気象集誌. 第2輯
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76 巻, 3 号
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  • 小寺 邦彦
    1998 年 76 巻 3 号 p. 347-361
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    太平洋・北アメリカ(PNA)パターンや、西太平洋(WP)パターンといった遠隔連結(テレコネクション)・パターンはエルニーニョ現象と関連していると考えられている。しかしながら、PNAあるいはWPパターン指数とエルニーニョ・南方振動(ENSO)サイクルとの間には弱い相関しか見いだせない。ところがPNAとWPの二つの指数を組み合わせると強い相関が得られる。この事から、PNAあるいはWPパターンは、それぞれはENSOサイクルとは直接的な関係はないが、それらの総括的な発現頻度はエルニーニョ現象により影響されていると考えることができる。
    ここでは、熱帯でエルニーニョ現象が起こっている冬に北半球の中高緯度でどちらのタイプの循環場が現れ易いかを決める条件は何かを調べる為に、エルニーニョ現象の起こった冬をPNAとWPパターンの二つの指数の相対的な大きさから二つのタイプに分類した。この結果をみると、エルニーニョ現象ごとの中高緯度大気の循環場の違いは熱帯太平洋の海面水温分布の違いには強くは依存しておらず、むしろ初冬のユーラシア大陸における循環場の違いに関連している可能性も示唆される。
  • V. Krishnakumar, K. -M. Lau
    1998 年 76 巻 3 号 p. 363-383
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    乾燥/湿潤(条件付き)対称不安定(SI/CSI)、赤道外非断熱熱強制とアジアモンスーンオンセットの物理的関係を、ゴダード大気研究室大循環モデル(GLA GCM)を用いて調べた。研究の目的は、SI/CSIとモンスーンオンセットの因果関係を解明することと、SI/CSIの条件下での非対称モンスーン熱強制の臨界的な振る舞いを調査すること、の2つである。これらは北方夏季モンスーン基本場でのSI/CSIが、モンスーン突然遷移のもっともらしい説明かも知れないという著者のこれまでの線形不安定解析の結果を補強するものである。
    鉛直運動最大軸の赤道から高緯度への急激な子午面移動で示されるモデルでのモンスーン遷移は、東アジアモンスーン(EAM)域では5月16-20日、南アジアモンスーン(SAM)域では6月1-5日に生じる。EAMとSAM域上での乾燥(湿潤)SIに要する安定基準は、モデルでのモンスーン遷移に5-10日先立つ負の乾燥ポテンシャル渦度(DPV)と湿潤ポテンシャル渦度(MPV)の赤道を横切る夏半球への突然移流と、それによるSI/CSI条件のセッティングを示している。DPVとMPVの零線(乾燥/湿潤対称不安定域)の最大の移動はモンスーン遷移に続いて発生する。ポテンシャル渦度収支の簡単な解析によれば、夏半球への下部対流圏の負のPV移流は鉛直方向の非断熱加熱の差が水平方向よりも大きいことによっている。
    モンスーン遷移前後では非断熱加熱も1-3K/dayから12-14K/dayへ急変する。プレモンスーン期の弱い熱源の始まりは主に基本場のSIとCSIに起因し、ある程度大きなスケールの下部(上部)対流圏収束(発散)パターンを作る。下部対流圏の条件付き不安定な熱帯大気は、赤道外の大規模下部(上部)対流圏収束(発散)が存在すると、モンスーン遷移期に多くの潜熱を解放して強い熱源を発達させるCISK状の過程を励起するのに役立っている。モデルの子午面循環は、非断熱強制がモンスーン遷移期に5K/dayのしきい値を超えるときに始まる。モデルの遷移はEAM域でSAM域よりも明白である。理想化した非対称熱強制の位置と大きさの変化に対する帯状対称大気の線形定常状態での力学レスポンスは、最も強い子午面循環(鉛直運動の最大効率)は熱強制が10N付近にあるときに生じることを示す。DPV/MPVのゼロ線の位置、下部対流圏の最大収束と夏半球におけるモンスーン循環の最大鉛直風の関係は、帯状モンスーン流のSI(CSI)がモンスーン遷移オンセットの原因であることを明白に示唆している。
  • 直江 寛明, 松田 佳久
    1998 年 76 巻 3 号 p. 385-402
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    ジェット気流中を伝播するロスビー波の時間発展において、非線形効果、特に孤立渦のロスビー波からの形成を球面上の非線形順圧モデルを用いて研究した。この研究で、ロスビー波は、東西非一様な基本流において局所的な渦度強制により励起される。
    弱い定常の強制によって生成されたロスビー波は、線形モデルと同様に、ジェット気流を伝播しジェットの出口付近で増幅する。一方強い定常の強制の場合、基本場の東西非一様性が大きいとき、負の渦度の孤立渦がロスビー波列のある領域で形成されることがある。強い有限時間の強制の場合も、基本場の東西非一様性が大きいとき、強い負の孤立渦が形成されることがある。定常強制の場合と違って、最終的にこの渦はロスビー波を射出して崩壊する。
  • 水間 満郎
    1998 年 76 巻 3 号 p. 403-418
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海西部とその周辺地域における海陸風の性状がAMeDASの風資料から明らかにされた。解析領域は九州、中国西部、および四国西端の領域で、太平洋、東シナ海、および日本海で囲まれ、大小の内海を持つ。解析領域の中央部の沿岸地域において海陸風が見られた日を解析領域における海陸風日とした。この沿岸地域における海風過程の中での予期しない風の生起やその近くのより小さな水域の沿岸における海風の有無も考慮して、海陸風の型分類が行なわれ、8つの型に分類された。
    これら二つの沿岸地域で共に海風が見られる型においては、中国地域の日本海沿岸の北東側半分と瀬戸内海の東端を除いた全領域で海風が発達する。中国、九州とも午後には周辺海域からの海風がそれらの中央域で合流しているのが見られる。その他の海陸風型は、それらを特徴付ける局面につき上述の基本型と比較して議論された。四国北西岸において顕著な陸風が見られる地点が、よく知られた肘川あらしと関連づけて指摘された。
    以前得られた大阪湾とその周辺地域における海陸風の生起と一般的気象条件との間の関係は本研究の領域においても妥当であることが示された。本研究で得られた海風の模様と大阪湾とその周辺地域の海風の模様とを接続することにより、西日本全域についての海風最盛期の典型的な模様が明らかにされた。また、これら二つの地域の海陸風の振舞いの相互関係についても議論がなされた。
  • 寺尾 徹
    1998 年 76 巻 3 号 p. 419-436
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    ユーラシア大陸上から西部北太平洋上にかけての亜熱帯ジェットにおける北半球夏季の季節内変動について、ECMWFの14年分(1980-1993年)の客観解析データを用いて調べた。亜熱帯ジェットにおいて、準定常ロスビー波的な擾乱がはっきりとみられる。それらの擾乱の東西波数は5-7の範囲によく集中している。擾乱の周期帯はより広く分布しているが、30-45日周期と14日周期は顕著にみられる。擾乱は東西方向に位相固定される傾向がある。
    この領域で特に強い30-45日周期擾乱がみられた1983年についてのケーススタディーを行なった。1983年の夏についても、約32日周期のはっきりした定在波的な擾乱が亜熱帯偏西風帯上にみられる。それらの伝播ルートは、亜熱帯偏西風帯にそって形成される準定常ロスビー波の導波管に対応している。しかし、擾乱は導波管の中に完全に閉じ込められているわけではなく、導波管から少しはみ出している。この擾乱の南端は、チベット高気圧の中心部に沿って存在する準定常ロスビー波に対するcritical latitudeを横切っている。擾乱の鉛直構造から、わずかではあるが系統的な西への位相の傾きがあることがわかる。これは北への熱輸送を示している。
    順圧的な準定常ロスビー波に対するray path理論において、波束の時間方向と東西方向への広がりを考慮に入れ、時間方向と経度方向に平滑化された基本流を用いた。これを観測された擾乱の伝播ルートの診断に応用し、よい結果を得た。
  • 島津 好男
    1998 年 76 巻 3 号 p. 437-445
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    通常レーダー網のデータを使って、成熟期から衰弱初期段階にあった日本周辺の16個の台風における、降水システムの大きさ・形・位置・寿命・動きを明らかにした。これらの特徴に基づき、中緯度前線帯から離れた台風における降水システムを、内側レインシールド・外側レインシールド・内側レインバンド・外側レインバンド・眼の壁雲に分類した。一方、中緯度前線帯に近づきつつある台風の北側にできるデルタ型の降水システムの存在を示し、これをデルタ型レインシールドと名付けた。
  • 渡辺 幸一, 神山 孝吉, 渡辺 興亜, 佐藤 和秀
    1998 年 76 巻 3 号 p. 447-451
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    東南極みずほ高原の沿岸近くのS25地点で掘削された氷床コア中の過酸化水素(H2O2)濃度を測定した。H2O2濃度には季節変動だけでなく太陽活動周期に相当する11年程度の変動が認められた。この結果は、大気中のH2O2濃度は太陽活動の影響を受けて変動していた可能性を示唆している。
  • 庭野 将徳, 高橋 正明
    1998 年 76 巻 3 号 p. 453-461
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    赤道準2年周期振動(QBO)が再現された大気大循環モデル(GCM)の出力データを使って、赤道QBOが冬の北半球循環に及ぼす影響について調べた。1-3月の帯状平均東西風について調べてみると、7-50hPaの赤道QBOが東風(西風)の時に極夜ジェットが弱く(強く)なるような中高緯度間の双極子(dipole)構造が成層圏に現れた。惑星波のEliassen-PalmフラックスはQBO東風(西風)の時に高緯度(中緯度)成層圏で強く、そこでより収束している。これらの結果は観測データの解析による結果と一致している。また、帯状平均帯状風減速の偏差は東西風偏差よりも北側に位置する。このことから冬季の東西風偏差は初冬における偏差が時間と伴に高緯度側へ移動して作られているように思われる。成層圏の双極子構造は対流圏の赤道付近、中緯度、高緯度間で振動する3重極子(tripole)と結び付いており、その連携したパターンは北大西洋振動(NAO)パターンと似た子午面、経度構造をしている。
  • 松山 洋
    1998 年 76 巻 3 号 p. 463-466
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    Ueno and Ohata (1996) pointed out the importance of the correction of precipitation measurements on the Tibetan Plateau. The present author offers some comments to evaluate more quantitatively their results, which are summarized as follows: (1) the validity of the correction of precipitation should be checked for the individual cases, along with the total amount; (2) the diameter of the gauge should be investigated for any systematic bias of the measured precipitation; (3) the increment obtained through the correction procedure should be quantitatively compared with the standard error of the corresponding regression analysis; and (4) the effect of the correction should be looked at from various viewpoints, e. g., quantitative comparisons of the corrected precipitation with precipitation estimates from space, as well as with the surface energy budget on the Tibetan Plateau.
  • 上野 健一, 大畑 哲夫
    1998 年 76 巻 3 号 p. 467-469
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
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