平スケール100-300kmのメソ降水系へと組織化されていた。対流は深夜から早朝(14-20UTC、00-06LT)に強まる日変化を示していた。主なメソ降水系は、対流セルとして夜(10UTC、20LT頃)発生し、深夜から早朝(14-20UTC、00-06LT頃)強いエコーを含む広いエコーへと成熟し、朝(23UTC、09LT頃)には散在する弱いエコーへと衰弱していた。主なメソ降水系の履歴はLearyとHouze(1979)により示されたメソ降水系(MPFs)の履歴と似ていた。11月10-12日には、急速に西進する大規模(1500-2000km)雲擾乱の通過に伴い、より大きいメソ降水系を含む活発な対流が1.5日間にわたり起こった。メソ降水系は東進していたが、大規模雲擾乱の西方への通過に対応して、メソ降水系の発達する場は西進しているようであった。これらのメソ降水系は発達期には北東から南西に走向を持つ長さ300-500km以上のいくつかのライン状構造をしていた。メソ降水系は長寿命であり対流の日変化は見られなかった。11月13-14日には対流は完全に抑制されていた。
    11月5-8日の夜間の対流強化は、暖水域でも大規模場の状態によってはメソ降水系の夜間の出現を通して強い対流が日変化的振る舞いをすることがあること、を示唆している。11月10-12日の密に束ねられた、引き続く西方への東進メソ降水系の出現は、メソ降水系群と西進する大規模雲擾乱との相互作用を暗示している。この大規模雲擾乱の性質が吟味された。
  • 高橋 劭, 鈴木 賢士, 織田 真之, 徳野 正巳, Robert de la Mar
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 509-534
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    西太平洋における大気・海洋結合系国際観測プロジェクト(TOGA-COARE)の一環として西太平洋赤道域マヌス島(2°S,147°E)で21個のビデオゾンデを飛揚、降水機構の研究を行った。観測は1991年11月24日~12月5日と1992年11月20日~12月9日の2回にわたり行われた。観測期間中多くの異なった雲システムが発達、それらの出現は水蒸気の高度分布に著しく依存し、台風による水平風の変動が水蒸気分布に大きな影響を与えていることが示唆された。降水系には2種あり、強い降雨をもたらすレインバンドでは“温かい雨”型で雨の形成が行われ、厚い層状の雲では小さい霰の形成が活発に行われていた。0℃層で霰の雪片が初めて観測された。降雪粒子分布がカナトコ雲や台風の層状雲内でのものと著しく異なることから、観測された厚い層雲はレインバンドからの延びた雲ではなく0℃層以上での一様な大気の上昇で形成されたのかも知れない。他の熱帯域と比較して氷晶濃度が赤道で極端に少なかった。
  • 橋口 浩之, 深尾 昌一郎, 山中 大学, 津田 敏隆, Sri Woro B. Harijono, Harsono Wiryosumart ...
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 535-548
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1992年11月から2年以上に渡って、インドネシア共和国スルポン地区(6.4°S,106.7°E)において連続観測を実施してきたL帯(1357.5MHz)の京都大学境界層レーダー(BLR)は、TOGA COARE集中観測期間(1992年11月-1993年2月)中の1992年12月初めに、東風から西風へ風向が逆転することを見出した。この風向逆転はインド洋モンスーン(西風)領域と太平洋貿易風(東風)領域の間に存在する対流中心(超雲団)の東方向への移動に伴うものであることが、GMS観測データから確認された。BLRで観測された(超)雲団に伴う下部対流圏における風速変動の様子から、対流中心の東側と西側(それぞれ東風と西風領域、あるいは乾季と雨季に対応)の間の相違が明らかにされた。
  • 村本 健一郎, 藤城 孝史, 金田 昌樹, 遠藤 辰雄
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 549-556
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    降雨のレーダ・データを定量的に解析する上で雨滴の粒径分布が得られると有効である。そのためTOGA/COAREプロジェクトで実施された2台のドップラーレーダによるデュアル観測においても、このために特別に開発された雨滴の粒径分布の測定装置がパプア・ニューギニャのマヌス島で使用された。本装置は1つの光源と2台のビデオ・カメラの光学系から成っており、その間を、上部のスリットを通って落下する雨滴のイメージを擦りガラスで一様にした面光源を背景とする影の像として捉え、それをデジタル処理するものである。2台のカメラは異なるシャッター速度に固定され、一方は雨滴の粒径を他方は落下速度を同じ雨滴について同時に計測する。この場合、落下速度は粒径の検定のために間欠的に参照されるので、小さい雨滴に関しても信頼度が高いのが、特徴である。
    ここでは、得られた結果から2つの典型例として、ガンマー関数型分布と2山型分布のものを挙げ、これらが弱い対流と強い対流の雲からの降雨にそれぞれ対応していること示した。2山型の事例は得られたレーダの解析図と比較して議論され、熱帯特有の「暖かい雨」の形成機構として考えられる併合成長の証拠として、また雨滴の蒸発過程の可能性等が考察された。
  • 塚本 修, 石田 廣史
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 557-568
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1992年11月のTOGA-COAREの強化観測期間に、西太平洋赤道上の東経156度の定点に配置された研究船白鳳丸において、海面と大気との間に交換される熱や水蒸気フラックスを渦相関法によって直接測定した。16日間の観測期間の前半は穏やかな晴天の日が多かったが、後半には対流活動が活発になってスコールが多く見られた。平均的な海面から大気への熱輸送量は顕熱フラックスが14Wm-2(Brookの補正を考慮した場合)、潜熱フラックスは88Wm-2になる。しかし、スコールに伴う積雲からの吹き出しによって、風速の増加、気温・湿度の減少をもたらし、熱フラックスの値は倍増することがわかった。
    渦相関法の結果をもとにして得られたバルク輸送係数の値はCH=1.32×10-3,CE=1.16×10-3となり、CHについては従来の値よりはやや大きい。これらの係数は風速が小さくなると次第に増加する傾向が見られ、これはこれまでいくつかのモデルに取り入れられていることを実証したことになる。渦相関法で得られたフラックスの値と、船上での放射観測の結果から、海面での熱収支を評価した。今回の観測期間の平均的な値として、海面には68Wm-2の熱エネルギーが正味与えられていることになる。今回のデータは渦相関法による観測が行われている他の3隻の観測船、Moana Wave, Franklin,なつしまのものと併せて、長期間で広域でのバルク法によるフラックスの算定の際の基準値になると考えられる。
  • 第1部 混合層の構造
    丁 一匯, 住 明正, 沈 学順
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 569-583
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA-COARE集中観測期間中に、東大海洋研の白鳳丸が東経156度の赤道に於いて、1992年11月11日から27日にかけて定点観測を行った。この時の海上気象観測、及び、高層気象観測を用いて混合層の変化及び構造の解析と海面フラックスの評価が行われた。
    論文の第1部は、混合層の変化、及び、構造が論じられている。主な結果は貿易風の東風の時には、混合層高度は比較的高く、多くの場合は、800-900m程度であり、その上に乾燥した空気がかぶさっている。しかし、ほとんど顕著な逆転層は見あたらなかった。一方、擾乱に伴う西風の場合には、混合層高度は相当程度に低く抑えられ、あるいは、無くなっていた。深い湿潤層がしばしば観測された。
    非常に乾燥した空気の進入が2例観測された。この際には、混合層高度が上昇し1.5kmにも達した。この乾燥空気の侵入についても議論されている。
  • 第2部 海面フラックスの評価
    丁 一匯, 住 明正, 沈 学順
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 585-596
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    本論分は、TOGA-COARE集中観測期間中の境界層の特徴に関する研究の第2部である。使用したデータは、東経156度の赤道で1992年11月11日から27日にかけて東大海洋研の白鳳丸で観測されたデータで、海面フラックスは3つの異なる係数を使用してバルク公式を用いて求められた。最初は、中立の時の抵抗係数と風速の間が、ほとんど線形である関係式が用いられ、その後、安定度の効果が入れられた。この様にして求められた運動量、顕熱、潜熱のフラックスは、それぞれ、0.0316N/m2、10.2W/m2、190.3W/m2であった。局所的な風はフラックスの強さに大きな影響を与え、4回の西風時には、貿易風の東風の時よりも、大きなフラックスであった。フラックスの大きさは、特に、弱風時には、安定度に大きく依存する。正味のフラックスは、海洋から大気と言うことであった。最後に、本研究による評価と他のバルク係数、および、渦相関法による評価と比較を行い、妥当であるとの結論になった。
    本研究によっても貿易風の東風から西風に至るまでの風の場の強さの変動が混合層の構造と海面フラックスに大きな影響を与えることが明らかにされた。
  • 金成 誠一, 小林 智加志, 乙部 弘隆
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 597-609
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1992年11月に、白鳳丸の航海(KH-92-5)が行なわれた。この航海で西太平洋赤道域の定点(0°,156°E)で、11月12日から27日にかけてマイクロストラクチャーの観測が3-6時間毎に行なわれた。この観測データに基づき、この海域の表層の乱流熱フラックス並びに熱収支の見積もりを試みた。
    表層5m深の水温からの差が0.1℃となる深さで定義された表層混合層の観測期間における乱流熱フラックスは、混合層底部において常に下向きで最大239.1W/m2であるが、観測期間で平均すると下向きに31.4W/m2にすぎない。また、この混合層内の熱収支バランスの見積りから、混合層が浅化したときに特に移流による熱の流入の影響が大きく、50%を超えることが示された。
    一方、28℃の等温線に対応するサーモクライン頂部までを一定の厚さ(70m)のスラブ層(以下表層)と見なして、この層内の貯熱収支を見積もった。海上気象データから、11日間に海面を通して入るネットの熱流入は80MJ/m2と見積もられた。この表層全層における乱流熱フラックスは、上向きに最大50W/m2、下向きに最大250W/m2であるが、観測期間の全平均値は下向きに9.1W/m2であった。また、11日間の表層底部(70m)における乱流による熱流は下向きに9.3MJ/m2で、海面からの熱流入80MJ/m2との差70.7MJ/m2は、移流を無視すれば表層の昇温に寄与する筈である。表層の平均水温変化から見積もった正味の熱流入は84MJ/m2で、その差13.3MJ/m2が移流効果によるものと考えられる。これは、海面からの正味の熱流入量の16%にすぎない。
  • 住 明正, 沈 学順
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 611-629
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1992年11月から1993年2月にかけて赤道西太平洋域で行われたTOGA-COARE集中観測に参加した東京大学海洋研究所の白鳳丸の観測データを用いて、海洋大循環モデルに用いられる海洋上部の混合に関するパラメタリゼーションスキームの差異が調べられた。この航海に於て、乱流エネルギー散逸率(ε)と混合層の構造の観測が表面フラックスと共に、東経156度の赤道上で、1992年11月12日から26日にかけて行われた。
    1次元のMeller-Yamadaのレヴェル2、2.5、3、4のclosure modelを用いて混合層の時間変化をsimulateし、白鳳丸での観測と比較した。特に、乱流エネルギー散逸率に焦点が置かれた。なぜなら、この航海で観測された乱流過程に関係する量だからである。一般的に、4つのモデルの結果は互いに良くにており、観測と比較すると、混合が弱かった。特に、表面の風が弱いときに、差異が顕著になった。1次元モデルに関する限り、モデルのレヴェルの差は少ないと結論できる。
    鉛直の分解能に対する結果の依存性も調べられた。混合層上部の一般的な特徴は高分解能(格子間隔1m)と普通の分解能(格子間隔20m)では差異がなかった。もっとも、海面水温の日案化は20mの格子間隔では再現できなかった。
    混合層の時間変化を観測されたεから推定された渦拡散係数を用いたレヴェル2のモデルで計算した。結果は、観測される混合層の昇温の7割程度を説明するものであった。
  • 大滝 英治, 山下 栄次, 石田 邦光, 伊藤 はる奈, 劉 小虎
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 631-637
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA COAREプログラムの一環として、1992年10月31日-12月7日の白鳳丸KH-92-5次航海で、太平洋赤道海域の定点(0.0°N、156.0°E)における表面海水中の二酸化炭素濃度(pCO2)を測定した。観測期間中、測定海域は穏やかで、顕著な湧昇流は認められなかった。pCO2は昼間低く、夜間高くなるような日変化を示した。定点にいた12日間の平均をとると、9時のpCO2は21時の値より約4.8ppm(標準偏差=4.6ppm)低かった。このようなpCO2の日変化は、海水中の生物活性の変化が支配しており、二酸化炭素の大気-海洋間の交換による影響は、実際のpCO2の変化に比べて無視できることがわかった。また、いろいろな深度で採取した試料海水を船室内の温度に保ち、pCO2の鉛直分布の測定を行った。pCO2は水面直下(水深約5m)で約330ppm、深度が大きくなるにつれて徐々に低下し、50m付近で極小値(270ppm)を示した。その後、深度が増すにつれてpCO2は再び高くなり、水深約200mで630ppmに達した。pCO2の鉛直分布は、白鳳丸KH-92-4次航海(Sagittarius Expedition)で我々の定点近く(0.0°S,150.0°E)で測定したクロロフイル-aの鉛直分布と対称的であった。クロロフイル-aは海水中の生体量の指標であるから、pCO2が減少している深度付近で生体量が多く存在していたことを意味している。また、赤道海域における表面海水中のpCO2は、大気中の二酸化炭素濃度より低く、二酸化炭素が大気から海水中に溶け込んでいることを示した。この結果は、湧昇流が認められず、高い表面海水温度(約30℃)の条件下にある赤道海域も大気中の二酸化炭素の吸収に一定の役割を果たす可能性があることを示唆している。
  • 中嶋 秀夫, 金子 新, 江田 憲彰, 川建 和雄
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 639-643
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA/COARE IOP期間中に、測点(20°021′N,156°0.11′E)で得られた自己記録式上方設置型ADCPデータを注意深く解析し、海面からの散乱音波振幅(AGC)を抽出した。海面におけるAGC値は、同測点におけるATLASブイによる0から13ms-1まで変動した風速とよい相関を持つことが分かった。海面からの後方散乱が風速と共に増大する理由については十分に解明されなかったが、この研究により風速が海面でのAGC値から予測できる可能性が開かれた。
  • 鈴木 立郎, 伊藤 進一, 竹内 謙介, 乙部 弘隆
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 645-652
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1993年11月、白鳳丸により、赤道上、東経156度の定点において海洋上層の連続観測が行われた。この期間、ほとんど天候は静かで、海洋混合層の水温はわずかに上昇した。混合層における貯熱量の増加の大部分は海面を通じての熱流量との南北の移流によって説明されることが示された。また、EOF解析や等密度解析により、海洋上層500mまでの温度、塩分の変化に関しては、海面でのフラックスと混合過程の他、内部波と等密度面に沿っての南北からの海水の貫入が主な課程であることが示唆された。
  • 安藤 健太郎, 黒田 芳史, 米山 邦夫, 宗山 敬, 竹内 謙介
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 653-663
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    TOGA COARE集中観測期間中の1993年2月5日から2月14日にかけ、0°、156°Eの定点で連続CTD観測および海上気象観測を行った。水温のデータには、240、340、570、760dbarに水温変動の大きな偏差が見られた。これによる、1000dbarを基準にした海面でのジオポテンシャル・アノマリーの標準偏差は海面で±0.28m2/s2であった。
    海洋表層では、10日平均の0-60dbarの深度の海洋中の貯熱量の時間変化(heat storage rate)は、-27.1Watt/m2(正は熱を失う)であり、船上で観測を行った海上気象データから計算された10日平均の海面熱フラックスは-24.2Watt/m2(正は上向きで海洋は熱を失う)であった。この海洋の貯熱量の時間変化と海面のフラックスの差で定義された残差量の一致は、6時間毎の残差量では、計算誤差に比べ十分大きな値を示すにもかかわらず、この観測期間の平均において表層水温が主に海面での熱フラックスによって支配されていたことを示している。
  • 轡田 邦夫, 稲葉 栄生
    1995 年 73 巻 2B 号 p. 665-675
    発行日: 1995/06/15
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    西部赤道太平洋ウォームプール海域における表層海流変動を調べるため、1992-93年のほぼ1年間赤道上の2測点(147°Eと154°E)において、上向き係留式超音波ドップラー流速計による長期測流を行なった。東西流は、流向が頻繁に変化する100m以浅を除き総じて東向きであった。また、赤道潜流に対応する平均東向流には70-90m及び210mの2層で極大が存在し、この極大層の深度は数日から数ヶ月の時間スケールで鉛直方向に変化する傾向が見られた。これらの層状構造をもつ変動特性が経験的直交関数の低次モードで表わされた。西側測点に対する第1モードは、全変動の約60%に寄与し、90mに極大をもつ全層同位相の変動特性、約20%の寄与をもつ第2モードは、約110mを境に上下で逆位相の変動特性を有する。また、100m以浅の上層では、1992年1月に約80m/sに達する強い東向流の発生が見られたが、この時期は70及び130mに節をもつ第3モードに関係付けられた。南北流は全層において平均流は0に近く、その変動幅は下層を除き東西流の約半分であった。また、スペクトル解析より約10日、15-20日及び30-60日周期をもつ変動の卓越が認められた。
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