気象集誌. 第2輯
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76 巻 , 6 号
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  • 井上(吉川) 久幸, 石井 雅男, 松枝 秀和, 吉本 誠義, 森田 良和
    1998 年 76 巻 6 号 p. 829-839
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1996年1月-2月にかけて日本-オーストラリア、7月-8月にかけて日本-アメリカ間を航行した大成丸(運輸省航海訓練所)で中空糸膜モジュールを用いて海水と平衡になった乾燥空気中の二酸化炭素混合比(xCO2S)の測定を試みた。中空糸膜モジュールは、全容積が300cm3と現在用いているシャワーヘッド型平衡器(設置に110dm3必要)に比べて小さく、設置が容易である。中空糸膜モジュールを用いて測定したxCO2Sは温度計測を行うことにより従来のシャワーヘッド型平衡器の結果と良い一致を示した。14分離れて測定したxCO2Sの差は、0.1ppm(n=732)であり標準偏差は3.7ppmであった。このことは二つの平衡器間にシステマティックな差がないことを示しており、中空糸膜が平衡器として将来使用できることが分かった。
  • A. Chandrasekar, 鬼頭 昭雄
    1998 年 76 巻 6 号 p. 841-853
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    夏季の南アジアではインドと赤道インド洋の2個所に降水域が存在するが、一方が活発な時は他方で不活発となりやすい。また夏季インドモンスーンの弱い年にはインド洋の赤道の南で海面水温が正偏差となっている。このような海面水温偏差が夏季インドモンスーンに与える影響について、大気大循環モデルによるアンサンブル実験により調べた。実験の結果、海面水温偏差はインドで有意な応答を引き起こし、インドの降水量の減少とモンスーン循環の弱化をもたらした。負の海面水温偏差を与えた実験からは逆の結果が得られ、上記の関係が確認された。
  • 二宮 洸三, 小林 ちあき
    1998 年 76 巻 6 号 p. 855-877
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1991年アジア全域に於ける夏季モンスーンの降水の季節変動を全球予報モデルの24時間予報データに基づいて調べた。まず、モンスーン循環を構成する主要な循環系を850hPa10日平均場によって定義し、それらの変動と降水の季節及び季節内変動との関係を示した。インドモンスーン域の降水と最も密接に関係するのはチベット高原上の低気圧性循環系(CS-6)、インド洋赤道付近に中心を持つ時計回りの循環系(CS-3)及び地中海高気圧の循環系(CS-7)であり、東アジア域の降水と最も密接に関係するのはインド西風モンスーン(CS-3の西風)、オーストラリア高気圧から流れ出る赤道を横切る循環系(CS-4)及び太平洋亜熱帯高気圧の循環系(CS-5)である。これらの循環系はそれぞれの変動と相互作用を通じて降雨の変動をもたらす。
    春から夏への大きな変化は降雨極大域と対流圏中層の相当温位極大域の赤道からアジア大陸南部への移動である。即ち、6月初めCS-7の西方への変位、CS-6とCS-3の発達と共に、降水域・湿潤域は赤道域からアジア大陸南部に移動し、インドモンスーン西風と降雨の極大が出現する(1st onset)。それ以後インド洋西部は乾気・寒気移流域及び下降流域となり水蒸気量は減少し成層は安定化する。6月中旬、インド洋上の西風とインド近辺の降雨は弱まり(monsoon break)、7月中旬に再び極大となる(2nd onset)。
    東アジアの5月の降水はCS-4とCS-5の南西風によってもたらされ,降水域・湿潤域は赤道からモンスーントラフ-インドネシア・インドシナ半島に移行する。梅雨前線の降水帯は5月末-6月初旬に明瞭となる。インドモンスーン1st onsetの西風は6月中旬太平洋の-140°Eに達し擾乱を発生させ、太平洋高気圧の東方への変位をもたらす。この後(6月末-7月初旬)西風域は西に後退し、同時的に太平洋高気圧の西方への変位が起こる。上記の太平洋高気圧の変位は、その南西縁及び北西縁のモンスーントラフ(南シナ海)及び梅雨前線帯の位置と降水量の変化をもたらす。2nd onsetのインドモンスーン西風は7月中旬に太平洋に達し擾乱を発生させる。同時に太平洋高気圧と梅雨前線帯は北東へ変位する。
  • 山森 美穂, 佐藤 薫
    1998 年 76 巻 6 号 p. 879-888
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    中緯度対流圏界面付近の中間規模波動とその背景場について、準地衡ポテンシャル渦度分布の観点から調べた。1995年4月のMUレーダーおよびラジオゾンデ19日間連続観測データにより、中間規模波動が観測されたのは、いずれも総観規模波動のリッジにあたっていることを見出した。このとき対流圏界面付近に、リッジ時に特徴的な安定度の鉛直分布によってもたらされる伸縮渦度の大きな正の南北勾配が存在していることがわかった。また、気象庁高層観測ネットワークデータにより、この安定度の特徴的な構造は数度の緯度幅をもって出現していることが確認された。
    またGANALのデータを用いて、中間規模波動の卓越した二つの時期について擾乱の水平構造を調べたところ、これまで報告されていた南北方向に節のない単純な波状構造を持つもののほかに、節を一つもつ構造の擾乱が見つかった。それらは伸縮渦度勾配の大きなところに存在しており、伸縮渦度勾配が中間規模波動の出現位置と大きく関連していることを示唆する。
    以上の結果は、中間規模波動を対流圏界面付近に局在する準地衡ポテンシャル渦度勾配に捕捉されるモードととらえた理論的考察(Sato et al., 1998)と調和する。
  • 筒井 純一, 笠原 彰, 平口 博丸
    1998 年 76 巻 6 号 p. 889-907
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    領域大気モデルを用いた数値実験を行い、熱帯低気圧のシミュレーションならびに予報に対するモデルの適合性を研究した。このモデルはプリミティブ方程式を支配方程式として用いるもので、これまで地域気候モデリングの研究に広く利用されてきたRegCMと呼ばれる領域大気モデルと同様な構成である。熱帯低気圧の研究に対しては、短期予報のモードでモデルの適合性を評価することとし、熱帯低気圧の性状をモデルがどの程度良く再現できるかということを、特に発生や発達に注目して調べた。入力データには1990年9月の台風Ed(9018)およびFlo(9019)に対する客観解析データを用いた。また、一時間毎の赤外衛星データから推定される降水強度の「観測値」も合わせて利用した。
    予報実験では二つの点に重点をおいた。一つは、データの初期値化の効果を調べることである。もう一つは、二つの積雲パラメタリゼーション、Kuoおよびrelaxed Arakawa-Schubert (RAS)スキームに対する予報の感応度を調べることである。入力データに対する初期値化は、力学的な場に対する非断熱、非線形ノーマルモード初期値化と、水蒸気に対する積雲の初期値化との組合せによって行った。非断熱加熱率は放射および凝結による加熱率から決定し、降水強度の観測値を含む入力データを適用して求めた。水蒸気の初期値化は、与えられた降水強度に対して積雲スキームを逆算することによって行った。
    初期値化のもたらす台風の再現性向上の効果は、どちらの台風に対しても積雲スキームの種類に関わらずはっきり示される。特に、初期値化によって初期の降水場が正しくシミュレートされ、降水スピンナップが解消される。したがって、初期値化は台風の発生の場合に最も効果的である。RASスキームを用いたモデルは降水場の再現性に優れており、発達中の台風に対する強度予報に対しては、KuoスキームよりRASスキームの方が適しているようである。しかしながら、Kuoスキームは平均的な進路予報誤差において良いスコアを出している。
  • Hae-Kyung Lee, Pao-Shin Chu, C. -H. Sui, K. -M. Lau
    1998 年 76 巻 6 号 p. 909-923
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    熱帯太平洋(8°N-8°S)の1992年から1996年までの期間について日平均のTAOブイ観測データを使用して、海洋上の潜熱フラックス(LHF)と関連するバルク変数(海面水温、風速、湿度差)の年周期について調べた。西部太平洋で頻繁に観測される活発な対流と弱風を説明するために、改良型バルクパラメタリゼーションスキームを用いてLHFを計算した。また、年周期と半年周期の振幅・位相を同定するために調和解析を適用した。
    LHFの年周期は二つの地域、北東太平洋と西部/中部太平洋で特徴的な違いがみられた。前者の地域では、海上風速が強く、海面と大気境界層の底面付近との間の温度差が大きい北半球夏季および初秋の時期にLHFの極大が生じていた。西部/中部太平洋では、冬季モンスーンが強い北半球冬季でLHFの極大が生じていた。これらの二つの地域とは対照的に、赤道cold tongue域のLHFの年周期は弱く、年を通してLHFは小さい。また、LHFの極大域は7月頃北東太平洋にあり、次の年の3月までには西部太平洋に達する、西への位相伝播がみられる。
    LHFの月々の変動を規制している力学的および熱力学的プロセスの相対的な重要性を、東部太平洋と西部太平洋の二つの経度断面で調べてみると、東部太平洋ではcold tongue域の北を除き、湿度差の変動(熱力学的プロセス)が主としてLHFの年変化に重要であると考えられる。一方、西部/中部太平洋のLHFには海上風の風速変動(力学的プロセス)がより重要である。
  • Sung-Dae Kang, 木村 富士男, 高橋 俊二
    1998 年 76 巻 6 号 p. 925-935
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    山の風下にできる渦列の生成メカニズムを3次元数値モデルを使って調べた。モデルは静力学平衡を仮定したブシネスク近似方程式で、鉛直方向の運動量フラックスは乱流のパラメタリゼーションにより見積もり、水平方向の粘性係数には一定値を仮定した。
    一般場の風が一様で温度成層も一様な場合に、カルマン渦列が再現された。渦の生成は内部波の砕波と関係していて、フルード数(Fr)に依存している。3次元ベル型の山の場合、Fr数が約0.8以下で山岳波の砕波が発生し、また0.25以下になるとカルマン渦列が生じる。渦の生成は水平拡散係数から見積もられるレイノルズ数にも依存する。
    渦の発生はLindzen(1981)の内部波の飽和理論をもとにした考え方で説明できる。数値実験の結果ではカルマン渦列が発生しているときには、下層で飽和運動量フラックスを大幅に越える鉛直方向の運動量輸送があるのに対し、上層では飽和理論から期待されるように、ほとんど飽和運動量フラックスに等しい。この結果、下層と上層の間で運動量の大きさなフラックス傾度が生じて、山の風下で平均流が減速される。このため減速された流れと、周囲の地形影響をあまり受けていない流れの間に大きな水平シアーを生じる。平均流と内部波の運動量交換は内部はの砕波に伴う乱流により生じる。
    山の水平規模が10kmの場合、山岳波の運動量フラックスは静力学平衡を仮定したときと、そうでないときとはほとんど差が見られなかった。また非静力学平衡を仮定下モデルでも、静力学平衡を仮定したモデルとほとんど同様な渦列が見られた。この水平規模では静力学平衡の仮定は十分な精度を持っていると考えられる。
  • 木村 玲二, 近藤 純正
    1998 年 76 巻 6 号 p. 937-953
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    熱収支の日変化および季節変化を計算する新たな植生モデルを示した。モデル内のパラメーターは簡略化されており、計算に必要なデータは、観測地点近くの温度、風、湿度、降水量、日照時間であり、アメダスデータから読み取ったものである。モデルの適用性が1993,1994年の2年間にわたる水田地帯の観測結果によって検証された。本モデルにおける計算結果は日平均観測値とよく対応している。全期間において、本モデルの日平均地表面温度、日平均顕熱フラックス、および日平均潜熱フラックスの計算値と観測値の差はそれぞれ1.7℃,±13Wm-2、および±16Wm-2であった。また、年蒸発散量は約600mmy-1と推定された。水田の年蒸発散量は浅い水面からの年蒸発量(564mmy-1)と森林からの年蒸発散量(692mmy-1)の中間に入ることが分かった。水田の夏期植生期間における遮断蒸発量の蒸発散量に対する割合は、18%(1993年:冷夏)と9%(1994年:暑夏)である。1993年の降水量は多いために遮断蒸発量は多いが、蒸発散量は少ない。
  • 賀 文君, 小林 哲夫
    1998 年 76 巻 6 号 p. 955-963
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    裸地面からの蒸発は、土壌面が乾燥するに伴い、蒸発量のみならずその機構も3段階を経て変化する。特に第3段階における蒸発機構は他の2段階とは全く異なる。したがって、このような段階の切り替えが考慮されていないパラメタリゼーションは合理的とは言えない。
    土壌面蒸発の一つの合理的なパラメタリゼーションが提案される。それは土壌水分の鉛直分布に関する3層モデルに基づいており、蒸発の各段階は地表に露出するそれら3層のうちの1層によって特徴づけられる。各段階間の切り替えは土壌表面と接地気層の温度差から決定できる。第1段階の蒸発速度はポテンシャル蒸発速度Epに等しく、第2段階では土壌の種類と表面含水量に依存する因子(surface moisture availability) MEpの積で表される。これらについては、既存のパラメタリゼーションと実質的に同じなので、基本的な考え方だけが述べられる。しかしながら、第3段階の過程は“DSLバルク法”と呼ばれる新たに考案された方法によって公式化される。また、本法の鳥取砂丘砂への適用例も示される。本パラメタリゼーションによれば、第3段階における蒸発速度がリモートセンシングによって測定可能な地表面温度と5cm厚の表土層の平均含水量のみから評価できることになる。
  • 岩崎 俊樹, 北川 裕人
    1998 年 76 巻 6 号 p. 965-982
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    エアロゾルと雲の放射がアジアモンスーンに及ぼす影響を気象庁全球モデルを用いて調べた。エアロゾルによる直接及び間接の放射効果をパラメータ化した。また、陸上での雲量が標準モデルより増加するようにパラメタリゼーションを変更した。これは陸上では地表面の非均一性などが雲の形成を容易にし雲粒サイズが小さいため雲の滞留時間を長くしていると考えたためである。
    アジアモンスーンの予報はエアロゾル及び陸上での雲の増加のパラメータ化に大変敏感であった。標準モデルは陸上で太陽放射吸収量を過大評価する。雲の診断パラメータを海陸で区別しエアロゾルを考慮することにより、標準モデルに現われた太陽放射吸収量の海陸コントラストに関する系統的な誤差を減少させることができる。ユーラシア大陸では太陽放射が減少し大気陸面相互作用を通じて下層気温が低下する。その結果、東南アジアのモンスーン循環を弱め、東アジアの典型的な前線帯、メイユ、チャンマ、梅雨などの北上を遅らせる。
    陸上における雲の増加の影響とエアロゾルの影響はよく似ている。太陽放射吸収量の系統的誤差の減少は両パラメタリゼーションの妥当性を示唆しているが、その相対的な大きさはまだ評価できない。エアロゾルの分布や光学特性および雲の形成について、エアロゾルと雲の相互作用も含めて、とくに海陸の相違に配慮した研究を進める必要がある。
  • 田中 博
    1998 年 76 巻 6 号 p. 983-1008
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究では、総観規模波動の励起メカニズム(wavemaker)を取り入れた簡単な順圧大気モデルを用いて、一連のブロッキングの数値実験を行なった。このモデルはR20に相当する解像度を持つ極めて簡単なものであり、物理過程として、傾圧不安定を想定したwavemaker・山岳強制・渦粘性・地表摩擦が考慮されている。
    モデルの時間積分の結果、上記の物理過程だけでも持続性あるブロッキングのライフサイクルが再現できることが示された。本研究で用いたwavemakerは線形の傾圧不安定問題を解いて構築されたものであり、総観規模波動は指数関数的に増幅する。指数関数的に増幅する波がやがて非線形効果とバランスして飽和に達し、エネルギーが総観規模波動からプラネタリー波に輸送される過程はロスビー波の砕波を意味する。ポテンシャル渦度の解析結果、増幅しながら東進するロスビー波が地形性のリッジで砕波し、それがブロッキングとなることが示された。
    ひとたびブロッキングが生じると、後続のロスビー波はブロッキングに近づくにつれて減速し、ジェットの南北への分流に引き裂かれるようにして砕波する。この後続のロスビー波の砕波により、高気圧性の渦位が北に、低気圧性の渦位が南に輸送され、それがブロッキングに併合される。この渦位の南北伸張・併合過程(eddy straining mechanism)によりブロッキングは長期間維持されることが示された。本研究の結果、wavemakerによる総観規模波動の指数関数的な増幅がブロッキングの形成および維持に本質的に重要であることが示唆された。
  • 川村 隆一
    1998 年 76 巻 6 号 p. 1009-1027
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    1973年から1995年までのNCEP/NCAR再解析データを用いて、夏季アジアモンスーンとENSOとの相互作用を調べた。インド亜大陸上の20°Nを境とした、対流圏上層(200-500hPa)の夏季平均層厚偏差の南北傾度で定義されるモンスーン・インデックスとモンスーンに先立つ春季のNiño-3地域のSST偏差との相関はかなり高い。これはENSOに伴うSST forcingの変化が間接的に夏季アジアモンスーンに影響を与えていることを示唆する。
    エルニーニョ現象によるウォーカー循環の弱化は、冬季から春季にかけての熱帯インド洋北部・海洋大陸上の積雲対流活動を抑制する。春季におけるこの熱帯対流活動の弱化から、赤道から離れた対流加熱に対するロスビー型応答により、チベット高原西方に低気圧性循環が生じる。誘引された低気圧性循環は陸域の降水量増加、土壌水分の増加をもたらし、インド亜大陸北西の中央アジア地域の地表面温度を減少させる方向に作用する。一方、モンスーンのオンセット前の春季後半に、熱帯インド洋では、下層の北東風偏差の卓越と雲量減少に関係した、海表面の熱フラックスやwind forcingに対する海洋の力学的応答の変化により、SSTの高温偏差が形成される。陸域と海域にみられるこれら異なる二つの物理プロセスは共に、海陸間の熱的コントラスト(あるいは対流圏気温の南北傾度)を弱める方向に作用し、夏季アジアモンスーンの弱化をもたらす。モンスーンが強い年は全く逆のシナリオになる。このようなプロセスで、夏季モンスーンがそのモンスーン前期に一旦弱く(強く)なると、熱帯インド洋SSTの高温(低温)偏差はさらに発達する。
    本研究で提案されたメカニズムは、モンスーンの強弱年が分類された1970年代後半から1990年代前半までの時期において有効である。この時期Niño-3地域のSST偏差は、先行する冬季から夏季にかけて異常に持続する傾向にあり、冬季に卓越するENSOと夏季モンスーン偏差をつなぐブリッジとして働いていた。しかしながら、モンスーンとENSOのカップリングの如何にかかわらず、ウオーカー循環の強弱と関連した春季の熱帯インド洋に卓越する外向き長波放射量偏差と下層風偏差は、夏季アジアモンスーンの予測可能性の観点から、依然として重要な因子であることも確かである。
  • 酒井 孝太郎, W. R. Peltier
    1998 年 76 巻 6 号 p. 1029-1044
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    気候システムの長期変動特性を調べるために、以前より開発されてきた二次元多海洋全球熱塩循環モデルをエネルギー収支大気モデルに非同期結合させた。当結合モデルはグリーンランド氷床のサミットコアによって明らかにされたDansgaard-Oeschger気候振動のシミュレーションを既に行なったが、今回は最終氷期以降の解氷期間中、一時的な大陸氷床融解水に対する気候システムの応答を調べた。モデルに対しては二つの水循環に関する強制を加えた。一つは珊瑚礁記録に基づいた最終氷期最大期以降の海水準変動に関係する部分で、もう一つは海水準変動とは無関係に現在深層水が生成される北大西洋を囲むように存在した大陸氷床に起因する部分として仮定されるものである。結果として、千年程度のYounger-Dryasに類似の寒冷期以降の海水準変動に伴う融解水の与え方にあまり依存せず、当モデルはYounger-Dryasに類似の寒冷期を再現した。しかし、Younger-Dryasに先立つBølling/Allerød温暖期を当モデルで説明するためには更にバックグラウンド的に北大西洋に海水準変動と関係しない淡水供給を付加する事が必要である事が示された。本研究ではこれら二種類の淡水供給に関する摂動に対する気候の応答の感度も調べている。
  • 尾瀬 智昭
    1998 年 76 巻 6 号 p. 1045-1063
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    観測から得られた帯状平均場と熱源を与えたモデルを用いて、その応答としてのアジアモンスーンの循環、特にその気候学的な季節変化を調べた。結果は次のようにまとめられる。
    (1) 夏のアジアモンスーン期において、アジアの南域の深い積雲対流に伴う熱源は、チベット高気圧、モンスーントラフならびに、南アジアにおける下層循環を形成し、さらにユーラシア大陸西部に下降流をもたらす。中央アジアの地表面付近の熱源もまた、その上層に下降流を形成する。
    (2) 初夏(6月)に見られる、アジアの南域の深い対流に伴う熱源は、日本の南東に南西の下層風と上昇流を形成する傾向を示す。これらは、アジアの南域に形成される熱的低圧部とともに、東アジアに梅雨帯が形成される背景的要因になっていると考えられる。中緯度の梅雨帯での降水による熱源は、その南に下層ジェットを形成する。
    (3) 初夏(6月)から盛夏(7月)にかけてのアジアモンスーンの季節変化は、北半球全体で気温が上昇し、帯状平均のジェットが北上し弱まることによって特徴づけられる。モデルにおいて帯状平均場のみを6月から7月に変えると、この季節変化の主な特徴が再現される。すなわち、南アジアから東アジア域において、下層ジェットおよび上昇流域は、大陸周辺の海洋から大陸側に移動する。鉛直流のこの変化は、6月から7月にかけての熱源の季節変化と矛盾しない。
    (4) 盛夏(7月)から晩夏(8月)にかけてのアジアモンスーンの季節変化は、亜熱帯西太平洋の広い範囲で積雲活動が活発化することによって特徴づけられる。モデルにおいて西太平洋の熱源のみを7月から8月に変えると、この太平洋域からインド洋域の季節変化の主な特徴が再現される。上層のチベット高気圧および下層の太平洋高気圧が日本付近へ広がることもまた、西太平洋の熱源のみの季節変化で再現される。
    (5) 6月の帯状平均場と8月の熱源を用いたモデル実験が、気候学的な8月の実験結果と比べられる。気候学的な季節変化から遅れた帯状平均場が、中緯度および亜熱帯域の弱いモンスーン循環および関連する降水偏差と関連していることが暗示される。
  • 岩井 邦中, 加藤 正勝
    1998 年 76 巻 6 号 p. 1065-1069
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/09/15
    ジャーナル フリー
    垂直風洞に浮遊した半径1.7mmより大きい水滴の熱的緩和時間を測定した。測定は室温約20℃で、0℃に冷やした水滴の温度上昇と約40℃の水滴の温度下降の二通りで行った。温度上昇及び温度下降曲線は、ほぼ指数関数的に変化し、周囲の空気の湿球温度に落ち着いた。半径1.7mmの水滴での熱的緩和時間は両者の方法でほぼ等しかったが、水滴が大きくなると後者の方法での緩和時間が前者の方法でのそれより、小さかった。即ち暖かい水滴の方が冷たい水滴より速く湿球温度に近付くことがわかった。暖かい水滴と冷たい水滴の緩和時間は両者とも半径に比例して大きくなり、次の式で表された。τwarm=2.37a-0.20、τcool=3.82a-2.76(ここでaは水滴の相当半径でmmでとる)。
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