中国東部の大陸上のCb群(直径100km以上の積乱雲群)の出現状況、及びその日変化に関連した地表面温度や総観場の特徴について、1979年6~8月のデータに基づく解析を行った。大陸上の梅雨前線帯の位置や特徴の季節遷移に準拠して、“Pre-Meiyu”(6月1~17日、梅雨前線の華中への北上前)、“Meiyu”(6月20日~7月22日、華中の梅雨最盛期)、“Mid-summer”(7月23日~8月17日、華中の盛夏期)の3つの期間について調べた。主な結果は次の通りである。
(1) “Meiyu”期の華中では昼夜を問わずCb群が多数出現したが、“Meiyu”期に梅雨前線帯北方に位置する華北・中国東北区(Area N1)や盛夏期の華中(Area C2)でも、12UTC(北京標準時で20時)頃ピークとなる顕著な日変化を伴って、Cb群が多数出現した。
(2) 梅雨前線帯と寒帯前線帯にはさまれる“Meiyu”期のArea N1では、動きの遅い上層トラフに対応する大規模システムの雲域に組み込まれる形で、日変化するCb群が出現しやすかった。この時期にはまだ梅雨前線帯の北側にある本地域でも、梅雨前線帯が華南から華中へと北上した6月20日頃を境に、下層の比湿が増加した。この比湿の増大は湿潤対流に対する安定度の悪化をもたらし、上層トラフ接近、日中の地面加熱と組合わさって、日変化するCb群の頻出に好都合な気候学的条件を作ったものと考えられる。
(3) 盛夏期(“Mid-summer”)の華中(Area C2)では、亜熱帯高気圧に覆われ、かつマクロスケールでの領域平均の下層発散が夕方に強い傾向にも関わらず、Cb群出現頻度が夕方にピークをもつ日変化を示した。本地域で特に高い日中の地表面温度による加熱は、強い対流不安定を顕在化させるトリガーとしてのメソスケールでの上昇流を与える可能性があり、今後の検証が必要である。
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